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原 嵩(ロッテ)投手のルーキー回顧へ








 原 嵩(専大松戸)投手 185/78 右/右





                    「指先の感覚が悪い」





 この選手を見ていると、普段はストライクゾーンの外に散ってカウントが取れている。しかし急に四球を出してみたりと、どうもリリースポイントが掴めていないような気がしてならない。そのため本当にストライクが欲しい時に取れない、指先の感覚の悪さが目立ってしまう。


(投球内容)

 セットポジションから足を引き上げて、一度地面に着きそうなところまで降ろしてから再びあげて投げ込んで来る。千葉大会では指摘されなかったが、甲子園では二段モーションの注意もうけていた。

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ

 特に際立って空振りを誘えるような伸びやキレは感じられないが、普段はコントロール重視でコースに散らせてきます。しかし勝負どころでは、力を入れて140キロ台を記録し、たまに綺麗に指にかかった時のボールには、素晴らしいものがあります。

 こういったボールを安定して投げられるようになると、この選手のイメージは大きく変わることでしょう。ただ本当の制球力がないので、よりストライクゾーンが厳しくなるプロの世界では、コントロールに苦しみ、自分を見失う危険性も感じます。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど

 時々緩いカーブやチェンジアップも織り交ぜてきますが、投球の主体は縦・横二種類のスライダー。小さく曲がる横のスライダーは、カウントを整えるために。勝負どころで縦のスライダーに落差があり、この球で空振りを狙います。まだこの縦のスライダーの精度が曖昧なので、絶対的なものがありません。このへんは、今後どんどん良くなってゆくものと予想されます。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいと平均レベル。牽制もそれなりで、刺すような鋭さはありませんが、走者のスタートを鈍らせる牽制の意味合いは持っています。フィールディングは、普段野手として出場していことが多いので、反応・動きとも悪くありません。

(投球のまとめ)

 ツーアウトをとったかと思ったら、突然ストライクが入らなくなったりして四球を出したりするケースが目立ちます。そういった本当のコントロールがなかったり、精神的にあまり強くない選手ではないかと思います。投げっぷりが好いタイプ・悪いタイプで言えば、悪いタイプの選手なのでしょう。

 しかし本当にハマった時のボールは素晴らしいので、そこに可能性を見出す素材 だということ。もし大成するとするならば、投球センスの悪さ・未熟さを、スピード・力で圧倒できるまでに成長した時ではないのでしょうか。そういった投手に育つ可能性は、秘めていると言えます。ですからプロ入り後は、まず投手としての可能性を模索し、それでも無理そうならば野手にコンバートされることが予想されます。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆

 一度引き上げた足を地面に着きそうなぐらいまで下ろし、そこからもう一度引き上げますが、ピンと伸ばすのは地面に向けて。そのためお尻の一塁側への落としは甘く、カーブで緩急をつけたり、フォークのような球種には適しません。

 また「着地」までの粘りはもそれほどではなく、身体をひねり出す時間も充分とは言えません。だから鋭い曲がりの変化球とか、曲がりの大きな変化球は望みづらいのですが、彼の場合上手く縦のスライダーはキレているので、それほど悲観しなくても好いのかもしれません(まぁ体重移動の観点では気になりますが)。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の押し付けは、一度地面から浮いてから、押し付けるので、その点でボールが低めに押し込めていない可能性を感じます。「球持ち」自体は悪いように見えませんが、指先の根本的な感覚に疑問を持ちます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブはそれほど使いませんし、フォークを投げることはありません。現状は、肘への負担には影響なさそう。

 腕の角度はありますが、送り出しに無理は感じません。その点でも肩への負担は少なそうですし、それほど力投派ではないので、疲労も溜まり難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りに欠け、合わせやすいのが気になります。さらに体の「開き」も早く、コースを突いた球でも踏み込まれて打たれてしまう可能性が高まります。

 腕の振りは身体に絡んできており、強く振れるので速球と変化球の見極めは困難。しかしボールへの体重の乗せが上手くゆかず、まだ下半身が上手く使えていません。この辺が、上手くボールにウエートを乗せられるようになると、見違えるようなボールを投げられるようになりそう。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外の部分に課題を抱えています。彼が、素材型と言われる所以は、このフォームを見ていてもわかります。

 しかし故障のリスクが少ない点は、この投手が鍛えがいのある素材だということ。足の甲の押し付けができるぐらい、下半身が使えるようになると、面白いのではないのでしょうか。

(最後に)

 投手としてのセンス・指先の感覚の良さで高く評価した先輩の 上沢 直之(日ハム)とは対照的に、こちらは指先の感覚の悪さ・センスには欠けるけれど、ポテンシャルの高さ・将来性で勝負するタイプ。

 ただこの選手、不器用な選手ではある反面野球に対する取り組みには妥協がなく、常に頑張り過ぎてしまうぐらいの選手です。そういった意味では、ストイックに自己向上が期待できる選手であり、プロ入り後見違えるような素材に、自らを磨き上げてくる可能性も感じさせます。

 そう現時点では高い評価はできませんが、ドラフト会議で5位前後あたりで指名できれば、面白いのではないのでしょうか。好い部分・悪い部分、どちらが勝るかの予想は難しいのですが、リスキーだけれども抱きたくなる好素材でもあり、野球人としてもナイスガイだと評価します。


蔵の評価:
☆☆


(2015年夏 甲子園)
 










 打者としての能力の方を買います。こちらは甘い球をキッチリ叩けるタイプであり、足も想像以上に速い。投手としてのポテンシャルの高さが、そのまま野手としての能力の高さにつながっています。捉えた打球は強烈ですし、投手だからという負担を考えないで純粋に見た場合、渡辺より現時点では能力は高いのではないかとさえ思います。千葉の知り合いによれば、原は投手よりも野手の才能を下級生の時から評価しているとの話しで、なるほどなと思える内容でした。

今日は全く登板の気配がありませんでしたが、明日はシード校の松戸国際戦。果たして登板の機会があるのか、注目したいと思います。この選手は、けして意識の低い選手ではありません。

(2015年 春季大会)