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吉田 凌(オリックス)投手のルーキー回顧へ







吉田 凌(東海大相模3年)投手 181/70 右/右 
 




                 「春よりは良くなっていたけど」





 春季大会では、体はちっとも大きくなっていないし、下級生の時よりも劣化しているのではないかと書いた 吉田 凌 。そのため進学した方が好いのではないかと評価した。あれから6月に、大分商業との練習試合を生で観戦。さらに夏の神奈川予選、甲子園と彼を見続けてきた。確かに春季大会や6月に見た時よりは、夏の吉田は状態があがっていたのだが・・・。

(投球内容)

結構上下動の激しい、癖のあるフォームをしています。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX140キロ台中盤

 6月ぐらいまでは、常時135キロ前後で140キロに届くか届かないかというぐらいでした。しかし夏の神奈川予選で見たときは、随分とボールの勢い・キレは増していたと思います。元々キレ型の球質なので、打者の空振りは誘いやすい。しかし球威がない分、甘く入ると簡単に打ち返される球威の無さがプロとしては物足りません。ベース板の上を通過するときの球威が、なんとも小笠原に比べると、頼りません。

変化球 縦・横のスライダー・カーブ

 カウントを整えるための横滑りのスライダーと、昨年神奈川大会決勝で20奪三振を奪ったボールゾーンに切れ込む縦のスライダーで空振りを誘います。しかし昨年は、ストレート自体が140キロ~中盤ぐらい出ており、勢いがありました。それゆえに、この縦スラで面白いように空振りが奪えたわけです。しかし今年は、ストレートにそこまでの勢いがなく、多くの縦スラが見極められたり、ファールにされたりと、昨年ほど絶対的なキレがなくなっています。

その他

 牽制はややモーションが大きい感じはしますが、動き自体に鋭さ感じます。ベースカバーに入るのも早く、フィールディングもよく鍛えられています。クィックも、1.05秒前後で投げ込めるなど、投球以外の部分に大きな課題は感じません。

 元々ポンポンとテンポの好いピッチングが持ち味で、ストライクを先行し有利な状況に追い込んでボールになる縦スラを振らすのが持ち味。そういった、心地の好いリズムを作るセンスはあります。

(投球のまとめ)

 春に比べると、だいぶ勢いは取り戻せていたものの、昨夏ほどの速球の勢い・縦スラのキレは感じませんでした。何か大きく成長したという印象は全くなく、下級生からの貯金と実績で注目され続けてきたことは否めません。

 どうして体を大きくすることができなかったのか? 投球の資質を伸ばせなかったのかという疑問が残ります。そして腕を真上から振り下ろす負担の大きなフォームは、どうしても故障とは無縁だとは思えないわけです。その辺が、1年生の時点で149キロを投げていたのにも関わらず、年々パフォーマンスを低下させてきた、最大の要因ではないかと危惧します。





(成績から考える)

甲子園での3試合の成績は

19イニング 20被安打 8四死球 13奪三振 防御率 1.89

神奈川予選でも

19回2/3   9被安打 5四死球 21奪三振 失点1

 まぁこの数字の差は、状態の違いというよりも、相手レベルの差と考えて好いでしょう。甲子園の成績を元に考えてみると

1,被安打はイニングの80%以下 ✕

 19イニングを投げて、被安打は20本とイニングを上回ります。まぁこれは、全国レベルのチーム相手ならば、そうなるよなぁという印象なので、特に驚きはありません。やはり球威の無さ、コントロールのアバウトさが、そのまま被安打の多さにつながっています。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 神奈川予選の時にはそれほど悪くなかった四死球率も、甲子園では42.1%にのぼり、基準であるイニングの1/3以下(33.3%以下)を上回ってしまい、アバウトぶりを露呈してます。やはり打力が上がる甲子園の打者相手には、より慎重に投げてしまった結果ではないのでしょうか。当然、格段にレベルが上がるプロ相手では、よりこの傾向は顕著になります。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ✕

 1イニングあたりの奪三振率は、0.68個と平均レベル。縦スラという魔球が話題になった投手にしては、あまり寂しい数字です。上記にも書きましたが、ストレートの勢いが鈍り、見極められたり、当てられるケースが多かったからでしょう。

(データからわかること)

 登板数が少ないので、防御率は省きました。しかし投球内容のところで書いたとおりの数字に、成績もなっているということ。やはり現状は、ドラフト候補としては物足りません。

(最後に)

 フォーム分析は春季大会の寸評で行ったので省きますが、春よりは良くなったものの、昨夏の状態まで戻すことができなかった。 どうしても下級生の時のインパクトが強く、その貯金でドラフト候補という先入観で観てしまうのですが、他の候補たちと比べると、現状見劣ります。

 それも一時期的に調子を崩しているというものではなく、負担の大きなフォームでの故障への不安、体が一冬大きくなっていないこへの疑問などもあり、私にはどうにも彼を推せる材料が見つかりません。チームメイトの 小笠原 慎之介 が、あれだけ体を大きくできたのに対して。  

