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高山 俊(阪神)外野手のルーキー回顧へ







 高山 俊(明治大4年)外野 181/84 右/左 (日大三出身)
 




                     「完全にズレてる」





 高田繁氏の作った六大学安打記録更新が間近に迫っている 高山 俊 。しかし変なこすった当たりで内野安打になったり、外野の前にポテンと落ちる打球が多く、日大三高時代のようなバットの芯でスカッと捉える打球は、今シーズンも殆ど観られなかった。

 その最大の要因は、大きく外回りしてブンと振るスイングにある。今のプロ野球界で言えば、衰えてからの 高橋由伸(巨人)や福留孝介(阪神)のようなスイングであり、肉体の衰えを強引な巻き込みで誤魔化しているようなスイングであり、極めて確実性の低い粗っぽいスイングだといえよう。まともに捉えられればリターンが大きなスイングではあるが、まだ若い高山がこのようなスイングをする理由は全くない。ある程度これでも結果が出るのは、申し訳ないが相手レベルが低いからにほかならない。正直 高山 俊 レベルのポテンシャルがあれば、このようなスイングで満足して欲しくないというのが、率直なところ。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.0~4.2秒ぐらいとプロの左打者としては平均レベル。彼の足は、二塁打・三塁打など長い距離を走った時に発揮されるタイプ。この春はアピールしようと、久々に5盗塁を記録。相手が隙を作れば、次の塁を陥れようと意識は忘れない。全体としては中の上レベルであり、プロで足を売りにできるのかは微妙だといえよう。

 日大三時代は、打球勘がイマイチであまり上手い外野手だとは思いませんでした。大学に入りその辺もだいぶ解消されてきたのかなと思っていたのですが、最終学年になり注意して見ていると、結構判断ミスをしていることも少なくありません。そういった意味では下手な外野手ではありませんが、けして守備がめちゃくちゃ上手い外野手ではありません。しかし肩は一級品であり、この部分はプロでも売りにして行けると考えられます。プロではセンターよりも、ライト向きの選手ではないのでしょうか。

 こう考えると肩こそ素晴らしいですが、走力・守備力は、中~中の上レベルといった感じで、現状はそこまで図抜けていないようには思います。しかし身体能力は高いので、プロで鍛えられればある程度のレベルまでには到達するのではないのでしょうか。


(打撃内容)

 気になるのは、やはり打撃の部分です。日大三時代や大学一年の春に、いきなりリーグ2位の.417厘をマークした時のような、絶対的な打撃ではありません。以後4割台を記録したことがないわけで、今シーズンの.333厘の成績も、彼の持っている能力からすれば、こんなものではないだろうという気がします。具体的に何処に問題があるのか、フォーム分析をして考えてみましょう。

<構え> 
☆☆☆

 前足を引いて、グリップは高めに添えます。少し背中を反るような構えであり、腰の据わり・全体のバランスは良くないが、両目で前を見据える姿勢はまずまず。この辺は、昨年と全く変わっていませんでした。

<仕掛け> 平均的

 フォーム分析をした映像がたまたまだったのかもしれませんが、昨年は対応力を重視して「早めの仕掛け」を採用していました。しかしこの春は、投手の重心が沈みきった時に動き出す「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備える、中距離打者やポイントゲッターが多く扱う仕掛けです。彼のプレースタイルからすれば、このほうが合っているのかもしれません。

<足の運び> 
☆☆☆

 足の引き上げは若干以前より小さくなっている気がしましたが、足を引き上げまわし込んで真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそれなりで、速球でも変化球にもソコソコ対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいという万能タイプ。気になるのは、インパクトの際に足元がブレてしまっていること。大きな上半身の振りには、下半身が負けてしまい支えきれていません。これでは外角の厳しい球や逃げてゆく球に対し、開きを我慢しきれません。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である、「トップ」の形をつくるのは自然体。そういった意味では、リストワークを柔らかく使え問題はありません。しかしバットを振り出す際に肘が下がってしまい、始動~インパクトまでのスイング軌道は遠回り。いわゆる、ドアスイングになっています。それでいてバットの先端であるヘッドも下がりがちなので、ボールを捉える面積が小さくなり打ち損じが多くなりがち。

