15ky-18





柘植 世那(西武)捕手のルーキー回顧へ







柘植 世那(22歳・HONDA鈴鹿)捕手 174/83 右/右 (健大高崎出身) 





「何か変わったのか?」 





 プロ解禁の年を迎えた昨年、まさかの指名漏れをした 柘植 世那 。あれから一年、何か変化があって指名にこぎ着けたのか検証してみたい。


(ディフェンス面)

 昨年の寸評にも書いたように、堂々としたプレースタイルで先輩の投手相手でも臆することなく指示の出せる選手です。ミットをしっかり示し、地面に下ろすことなく捕球します。強い球にもミットはブレませんし、以前よりも少しフレーミングを使って捕球しようとする意識は感じられます(それほど使いませんが)。元々小柄なので、足回りの良い選手。やや上から捕り行く傾向は観られますが、ワンバウンドするような球には下からパッとミットが出ます。キャッチングに関しては、一定の水準にあると言えます。

 リードに関しては、結構内角を強気に使って来る傾向が観られます。それで打たれることもあるのですが、幅広くリードしようという意志は感じられました。送球自体は1.8秒台中盤ぐらいで投げられるのですが、都市対抗の鷺宮製作所戦では悪送球になってしまいました。以前から送球が乱れることが強く、その点はあまり変わっていないのかもしれません。ピタッとハマれば、中の上レベルの能力はあると思いますが、精度の面では相変わらず見劣りするとみて良さそうです。

 社会人の日本代表代表合宿に呼ばれるなど、社会人では数少ない高卒で順調にレギュラーになった若手捕手。すでにディフェンスに関しては基礎的な部分の育成は昨年の時点で終わった印象で、大きな変化は観られませんでした。1年目から1軍半ぐらいのレベルには、すでにいる選手ではないのでしょうか。ただしプロのレギュラー捕手とか、そういった絶対的なものは感じられませんでした。





(打撃内容)

 捕手ながらチームの5番を担うなど、打力もある選手です。今回驚いたのは、三塁ゴロの一塁到達タイムが、右打席から4.1秒前後(左打者換算で3.85秒前後に相当)とプロでも上位のタイムを叩き出していたこと。けして走力があるというイメージがなかっただけに、正直驚きでした。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を引いて、グリップを高めに添えます。腰を深く沈めて、全体に癖のある構えではあります。それでも両眼で前を見据える形はできており、錯覚を起こすことなく立てています。個人的な意見ですが、構えだけで言えば昨年の方がバランスが取れていてよかったとは思います。ただし構えは、本人がしっくりくる形で立つのが一番良いと思っているので、それほど気にしません。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用していました。ただしタイミングがそれだと難しいと判断すると、始動を遅くして小さな動作にして「遅すぎる仕掛け」に切り替えるなど、相手に合わせて打撃フォームや始動のタイミングを変えていました。昨年は「平均的な仕掛け」ぐらいだったので、いろいろ試行錯誤しているのかもしれません。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて回し込み、軽くベースから離れた方向に踏み出すアウトステップ。早めに動いた時には充分な「間」が取れており、速球でも変化球でも幅広く対応。アウトステップするように、内角への意識が若干強いのではないかと思います。

 踏み込んだ足元も、なんとかブレずに我慢。アウトステップ気味でも、甘めの外角球や高めの球ぐらいならば、充分に対応することは可能だと考えられます。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、力み無くボールは呼び込めています。あとは、バットを引くのが遅れないように注意したいところです。バットの振り出しは、上から振り下ろして来るインサイドアウトの傾向が強いです。内角への意識が強く、そういった球をさばくには適したスイングです。

 インパクトの際にバットの先端であるヘッドが下がり気味なので、多少遠回りに軌道しロすを感じます。またボールを広い面で捉えるというよりも、うまく潜り込ませて捉えるので打球は角度がついて飛びやすいのではないかと感じます。スイングの弧自体も大きめで、確実性よりも破壊力を重視したスイングでした。昨年はもう少し確実性を重視したスイングに見えましたが、今年は変えてきているのかもしれません。何かそのへんは、考えが変わっていじった可能性があります。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは静かで、目線の上下動は気になりません。身体の開きもある程度のところで止められていますが、打ち終わった後の軸足の形が少し崩れがちに見えました。調子の波は、結構激しいタイプなのかもしれません。昨年のフォームチェックでは安定していたので、たまたま今年は調子を崩していたのかもしれませんが。

