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綾部 翔(DeNA)投手のルーキー回顧へ







綾部 翔(茨城・霞ヶ浦)投手 187/83 右/右 





                       「爆発前の沈黙」





 現在の 綾部 翔 は、凄い球を投げそうに見えて、まだそれほど驚くほどのボールは投げていない。そんな才能が爆発する前の静けさのような選手、それがこの 綾部 翔 という男。一体この男が才能を爆発させたら、どのぐらいの投手に育つのか? 今から本当に楽しみになる。


(投球内容)

 187/83 という恵まれた体格でありながら、ワインドアップで振りかぶって投げるので、打席に入る打者には相当大きく見えるだろう。

ストレート 130キロ台後半~MAX142キロ

 現在は、ボールが手元でグ~ンと伸びて来るとか、ピュッとキレて差し込まれるとか、そういった優れた球質ではありません。現状この体なら、もっと凄い球を投げてくるだろうと思わせても、ピンチでもギアが変わることはなく、安定して130キロ台後半~140キロ台前半を刻んで来る。

 コースの投げ分けもアバウトで、ストライクゾーンの枠の中に集めて来るという単純なもの。さすがに6月に関東一との練習試合で見たときには、予選で負けてしまうのではないかと思っていました。そういった全国レベルの、洗練された投球とは無縁です。

変化球 縦横のスライダー・チェンジアップ

 現状は、コースの投げ分けよりも、ボールの変化・スピードの変化で相手を仕留めるタイプ。小さく横滑りするスライダーでカウントを整え、チェンジアップで目先変えつつ、縦のスライダーで仕留めるといった配球。将来的には、もっとこの縦のスライダーに磨きがかかることを期待します。今の時点では速球も含めて、打者を仕留めきるほどの絶対的なボールはありません。

その他

 クィックは、1.15秒前後と平均的。牽制も一息「間」を入れるために軽く投げたり、走者を威嚇するために鋭いものを使ったりと、使いわけてきます。

(投球のまとめ)

 ランナーを背負ってから、ボールを長く持ってなかなか投げないなど、走者や打者を焦らす意識ha持てており、ただ投げているだけのようにに見えますが、必ずしもそうだとは言い切れません。

 現状できることは限られており、あまりレベルの高いところでは揉まれていないなぁというのが率直な感想。しかし不器用な素材型というよりは、まだそれをやっていないだけで、教わればそれを吸収して行ける可能性は感じます。まだまだこれから投球を膨らめて行ける、素材としての奥行きを秘めています。そのため、けしてセンスが悪い選手ではないと思うのです。


(投球フォーム)

彼の将来性がどんなものなのか? フォームの観点から考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足はは地面に向けて伸ばされており、お尻は一塁側には落ちません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適しません。

 しかしながら、「着地」までの足の逃がし方が上手いのが特徴。そのため、体を捻り出す時間は充分だと言えます。将来的に、カーブやフォークといった球種以外ならば、好い変化球を身につけられる下地があります。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。しかし実際は、非常にアバウトなのが気になります。足の甲でも地面を押し付けられていて、低めにボールが集まりやすいのに。しかしこれも、現状はそれほど低めには集まりません。「球持ち」も好いように見えますが、細かいコントロールがついていないところを見ると、指先の感覚はよろしくないということになってしまいます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせていませんが、カーブやフォークといった球種もほとんど見られないので、肘への負担は少なそう。

 腕の角度がありますが、それほど送り出しに問題はなさそうなので、大きな負担にはならないのではないかと。素晴らしいフィッシュで投げ切っているので、登板過多になると少し心配ではあるのですが。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りは好いので、打者としては合わせやすくはないでしょう。体の「開き」は平均的なのですが、ボールに角度もあり、甘くても打ち損じる確率は高いのではないのでしょうか。

 素晴らしいのは、振り下ろした腕が身体に絡むぐらい振れていること。これによって、速球と変化球の見極めは困難。また投げ終わったあとの地面の蹴り上げが素晴らしく、下半身の力がフィニッシュまで存分に伝えきっていることがわかります。このフィニッシュの素晴らしさは、今年の候補の中でも屈指ではないかと。それだけでも、この選手の高い将来性が伺えます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」が素晴らしい。「球持ち」も前で放せているように見えますし、もう少し「開き」が抑えられるようになると申し分ありません。

 故障のリスクは、真上から投げ込んでくるので肩への負担がどうなのかな?という心配は残りますが、フォームを治すほどではないでしょう。コントロールを司る動作は抜群の割に、コントロールがアバウトなのは不思議ですが、そのへんも体ができてくれば安定してくるのではないのでしょうか。

(最後に)

 本格化するのには4,5年かかるかもしれませんが、今の姿から想像できないぐらい大化けするかもしれない。そんな期待を抱きたくなる、好素材ではないかと。その素材だけでなく野球センス・取り組む姿勢なども、悪い選手ではないだけに、大いに期待できるでしょう。ドラフトでは、4,5位ぐらいの指名になると思いますが、その順位以上に大きなリターンを期待したくなる選手でした。


蔵の評価:
☆☆


(2015年夏 甲子園)