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巽 大介(巨人)投手のルーキー回顧へ







 巽 大介(岩倉)投手 183/84 左/左





                      「夏前まで知らなかった」





 この選手のことは、正直言って夏の予選前まで知りませんでした。関係者の間では、知る人ぞ知る存在だったようです。しかし私の情報網には、全く引っかからなかった選手でした。この選手の名前をようやく目にしたのは、夏の大会直前号「報知高校野球」の東東京のイチ推し選手にあげられていたから。しかしそれだけで、夏の大会の観戦予定に優先的に組み入れることはできません。敗れた時に、もう少し勝ち上がってくれれば確認できたのにという思いはありましたが、情報にかからなかったのですから、致し方なかったというのが当時の感想でした。大会が終わってから、良い選手だったという情報が漏れ始めます。


(投球内容)

 幸いにして、今年春の動画があったので、それを参考にわかる範囲で感想を。恵まれた体格から、非常に腕の振りの良いサウスポーという感じがします。なるほど、プロのスカウトが飛びつくのも頷けます。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台前半ぐらいか

 夏の予選の2試合では、MAX140・141キロだったとの記録が。球筋の良い、勢いと球威も感じられる力のある球を投げています。しかし知り合いのスカウトなどによると、コントロールがという言葉が即答で帰ってきたように、まだまだアバウトな投手であることは間違いないようです。確かにストレートには、魅力を感じさせるものは確かにあります。

変化球 スライダー

 動画を観る限り、縦・横二種類のスライダーを使い分けているように見えます。横滑りするカウントを稼ぐ球と、低めに切れ込む空振りを誘えるスライダー。想像以上に、スライダーのキレが良いのも印象的。けして、ストレートだけの投手ではないとの印象を受けました。

その他

 走者を威嚇するような、鋭い牽制は観られません。あくまでも、間を一息入れるための牽制といった感じ。クィックも、1.20~1.25秒ぐらいと、けして素早くはありません。この辺は、走者が常に見える左投手故に、それほど鋭いクィックを磨いていないことがわかります。左投手の多くは、右投手よりもクィックが遅い選手が多い傾向にあり、彼もその例外ではありません。

(投球のまとめ)

 動画を観る限りは、四死球で自滅するとか、そういった不安定さは感じませんでした。また変化球も、思った以上に使える球を持っているとの印象。

 まだまだ本当のコントロール、精神面の不安定さも感じられますが、この辺は高校生の好素材である以上、多めにみられる部分ではないのでしょうか。逆にこれほどの素材が、東京にいながらこれまで浮上して来なかったのが不思議です。自分自身の、情報網の甘さ、活動の未熟さを実感させられました。





(投球フォーム)

 動画の方は、1イニングあまりの僅かなもの。それだけにフォームを分析して、この選手の将来像を模索してみます。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻を三塁側に落とせるフォームではありません。すなわち身体を捻りだして投げる、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球のには適さないことがわかります。

 しかし「着地」までの前の逃しが上手く、身体を捻り出す時間は確保できています。そのためカーブやフォークといった球種以外ならば、曲がりが大きな、あるいはキレのある変化球の習得も期待できるでしょう。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブが内に抱えられておらず、両サイドの投げ分けが乱れやすいことがわかります。外に逃げる遠心力を内に抑えていられないので、上体が大きくブレて球筋が安定しないわけです。

 しかしながら、足の甲での地面への押し付けはできているので、ボールは上吊り難い傾向にあります。これにより浮き上がろうとする力を、抑えることができています。「球持ち」もそれほど良くないので、指先に力を伝えて微妙なコントロールをつけるような器用さはなさそう。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻は落とせないフォームですが、カーブやフォークといった球種を投げるわけではないので、肘への負担は気にしなくても。

 むしろ気になるのは、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がったフォームなので、肩への負担が大きいことが予想されます。これまで控え投手だったりと、あまり身体を酷使する機会が少なかったのかもしれません。しかし日頃から、体のケアには人一倍気をつけてもらいたいフォーム。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りも感じられ、打者としては合わせやすいことはなさそう。体の「開き」も、適度に抑えられているようには見えます。

 何より素晴らしいのは、身体に絡むように強く振り下ろされる腕の振り。これだけ振れれば、速球と変化球の見極めも難しく、空振りも誘いやすいはず。またボールへの体重移動もよく、打者の手元まで生きた球が投げられます。その証に、地面を強く蹴り上げることができています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」ならば、「着地」と「体重移動」といった下半身の使い方に光るものがあります。その辺が、ボールの質・勢いに好影響を及ぼします。その一方で「球持ち」に課題があり、細かいコントロールなどに欠けるきらいがあります。

 コントロールを司る動作に関しては、グラブが抱えられず遊んでしまっていること。故障のリスクに関しては、肩への負担が大きいことが不安要素としてあげられます。

(最後に)

 実際に観られたわけではないので評価づけはできませんが、素材としての面白味が感じられるうえ、速球の質・勢いが感じられる貴重な左腕だと言えます。

 確かにコントロールのアバウトさやマウンドでのしぐさを観る限り、まだまだ高校生かなという感じは受けます。しかし当初思っていたよりも良さ気な投手、ぜひ生で観てみたかったなと思わせるものはありました。時間はかかるかもしれませんが、ファームなどでその勇姿を、ぜひ確認したいものです。もし実際に見ていたら、☆ を付けるか付けないかぐらいの評価にはなっていたのではないのでしょうか。


(2015年春 春季大会)