(打撃のまとめ)

 相手投手に合わせて打ち方を変えたりと、考えてプレーしているのは伝わりました。昨年の方が確実性が高く、今年の方が長打が期待できる打ち方になっているように見えました。入社一年目から都市対抗・日本選手権の2大大会に出場し、4年間の通算で.323厘を残すなど、高いレベル・大舞台でもある程度の結果は残せる打力があります。派手さはありませんが、プロの捕手として求められる水準にはあるのではないのでしょうか。


(最後に)

 昨年から目に見えて良くなった部分はわからないのですが、健在ぶりは感じます。今ならばファームの正捕手、一軍でも3番目の捕手ぐらいには入り込みそうなレベルにはあるのではないのでしょうか。ディフェンスも打撃も一定の水準にあり、バランスの取れたプレーヤーだと言えるでしょう。昨年はチーム事情で残留したのかもしれませんが、今年は指名された時は若干いまさら感があったことも否めません。一年残留した意味がどの程度あったのかはわかりませんが、一年歳をとったぶん昨年より若干評価を下げての最終評価とさせて頂きます。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2019年 都市対抗) 









柘植 世那(21歳・HONDA鈴鹿)捕手 174/83 右/右 (健大高崎出身) 
 




「育成期間は終わった」 





 健大高崎時代から、プロ志望届けを提出されれば指名されていただろう 柘植 世那 。高卒捕手としては稀な、2年目からレギュラーとして活躍中。社会人屈指の若手捕手として、プロからも熱い視線を浴びている。まだまだ未熟な部分は残るが、二軍での育成期間を終了し、これからは一軍で経験を積んでゆく段階。そんなレベルまでは、来ているのではないのだろうか。


(ディフェンス面)

 堂々としたプレースタイルだけでなく、状況に応じて先輩に臆することなくしっかり指示の出せる捕手。身体を小さく屈め、投手に的を大きく魅せるように構えられている。投手にも軽く返球するなど、叱咤激励して投手を引っ張るというよりは、投手の気持ちを察しながらプレーするという、きめ細やかさも兼ね備えています。

 キャッチングも力みがなく、グラブを柔らかく使えます。以前ほど押し込むような力強いキャッチングではありませんが、強い球に対してもブレることなく捕球できます。低めの球に対してもミットを下げないので、ワンバウンドするような球にも素早く対応。キャッチングに関しては、一定の水準に達しています。捕手にまず必要な、しっかり捕れるという基準をクリア。だからこそ、高卒2年目にして正捕手を任されるだけの信頼を得られたのでしょう。

 リードなどはまだこれからといった部分もあるのですが、スローイングは1.8秒台で投げ込めるなど基準以上。ただし都市対抗のMHPS横浜戦では、しっかり投げやすい体勢からの送球にも関わらず、ボールが上吊ってしまったのは制球面で少し気になりました。元々高校時代から、送球の精度の部分で不安があった選手。高校時代でも春~夏にかけて随分と改善されてはいましたが、滅法刺せるといったほどの送球ではありません。すでに一軍に混じって行けるぐらいの技量はあると思いますが、一年目からレギュラーをとか、そういった完成度の高さや総合力にはまだ到達していないとみています。


(打撃内容)

 今年の都市対抗では、捕手ながら6番を任されていました。ある程度の対応力と高校通算32本塁打のパンチ力を秘めた選手で、昨年も年間通して打率.287厘と捕手として必要な打力は身につけているといえます。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を少しだけ引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスと取れていて、構えとしては重厚感があって好い構えだと言えます。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が下がりきったときに動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足をしっかり引き上げまわしこみ、まっすぐ~軽くベースから離れた方向に踏み出すアウトステップ気味に踏み込みます。始動~着地までの「間」は充分あるので、速球でも変化球でも幅広くスピードの変化には対応しやすい。まっすぐ~アウトステップ気味に踏み込むことからも、やや内角寄りの球に意識があるように思われます。
 
