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小澤 怜史(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







 小澤 怜史(静岡・日大三島)投手 180/78 右/左





                   「ワンランク球威を増した」





 今年の春季大会に見た時は、指名は確実だろうけれど上位指名というほどの魅力は正直感じなかった。しかしそれから僅かな間に、明らかに球威・球速が増してきた。高校生活最後の試合となった、夏の静岡高校戦。ボール球ではあったが、MAX152キロにまで到達した。

(投球内容)

 足をゆっくりと軽く引き上げ、そろ~りと着地する。そのボールとは裏腹に、投球フォームは大人しい。

ストレート 常時145キロ前後~MAX152キロ

 春に比べると、ミットに収まる音もズシリと重くなっている。空振りを誘うような手元までの伸びやキレはなく、バットを押し返すような球威と勢いがあるボール。春先よりも、1球1球の球筋も安定してきており、コントールも良くなっていたのではないのだろうか。

変化球 スライダー・フォーク・カーブ

 スライダーは130キロ台中盤は出ており、むしろ曲がりも小さくカットボールに見える。その他左打者には、チェンジアップだかフォームを結構使って来るが、それほど空振りを誘うような球ではない。余裕が出てくると、カーブのような緩い球も投げてくる。

 変化球では、それほど空振りを誘うほどの威力はない。あくまでも、よりストレートを活かすための球だといえよう。フォークはまだ発展途上だが、将来的にはこの球が武器になってくるのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまず。牽制は、春よりも鋭い速球を魅せるようになってきた。昨年までは9番を付けて守っていたのもあり、フィールディングの動きの良さも目立っていた。

(投球のまとめ)

 春よりも、球威・球速が増してきただけでなく、球筋も安定しコントロールが向上。それでもまだまだ甘い球も多く、痛打される場面が目立つ。現時点では、勝てる投手かと言われればNO.。問題はここから、いかに実戦で活躍できる投球を身につけて行けるか。このままだと、ただの球の速い奴で終わってしまう。


(投球フォーム)

では実戦的とは何なのか? 投球フォームを分析する中で考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻の一塁側への落としは甘め。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化にはあまり適さない。

 「着地」までは、そろ~と地面を探るような感じで足をおろす。その粘りは平均的で、体を捻り出すスペースも並ぐらい。いまいち武器となる変化球が習得できていないのは、この辺の動作が影響しているのかも。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは内にしっかり抱えられているというよりは、結果的に体の近くにあるという感じ。それでも両サイドへの投げ分けは、安定しやすいか。特に左打者に対しての制球が、ややアバウトな印象。

 足の甲での地面への押し付けはできており、それほどボールは高めに抜けない。「球持ち」も悪くない感じだが、それほど指先の感覚は優れてなさそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻が落とせず、体を捻り出すスペースが確保できていない。その割にカーブやフォークを結構使って来るので、肘への負担は気になるところ。

 逆に腕の送り出しは悪くないので、肩への負担は少ないはず。それほど力投派ではないものの、これだけのボールを連発するだけに、体には相当な負荷はかかっているはず。日頃から、体の手入れには注意したい。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは並で、打者としては特に打ちやすいわけでも合わせ難いわけでもないだろう。体の「開き」も平均的で、コントロールを間違わなければといった感じ。

 腕は強く振られ、投げ終わったあと身体に絡んで来る。そのため速球と変化球の見極めはつけ難い。ボールへの体重の乗せはられているように見えるが、投げ終わったあとの地面蹴り上げが横に逃げてしまっていて、最後までしっかり前に力を伝えられていない。これは、松坂大輔などにも観られた傾向。

 結果的にどうなるかというと、球威のある球は投げられるものの、打者の手元まで活きた球が行き難い。打者の空振りを誘うようなグ~ンと伸びてくるような球が投げられないことを意味している。

(投球のまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でみると、「体重移動」に課題を抱えていることがわかる。それ以外の部分も並で、特に特筆すべき部分はない。

 コントロールを司る動作は悪く無いが、肘の故障の可能性があり、お尻をもう少し落とせるようになると良いのだが。


(最後に)

 春に比べると、ボールの球威・勢いは確実に成長。更に球筋も安定し、1つ1つのボールが明確になってきた。それでも静高あたりの全国レベルの打線相手だと、抑えきるだけの技術が身についていない。当然これは、打力が圧倒するプロの打者相手になれば、よりその傾向はハッキリと出てくるはず。

