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横山 楓(オリックス)投手のルーキー回顧へ







横山 楓(24歳・セガサミー)投手 180/83 右/両 (宮崎学園-国学院大出身) 





 「良くなっている」





 宮崎学園時代に寸評を作成した時には、上位級と評価していた 横山 楓 。しかし国学院大に進み、同校でも最終学年で再びドラフト候補として注目されるも、またもプロ入りせずに社会人に進む。セガサミーでは、大学時代よりも明らかにワンランク投手としての総合力を引き上げており、指名を意識できるところまで来ている。


(投球内容)

 国学院時代は、中々上げた足を降ろさないで相手のタイミングを外そうといったフォームでした。そのため、非常にこの投手の試合は長くなるという、テンポの悪さが気になる投球でした。今はそういったところも改善され、小さめなテイクバックから投げ込むことで打ち難さを演出するようになっています。

ストレート 140キロ~140キロ台中盤 ☆☆☆☆ 4.0

 スピードの出にくい ほっともっと神戸 のガンでも、コンスタントに140キロ台を記録し140キロ台中盤まで叩き出していた。そのため他の人のガンでは、150キロを記録していたものもあるという。国学院時代も先発すると140~中盤ぐらいだったものの、それよりも5キロぐらいは速く感じさせる球質。しかも今は、その時よりも安定して5キロ程度本当に速くなってきている。

 キレのある球質のため、打者はわかっていても空振りを誘えます。それも左打者には外角いっぱいに集められる制球力に、右打者には内角中心に攻めてくる。甘く入ると球威型ではないので長打を浴びる心配はあるものの、コースでの投げミスは多くはない。

変化球 スライダー・フォーク? ☆☆☆ 3.0

 一瞬カーブなのかなといった感じの、曲がりながら沈むスライダーを投げ込んできます。高校時代は、もっとキュッと小さく曲がる感じのスライダーを投げていたような記憶があるのですが ・・・ 。他にも軽く沈む、スプリットのようなフォークもあるようです。まだこの縦の変化は見極められてしまうことも多いのですが、精度を高めて行ければ大きな武器になりそうです。

その他

 クィックは1.15秒前後と基準レベルであり、この日は見られなかったが牽制も下手ではなかったはず。ランナーを背負っても、走者にしっかり目配せして落ち着いては投げられていました。

(投球のまとめ)

 元々球速以上に感じさせる球質の良さがあったのですが、今はこれに球速も伴ってきました。テイクバックも小さめで、打者としては見えないところからピュッと出てくる感じで、なかなかタイミングが合わせ難いようには見えます。日本選手権では、死球や不運な当たりで2失点していましたが、しっかり捉えられての失点ではありませんでした。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。しかし、軸足の膝には力みがなく、バランス良く立てている。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けてから深く落としてくるので、お尻の一塁側への落としには甘さが残る。カーブやフォークが投げられないといういことはないと思うが、キレや落差が鈍くなる可能性は秘めている。実際フォークは、見極められることが多い。

 「着地」までの粘りは並ぐらいで、身体を捻り出す時間も平均的。キレや曲がりの大きな変化球の修得は微妙で、武器になる変化球を見出だせるのかが課題になりそうだ。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブ最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両コーナーへの投げ訳はつけやすい。ただし、足の甲での地面の捉えが浮いてしまい、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」が好いことで、ある程度ボールにしっかり力を伝えることで、微妙なコントロールを付けられている。コントロールは、高めに浮きやすいところを注意したい。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としが甘い割に、結構捻り出して投げるフォーク系の球を使ってくる。そのため悲観するほどではないにせよ、窮屈になって肘への負担も考えられる。また腕の送り出しも、ボールを持っている方の肩が上がり、グラブを持っている肩も下がり肩への負担もかかっていそう。リリーフをやることで多少力投派になってきているので、以前よりも故障のリスクは高まったフォームになってきているのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平凡なものの、小さめのテイクバックな上にボールの出どころは隠せている。何より球質が好いので、ボールが見えていても打者は空振りをしてしまうことが多い。

 腕も適度に振れていて勢いがあるので、打者は吊られて空振りを奪いやすい。現状はストレートでは空振りが取れるが、縦の変化球が見極められてしまうことが課題。足の甲で地面を捉えられていはいないが、前にはしっかり体重が移っていっているようには見える。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」にもう少し粘りは欲しいものの、あとの部分は悪くない。足の甲での地面捉えができていないので、ボールが上吊りやすいこと。そして故障のリスクが、多少大きなところと将来的に武器になる変化球が修得できるかなどに不安があり、フォームとしては実戦的だとは言えないだろう。


(最後に)

