15ky-16
郡司 裕也(慶応大4年)捕手 180/86 右/右 (仙台育英出身) | |
慶応では、あの 高橋由伸 以来の三冠王に輝き有終の美を飾った 郡司 裕也 。この一年、彼の個別寸評を作成していないことに気がつき、改めて彼の寸評を作成することにした。 (ディフェンス面) インサイドワークと細かいところまで気がつく、視野の広いプレーが魅力の捕手。ミットを投手に示しグラブを降ろさないように高校時代の癖が改善されていたのですが、最終学年では再びミットを下げる癖が出ていました。それでもワンバウンドするような球を全身で止める意識があり、この辺の足回りの悪さは随分と練習してきたのだなと感じられます。元々ミットを上から被せそうする癖があり、その割にミットも地面に下げてしまうとワンテンポ反応が遅れてしまうところがあるのは、今も気になります。 際どいコースの球には、ミットを動かさないというよりはフレーミングによってストライクを導こうという意志は感じられます。それがうまく行く審判と逆に嫌われる審判もいるので、このへんはかなり巧妙にやれないと諸刃の剣となりそうです。送球は1.9秒前後とプロに入る捕手としては平凡なものの、走者が滑って来るところにかなりの確率でコントロールできるので、地肩の物足りなさを補うことはできています。肉体のポテンシャルとしては、プロに入る捕手としてはやや劣るものの、創意工夫と考える頭で補うタイプだと言えるでしょう。そういった捕手がいないチームには、ぜひ加えてみたと思わせてくれる選手です。 (打撃内容) この選手の最大の良さは、外角の球を捉えるのが上手いという部分。この部分に関しては、アマチュア球界でも傑出しています。また今シーズンは、ボール球に手を出さないなど眼の良さも光っていました。 <構え> ☆☆☆ 3.0 両足を揃えたスクエアスタンスで、後ろ足に体重をやや預けたスタイル。グリップを高めに添えて、腰の据わり・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては並みぐらいかと。 <仕掛け> 平均 投手の重心が沈みきった底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性や長打力を兼ね備えた、中距離ヒッターやポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。彼のプレースタイルには、合致しているのではないのでしょうか。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出すというオーソドックスなスタイル。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも幅広くさばきたいタイプかと。 踏み込んだ前の足はブレずに止まっており、逃げて行く球や低めの球にも喰らい付けます。特にタイミングの合わせ方に特別なものは感じられませんが、打てるゾーンの球を逃さず叩くことはできていました。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力むことなくボールを呼び込めています。バットの振り出しも、ミートポイントまでロスなく振り下ろせています。以前は遠回りに出がちだったので、その点はかなり良くなっています。逆にバットの先端であるヘッドは下がらないタイプだったのですが、今は広い面でボールを捉えるというよりもボールの下に上手くバットを潜らせて打球に角度がつけられるようになっていました。 けしてスイングが滅法速いとかスイングの弧が大きいとは思わないのですが、フォロースルーの段階ではグリップを高い位置まで持って来れるようになっており、以前よりも打球が遠くに運べるようになっているのかもしれません。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げは平均的で、目線の上下動もそこそこ。以前ほど腰の開きは早く感じなくなりましたし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定しています。軸回転でスイングできており、調子の波は少ないタイプなのではないのでしょうか。 (打撃のまとめ) 三冠王に輝いたから、何か大きく変わったとか凄みを増した印象はありません。それでもシンプルなスイングで、ボールを見極め打てる球を逃さず叩けています。元々打撃にも良いものを持っている選手であり、プロでも環境に慣れれば6番を任されるぐらいの打力はあるのではないのでしょうか。 (最後に) 攻守のバランスが取れており、彼に任せておけば試合を作ってくれる、チームを勝ちに導いてくれるという安心感はあります。プロのレギュラー捕手という凄みは感じられないのですが、こういった選手が1人いれば非常に重宝するのではないのでしょうか。場合によっては、右の代打としても試合途中から起用することも可能でしょうし。 捕手が固定できていない中日にとっては、4位で一年目から一軍で混ざって行けそうな選手を取れたことは大きいと思います。ある程度打撃が最初から対応できるようなら、そのままレギュラーになってしまうかもしれません。そのぐらいディフェンスに関しては、高いレベルにあるからです。あとはこういった捕手をチームが望むのか? 首脳陣の考え方次第ではないのでしょうか。生かし方次第では、非常にハマる可能性があるだけに興味深い指名となりました。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2019年 神宮大会) |
