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吉持 亮汰(楽天)内野手のルーキー回顧へ







 吉持 亮汰(大商大)遊撃 174/64 右/右 (広陵出身)
 




                      「こういう選手がプロ」





 自慢の足で出塁すれば、すかさず二盗・三盗を仕掛けて存在をアピール。強肩という武器も併せ持ち、フィールドにいるだけで相手にプレッシャーをかけることができる。トップスピードに到達するのが早く、その走っている姿は、往年のスーパーカー・屋鋪 要(大洋)を彷彿とさせる。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、右打席から4.1秒前後。これを左打者に換算すると、3.85秒前後に相当するのだから、プロでもトップクラスの脚力。相手がマークしてようと、抜群のスタートと加速で、面白いように盗塁を決めてくる。技術でフォームを盗むというよりも、自分の勘と嗅覚で結果に結びつける。この脚力は、プロでも充分に売りにできるはず。

 元々遊撃手としては、可も無し不可もなしといったレベル。しかし今春のリーグ戦を見ていると、細かい動きや確実性には不安は残るものの、強肩を生かし送球が乱れないのが素晴らしい。プロで鍛えれば、それなりにニ遊間で勝負できるまでになるのではないのだろうか。地肩に関しては、プロでも充分通用するはず。

 理屈ではなく、持って生まれた能力と感覚の素晴らしさを評価すべき。そういった素材としての素晴らしさは、今年のニ遊間候補の中でも屈指の存在。あとは、いかに確実性・堅実さをこれから身につけて行けるかだろう。ショート以外でも、いろいろなポジションが守れる器用さも併せ持つ。





(打撃内容)

 これまでは、走力の素晴らしさは際立っていたものの、打撃は平凡だった。しかし今春は、バットを短く持ちコンパクトにはじき返す打撃に徹した。初球でも、甘い球が来れば積極的に振ってくる。この打撃で首位打者を獲得し、この大学選手権でも3試合で・打率.667厘 と全国レベルでも通用することを示した。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えます。腰の据わり具合、両目で前を見据える姿勢は良いのだが、ややへっぷり腰で全体のバランスとしてはどうだろうか? バットを短く持って、ミートに徹した打撃をしてくる。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、ボールをできるだけ引きつけてから叩くスタイルで、生粋の長距離打者か二番打者が使ってくる。彼の場合、本質的には二番タイプなのかもしれない。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を軽くあげて、ベース側にインステップして踏み込む。始動~着地までの「間」は短く、いろいろな球に瞬時に対応できるタイプではありません。あくまでも狙い球を絞り、その球を逃さず叩くことが求められます。少なくてもこの春は、それが徹底できていると判断できます。

 ベース側に踏み出すように、外角を意識。振ってくる球は外角寄りの球が多く、そのことがよくわかります。踏み込んだ足元は、地面から早く離れるので、けして開きをギリギリまで我慢できているわけではありません。したがって外角の厳しい球や逃げてゆく球を得意としているわけではなく、外角でも高めに浮いた球を右方向に払うように捌いているのでしょう。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは早く、速い球に立ち遅れないようにしています。バットの振り出しからインパクトまでの軌道は、けしてインサイド・アウトではなく内角の捌きには不安。それにバットの先端であるヘッドも下がり気味なのですが、バットを短く持つことでこの欠点を最低限に留めています。

 スイング自体の力強さには欠け、プロを想定するとややひ弱には感じます。しかし眼の良さを持っており、苦手のボールに手を出さなかったりと、そういった見極めができるところは救い。

<軸> 
☆☆

 足の上げ下げは小さく、目線はそれほど上下動しません。体の開きは充分我慢できているというほどではないのと、打ち終わったあと、軸足が前に突っ込んでしまっているところは気になります。まぁバランスを崩してでも、体をぶつけてヒットにしてしまう、しぶとさは感じます。

(打撃のまとめ)

 プロレベル相手だと、その対応に苦労することが予想されます。しかし天性の眼の良さがあり、高いポテンシャルを持っている選手で、レベルが高くてもいずれは対応できるようになるのでは。

 なんでも捌くというよりは、自分が打てる球に絞り、その球を逃さないことを得意としています。打撃は最低限のレベルには達していますし、それを補うだけの走力を持っています。二番タイプだと割り切れれば、我慢できるレベルです。


(最後に)

 完全に足というものに特化した選手であり、走れる選手が欲しいという球団にはオススメ。秘めたる能力は高く、まだまだ眠っている才能がプロで引き出されるかもしれません。菊池涼介が守備に特化してプロでも際立っていますが、吉持の場合足に特化したスゴイ選手になれるかもしれません。

 こういった特殊な武器を持った選手は、ドラフトに向けて評価が上がってくるもの。このまま順調にアピールして行けたら、上位指名で消えても不思議ではありません。何よりこの選手は、魅せる・アピールするということを心底理解した、真のエンターテイナーだと言えるでしょう。こういう選手にこそ、ぜひプロに入ってきてもらいたい。


蔵の評価:
☆☆☆


(2015年 大学選手権)