山下　篤郎（鎮西３年）投手　１７８／８２　左／左

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「厚みを増している」

　昨年熊本に遠征した時に、この　山下　篤郎　を生でみた。キレの好いストレートを投げ込む、将来楽しみな投手との印象を持っていた。１年経ったこの夏、身体つきがだいぶガッチリとして、ボールの質もキレ型から球威のある球質にと変わっていた。

（投球内容）

ノーワインドアップから、ゆったりとしたフォームから投げ込んできます。

ストレート　常時１３５キロ前後～MAX１４４キロ

　この夏の模様を観る限り、常時１３５キロ前後ぐらいで、速い時で１４０キロ弱ぐらいかなという感じ。そういった意味では、昨年見た春の沖縄と熊本との交流戦の時と、球速的にはそれほど変わっていないような。しかし最も変わったのは、ストレートの質。非常にズシリと重い球威型に変わっている。更にストレートのコマンドが良くなっており、内外角にしっかり投げ分けられるようになってきた。

　特に右打者内角を厳しく突くコントロールと、低め膝下に決まることも少なくなかった。以前は結構ボールがばらついていたが、今は四死球で自滅するような危うさはない。

変化球　カーブ・スライダー・カットボール・シュート・フォーク？など

　小さく少しだけ曲がる、カットボールみたいな球でカウントを整えて来る。それに曲がりながら落ちるスライダー、右打者の外に小さく逃げるシュート系の球、余裕が出てくるとカーブも織り交ぜてくる。更に縦に落差のある変化球もあり、これはフォークなのだろうか？

　球種は多彩であり、変化球一つ一つの曲がり、コマンドともによく、上手く速球とのコンビネーションで組み立てられている。

その他

　牽制はそれほど鋭いものは入れてきませんが、クィックは１．０５秒前後・フィールディングなどの動きの良さもある選手。昨年などは冷静さを欠いてミスすることもあったのですが、だいぶ落ち着いてプレーできるようになってきました。

（投球のまとめ）

　それほどストレートが速くなったわけではないのですが、コントロールが良くなっており、多彩な変化球一つ一つにもキレが。なにより、落ち着いて投げられる精神面の成長を感じます。

　打っては４番を打つ好打者で、野球センスの高さも感じられます。ストレートにもう少し勢いが出てくると、非常に面白い選手ではないのでしょうか。

（投球フォーム）

＜広がる可能性＞　☆☆☆☆

　引き上げた足を高い位置でピンと伸ばされており、かなり二塁側に送り込むことでバランスを取っています。お尻の三塁側（左投手の場合）への落とすことができ、体を捻り出すスペースを確保。カーブやフォークといった球種を投げるのにも、無理がありません。

　「着地」までの粘りはそれほどでもないので、体を捻り出す時間は充分ではありません。そのため変化球のキレや曲がりの大きさなが中途半端になりそうですが、実際の投球を観る限りは問題なさそうです。

＜ボールの支配＞　☆☆☆☆

　グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールが上吊り難いのも特徴。昨年は球持ちが浅すぎた部分があったのですが、その辺もだいぶ改善されて、コントロールは大幅に改善されました。

＜故障のリスク＞　☆☆

　お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても無理はありません。そういった意味では、肘への負担は少ないのでは？

　ただし背中を後ろに反るぐらいして、執拗に角度を付けて腕を振り下ろしてくるので、肩への負担は大きいはず。ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がるほどだと、故障につながる危険性が高くなる。日頃から体のケアには、充分注意して欲しい。

＜実戦的な術＞　☆☆☆

　「着地」までの粘りはそれほどないので、打者としては合わせるのに苦にはならないのでは？　それでも体の「開き」は抑えられているので、甘いところ投げない限りは痛打され難いのではないのだろうか。

　気になるのは、振り下ろした腕が身体に絡んで来ないところ。コントロールを重視するあまり、腕が振れていないのでは？せっかく好い変化球があるのに、これでは空振りを誘い難い。ボールへの体重乗せ具合は悪くないので、打者の手元まで球威のある球が投げられている。

（フォームのまとめ）

　「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に特別悪いところもなく、好いところもない。しいて言えば、もう少し「着地」までの粘りが作れるようになると、打者にとって嫌らしい投球ができそうだ。

　コントロールを司る動作は素晴らしいが、肩への負担が大きいのが最大のネック。あともう少し腕が振れるような腕の振り・上体の鋭い振りを取り戻したい。元々は優れていた投手だけに、キレのある球の復活が望まれる。

（最後に）

　まだストレートに物足りなさは残るだろうが、コントロール・変化球の良さ・精神面の成長は強く感じられた。「旬」であるかと聞かれると微妙ではあるが、投球の土台はしっかりしているので、今後肉体の成長が望めれば面白いと思う。

　育成６位での指名ではあるが、将来一軍まで昇りつめられる可能性は充分あるだろう。そのためには、一にもニにもストレートのキレを取り戻すこと。それができれば、好い買い物をしたのではないかと思う。あとは、肩を痛めなければ好いのだが。個人的には育成枠での指名ながら、指名リストに名前を残してみたいと思わせる選手。今後どのぐらいやれるのか、非常に楽しみだ。

蔵の評価：☆

（２０１５年夏　熊本大会）