 それでも、わかっていても中々捉えきれないボールの質を誇り、制球力や変化球にも大きな欠点は見当たらない。思ったほど実戦的なフォームではなかったことが気になるが、ドラフトでは3位前後での指名があっても不思議ではない。今年は、右腕で即戦力を期待できる投手が不足しているだけに、彼に懸かる期待は大きい。ようやく、高校時代に思い描いた未来像に近づいてきた感がある。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 春季リーグ戦) 










横山 楓(宮崎・宮崎学園3年)投手 181/73 右/両 





                      「惚れ惚れする素材」





 少しテイクバックした時の腕の使い方に癖はあるものの、惚れ惚れするような腕の振りから繰り出されるスピンの効いたストレートは、素晴らしい素材だと思います。まだまだ肉体的に発展途上の選手ですが、将来素晴らしい投手に成長するのではないかと予感させる好素材でした。


(投球内容)

マウンド捌きにも筋の良さが感じられ、正統派の本格派という感じがします。

ストレート 135キロ前後~MAX144キロ

 私が見た夏の都城商業戦では、常時135キロ前後ぐらいだったようです。しかしその球速以上に、回転の好いボールが捕手のミットに吸い込まれます。元来は、それなりにコースに集めて来るコントロールもあるのでしょう。しかしこの日は、微妙に収まりの悪いところがありました。5月の宮崎県の招待試合では、あの 高橋純平のいる県岐阜商相手に140キロ台を連発したといいます。またこの夏の緒戦・宮島戦では、MAXで144キロにも到達したと訊いています。まだどんな時でも140キロ台を叩き出せるほどの馬力はないようですが、140キロ台をいつでも投げられるスピード能力はあるようです。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ

 変化球は、打者の近くで小さく鋭くキュッと曲がるスライダーとのコンビネーション。それにチェンジアップ系の縦の変化球と、たまにカーブを織り交ぜる時があります。特に絶対的な武器はありませんが、変化球の精度・質も悪くなく、将来的には好いコンビネーションが期待できるのでは。

その他

 それほど鋭い牽制は観られませんでしたが、動作を見る限り下手ではなさそう。クィックも1.1秒台で投げ込めますし、そういった投球以外の部分にもセンスの良さが感じられます。

(投球のまとめ)

 九州NO.1と言われる、森下 暢仁(大分商)似た、センス型の投手。ただし森下は、なんやかんや言ってコンスタントに140キロ台を刻んできますし、勝負どころでは140キロ台中盤を決勝で刻むなど、少し基礎体力・全体の球速という部分では、現在横山の先を行っている気がします。

 しかし将来的には、その力関係が逆転するぐらいの可能性は、この横山からは感じられます。ファームで2,3年ぐらい漬け込めば、近い将来ローテーションに入って来るのではという期待を抱きます。





(投球フォーム)

投球フォームの観点から、その将来像を考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を最後までピンと伸ばさないので、お尻は一塁側に落とせません。そういった意味では、身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークといった球種を習得するのは厳しいかもしれません。

 また「着地」までの粘りもそれほどではないので、現状は身体を捻り出す時間が充分ではありません。このフォームの構造を考えると、武器になるほどの球種を手に入れるのは厳しいかもしれない。しかし変化球を投げるセンス・活かす術はありそうなので、スライダー・チェンジアップ系のボールを磨くことで、それなりにはなるかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられているので、元来両サイドの投げ分け安定しやすいはず。しかし足の甲で地面が捉えられず浮いてしまっており、浮き上がる上体の力を抑え込めていません。そのため力を入れて投げると、ボールが上吊りコントロールを乱すことが予想されます。「球持ち」自体はよいので、将来的には指先の感覚を生かしたピッチングは期待できそうですが。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻を落とせないフォームですが、カーブやフォークを多く投げる投手ではないので、肘への負担は少なそう。

 気になるのは、腕を真上から送り出してくるので、肩への負担が心配されます。このへんが、将来的にどうでるのかは少し気になります。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは感じないので、打者としてはそれほど苦にならないのでは? しかし体の「開き」自体は抑えられているので、コントロールを間違わなければ痛打は喰らい難いかも。

 素晴らしいのは、腕を強く振れて身体に巻き付いて来ること。これによって、速球と変化球の見極めは困難に。ボールにも適度に体重が乗せられており、球速以上の球質を実現しています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」の粘りに物足りなさを感じますが、あとの部分に大きな課題は感じません。

 足の甲が抑えられていないこと、肩への負担が大きいそうなフォームであることは、若干将来に不安を感じなくもありません。


(最後に)

 惚れ惚れするような投手ですが、フォームを分析すると結構欠点があることがわかりました。また私が生で観戦に行かなかったのは、進学志望だと訊いていたから。しかしプロ志望届けを提出すれば、3位以内で指名されるのではないのでしょうか? そのぐらい素材としての魅力は感じられます。できれば上位指名を条件に、プロ志望届けを提出して欲しいですね。近い将来、プロのローテーションへの期待も抱きたくなるほどの選手です。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2015年夏 宮崎大会)