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高橋 純平(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







高橋 純平(県岐阜商3年)投手 182/76 右/右 
 




                    「まだ目玉ではない」





 例年のドラフトの目玉になるような投手に比べると、まだまだ 高橋 純平(県岐阜商)には、そこまでの凄みを感じない。確かに現時点でドラフト1位で競合しても不思議ではないレベルにはあるが、あくまでもそれは今後の上積みも含めた期待値によるところが大きい。一体何がまだ物足りないのか? 今回は考えてみた。


(投球内容)

 高橋 純平を観て思ったのは、多少まとまりのある 新垣 渚(沖縄水産-現ヤクルト)といった感じ。しかし沖縄水産時代の新垣のような、唸りをあげるような凄みのあるボールを投げてくるわけではなく、あくまでも見た感じがそんな投手だということ。

ストレート 140~MAX150キロ

 高橋の場合、常に速い球を投げ込んで来るというよりは、普段は140キロぐらいに力を抑えてでも、カウントを整えることを重視し、力抜いて投げられる投手だということ。勝負どころで力を入れると、いつでも140キロ台後半~150キロを超えるような球が投げる能力は持っている。

 ストレートの球質も、勢いこそ感じられるものの、それほどグ~ンと驚くほど伸びては来ないし、それでいて球威で前に飛ばさないような重さがあるわけではありません。現状は、思ったほど自己主張に乏しい150キロだなという印象を受けます。それでも昨夏見たときは、かなりボールがバラついてストレートのコマンドの低い投手との印象がありました。その辺は力を入れると今でもそうなのですが、8分ぐらいでいつでもカウントを整えることができるようになり、その辺は改善はされつつあります。

変化球 カーブ・スライダー・カットボール・ツーシーム

 変化球は、カーブとスライダー・カットボールにツーシーム。選抜の松商学園戦では、序盤高めに浮いていたカーブが中盤以降上手く低めに決まるようになってきました。スライダーは、腕の振りの強さを活かし大きく横滑りし、それが低めに切れ込みます。またカットボールは、左打者内角を意識的に突ける技術は持っており、この球の使い方には自信を持っているよう。右打者にもツーシームで内角を突くなど、一冬越えてピッチングの幅を広げてきました。

 現状まだ打者を仕留めるような絶対的な変化球はなく、あくまでもストレートとのコンビネーション・アクセントとして各変化球を使ってきます。この辺の投球術は発展途上であり、全国の上位校レベルだと抑えきれない要因ではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒ぐらいでまずまず。牽制は平均的で、ベースカバーはともかく、フィールディングはそれほど上手いようには見えません。そういった野球センス・運動神経に優れたタイプではないように思います。

(投球のまとめ)

 力を抜いてカウントを整えられるようになったり、カットボールを左打者内角に活かすなどの術は、昨夏よりもかなり成長した部分ではないかと。そういった考えて、努力できる才能はあるようですが、それほど器用なタイプではなさそうなので、少しずつ段階を踏んで実戦的なものを少しずつ身につけてゆくタイプではないのでしょうか。

 まだまだ上のレベルに即通用するとか、全国の強豪校を力でねじ伏せるような絶対的なものはなく、あくまでも今後の伸び代も含めて評価されるべき素材だと考えます。それでも無理をしなくても、これだけのパフォーマンスを示せるということは、余力が残されていると見ることができます。またけして単なる素材型ではなく、考える思考力・それを実行するために努力できる才能は加味されているように思います。そういった意味ではその辺は 大谷 翔平(花巻東-日ハム)似ており、今後も更にに成長を続けてゆける可能性は感じます。


(投球フォーム)

昨夏と比べると、結構フォームが微妙に変わっている感じがするので、比較しながら考えてみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 昨夏はもう少し引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせていたように見えたのですが、今は地面に向けて伸ばしているので、お尻の一塁側への落としが甘くなった気がします。そういった意味では、カーブを投げる時に無理を感じます。

「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並。特に変化球に特徴がないのも、このへんの動作が影響しているのかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 昨夏はあまりグラブをしっかり抱えられていなかったのですが、この春は体の近くで抱えることが出来ています。そのため暴れていた球筋も、かなり両サイドに投げ分けられるようにはなっています。