 大きな弧でブンと振るので、上手く巻き込めた時は良いのですが、極めて現在はロスの大きなスイング。バットが内から出てこないので内角は捌けない上に、足元がブレるので外角も我慢できない。現状は、極めて打てる幅は限られていることがわかります。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはあるので、目線の上下動は平均的。足元がブレてしまうので、体の開きが我慢できていません。しかし軸足は地面から真っ直ぐ強く伸びているので、軸を起点に回転できていますし、打球が強いのもうなづけるところ。

(打撃のまとめ)
 
打撃がどんどん粗っぽくなっており、これではプロの投手相手には苦労するだろうなというのがわかります。本人の意識なのか、周りが修正してあげられる人間がいないのかわかりませんが、どんどん誤った方向に進んでいるようにしか思えません。

 ブレない下半身の安定と、内から出てくるようなスイング軌道を身につけないと、プロでは厳しいだろうと。今はこれでもソコソコやれてしまうのは、周りのレベルの問題と彼の持っている天性の資質によるところなのでしょうが。


(最後に)

 持っている打者としての資質は、今年の野手の中でもまさにトップクラス。まして秋にでも高田繁氏の記録でも抜いてしまったら、周りはドラフト1位指名への空気感に包まれるでしょう。しかしスカウト達は、現状のプレーを充分理解しているので、順位は期待したほどのものでなくなる可能性も充分あります。ましてプロでの内容は、それ以上にガッカリさせられるものになるかもしれません。

 まず彼が、現状のままではマズイのだという危機感を持てるのか? そして間違った方向を修正してあげられる指導者に巡りあえるのか? そこにまさにかかっていると言えるのではないのでしょうか。 そのためかなり入る球団によって、この選手の未来像は大きく変わって来るように思います。球界を代表する外野手になれる資質を秘めていると思いますが、どう転ぶかは極めて流動的、そう言わざるえません。秋もこのままだと、個人的には更に評価を下げないといけないかもしれません。


蔵の評価:
☆☆☆


(2015年 春季リーグ戦)










 高山 俊(明治大3年)外野 181/84 右/左 (日大三出身)
 




                       「野手の目玉」





 高田繁氏の持つ六大学通算安打記録に迫る勢いの 高山 俊 。このまま最終学年も順調に過ごすようだと、六大学安打記録を手土産に、野手の目玉としてプロ入りする可能性が充分考えられる。果たして、高山 俊 の現状はどうなのか考えてみた。

 日大三高時代には、全国制覇の中心メンバーとして活躍。もしプロ志望届けを提出していれば、上位指名で消えていただろうほどの選手だった。明大に進んでからも1年春から打率.412厘でリーグ2位の好成績でデビュー。以後レギュラーを守り続けるが、日大三時代の夏の大会や一年春ほどのパフォーマンスは示せていない。彼の潜在能力からすれば、まだまだこんなものではないだろと思っている人は少なくないはず。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.0秒~4.2秒ぐらいと驚くほどのタイムは計測しない。むしろ彼の走力の持ち味は、三塁打など長い距離を走った時に発揮される。それでも状況に応じてセーフティバントを試みたり、外野手の位置や打球処理次第では、積極的に次の塁を狙ってくる。六大学でも3年春に5盗塁を決めた以外は、それほど盗塁で目立つことはない。

 守備を見ていると、横の動きはよく広い守備範囲を誇る。しかし前後の判断力に課題がある。中堅よりも、打球に角度のつく右翼などの方が適しているのではないのだろうか。それでも球際でのキャッチングは上手く、最初の目測を謝らなければファインプレーを期待できる。特にプロでも売りにできるであろう、抜群の強肩ぶりは高校時代から際立っていた。