 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にもブレずに止まります。そのため腰の逃げが早くアウトステップ気味でも、高めの外角球ならば「開き」をある程度のところまでで留めて対応できるのではないのでしょうか。高校時代は、この前の足がブレてしまっていて「開き」が抑えられていなかったので、その点では大きく成長しています。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 早めにバットを引いており、そこからさらに「トップ」の位置までボールを呼び込んでゆきます。ある程度高卒程なく社会人のスピードに対応できたのは、「トップ」の形を作るのが遅れないことも大きかったかと。またバットの振り出しにはロスがなく、むしろ内角をさばくのに優れた、インサイド・アウトのスイングができています。バットの先端であるヘッドも立てられており、ボールを広い面で捉えられて打ち損じも少ない打ち方かと。

 高校時代はバットが遠回りに出てきて、ヘッドも下がるという完全なドアスイング。それを社会人で、見事に修正することができています。むしろ今のスイングだと、外角の球をバットのしなりを活かしたスイングができないので、その点で外角の球に対してはどうなのかな?という疑問は残りますが。それでもボールを捉えるまでの無駄がなく、確実性の高いスイングになってきました。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが大きい割には、目線の上下動が小さいのは好感。身体の開きもある程度で我慢できていますし、軸足も地面からまっすぐ伸びており、軸を起点にスイングできています。真ん中~内角寄りの球には、クルッと腰をまわしてボールが捌ける姿が浮かびます。

(打撃のまとめ)

 特に当て勘が凄いとか、凄いスイングをするとかいうことはありません。しかし捕手らしく、意外性のある一発などは期待できるタイプ。技術的にも高校時代からは、格段に欠点が改善されています。今ならば、プロレベルの球でも全く対応できないということはないでしょう。


(最後に)

 まだ攻守に、一軍でバリバリの成績を残すほどのものは感じられません。しかしディフェンス面も打撃でも、一定の水準に達しており一軍で一年目から鍛えられる下地は整いつつあります。ただしチームの2,3番手捕手としてベンチを温めるぐらいならば、ファームで実戦経験を積ませた方がという判断になるかもしれません。そのへんは、チーム事情によって起用の仕方は大きく異なりそうです。

 できれば正捕手がハッキリ定まっていないチームに混じって、一年目から一軍での出場機会を得られるようなチームに進むのがベターかと思います。チームのレギュラーを間違いなく担ってゆくといったA級の素材ではありませんが、レギュラー争いを演じられる、チームの一軍捕手の層を厚くしたいとか、そういったチームならば面白い存在ではないのでしょうか。ドラフトでは、中位(3位~5位)ぐらいでの指名が予想されます。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年 都市対抗)









 柘植 世那(健大高崎3年)捕手 175/78 右/右





                 「キャッチングがしっかりしてる」





 今年の高校生捕手の人材が乏しいなか、数少ない指名を意識できる男、それがこの 柘植 世那 である。彼の最大の特徴は、強肩と高校通算32本を誇る強打にあると言われる。しかし私が彼のプレーで評価しているのは、キャッチングの良さにある。私は捕手は、まずボールをしっかり捕球できる、そのことが一番大事だと考えているので。


(ディフェンス面)

 体を小さく屈め、ミットを大きく魅せて投手に投げやすい構えをつくります。投手にシッカリミットを示したあと、一度脱力してグラブをダランとはしますが、地面につけるほど下げないので、速い球に立ち遅れる心配はありません。またずっと構えっぱなしの力みのある構えでもないので、グラブを力みなく柔らかく使える点も評価します。ボール一球一球も押し込みもよく、ワンバウンドになるような球でも、下から素早くミットを出すことができます。キャッチングにも雑なところがなく、そういった部分では今年の高校生捕手の中でも、屈指のレベルにあるのではないのでしょうか。

 投手の持ち味を活かしつつ、相手を討ち取るまでのアプローチを考えて組み立てるリードもでき、その辺は高校生捕手としては合格レベルでしょう。ベースカバーも怠りませんし、ボール処理の際にもしっかり投手に指示が出せます。性格的にも、ふてぶてしいところと、しっかりやることはやる選手であり、そういったプレースタイルにも好感が持てます。