 しかし足の甲での地面の押し付けはできているのですが、それがリリースを迎えた後あたりのために、ボールを低めに集められません。力を入れて投げると上吊るため、低めに集めようとすると、かなり力をセーブしないといけないことがわかります。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻がしっかり落とせなくなったことで、体を捻りだすスペースが確保できず。この状態でカーブを多投すると、肘への負担は少なくありません。

 また上から降り下ろそうという意識が強く、肩への負担は少なくはないフォーム。けして力投派のフォームではありませんが、将来的に肩・肘を痛める危険性も少なくありません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど打者が苦になるフォームではないはず。特に「開き」が早く、コースを突いた球でも、打ち返される危険性を感じます。

 腕はしっかり絡みつくので、速球と変化球の見極め困難。しかしボールにしっかり体重が乗り切る前にリリースを迎えているので、グッと打者の手元までに生きた球・球威のある力強い球が投げ切れません。ボールが自己主張に欠けるのは、そのせいではないのでしょうか?

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「球持ち」「体重移動」は並レベルで、「開き」に課題があることがわかりました。足の甲の押し付けが遅く、ボールが上吊りやすいこと。お尻が落とせない割にカーブを多く投げたり、腕の送り出しに無理があり、肩・肘を痛める危険性があるなど、投球フォームは発展途上なのがわかります。


(最後に)

 確かにまだ伸び代が残されている素材であり、野球への姿勢・着眼点を見つけるセンスなども、けして悪くないように思います。そういった意味では、プロの指導者がつけば、まだまだ大きく伸びる可能性は感じます。

 しかし高卒で1年目から活躍するといった素材ではなく、ある程度の育成・段階を踏んでプロの一線級へと昇ってゆくタイプの高卒目玉投手。そのためある程度戦力に余裕のある球団、しっかり育成できるシステムが確立されている球団に入って欲しいと願います。現状は、まだまだドラフトの目玉として物足りなく、夏までの成長にかかっています。それが実感できるようならば、その時はドラフトの目玉にふさわしい投手になっていることでしょう。


蔵の評価:
☆☆☆☆


(2015年 選抜)










 高橋 純平(県岐阜商2年)投手 183/76 右/右
 




                   「やはり頭一つ抜けた存在」





 今あらためて、この夏の大会の模様を見直し、2015年度の有力選手の映像をチェックしている。そんな中、評判どおり 高橋 純平 は、2年夏の時点では全国でも頭一つ抜けた存在であることを再認識した。選抜の活躍次第では、2015年度の目玉は、まさにこの男ということで、ドラフト戦線をリードすることになるのではないのだろうか。

(投球内容)

 183/76 の体格が示すように、その投球フォームは驚くような迫力・凄みは感じられない。非常に、ゆったりと静かに入ってゆくフォームとの印象を受ける。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤ぐらい

 夏の大垣日大戦の模様などを見てみると、常時140キロ前後~140キロ台中盤ぐらいで、驚くほどの球威・球速は感じられない。しかし時どきに、おぉ と思わずニヤリとしてしまう球も見受けられる。しかし夏の模様を見る限りは、驚くほど手元でグ~ンと伸びるとか、ピュッとキレるとか空振りを誘う球質ではない。ましてストレートのコマンド能力は低く、両コーナーには散っているものの、高めに抜けたり引っかかり過ぎてワンバウンドしたりと、捕手が対応し切れないような悪送球も少なくはなかった。

 秋の投球は確認出来ていないが、伝え聞く限り145~152キロぐらいの球速を連発していたようで、夏の頃よりワンランクボールの勢いが増していたのは間違いないようだ。その投球を確認したスカウト達から、一気に1位指名候補として声が飛び出すようになった。

変化球 スライダー・スプリット

 変化球は、カットボールのような球速があって小さく曲がるスライダーとのコンビネーション。この球は、ストレートよりも安心してカウントが稼げている。また春の東海大会以降に覚えたという、スプリットも夏は時々混ぜていた。この球も絶対的な落差はないが、投球に縦の変化が加わることで、両サイドだけでなく縦の変化も意識しなければならず、打者にとっては厄介な球だと言えよう。