 私は、まずは大学に進学し、立て直しを図るべき。そこでさらなるプラス・アルファが望めた時に、プロを意識した方が好いと考えます。今のままでは、同期が大学を卒業する頃にはプロを退団させられているかもしれない。志望届けを提出すれば、何処かしら指名してくれるかもしれませんが、私は焦らず機が熟すのを待つべきだと考えます。したがって、指名リストに彼を入れることはできません。今は、その時が来ることを、静かに待ちたいと思います。


(2015年夏 甲子園)









吉田 凌(東海大相模3年)投手 181/72 右/右 
 




                    「進学じゃないかな」





 一年夏の大会では、MAX149キロを記録し度肝を抜いた 吉田 凌 。しかしその当時から、この選手の未来像は描けないと書いてきた。そして2年夏には、140キロ台中盤と球速は落としたものの、魔球・縦スラを手に入れて三振の山を築いて、新たな可能性を示してくれた。しかし3年春は、体の状態も悪く思い通りのパフォーマンス示せないでいる。今の内容ならばドラフトボーダーレベルでもあるし、プロ志望届けを提出せずに進学を表明するのではないかと思っている。

(投球内容)

 神奈川の春季大会でキャッチボールをする姿を見ていたが、同僚の 小笠原 慎之介(3年)左腕がユニフォームがはちきれそうなほど体が大きくなっているのに比べ、吉田は相変わらず線の細いままなのが気になった。

ストレート 常時135~140キロぐらい

 下級生の時に魅せたようなストレートの勢いは完全に陰を潜め、この春は135~出ても140キロぐらいなのではないのだろうか? それも結構高めのボールゾーンに抜けたりと、球筋が安定しない。それでもストライクゾーンの外に外に散るので、それだけが救いといった感じで全国レベルの打線相手ならば苦になく打ち返してしまうだろう。

変化球 縦・横のスライダー

 曲がりながら落ちるカウントを稼ぐスライダーと、縦にフォークのような落差落ちるスライダーの二種類を使い分けているように見える。それに、緩いカーブがある。更に、ときどきフォークじゃねぇ?と思える縦の変化球もあるが、いずれにしてもスライダーに依存した投球は変わらない。

その他

 牽制はまずまず鋭いものがあるので、走者を牽制することは出来ています。クィックも1.05~1.15秒前後と基準以上であり、そういった投球以外の部分は、さすが名門の選手だけに鍛えられています。

(投球のまとめ)

 細かいコントロールもありますせんし、巧みな投球術があるわけではありません。現状は、ボールの威力でいかに相手を仕留めるかにかかっているわけですが、肝心のストレートが劣化しており、今のボールは高校からプロに入るレベルではありません。

 特にビシッとミットに突き刺さるキレは感じますが、バットを押し返すような球威はなく、高校からプロに入るほどの勢いがありません。せめて昨夏ぐらいのスピードを取り戻せば、指名の可能性もあるとは思いますが・・・。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側には落とせません。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった球種は適しません。

 「着地」までの粘りもいまいちで、体を捻り出す時間も充分ではなく、現状強い腕の振りと角度を生かしてスライダーを武器にしているのも頷けます。その分この曲がりの大きさを生み出すために、負担も大きくなってしまっているのですが。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、ボールは両サイドに散りやすい。足の甲の地面への押し付けは、足のつま先こそ地面を捉えているものの、深く地面を捉えているわけではなさそう。ましてリリーフの押し込みが浅いので、ボールが高めに抜けることも少なくありません。昨夏は、もう少し足の甲での押し付けも深かったような記憶があるのですが・・・。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻は落とせませんが、それほどカーブやフォークなどを投げないので、肘への負担は少なそう。それでもあの縦スラを投げるために、肘への負担がないわけではないのかもしれません。

 しかしそれ以上に気になるのは、完全にグラブを持っている肩は下がり、ボールを握っている肩が極端に上がるフォームのため、ボールの送り出しに無理を感じます。これでは肩への負担が大きく、状態が安定しないのも頷けます。特に縦系の球を多投するので、余計そうなるのでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りはそれほどなく、打者としては苦になる投げ方ではありません。しかし真上から角度をつけて投げてくるので、バットの芯を微妙にズラされる可能性はあります。それでも体の「開き」も平均的で、嫌らしさは感じないのでは?

 腕を強く叩きつけられるので、速球と変化球の見極めは困難。そのため、あれだけの奪三振が奪えるのだと考えられます。しかし踏み出し足が突っ張ってしまい、前に体重がグッと乗ってきません。それゆえ球威・勢いのある球が、打者の手元まで来ないのだと考えられます。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも中途半端であり、けして実戦的なフォームだとは言えないでしょう。

 コントロールを司る動作もそれほどでもないですし、故障のリスクが高いフォームなので、これからもリスキーな素材だと言えます。


(最後に)

 夏までに状態が上がらないようならば、大学で立て直しを図るべきだと考えます。プロに入っても、今のままでは早々姿を消す可能性が高いのでは?