郡司 裕也(慶応大3年)捕手 181/83 右/右 (仙台育英出身) | |
細かい部分にまで、物事を追求できる捕手らしい捕手です。今や慶応の4番を任されるまでになり、打撃でも存在感を示せるようになりました。攻守にバランスの取れた、19年度のドラフト上位候補です。 (ディフェンス面) 打者を仕留めるまでの道筋を、しっかり描くことができるインサイドワークが最大の魅力です。また仙台育英時代はミットを地面に下げてしまう癖があったのですが、そういった部分はしっかり改善されています。また際どいコースの球に対しても、フレーミングといった審判からストライクカウントを呼び込みやすいキャッチングを心がけています。そういった1球1球の捕球に関しても、格段に成長している点は見逃せません。低めの球にもしっかりミットが下から出るなど、捕手に求められるしっかり捕るという基本ができています。 所作を見ていても、捕手らしく細かい部分まで意識が通っている感じがします。バント処理の際には、周りにしっかり指示が出せています。グランドを任される司令塔として、存在感を示すことができています。 スローイングに関しては、二塁までの到達タイムが1.9秒前後と平凡。捕ってから素早く返球し、走者の滑り込んで来るところにボールを集めます。送球に関しては、プロとしては地肩も平均レベルといった感じで図抜けてはいません。また大型捕手故に、フットワークがやや重苦しいところがあり、そういった足回りの悪さを球団によっては嫌うところが出てくるかもしれません。何処を重視するのかにもよるのですが、送球・フットワークの部分が上位指名選手としては物足りないものの、リード・捕手らしさ・打力も加味すると、やはり大学からそれなりの順位でもドラフト指名される選手なのではないのでしょうか。 (打撃内容) それほど長打で魅了する選手ではなく、凄いというよりは上手いといった感じの打撃です。何が上手いのかというと、外角の球に合わせる技術に優れています。そのため打球も、センターから右方向への打球が目立ちます。慶応でも中軸を任されるのは、長打による破壊力よりも、着実に走者を返す打撃技術が高いからでしょう。 <構え> ☆☆☆ 3.0 前の足を気持ち引いて、グリップは高めに添えます。やや後ろ足に重心をかけて、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスは並ぐらい。特に構えは、可も不可もなしといった感じでしょうか。 <仕掛け> 早め 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多くみられます。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を引き上げ回し込み、アウトステップで踏み込んできます。始動~着地までの「間」は充分あり、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。ベースから離れた方向に踏み出すために、内角を意識したスタイルです。実際は外角の球にうまく合わせるように、懐を開けるのは苦手な内角球に対するためではないかと考えられます。 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にしっかり止まっています。アウトステップぶん早めに腰が引けるのは気になるのですが、踏み込んだ足元が我慢できるぶん開きをある程度のところで止まります。これによりアウトステップでも甘めの外角球や外角でも高めの球ならば、充分にさばくことができます。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、ボールを呼び込むまでに力みは感じられません。バットの振り出し自体は、少し遠回りに出てくるタイプ。そのため内角の球に対しては、ヘッドが上手く抜けて来ない傾向にあります。しかし外の球に対しては、バットの先端であるヘッドが下がらず、広い面でボールを捉えることができます。そのため、フェアゾーンにボールを落ちる確率も高いのでしょう。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げはありますが、目線の上下動は小さい。体の開きも我慢できていますが、若干軸足が前に傾きがち。すなわち、体が突っ込む傾向が強いのかもしれません。 (打撃のまとめ) 右にも左に打ち返すことはでき、勝負どころでも自分の打撃を見失わないところは良いところ。そのため、勝負どころで自分のバッティングができます。 特に外角の球を拾うのがうまく、その球を長打にすることもできます。豪快に引っ張ってホームランという打球は少なく、うまく外角球をセンターから右方向に打ち返します。そういった対応力の高さは、捕手ながら上位レベルの打力につながります。 (最後に) 打力が良くても、他のポジションにコンバートといったタイプではありません。生涯捕手としてやって行けるタイプでありながら、打力も適度にあるといった貴重な存在です。フットワークの重苦しさも、以前よりはだいぶ改善されてきました。最終学年でも存在感を示し続けられれば、ドラフトでも上位指名が期待できる好捕手ではないのでしょうか。 (2018年 秋季リーグ戦) |