 走力は中の上レベルだが、肩を含めた守備は将来的にトップクラスに育つ可能性は充分秘めている。


(打撃内容)

 ボールの外側を叩くような、高橋由伸的なスイングが特徴。内からバットが出てくるタイプではないが、外の速球をバチンと捉えてはじき返すのには優れている。時々ホームランを放つ長打力はあるが、基本的には飛距離よりも勝負強さを売りにするタイプ。

<構え> 
☆☆☆

 前足を引いて、グリップは高めに添えます。少し背中を反るような構えであり、腰の据わり・全体のバランスは良くないが、両目で前を見据える姿勢はまずまず。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。典型的な、アベレージヒッターの仕掛けだと言える。身体に力はあるが、本質的には対応力を重視した打者。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を引き上げて、大きく回しこんで来る。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でも幅広く対応。ほぼ真っ直ぐ踏み出す選手で、内角でも外角でも打ちたいタイプ。踏み込んだ足元はブレず、つま先もけして開かないでボールを捌けている。外角の厳しい球や、低めの球にも食らいつくことが出来るであろう。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、リストワークに力みが生じることはない。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトではないものの、インパクトまでにロスはなく、またバットの先端であるヘッドが下ることなく、綺麗に最後まで振り抜けている。内角の捌きには適さないが、大きな弧を描いて外の球を引っ叩くのには適している。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げあるので、目線の上下動は並ぐらい。それでも体の開きは、けして開くことはない。また軸足の内モモの筋肉にも強さが感じられ、火の出るような打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 内角寄りの捌きがどうなのか? 結構打ち損じが多いのも見ていて気になる。それでもここぞという時には結果を残すように、持って言える能力は相当高いのは間違いない。日大三時代の夏の大会のように、もう手がつけられないような圧倒的なパフォーマンスを期待したい。


(最後に)

 プロのスピード、球威にも負けないスイングをしていること。さらに守備で充分潰しが効くというアピールポイントを持っている。問題は、結構粗っぽいスイングはしているので、プロでも一年目からレギュラーが奪えるのか・と言われると、その辺は微妙かなという印象は受ける。

 それでも今年の野手の中で、最もポテンシャルは高そうだし、何より華のあるプレーヤー。文句なしの実績で、プロの門を叩いて欲しい。プレッシャーのかかる場面・立場で、どのぐらいやれるのか観てみたい。掛け値なしに、有力なドラフト1位候補だと言えるであろう。


(2014年 神宮大会)










高山 俊(日大三)右翼手 181/78 右/左 





                  「イメージ一新!」





 選抜までは、何かピンと来ない選手だったのですが、その後春季関東大会・夏の東京都予選・甲子園と観て行く中で、その評価を一変させてくれました。最後の夏は、もう高校生相手では手がつけられない、なんとも言えないオーラを身につけるに至りました。





(守備・走塁面)

元々この選手を観てきて、三拍子の中で最もプロの領域に達していたのが、この右翼守備です。打球への勘も素晴らしいですし、無駄のないボールへの入り方、ガッツのあるキャッチング、何よりプロに混ぜても売りにできる強肩ぶりは、高校球界でも随一の肩の持ち主ではないのでしょうか。こと守備に関しては、プロの世界に混ぜても、近い将来球界を代表する外野手になれる人材です。

その一方で走力に関しては、ほぼプロの基準レベルかなと思って観ています。選抜の時でも、大体計測タイムは、基準タイムである4.2秒前後。ただ西東京予選の7試合で3盗塁を決めるなど、かなり走塁技術と果敢に挑む積極性があります。特に大まかなストライドで走るベースランニングは早く、三塁到達まで11.0秒ぐらいで走り抜けるなど、加速するタイプの俊足選手だと言えるでしょう。プロで足を売りにできるほどではないにしろ、全く走れないと言うことはないのではないのでしょうか。



(打撃内容)

