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渡辺 勝(中日)外野手のルーキー回顧へ







 渡辺 勝(東海大4年)右翼 172/80 右/左 (東海大相模出身)
 




                        「まるで王さんだね」





 足を引き上げたままピタッと静止する姿は、世界の王貞治 を彷彿とさせる。まさに今の 渡辺 勝 は、野球界の歴史上、最も偉大な打者のフォームにそっくりなのだ。そんな王さんそっくりな打撃フォームから、打率.393厘(リーグ3位) 13盗塁 と言う素晴らしい成績で最後のシーズンを飾って魅せた。


(プレースタイル)

 東海大相模時代には、選抜で全国制覇を経験。当時からタレント揃いのチームの中でも、打ち出すと止まらない爆発力と、個性的なプレースタイルは、最もプロっぽいこだわりが感じられた。基本は、強く打ち返すアベレージヒッター。しかし4年間の実績で輝いたのは、まさにこのラストシーズンぐらいだった。


(走塁面:走塁偏差値 63.4)

 一塁までの塁間は、左打席から3.9~4.1秒ぐらいで駆け抜ける。最も速い部類の3.9秒を、ドラフト指名された左打者のタイムで偏差値化すると、63.4 。ただしこの選手は、4秒台のことも多く、プロでも上位の部類だがタイム的には図抜けた存在ではないように思う。むしろ評価すべきは、思っきりの良さ。そう盗塁に一番必要なのは、技術でも走力でもなく、まず走る勇気を持っているかということ。このことに関しては素晴らしく、1シーズン13個という破格の成績を残して魅せた。やはり彼の一番の売りは、盗塁できる走力 ということになるのだろう。

(守備力)

 右翼手としての打球への反応、落下点までの追い方、キャッチングなどを見ていると、格別上手いという感じはしない。また肩も並みレベルであり、プロの右翼手としては弱い部類だろう。それでも高校時代から、身の丈のあったプレーをする選手。素早く中継の選手に返球するなど、実戦的な選手だった。総じて考えると、プロでは平均レベルの外野手であり、可も不可もなしと考えた方が良いだろう。


(打撃内容)

 4年秋こそ、打率.393厘と初めてハイアベレージを残す。4年春にはじめて、.304厘で3割超えを経験。1年秋からリーグ戦に出場するが、3割を越えたシーズンはそれまでなかった。あの圧倒的な東海大相模時代のイメージを考えると、なんとももの足りない実績だったことがわかる。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを下げて添えている。腰はほとんど据わらずに、独特な構えでバランスとしてはどうか?しかし両目では、しっかり前が見据えられている。

<仕掛け> 早すぎ

 投手が重心を沈める前に、足をグッと引き上げて一本足に。まあどの時点が始動と観るか難しいが、本格的に動き出すのはリリース前後あたりなのだけれども、あとは上げていた足を下ろすだけなので、この辺の判断も難しい独特のもの。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 始動が早過ぎることで、投手がモーションのタイミングを変えることができる段階であり、フォームを崩されてしまう危険性は秘めている。しかし始動~着地までの「間」は充分すぎるぐらいあるので、速球でも変化球でも、いろいろ球に対応しやすい。真っ直ぐ~少しインステップ気味に踏み込むので、真ん中~外角よりの球を意識。踏み込んだ足元は最後までブレないので、外角の厳しい球や低めの球には喰らいつくことができる。

<リストワーク> 
☆☆☆

 あらかじめバットを引いて、トップに近い位置からバットを振り出して来るということ。そのためリストワークに遊びがなくなって固くなりやすい反面、速い球に立ち遅れる心配はなくなる。

 バットの振り出しは、けしてインサイドアウトではないものの、外角の球をロスなくキッチリ叩くスイングができているということ。バットの先端であるヘッドも下がることなく、広い面でボールを捉えられている。これは、ファエゾーンに高い確率で落とせる可能性が増し、アベレージヒッターらしいスイングだと言える。スイングの弧はそれほど大きくなる、フォロースルーも使わない。しっかり最後まで振り切るということに、主眼が置かれたスイング。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げはあるものの、それほど目線の上下動は気になりません。踏み出した足元もブレないので、開きも我慢。軸足も強く粘られていて、体軸がしっかりしたスイングができている。

(打撃のまとめ)

 スイング軌道とインステップ気味であることを考えると、外角の球はキッチリ叩ける反面、内角寄りの球に弱さがあるのかなと感じられる。また独特の打撃故に、打てる球が限られていたり、微妙にタイミングを狂わされるリスクもあるように感じる。

 しかし打てる球に対しては、取りこぼしの少ないスイング。それだけに高校時代から、打ち出すと止まらない固め打ちが目立つのではないのだろうか。この打撃フォームからも、彼の個性の強さとこだわりを感じずにはいられない。


(最後に)

 高校時代以上に、明確に走塁というものを示しきました。この部分が、彼の最大の売り。プロの外野手としては、少々肩・守備に特徵がないのが残念。打撃も癖があるので、良い方に転ぶかはわかりません。

 性格的には、まさにプロというタイプの選手だけに、肉体的な部分でのアピールが少ない分、ハートで補うタイプかと。まさに昇り調子でのプロ入りであり、育成ドラフト6位での指名ならば、悪い指名ではないだろう。モノになるのかは微妙なものの、ちょっとどうなるか観てみたい、そう思わせる選手。プロ入り後、どのぐらいやれるのか、ぜひ見届けてみたい。


(2015年秋 神宮大会)









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