郡司 裕也(仙台育英3年)捕手 180/79 右/右 |
「実戦的な捕手」 打者を仕留めるまでの道筋をしっかりと描けるリードと、チームの4番打者として抜群の勝負強さを魅せる打撃でチームを神宮大会優勝に導いた好捕手。一冬越えて、どのように変わってきたのか考えてみた。 (ディフェンス面) グラブを示したあと、秋はミットを一度地面に降ろしてしまう癖が気になりました。どうしてもこうするとワンバウンド処理に立ち遅れしやすくなり、こういったキャッチングをする選手を好みません。選抜でもそういった癖が顔を覗かせる時はあったのですが、意識がある時はそれをしないように心がけていた点も見逃せません。ボールを押し込んだり押し返すような強いキャッチングではないのですが、低めの球にも素早く捌けるグラブ捌きの良さは光ります。 リードに関しては、打者を仕留めるまでの道筋を描くことができています。そのため、一人一人の打者を対峙するときにも、意図が感じられる点は大人びています。スローイングに関しては、驚くような地肩はないものの、捕ってから素早く返球するのが特徴。圧倒的な地肩がないところが、プロの素材かと言われると物足りない部分ではあります。 トータルとしては優れた捕手だと思いますが、高校からプロに入るような凄みが感じられないところをどうみるか? (打撃内容) けして長打で魅了するタイプではなく、右にも左に打ち返す幅の広い打撃が持ち味。特に勝負どころでも、自分の打撃を見失わないところは良いところ。非常に勝負強いのが、この選手の最大の売り。 <構え> ☆☆ スクエアスタンスで両足を揃え、グリップは高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合・全体のバランスは並ですが、両目で前を見据える姿勢は、あまり良いとは言えません。この辺は、昨秋までクローズスタンスで構えていた名残のように思えます。これでも打ってきたので、あえていじる必要はないのかもしれませんが。 <仕掛け> 早めの仕掛け 投手の重心が下るタイミングで動き出す、「早めの仕掛け」を採用。これは、典型的なアベレージヒッターが採用するスタイルで、彼は長打よりも対応力を重視していることがわかります。 <足の運び> ☆☆☆☆ 始動~着地までの「間」が充分取れているので、速球でも変化球でもいろいろなタイミングで合わせやすいはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角の球でも捌きたいという、なんでも打ちたいタイプ。踏み込んだ足元もブレないので、外の球でも開きを我慢してついて行くことができます。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、リストワークに硬さは感じません。しかしバットの振り出しは、少し遠回りでボールを捉えるにはロスを感じます。少しポイントを後ろに遅れて来るような感覚で、外角球を右方向に打ち返す打撃を得意にしている感じはします。 ボールを捉える時は、ほぼレベルスイングでインパクト。広い接地面で、打ち損じの少ないスイングにはなっています。最後までしっかり、振りきれてはいます。スイング軌道に関しては、昨秋の方が良かったようには思います。 <軸> ☆☆☆☆ 足の上げ下げがあるも、それほど目線は上下動せず。体の開きも我慢出来ていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて綺麗に軸で回転出来ています。 (打撃のまとめ) 内角球を綺麗にたたんでというスイングには適しませんが、多少外回りでバットが抜けて来なくても、外角球を右方向に弾き返すには適したスイングをしてきます。技術的には、ボールを合わせる技術もありますし、軸もブレない技術の高いスイングではあります。 長打で魅了するような派手さはありませんし、ドラフト候補といった凄みのあるヘッドスピードもありません。それでも合わせるのが上手く、確実にはじき返すことを重視したスイングだと言えるでしょう。 (最後に) 攻守に絶対的な凄みは感じないんので、ドラフト候補というよりも強豪大学・社会人などに進んで行くタイプだとは思います。しかし捕手としては確かなものがあるので、アマの王道で勝負して行ける素材ではないのでしょうか。そういった意味では、ドラフト候補という感じは個人的にはしないので、そういった目では今後もみないと思います。まずは大学や社会人でも通用するような、確かなものを示してからプロ入りを目指すタイプではないのでしょうか。 (2015年 選抜) |