 いずれにしてもこの特殊なフォームは、独特の変化を生み出す反面、体への負担は尋常ではないはず。そのためまさに、諸刃の剣だと言えます。現状の吉田は、ドラフト戦線から大きく後退しているとみて、間違いありません。


蔵の評価:
追跡級!


(2015年 春季神奈川大会)











吉田 凌(東海大相模2年)投手 181/70 右/右 
 




                「なんだかこのまま順調にはいかなそう」





 一年生にして、MAX149キロを記録した時から、私はなにかこの投手の未来像が描けなかった。2年生になって球速は落ちたものの、絶対的な縦のスライダーを習得。投球も、だいぶ実戦的になってきた。しかしそれでも、不思議とこの投手が将来凄い投手になる、そんな予感がして来ないのだ。私自身それが何故かはわからなかったが、この感覚は、同じスーパー1年生として注目された 伊藤 拓郎(帝京-元DeNA)投手の時と似ている。


(投球内容)

ワインドアップからゆったりと振りかぶり、腕を真上から豪快に叩きつけてくる。

ストレート 常時140キロ台~中盤ぐらい

 1年生の頃は、常時140キロ台後半を連発していました。しかしその頃に比べると球速は落ちましたが、ボールの存在感・威力という意味では、むしろ今の方が上ではないのでしょうか。それほど細かいコースの投げ分けなどは出来ませんが、比較的低めに集まることが多いのが特徴。腕を真上から豪快に投げ下ろすので、その球速以上に感じさせる迫力はあります。

変化球 縦・横二種類のスライダー カーブ

 元々カウントを稼ぐスライダーも、曲りながら沈むスライダー。それに地面にスレスレに鋭く切れ込む、フォークのような縦スラと使い分けます。またたまに緩いカーブを投げますが、これは大きな意味を持っていません。しかしフォークボーラーと一緒で、あまりにこの縦スラに依存しすぎて、秋季神奈川大会ではこの球が高めに落ちきらずに入ったところを痛打し、選抜を逃しました。

(投球のまとめ)

 現状の彼は力投派であり、縦の変化に頼ったリリーフタイプの投手になっています。逆に今のピッチングスタイルだと、どうしても長いイニングだとボロが出てしまう投球。今の投球を貫くならば、先発は小笠原頼みで、中盤以降 吉田にスイッチするという使い方じゃないと、大事な試合を任せるのは怖いのではないのでしょうか。

(投球フォーム)

ではフォームの観点から、考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は地面に向けて伸ばすので、体を捻り出して投げる、カーブやフォークといった球種には適さないでしょう。

 「着地」までの粘りは平均的で、カーブやフォーク以外の球種ならば、それなりに投げられる下地はあります。現に、縦スラという絶対的な球種を持っているので。この球がまともに決まれば、高校生では見極めるのも難しく、攻略困難だと言えます。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも深く地面を捉えており、ボールも低めに集まりやすい。「球持ち」は平均的なものの、ボールをしっかりリリースで押し込めているので、高めに上吊る可能性は低そう。しかし細かいコントロールがつくほど、指先の感覚は優れてはいない。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻が落とせないものの、カーブやフォークを多投しないので、肘への心配は低いのでは?ただし、縦スラをあそこまで多投する弊害が、果たして全くないのかどうかは検証中。

 気になるのは、腕を無理に真上から振り下ろすフォームなので、相当肩へは負担がかかっているはず。将来的に、肩を痛めなければと思うのだが・・・。特に全身を使った力投派だけに、余計に故障のリスクを感じます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も並といった感じ。しかし角度抜群のストレートのために、なかなか打者は芯でボールを捉え切れないのではないかという気も。

 特に腕を強く叩きつけるという意味では、高校生では全国屈指では。これだけ腕が振られては、速球と変化球の見極めは困難。思わず、低めのスライダーに手が出てしまうのも頷けます。ボールへの体重の乗せは発展途上であり、もう少し下半身が上手く使えるようになると、ストレートも手に負えなくなるかもしれません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、とくに悪い部分はないのですが、格別優れている部分もありません。制球を司るフォームには優れており、力投派ながら枠の中には安定して集められます。心配なのは、肩を故障しないかということ。

(最後に)

 このまま夏まで、能力を高めて行けるのか?という疑問が残り、未来像が全く想像できません。しかし本格派の割に、コントロール・フィニッシュまでつなげる投球術なども悪くなく、荒れ荒れではない実戦力を兼ね備えているところは魅力です。

 全国屈指の投手という評価を不動にしながら、ドラフトを迎えるのか? 現時点では、半信半疑 としか言えません。いずれにしても、現時点では全国でも1,2を争う存在。その行く末を、今後も追ってみたいと思います。


(2014年夏 甲子園)