 甲子園では、再三出塁したランナーに素早い送球を送り走者を牽制。仙台育英戦では、飛び出した二塁ランナーを見事に刺しました。そういった状況をよく見た、視野の広さを感じます。最大の課題は、塁間1.85秒前後で投げられるも、スローイングのコントロールの不安定さにありました。しかしこの夏は、いち早く速い送球を投げるよりも、タイムを落としてでも正確にコントロールすることを重視し、取り組んできたことが伺えます。このへんの送球の成長こそ、春~夏にかけて一番成長した部分ではないのでしょうか。

 ことディフェンス力でいえば、高校生としては上位の部類であり、充分高校からプロに入るべき素材だと評価できます。このような捕手を指名しないで、あと誰を指名しろと言うのでしょうか? 


(打撃内容)

 この夏は、甲子園で打率.143厘と3試合で僅か2安打と低迷。元々状態は、群馬予選から調子が上がりませんでした。しかし2年夏には、甲子園で.444厘を残したように、けして打力がない選手ではありません。ツボにハマれば、高校通算32本の長打力も秘めています。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰の据わりは悪くないのですが、両目で前がシッカリ見据えられないのがこの選手の課題。体が固いのかもしれませんが、球筋を錯覚なく追うには、両目で前をしっかり見る必要があります。スクエアでそれが難しいのであれば、前の足を軽く引いて構えても良いのではないのでしょうか。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下る途中あたりで動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力重視のアベレージヒッターが多く採用します。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を上げてまわしこみ、真っ直ぐ~少しベース側に踏み込んできます。すなわち真ん中~外側の球への意識が強いのではないのでしょうか。始動~着地までの「間」はとれているので、速球でも変化球でも幅広く対応。

 春より夏は、踏み込んだ足元が踏ん張れず、地面から離れるのが早かったことが伺えます。そのため上半身と下半身のバランスが悪く、開きが早くなり我慢できなかったのが気になります。それでも外角高めの球に対しては、払うようにして右方向へはじき返します。

<リストワーク> 
☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、力みなく対応できているところは良いところ。しかし腰の逃げ速いのと、バットが少し遠回りに出てくるので、その辺がボールを捉えるまでのロスになっています。またバットの先端であるヘッドが下がり気味で、ボールを広い面で捉えられず、打ち損じが多いことも否定できません。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはありますが、目線の上下動は平均的。春よりも、体の開きが我慢できなくなっていたのは気になる材料。そのため軸足も、春より崩れがちだったことが多いのでは? 春までは、軸足を起点に綺麗に回転できていました。

(打撃のまとめ)

 夏は完全に打撃を崩しており、ヒットになっても変な当たりが多かったのは気になりました。元来はファールで粘ったり、喰らいついてヒットにするしぶとさもあります。上手く巻き込めば、スタンドに叩き込むなどのパンチ力もあります。そういった意味では、打てる球を導き出すのが上手い選手との印象があります。

 対応力の低さは確かに気になるのですが、スイングの強さ・ボールを飛ばせる能力もあり、高校生捕手ならば合格ラインなのではないかと。しかしこの対応力の低さがネックになり、プロでは率が上がらず打撃で苦労する可能性は否定できません。


(最後に)

 攻守に超A級の素材ではありませんが、ディフェンスに関しては充分高校からプロに入る素材でしょう。打撃に関しては課題も多いのですが、スイングの強さとしぶとさはあるので、その辺に活路を見出だせなくはありません。プロの指導・本人の取り組み次第では、全く見込みがないという選手ではないので、捕手というポジションならばO.Kの打力だと評価します。

 春~夏にかけては、スローイングの精度が向上したこと。その分、打撃の調子・バランスが悪くなったことがマイナスポイント。そう考えるとプラマイ0であり、評価としては春から据え置きということになります。ドラフト会議では、4位以降にはなるかもしれません。しかし本会議の間に、指名される選手ではないのでしょうか。会議当日どうなるのか、その結果を見守りたいですね。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2015年夏 甲子園)









