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藤田 航生(西武)投手のルーキー回顧へ







 藤田 航生(弘前工業3年)投手  175/66 左/左





                          「結構面白い」





 柔らかい身のこなしの正統派左腕で、ぜひ一度生でどんなものだったか見てみたかった 藤田 航生 。2年生の時の投球と、3年生の時のニュースの映像を確認しただけだが、なかなか面白そうな素材だった。


(投球内容)

 リリーフでガンガン勢いで押すというよりは、自分の間を大事にしつつピッチングを組み立てる先発タイプの投手という感じがします。

ストレート 135キロ前後~140キロぐらい

 2年生の時の映像を見ると、常時130~力を入れた時で135キロ前後という感じでした。ボール球威よりも、キレで勝負するタイプ。両コーナーへの投げ分けは安定していますが、球威がない分甘く入ると長打を浴びやすい印象があります。しかし3年夏の映像を見ると、高めの速球で空振りを誘えるような勢いが出てきました。恐らく力を入れれば、140キロ前後は連発できるぐらいにはなっていたのでしょう。MAXでも、143キロまで到達したと言われています。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ

 独特の左腕らしい大きな曲がりをするカーブが特徴で、プロ入りはこの球があったからだと言われています。更にスライダー・チェンジアップなどがあります。どの球も悪くないのですが、コンビネーションで打ち取る総合力タイプかと。このカーブが一つ、投球の大きなアクセントとなりそうです。

その他

 それほど鋭い牽制は見られず、走者を威嚇するというよりも、一息入れるための役割が。クィックも1.25~1.30と、左腕といえど、クィックは遅い部類。今年の夏の映像をみても、それほどクィックは鋭くなっていません。フィールディングの動き、反応などはまずまず。

(投球のまとめ)

 コントロールも安定している感じで、マウンド捌きも悪くありません。特に最終学年になり、上半身と腕の振りが鋭くなり、ボールにも勢いが増しました。下級生までの好投手タイプから、一皮むけた印象を受けます。まだまだプロとなると、球威・球速は物足りませんが、コントロール・センスも良いだけに、更にパワーアップが図れるようだと、意外に拾いものという指名になっても不思議ではありません。





(投球フォーム)

 いかんせん情報量が少ないので、フォーム分析をすることで、この選手の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻を三塁側にしっかり落とせるフォーム。したがって体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球を投げても無理がありません。

 それほど「着地」までの粘りは感じられませんが、体を捻り出す時間は平均的でしょうか。もっと粘りが出てくると、勢いだけでなく嫌らしさもフォームに出てきて、変化球の曲がり・キレも良くなりピッチングの幅を広げられそう。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブの抱えが少し後ろに解けそうなのが気になりますが、その辺が甘く入る要因になっているかもしれません。足の甲での地面の押し付けはできているようで、ボールはそれほど上吊らないように見えます。指先の感覚もよく、四死球で自滅するような粗っぽさはありません。もう少しグラブがキッチリ抱えられると、コントロールの狂いも少なくなるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻はしっかり落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても肘への負担は少ないはず。

 しかし腕の角度を付けて投げるので、肩への負担は大きいはず。しかし彼の場合、カーブの曲がりが生命線なので、この腕の振りは諸刃の剣といった感じはします。故障を恐れて腕を下げてしまうと、彼の売りであるカーブのキレを損なう危険性があるわけで。それならば体のケアに注意して、このフォームと上手く付き合ってゆくべきではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど苦にはならないフォームかも。それでも体の「開き」は抑えられているので、コントロールを間違わなければ痛手は喰らわないのではないのでしょうか。

 長い腕が最後までしっかり身体に絡んで、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せは昨年までイマイチだったのですが、最終学年になり地面を蹴り上げられるように体重を乗せられるようになっていました。そのため打者の手元まで、生きた勢いのある球が投げられるようになっています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、「開き」や「体重移動」もよくなり、「着地」「球持ち」も平均レベルで大きな欠点はありません。

 グラブの抱えの甘さはありますが、それほど悲観しなくても良さそう。問題は、肩への負担の大きなフォームが、将来的に故障につながらないかが心配なことでしょうか。しかし前にも書いたように、カーブの曲がりが生命線の投手だけに、これをいじると持ち味が損なわれてしまうリスクがあるので、上手く付き合ってゆくしかないでしょう。


(最後に)

 一度生でじっくり見てみたかった投手であり、来年はファームでぜひ見てみたい一人。時間はある程度かかると思いますが、掘り出しものとなる可能性を秘めていると思います。上手くパワーアップできれば、将来は一軍戦力への期待も抱ける、そんな好素材ではないのでしょうか。


(2015年夏 青森予選)