 コントロールの甘さ、変化球の決め手、実績的なフォーム、マウンド捌きなど、まだまだ磨かなければいけない部分は多い。それでも今年の高校生右腕の中では、全国でも指折りの存在だったのは間違いない。最後の夏の投球を見れば、上位指名されたのも頷ける。


蔵の評価:
☆☆☆ (中位指名前後なら)


(2015年夏 静岡大会) 









小沢 怜史(静岡・日大三島)投手 180/71 右/左 
 




                    「兄とは対照的」





 兄の拓馬(日大三島-日大国際関係学部)投手は、ゴロンとした体型から理屈抜きにガンガン投げ込んで来る投げっぷりの良さが際立つ力投派。しかし弟の 怜史 の方は、均整の取れた体格から、手探りで投げる慎重なタイプ。二人のピッチングスタイルは、まさに正反対に感じられるほど違う。

(投球内容)

非常にゆったりと、ワインドアップで振りかぶって投げ込んで来る本格派。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤

 まだどうすれば、どのような球がゆくのかつかめていないのか? 非常に一球一球慎重に投げます。そして実際にストレートの球筋はバラつき、コマンドの悪さが気になります。上手く指にかかると、低めに糸を引くような素晴らしい球が決まるのですが、それを続けて投げられるコントロールがありません。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど

 ストレートの制球が不安定なため、カウントを整えるのは、体の近く小さく曲がるスライダーが中心。これに、追い込むとフォークのような縦の変化球に、余裕があれば緩いカーブなどを使ってきます。フォークの精度は発展途上であり、まだまだ信頼できるというほどのものはなく、上手く抜けた時に空振りを奪えるといった程度のもの。しかし将来的には、この球が投球において、大きなウエートを占めてきそう。

その他

 それほど鋭い牽制を入れるわけでもないのですが、クィックは、1.0~1.15秒前後とまずまずで昨夏よりも早くなっています。昨夏は9番を付けて守っていたことも多く、フィールディングの動きの良さは目立っていました。しかし昨夏もそうでしたが、まだまだストライクゾーンに集めるだけで一杯一杯という感じの投手であり、微妙な駆け引きや際どいところを突くような余裕はありません。

(投球のまとめ)

 無理しなくても140キロ前後をコンスタントに投げられ、速い時は140キロ台中盤を越えて来るスピード能力だけで高校生ならばドラフト級だと言えるでしょう。

 しかし総合力や完成度は発展途上であり、まだまだ絶対的な存在ではありません。そういった素材を重視して、指名をして来る球団が出てくるのではないのでしょうか。昨夏までは、ドラフトの有力な候補。しかし今春は、ドラフト指名を意識できるレベルまで引き上がってきました。夏までの更なる成長があれば、ドラフト指名確実な投手への期待が高まります。

(投球フォーム)

昨夏もフォーム分析をしているので、今回は気になった部分のみを。

 昨夏気になった「開き」の早さは、若干改善され平均的になりつつあります。兄の拓馬もそうだったのですが、足の甲で地面を深く捉えられるのは良いのですが、膝小僧に土が着くまで重心が沈んでしまい、前への体重移動が上手く行っていません。どうしてもここまで深いと、重心が後ろに残りがちで前に体重が乗って行かなくなります。この辺が、打者の手元まで球威のある球が行かない要因なのではないのでしょうか。

(最後に)

 現状は、将来性を買って下位指名ならあるだろうなぁという感じで、まだ投球にピンと来るものがありません。特に投球におけるメリハリがないのと、打者に向かってゆく闘争心みたいなものが伝わってきません。この辺は、兄が素晴らしかったところで、兄の昨夏の投球を思い出して、自分にも取り入れて行って欲しいところ。弟の才能に兄の精神力が加わったら、それこそ上位指名の器だと思います。最後の夏に、一皮むけた彼の姿を観てみたいものです。


蔵の評価:
☆☆


(2015年 春季静岡大会)










小沢 怜史(日大三島2年)投手 180/71 右/左 
 




                  「一番確認したかった選手」





 2015年度最初の個別寸評に選んだのは、小沢 怜史 という投手。兄・拓馬は、2014年度の静岡を代表する速球派だったが、その弟も注目だと静岡の人に訊いて気になっていた。兄は173センチでガッチリとした馬力型だったが、弟は投手体型で、ピュッとキレて来る快速球投手。二人は、いろいろな意味で対照的だと言えるでしょう。

 怜史の方は、夏の東海大翔洋戦で自己最速の148キロをマーク。秋は東海地区まで駒を進めるも、準決勝で静岡高校に破れ、選抜の出場も危うくなっている。いずにしても、2015年度の東海地区を代表する投手の一人だと言えよう。


