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重信 慎之介(早稲田大4年)右翼 173/70 右/左 (早稲田実出身) |
「注目度急上昇!」 それまで 茂木 栄五郎 や 丸子 達也 などの陰に隠れがちで、第三の男 といった印象が強かった 重信 慎之介 。しかし今回のドラフトでは、巨人から2位指名されるなど一気に注目度が増してきた。この秋は、首位打者と盗塁王を獲得するなど、充実のシーズンを送り有終の美を飾る。 (プレースタイル) バットを短く持って、コツンコツンと当ててくるコンパクトヒッターの印象が強い。この秋は、レフト方向にも長打が打てるようになるなど、打撃に飛距離が加わってきた。最大の売りは、その脚力。プロでもトップクラスの脚力を全面に、プロの世界に殴りこみをかける。 走塁面 走塁偏差値 66 一塁までの塁間を、左打席から3.75~3.95秒ぐらいでコンスタントに走り抜けて来る。これを、プロにドラフト指名される左打者で偏差値化すると、66 という極めてトップクラスであることがわかる。実際に六大学でも、3年秋~4年秋までの4シーズンは、すべて5盗塁以上を記録するなど、盗塁技術も高いことがわかる。 スカウトが、鈴木尚広級 と評する脚力で、プロでも走力を全面に出したプレーを魅せてくれるのは間違いない。まだ球界トップクラスの走塁技術があるのかには疑問が残るが、いずれはその領域まで到達する資格は持っている選手であることは間違いない。 守備面 早実時代は、二塁や三塁を守っていた選手。そのためか? それほど打球への一歩目の反応・打球勘などが好い選手には見えない。けして下手だとは言わないが、上手い外野手でもないように見える。肩も驚くほど強いわけではなく、守備に関してはプロレベルならば、可も不可もなしといった感じではないのだろうか。しかし守備は、プロで最も鍛えて伸ばすことができる部分であり、更なるレベルアップは期待できるのではないのだろうか。 (打撃内容) シーズンの成績をみると、春は良くないが秋は好いという、交互に好成績を残していることがわかる。3年秋には、404厘で打撃成績2位。そしてこの秋は、.432厘 で悲願の首位打者を獲得。青木宣親は、4年間通算.332厘 だったのだが、この重信も 通算.333厘 を残すなど、実績的には同レベル。更に青木が通算58試合に比べると、重信の出場数は 83試合 と圧倒している。 <構え> ☆☆☆ 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰を深く落とした構えで、全体のバランスとしては並ぐらい。両目でしっかり前を見据えられているので、錯覚を起こし難く球筋をしっかり追うことができている。ただし、それほど打席で嫌らしいとか、そういった威圧感は感じられない。 <仕掛け> 平均的 投手の重心が下がりきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。プレースタイルはアベレージヒッターに見えるが、仕掛けの観点から見ると、ある程度の長打力と対応力を兼ね備えた中距離・ポイントゲッタータイプであることがわかる。 <足の運び> ☆☆☆ 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み込んで来る。始動~着地までの「間」はソコソコで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足元はブレないので、外角の厳しい球や低めの球にもついて行くことができる。 一つ気になったのは、ステップが非常に狭いこと。内角の球を捌く時には、上手く腰が回転して捌きやすい一方、あまり前に体重が移って行かないスイングであり、打球にイマイチ強さが感じられないのは、このせいなのではないのだろうか? <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」の形をなかなか作れず、そのまま振り出して来るか少し遅れがちになる。これが、この選手のボールを捉えるまでのルーティーンなのかもしれないが、プロ仕様の強い打球が飛ばない理由が、ここにも現れているのではないのか? バットの振り出しは、上から最短距離で出てくるタイプ。ボールを捉える時も、バットの先端であるヘッドが下がらず、広い面でボールを捉えることが出来ている。高い確率で、ボールをフェアゾーンに落とせるはず。インパクトのあとも、スイングの弧は大きくなく、フォロースルーを使ったりすることもない。スイング的には、やはりコンタクトヒッターという印象を受ける。 <軸> ☆☆☆☆ 1番素晴らしいのは、足の上げ下げが小さめで、目線の上下動のブレがほとんどないところ。体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて崩れない。軸が、非常にしっかり出来ているところは買える。 (打撃のまとめ) 目線が狂うことなく、的確にボールを追うことができ、軸も安定してボールを捉える技術に優れている。その反面、体重移動に乏しいステップとトップの作りが浅いことから、スイングの芯に強さが感じられない。すなわちアマ仕様の打撃であり、果たしてプロの投手相手に通用するスイングなのか?という不安はよぎる。またこういったスイングの強さというのは、なかなかプロ入り後も払拭できない部分であり、その点でこの選手はどうなのだろう?という不安は残る。 (最後に) これまで残してきた数字的なものは、青木宣親と比較しても、ヒケを取らないほど(いやそれ以上か)。青木も最初の1年目は、一軍で10試合ほどしか出場できなかったように対応に苦労した。重信にも同様なことが起きる可能性があり、プロ入後いかにその壁を乗り越えられるかだろう。 青木も脚力はあったものの、守備勘はよくなく、プロの守備力を身に付けるのに苦労したと記憶している。青木は元投手出身だけに、重信以上に肩があった記憶がある。しかし足に関しては、重信の方がワンランク上であるのは間違いない。そういった意味では、二人の大学での技量は甲乙つけがたいというべきだろうか。 問題は、今後いかにプロに必要な技術・筋力・体力・精神力を身につけられるのか?そこにかかっているだろう。青木がヤクルトに4位指名されて入団したように、重信も能力的にはそのぐらいが私は妥当だった気がする。より注目されることで、ペースを崩さなければとは思うのだが・・・。まず1年目は、代走や代打など、一軍馴れするのには費やされることだろう。本当の意味で真価が問われるのは、2年目以降ではないのだろうか。その時に、プロにいかに対応した選手になっているかで、その将来が変わってゆきそうだ。 蔵の評価:☆☆ (下位指名ならば) (2015年 秋季リーグ戦) |