その他

 牽制に関しては、ややモーションが大きいのが気になります。素早い送球はできますが、動作が大きいので走者は刺されないのでは? クィックは1.0~1.1秒ぐらいと素早くは投げ込めます。フィールディングは、ベースカバーに遅れることもあり、まだまだ磨かないといけないところかもしれません。

 ランナーを背負えば長くボールを持って、走者や打者を焦らす意識は持てています。ランナーへの注意力も高く、けしてただ投げているだけの投手ではありません。

(投球のまとめ)

 ストレートの勢いは本物でしたが、まだまだバラつきも多く夏の時点では発展途上の投手だなという印象を受けました。この辺が、秋はだいぶ変わってきたのかもしれません。

 むしろ現状は、変化球の方が安心して見ていられる感じ。特に一冬越えて、スプリットが自分のモノになっているようだと、非常に面白いと思います。凄みを感じさせる領域まで到達しているのか? 選抜での投球に期待が高まります(まだ出場は決まっていないが)。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、彼の今後を考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足が比較的高い位置でピンと伸ばされているため、お尻は一塁側に落ちています。そういった意味では、体を捻り出すスペースが確保出来ているので、カーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦の変化球を投げるのにも無理はありません。

 ただし「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並。現状、変化球のキレ・曲がりに特徴がないのは、この辺の動作が関係しているのかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは抱えられてはいませんが、体の近くには最後まであります。そのためか、両サイドにはボールが散って、甘いゾーンには入ってきません。

 足の甲での地面への押し付けも出来ており、浮き上がろうとする上体の力を抑えこむことは出来ています。それでも高めに抜けたりすることが多いのは、「球持ち」が浅くリリースが安定していないこと。ボールが、まだまだ押し込めていない「球持ち」の浅さ・指先の感覚の悪さに原因があると考えます。この辺は、下半身の鍛錬や股関節の柔軟性も磨かれて来ると、だいぶ変わって来るかもしれません。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻は比較的落とせているので、カーブ・フォーク・シュート系のボールを投げても、肘を痛め難いのは推せる材料。しかし実際には、こういった球は投げていません。

 振り下ろす腕の角度はあっても、送り出しに無理がないのも良いところ。これだけの速球派ながら、肩・肘への負担が非常に少ないのは将来に向け明るい材料。またフォーム自体もけして力投派でも、無理して投げている感じもないので、消耗度が激しいタイプではないでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も並ぐらい。そういった意味では、それほど苦になるフォームではありません。

 振り下ろした腕は身体に絡んでおり、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも適度に体重が乗せられており、破格の球速を生み出す原動力になっています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」には優れていますが、「球持ち」に課題があるように思います。フォーム全体に、もう少し粘っこさが出てくると良いのですが。

 コントロールを司る動作も悪くないのですは、「球持ち」の悪さなのか球筋が暴れます。しかし故障し難いフォームではあるので、この辺は推せる材料ではあります。投球フォームという意味では、まだまだ淡白で発展途上の段階だと言えるでしょう。


(最後に)

 2年夏の比較でいうならば、大谷 翔平(花巻東)や 安楽 智大(済美)の同時期に比べると、迫力・凄みという意味では劣ります。ただし秋の投球は、夏の大会よりもワンランク迫力は違っていたようなので、その点では彼らの投球に近づいているのかもしれません。

 こればかりは、選抜の投球を確認するまでお預けといった感じでしょうか。それでも2015年度の世代の高校生の中では、現時点で頭一つ二つリードしている存在であり、順調に伸びてゆけばドラフト1位・競合レベルの素材であることは間違いないでしょう。選抜で一気に目玉クラスへとアピールできるのか? まずは東海大会準優勝で出場は確実視されますが、選抜出場の朗報を待ちたいと思います。選抜でのチェックポイントは、ストレートのコマンド(コントロール)と質が上がっているかではないのでしょうか。


(2014年夏 岐阜大会)