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坂口 大誠(奈良大附3年)投手の選抜寸評へ







 坂口 大誠(奈良大附2年)投手 180/73 右/左
 




                    「こりゃドラフト候補だ」





 
各球団の視察情報を見ていて、複数球団からマークされている男がいるのに気がついた。その男の名前は、坂口 大誠。力投派のスリークオーターで、全国の夏の模様を見る限り、関西では3本の指に入る素材ではないのだろうか。今回は、選抜出場も有力なこの男を取り上げてみた。

(投球内容)

 非常に勢いよく足を引き上げて来る力投派で、それでいてマウンドセンスを感じさせる力と技を兼ね備えたタイプ。

ストレート 常時135~140キロ前半ぐらいに

 球持ちがよく、ボールが打者の手元まで生きているので、球速表示以上に感じさせる球質なのでしょう。速い球では140キロ台前半は連発してそうに見えますが、MAXで140キロだとか。更に多くの球が、130キロ台中盤ぐらいで、とてもそんな球には見えません。また両サイドにボールを散らして来るだけでなく、結構低めに決まることも少なくありません。時々高めに抜けることもあるのですが、ストレートのコマンドは高い方だと言えます。

変化球 スライダー・チェンジアップ

 殆どの変化球は、スライダーとのコンビネーション。その精度・キレ味という意味では平凡で、圧倒的にストレート中心の投球だと言えます。またチェンジアップもあるようですが、滅多に投げ込んできません。

そういった意味では、夏の時点では単調なコンビネーション・変化球の精度は発展途上だと言えます。

その他

 牽制は多く織り交ぜて来るのですが、逆に神経質過ぎて気になります。モーションも大きいので、走者が刺されるということは少ないのでは? クィックは1.0秒前後と高速で、フィールディングの動きもまずまず。野球センスや運動神経ということでは、優れた選手だと言えます。

 ランナーを背負ってからの「間」の取り方、投球術などにもセンスを感じさせ、力投派ですが投球をまとめるセンスを感じます。

(投球のまとめ)

 ストレートの球質、活かし方などに優れており、非常に実戦的な投手との印象を受けます。それでいて力で押せる部分もあり、一冬越えて伸びて来るようだと、選抜では有力なドラフト候補と注目されそう。

 球種を増やすこと、変化球の精度・キレを磨くことなど課題も残しますが、彼の野球センスを考えたら、充分成長を期待できる部分です。





(投球フォーム)

今後の可能性も含めて、フォーム観点から考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 地面に向けて足を伸ばし、更に前に倒れ込む感じのフォームなので、けしてお尻は一塁側に落ちていません。すなわち体を捻り出すスペースは確保されておらず、カーブで緩急を効かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 前に倒れ込むようなフォームの割には、「着地」が早過ぎることはありません。そのため体を捻り出す時間はそれなりに確保は出来ていますが、現状は典型的なスライダー・チェンジアップ系投手のフォームに。また腕の角度も、スリークオーターのような感じになっています。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の押し付けが、完全に地面から浮いてしまっています。そのため力を入れて投げると上吊ってしまいがちになるはずなのですが、「球持ち」がよくボールを押し込めることができるので、それほど上吊らないで済んでいるところは評価できます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせないフォームですが、カーブやフォーク・シュートなど肘に負担のかかるボールは見られません。ボールを振り下ろす腕の送り出しを見ても、肩への負担も少なそう。しかしながら、上下動の激しいフォームで腰を痛める危険性と、
力投派故に消耗が激しい可能性は否定できません。執拗に疲れを貯めやすいフォームなので、故障には充分注意してもらいたいものです。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは並で、それほど打者苦にするタイプではありません。スリークオーター故に、体の「開き」も少し速く見えています。コースを突いた球でも、打ち返される可能性はあります。しかしそれを、「球持ち」の良さとボールの質で補っている感じでしょうか。

 振り下ろした腕は、身体にしっかり絡んできます。そういった意味では、速球と変化球の見極めは困難。ボールにしっかり体重が乗せられており、打者の手元まで生きた球が投げられます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があるものの、「球持ち」と「体重移動」に優れていることがわかります。

 故障のリスクやコントロールを司る動作は並で、特別推せる材料はありません。ボールをギリギリまで持って、ボールに体重を乗せられることで、非常に質の好いボールが投げられます。



(最後に)

 物凄くケール感溢れる素材ではないのですが、力投派の割に実戦力も兼ね備えるという珍しいタイプであり、一冬越えた成長が観られるようだと本当に楽しみ。選抜の舞台で、どんな投球を魅せてくれるのか? 期待してそのときを待ちたいと思います。


(2014年夏 奈良大会)