(投球内容)

非常にゆったりと、静かに入って来る感じのフォーム。

ストレート 常時135~140キロ強ぐらい

 夏の大会の模様を見る限り、常時135~140キロ強ぐらいという印象を受けました。ピュッと手元までキレて来る感じはしますが、ボールそのものにそれほど威圧感は感じません。また両サイドに散っていますが、時々高めに抜けることも少ない感じ。そういった意味では、まだ球筋が暴れます。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク・カットボール

 小さく横滑りするスライダーを武器に、緩いカーブも時々交えます。どうも未完成ですが、フォークのような縦の変化球も試している模様。それにあるか微妙なのですが、速球がスライドすることがあり、カットボールを意図的に使っているかもしれません。

その他

 2年夏の時点では、背番号9をつけて守っていました。その辺のこともあり、フィールディングの動き・反応の良さは目立ちます。牽制はそれほど鋭いものは入れませんが、下手ではありません。クィックは、1.1秒~1.25秒ぐらいと基準(1.2秒以内)は満たしており、それほど問題はなさそう。そういった野球センス・運動神経には優れています。

 ただし投球を見ている限り、それほど投球に抑揚は感じられず淡々と投げている感じがします。また微妙な出し入れをするといったそういった細かい攻めもありません。しいて言えば、ランナーを背負った時にボールを長めに持っており、これを意図的に行っているのかは定かではありませんが。

(投球のまとめ)

 現状は、平均して良い球を投げています。しかし本人の性格なのかもしれませんが、何か内から沸き上がるような強い気持ちが感じられません。その辺が、ボールに凄みが感じられない一つの要因ではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 またストレートの質というよりも、フォームの構造上合わされやすく見えます。その辺のことも考えながら、フォームを観てゆきます。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。すなわち体を捻り出すスペースが確保出来ていないので、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球には適しません。

 「着地」までの粘りもあまり感じられないので、体を捻り出す時間も充分ではないのでは。キレや曲がりの大きな変化球を投げるには、この「着地」までの粘りは重要なポイント。まだまだ武器になる変化球がない一つの要因に、この下半身の粘りの無さに原因がありそう。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブはしっかり抱えられていないものの、結果的には体の近くに留まり外に逃げようとする遠心力を内に抑えることが出来ています。そのため両サイドの投げ分けは、安定しやすいのでしょう。足の甲の地面への押し付けはできているので、ボールを浮き上がろうとする力は抑えられるはず。しかし「球持ち」もよく見えるのですが、まだまだボールを押し込むことができず、上吊る球も少なくありません。この辺はしっかり冬場に下半身や股関節の柔軟性を鍛えれば、もっと低めに球を押し込めるようになるのではないのでしょうか。フォーム土台としては、悪くありません。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブやフォークをそれほど多くは投げないので、肘の心配はなさそうお。振り下ろす腕の送り出しにも、特に無理は感じません。そういった意味では、肩を痛める心配も感じません。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りがあまりないので、打者としては苦になく合わせられる心配があります。まして踏み出した足のつま先が外側に向いており、「開き」の早さを誘発します。体の「開き」が早くなると、球筋がいち早く読まれてしまい、コースを突いたような球でも簡単に打ち返されてしまいます。

 振り下ろした腕は身体に絡むように、速球と変化球の見極めは困難。気になるのは、ボールに上手く体重が乗せられていないせいか、打者の手元までの球威が感じられないということ。下半身の体重移動に、課題を持っています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点見ると、「着地」「開き」「体重移動」に課題があり、けして実戦的とは言えません。そのため速い球を投げたとしても、その効果は薄いと考えます。

 制球を司る動作には優れているので、身体が出来てくればコントロールは安定しそう。故障のリスクもそれほ感じないので、その辺は推せる材料にはなります。

(最後に)

 まだただ投げているだけという感じで、投球の強弱、微妙な駆け引き、気持ちの持って行き方にも課題を感じます。夏までには常時140キロ台を連発できる資質があるだけに、それに確かな技術が加われば、全国の舞台への期待も膨らみます。

 当然春からドラフト候補としてマークできる資質はありますが、指名されるかと言われれば今後の成長次第。一冬越えた成長がどの程度なのか、まずは春季大会にでも足を運びたいですね。いずれにしても今年の静岡のドラフト戦線は、この男の投球を中心に、話が進んでゆくことになりそうです。ぜひ 小沢 怜史 の名前は覚えておいて頂きたい。


(2014年夏 静岡大会)