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中村 晨(ルーテル学院)投手 190/81 右/右 |
「国吉佑樹(DeNA)みたいな感じなのか?」 その存在こそ知っていたが、実際のところ 中村 晨 という選手を見たことがない。そこで今回も、投げている動画は見つけたので、伝え聞いている情報と合わせて、フォームを分析してみたい。 (投球内容) 中学までは捕手をしていたという話だが、2年秋からベンチ入り。3年春から主力投手として、存在感を示した。190センチという長身から投げ下ろす角度のある速球が武器で、球速は135キロ前後~MAXで140キロ強ぐらい。他にカーブやスライダーなどを織り交ぜる、まさに素材型といった感じか。なんとなく、高校時代の国吉と、よく似ているところがある。 牽制やフィールディングの動きもよく、190センチの長身とは思えない俊敏さを兼ね備える。ボディーバランスにも優れ、身体の能力はかなり高そう。投げ終わった後の動作が雑なので、何処まで意識の高さや、プレーに繊細さがあるのかには疑問が残る。 この夏の初戦の成績は、 5回2/3 4安打 5四死球 4奪三振 1失点 それほど強豪校とも思えない相手から、結構ヒットを打たれたり、イニング数並の四死球を出しているなど、数字の上からも実戦派ではないことは伺い知ることができる。 (投球フォーム) しかしこれだけではあまりに情報不足なので、実際のフォームを分析して考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、突っ立ち気味の外人投げ。そのためお尻は一塁側には落ちず、体を捻り出すスペースは確保できていない。すなわちカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球には適さいない投げ方。 長い足を前にグイッと伸ばすなどして、着地のタイミングは遅らせることができている。そのため体を捻り出す時間が確保できており、カーブやフォークといった球種で無ければ、将来的にも球種を増やしピッチングの幅を広げてゆくことは充分可能だろう。 <ボールの支配> ☆☆ グラブが内に抱えきれず、後ろに解けてしまっている。そのため両サイドの投げ分けも、安定していないのではないのだろうか?また足の甲の押し付けも浮きがちに見えるので、力を入れて投げるとボールが上吊る可能性が高い。「球持ち」自体は良く見えるので、それによってを何処までボールを制御できているか? <故障のリスク> ☆☆☆ お尻を落とせないフォームではあるが、フォークがあるという話は訊いたことがない。カーブを、どの程度の頻度で投げているかがポイントだが、どうだろうか? 腕の送り出しには角度があるが、それほど無理に投げ下ろしている感じはしない。そういった意味では、肩への負担も少ないのでは? テイクバックした時に、前の肩と後ろの肩を結ぶラインよりも、肘が下がらないように気をつけたい。というのは、少々ボールを押し出しているようにも見えるからだ。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 「着地」までの粘りも適度に作れ、体の「開き」も抑えられている。そのため、コースさえ間違わなければ痛手は食らい難いはず。更に「球持ち」もよく、なかなかボールが出てこない。それに加えボールにも角度があり、打者としては厄介なはず。 振り下ろした腕は身体に絡み、速球と変化球の見極め困難。しいて言えば、ボールに充分体重が乗せられておらず、打者の手元まで生きた球が行かないという部分が、気になる材料だろうか。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を残すが後の部分はしっかりできている。 怪我へのリスクも少なそうなのは好い部分だが、コントロールを司る動作に不安が残る。 (最後に) ただデカイだけでなく、打ち難い実戦的なフォームをしているのは強味。しかしコントロールに課題があるのと、体重移動にも問題があり、球質という点ではどうだろうか? また意識という部分で心配される部分もあり、どこまで忍耐強く厳しいプロの練習について行けるのか?また、自らを鍛えあげ向上しようとする意識があるのかには不安が残る。 しかしこれだけの体格でボディーバンスにも優れるなど、素材としては中々面白そう。ソフトバンクの指導・環境で、何処まで化けるのか期待して見守りたい。 (2015年夏 熊本大会) |