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成田 翔(ロッテ)投手のルーキー回顧へ






成田 翔(秋田商3年)投手 168/68 左/左 
 




                    「良い投手とは褒めたけれど」





 夏の秋田予選の模様を観て、成田 翔 は良い投手だとツィッターなどでも褒めていた。しかし高校からプロに行く投手かと言われれば、私には疑問が残る。プロ志望届けを提出した彼の、何処に疑問が残るのか考えてみた。


(投球内容)

 いまどき珍しく、足のカカトをグイッと地面から引き上げて投げるオールドタイプのフォーム。168センチの上背もこうすることで5センチぐらい大きく魅せることができるし、腕も角度よく振り下ろすので、上背の無さはそれほど感じさせないのではないのだろうか。

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ

 上背はないもののビシッと勢いのある球を投げ込むことができ、多くの三振が奪えるタイプのストレート。まぁ現状は、球威よりもキレで勝負するタイプだと言えるのではないのだろうか。ただし上下動の激しいフォームであり、意外にコントロールはアバウト。四死球を出すことは少ないものの、それほど細かいコントロールはない。

変化球 スライダ・カーブなど

 投球のほとんどは、曲がりながら沈むスラーブのようなスライダー。緩いカーブやチェンジアップ系のボールはあるものの、投球の中ではほとんど見られない。このスライダーをストライクゾーンに決めて来る時と、低めのボールゾーンに逃がして振らせる時があり、この使い分けで投球を組み立てている。非常に曲がりの大きな変化球なので、始めて対戦した高校生は苦労する。

その他

 牽制は余計な動きも多く、左投手としては上手くない。しかしその分しっかり走者に対し目配せをしたり、クィックが1.00秒~1.05秒で投げ込む高速クィックで走者の進塁を許さない。

 時々長くボールを持つことで、走者を焦らしスタートを切らせないなど、そういったマウンド捌きの上手さが感じられる。

(投球のまとめ)

 元々マウンド捌きに優れた好投手が、徐々にスピードアップしていった感じの投手。そのためピッチングは、なかなか上手い。コントロールも細かいコントロールはないものの、ポンポンとストライクを先行させ有利な状況を作るのがうまい。

 ただしすでに、もうほぼ出来上がった投手との印象が強く、今後どのぐらいの伸びしろが残されているのかには疑問が残る。まだプロに混ぜると球威・球速が物足りないだけに、何処までパワーアップできるのかが今後の課題。その余地が残されているのかという不安は、体格の無さや投球の完成度からも疑問が残る。肩が固まる20歳ぐらいまでは、まだまだ良くなる可能性は秘めているが、それを確認してからでもプロ入りは遅くはないのではないのだろうか。






(投球フォーム)

 今後どのぐらい伸びしろが残されているのか、フォームの観点からも考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面の方に向け、しっかりピンとも伸ばさないので、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落とせません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような変化球を投げるのには無理があります。

 それでも「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間はそれなり。そこでカーブやフォーク以外の球種を磨くことで、ピッチングの幅を広げて行くことはできるかもしれません。現状すでに、良いスライダーを持っていることは大いなる強味では?


<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲は地面から浮いてしまっているので、ボールが上吊りやすい部分があります。それを腕を上から角度よく叩くことで、なんとかボールが上吊るのを抑えている感じ。上下動の激しいフォームなだけに、日によって制球のデキにバラつきがあるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻は落とせないフォームですが、カーブやフォークといった球種を投げないので、肘への負担は心配なし。

 しかし腕の送り出しには角度をつけて、かなり負担のかかる投げ方なのは気になります。将来的に、肩を痛めなければ良いのですが。


<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪くなく体の「開き」も隠れており、打者からすると突然ボールが見えてきてタイミングは取りづらそう。

 しかし手足の短い体型のせいか? 振り下ろした腕が身体に絡んできません。それでも打者の空振りは誘えているので、それほど悲観しなくても良いのではないのでしょうか。

 ボールへの体重の乗せも、足の甲が地面から浮いてしまっているので、グッと前に乗ってくる感じは致しません。そういった意味では、今のフォームのままだと今後も球威の向上は厳しいのではないのでしょうか。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「体重移動」がやや物足りません。

 足の甲が浮いてしまうことでのボールの上吊りが不安なのと、腕の角度をつけすぎていることからの肩への故障が心配にはなります。



(最後に)

 夏の甲子園・龍谷戦では、16奪三振を奪ったように、確かに良い投手ではありました。しかし投手としての今後の伸びしろ、粗さなどを考えると、もう三年ぐらいは社会人あたりで様子を見てからの方がリスクは生じません。この辺が、結果の求められるプロの世界に飛び込むことで、どうでるかでしょうね。

 しかし今後アマ球界に残っても、よほどの実績を残さない限りは、ここまで注目される機会はないでしょう。そういった意味では、人生で一番の売り時なのかもしれません。そのため高い評価は厳しいと思いますが、左投手ということで指名して来る球団があっても不思議ではありません。しかし私は現時点では確信が持てないので、指名リストに入れるかと言われれば、今はNO.です。彼の旬は、彼が本物ならば3,4年後に訪れるのではないかと思っているので。個人的には、それまではプロ入りは待った方が良いのではないかと思っています。



(2015年U-18ワールドカップ)