 柘植 世那(健大高崎3年)捕手 174/77 右/右
 




                   「唯一指名されそうな高校生捕手」





 私が2015年度確認した高校生の中で、唯一ドラフト指名が確実視される捕手と評価するのが、それがこの 柘植 世那 。一体どんな選手なのか、考えてみたい。


(ディフェンス面)

 まず第一にあげたいのが、高校生捕手にしてはキャッチングがしっかりしているということ。投手にミットを示したあと、そのグラブを地面に下げることなく補球。そのためワンバウンドするような球や低めに落ちる球にも、素早く対応できます。ボールの押し込みも悪くありませんし、高校生としては上位レベルのキャッチング技術があります。どうしてもハンドリングに自信のある選手は、手先だけ伸ばしてボールをとりがちです。しかしこの選手の場合、そういった雑なプレーはしません。

 投手の持ち味を活かしつつ、相手を討ち取るまでのアプローチを考えて組み立てるリードにも、捕手としてのセンスを感じます。相手の裏をかくようなことも出来ますし、上のレベルでも新たなものを見出して行ける発想力を感じます。それほど体は大きくありませんが、ガッチリとした捕手体型であり、ブロックなどもしっかりしていて捕手らしい捕手。

 課題は、コンスタントに1.8秒台を刻めるスローイングにあります。地肩自体は良いのですが、捕ってから素早く投げようとすると、ボールが上手くコントロールできません。そのためある程度コントロールをつけるためには、力を加減して投げないといけないというのが現状でしょうか。地肩はあるけれど、安定感・制球力に欠ける、ここが彼の一番の欠点であるように思います。それでも根本的な地肩はあるので、プロの指導によって正しい投げ方を教わることで、修正される余地はあると考えます。総じて見てみると、高校球界でも屈指のレベルにある捕手ではないのでしょうか。


(打撃内容)

 粘って甘い球が来るのも導いたり、その球を逃さないだけの確かな技術があります。打球も強烈ですし、捕手に求められるだけの打力は、兼ね備えていると評価できます。なんとなくスイングの形を見ていると、ホセ・ロペス(DeNA)に似ているような感じもします。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合・全体のバランスは良いのですが、両目で前を見据える姿勢が良くありません。両目でボールが見られないと、どうしても球筋を的確に捉えることが出来なくなります。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターが多く採用する仕掛け。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 始動~着地までの「間」は充分あるので、速球でも変化球でも、スピードの変化には対応しやすいはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。

 強引な巻き込みを得意とする一方で、右方向への打球も少なくありません。それを可能にするのは、足元のブレを抑えて我慢できるため。これにより、広角なバッティングを実現しています。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、リストは柔らかく使えています。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトではなく、内角をたたんでとか開かずに捌くとかそういうスイングではありません。真ん中~甘めの球は強引に巻き込み、外角の厳しい球を右方向に払うなどそういったスイングを得意とします。

 バットの先端であるヘッドは下がり気味で、打ち損じが少なくないように思います。この辺がもう少しヘッドが立ってスイングできるようになると、スイングの精度も更に高まるのではないのでしょうか。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げはありますが、目線の上下動は平均的。体の開きも我慢でき、軸足も地面からまっすぐ伸びて、軸回転でスイングはできています。

(打撃のまとめ)

 ファールで粘ったり、しぶとくセンターから右方向へという粘りもできる選手ですし、レフト方向への強打を見せることもあります。技術的に凄いというよりは、自分の打てる球を導くのが上手いタイプかと。

 スイングにも強さがありますし、高校からプロに入れる打力の持ち主だと評価します。プロの球に対応するのには数年かかるとは思いますが、捕手として必要な打力は身につけられる下地があると評価します。


(最後に)

 攻守にバランスの取れた素材であり、それでいて精神的にもしぶとい、忍耐強さも兼ね備えています。上位指名云々というスケールは感じませんが、高校からプロに指名される捕手とみて間違いないのではないのでしょうか。夏に更に成長した姿を見せると上位指名の可能性も残しますが、現状は中位指名あたりでのプロ入りになると考えています。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名)


(2015年 選抜)