この選手のスイングは、巨人の高橋由伸のように、ボールの外側を叩いて引っ張り込むような独特なスイングにあります。元々少し膝が固いところがあり、縦の変化に脆いところがあったのですが、最後の夏は自分の打てるゾーンに絞って、その球を絶対に逃さない「鋭さ」が極限まで磨かれました。この集中力は、プロの一流打者のそれを、まるで観ているようです。

<構え> ☆☆☆

前足を軽く引いて、グリップをバットを倒しながら高めに添え、あらかじめ捕手方向に引いて構えます。腰の据わり具合には安定感を感じさせ、背筋をしっかり伸ばして構えます。ただ少し両目で前を見据えるという意味では、それほどしっかり前に顔が向いていません。恐らく、かなり体が硬い選手なのではないのでしょうか。そのため故障には、充分注意してもらいたいと思いますし、試合前の入念なストレッチを心がけるべきでしょう。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

ボールをギリギリまで引きつけて、その球を一気に引っぱたくスタイルです。このタイミングでの始動は、通常長距離打者が生粋の二番打者タイプが採用するものなのですが、彼の場合その両方でもないように思えます。ただ今後、彼の打撃スタイルに応じて、始動のタイミングを変えて行くことになるのではないのでしょうか。

<足の運び> ☆☆☆

始動が遅い割に、足を軽く回し込む動作が観られるので、結構忙しい気が致します。始動が遅ければ、それだけ動きをシンプルなものにしなければならないことを考えると、少し疑問が残ります。始動して着地するまでの「間」あまりないので、打てる球は限られています。その球を逃さず叩く「鋭さ」に磨ききったのが、この夏の彼の打撃です。

少し左打者らしく、アウトステップに踏み込みます。その足下は、インパクトの際になんとかブレずに我慢できています。ただ綺麗に左方向に打ち返すことは少なく、あくまでもセンター中心に鋭くはじき返すのが、この選手の打撃です。

<リストワーク> ☆☆☆

打撃の準備である「トップ」の位置には、あらかじめグリップを持ってきているので、速い球に立ち後れる心配はありません。これにより、始動の遅さを補うことができています。その一方で、グリップを引いて構えているので、リストワークが硬く打てる球は限られているように思えます。

スイングも上から最短距離というよりは、バットを寝かせて少し遠回りでも大きな弧を描いて、ボールに強いエネルギーを伝えます。そのロスをバットの先端に下がらないようにして、ドアスイングにならないように心がけつつ、強靱なヘッドスピードで補うことができています。

<軸> ☆☆☆☆

足の上げ下げは静かなので、頭の動きは小さく目線が常に安定しています。体の開きも我慢できており、何より軸足が地面から強く根付いております。その辺が、強烈な打球を生み出す源になっているのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

この選手の打撃は、物凄く難しい球を捌けるだとか、最短距離で振り抜き無駄を無くすといったタイプではなく、打てる球を絞り込み、多少ロスがあって大きくしっかりしたスイングで、ボールを引っ張ったくという打撃に終始しているところにあります。

そしてこの夏の成長は、物凄く打席で集中してボールを追うことができるようになり、打てる球は絶対に逃さないだという強い意志が感じられます。この意識の高さと集中力は、プロの一流打者に通ずるものがあります。





(今後は)

残念ながら大学進学を表明しておりますが、今が心技体一番充実している時ではないか、言葉を換えれば「旬の時期」に到達しているのではないかと思います。それ故に、彼にはぜひ高校からプロに行って頂きたい選手です。

プロでも売りにできる守備がありますし、走力・打力も充分プロレベルに到達しました。この夏の充実ぶりがあれば、プロでも3年以内にレギュラーになれるのではないかという「心技体」三つのバランスが、いまとれています。返って大学の4年間が、彼を高める環境に成り得るのか?モチベーションを維持するのには、長すぎることはないのか?と言う不安は拭えません。精神的な充実なども考えると、全国の中で最もプロ志望届けを提出して欲しい高校生です。


蔵の評価:☆☆☆


(2011年夏 甲子園)


 






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