15kp-28
渡辺 健史(福岡・飯塚3年)投手 178/72 左/左 |
「意外に面白いかも」 驚くようなボールがあるわけでもないし、フォームが特に嫌らしいわけでもない。しかしこの投手、ちょっと厄介な投手なのだ。1球1球投げるタイミングを変えたり、同じ球種でも変化を変えてみたりと、実にいろいろなことが瞬時できてしまう頭の良さを感じます。 (投球内容) 非常にオーソドックスフォームで、癖ないサウスポーといった印象を受ける。逆にいえば、一見すると何の変哲もない投手にも見えてくる。 ストレート 常時120キロ台後半~130キロ台中盤ぐらい MAXでは140キロということだが、見ている感じ120キロ台後半~130キロ台中盤ぐらいに見える。元々変化球の割合が多く、ストレートを投げることが少ない珍しいタイプ。そのストレートも、カウントを稼ぐときと勝負どころでは、明らかに勢いが違う。そういった、強弱の付け方も上手い。 コントロールも両サイドにおおよそ散っているのだが、ボール自体の質・球威は物足りなく、甘く入ると簡単に打ち返されてしまう。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ 大きなカーブとのコンビネーションで、それに小さく横滑りするスライダー、チェンジアップなどを織り交ぜてくる。スライダーも、カウント稼ぐ小さなものと、勝負どころでは低めのボールゾーンに落ちてゆく二種類のスライダーを使いわけている。 この低め切れこむスライダーの曲がりはよく、これを意図的にボールゾーンに投げ込めるのであれば、面白い球になりそう。 その他 クィックは、使うときと使わない時とまちまち。早ければ1.05秒前後~遅い時は1.5秒ぐらいかけて投げるなど、打者のタイミングをフォームで変えているのがわかります。牽制はそれほど鋭くありませんが、フィールディングの動きの良さは目立ちます。 とても器用で、野球センスに優れたタイプなのではないのでしょうか。 (投球のまとめ) 普通に見ていたら、とても高校からプロに入るような投手には見えません。しかしこの投手、非常に瞬時にいろいろなことに切り替える頭の良さと器用さがあります。そこにスカウトが、活路を見出したのではないのでしょうか。 問題は、そういった小手先の変化で、圧倒的な打力を持つプロの打者を抑えられるのかということ。また今のままでは当然苦しいので、今後上積みが見込めるのかという問題があります。こればっかりは、実際プロで鍛えてみないとわかりません。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆☆ 引き上げた足を高い位置で伸ばしているわけではありませんが、適度に三塁方向(左投手の場合は)には落ちています。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化にも無理はありません。 着地までの粘りも悪くなく、身体を捻り出す時間も確保。変化球の曲がりも大きく、キレのある球を習得できる下地があります。現に速球よりも、変化球に信頼のあるピッチング。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブはしっかり内に抱えられているわけではないのですが、最後まで体の近くにあります。そのため、適度に両サイドには散らすことができます。足の甲では地面を押し付けられており、低めに集められるはず。しかしまだ「球持ち」が浅く、ボールを充分には押し込められていません。この辺がもう少し良くなって来ると、低めに安定して投げられるようになるのではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆ お尻は落とせており、カーブやフォークを投げても無理はありません。特にカーブピッチャーなので、この辺は大切な要素。ただ今年に入り、肘を痛めていたそうです。 腕の送り出しはかなり角度をつけており、肩への負担が大きいのが気になります。カーブを曲げようという意識が強いのか? 将来的に大丈夫なのかは気になります。それほど力投派ではないので、消耗は激しくないとは思うのですが。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは悪くなく、オーソドックスなフォームですが合わせやすくはないはず。体の「開き」も我慢できており、甘く入らなければ痛打は喰らい難いでしょう。 投げ終わったあと、それほど身体に強く腕が絡んできません。またボールへの体重の乗せも不十分で、乗り切る前にリリースを迎えてしまっているところは改善ポイント。その辺が、打者の手元まで生きた球が行かない要因かもしれません。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に課題があり、この辺が球質に大きな影響を及ばしていると考えられます。「着地」や「開き」は悪くないので、合わされやすいということはないでしょう。 コントロールを司る動作はそれなりですが、腕の送り出しに無理があるところが故障への不安として残ります。 (最後に) 明らかにボールだけ見ていたら、何故指名されたかわからないタイプでしょう。しかし投げるタイミングを変えたり、ボールの曲がりを変えたり、ストレートの強弱をつけたりと、実に様々なことをやって打者の目先を変えることができています。 もしこの投球で、スピードや球質にも変化が出てきたら、凄い投手になれるかもしれません。現状「旬」とは言えませんが、育成指名なら、アリじゃないかと思わせてくれる左腕でした。こういった投手が、プロでどんな活躍を見せるのか、個人的には大変興味があります。 (2,015年夏 福岡大会) |