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田中 豊樹(日本文理大)投手 180/90 右/右 |
「5位なら美味しいと見るべきか?」 田中 豊樹 といえば、大学2年時の150キロ級の剛球のイメージが強い。あの投球ならば、上位24人(2位指名以内)に入ってきてもおかしくない素材、誰もがそう思っていたのではないのだろうか。しかし3年6月の平塚合宿以来、彼の勇姿を関東で確認することはできなかった。そのため最終学年がどのような状態だったかは、全く把握できないまで秋まで来てしまったのである。そしてこの秋、私は久々に田中の勇姿を確認しに九州の地に向かった。 (投球内容) 元々少し太めの体格ではあったが、更にぽっちゃりした印象は否めない。その影響からか? 明らかに体のキレの悪さが投球に現れていた。 ストレート 常時140キロ前後~MAX89マイル(142.4キロ) 昨年、一昨年と平塚で計測した時は、私のガンでも91マイル(145.6キロ)・92マイル(147.2キロ)などを記録していたことを考えると、ボールの勢い・球速は明らかに鈍っていたことがわかります。元々この投手の球は、少しスライド回転するような癖球で、打者の空振りを誘うというよりは、詰まらせて討ち取るのが持ち味。しかしアバウトなコントロールでも抑え込めるだけの、勢いがあったのが完全に薄れてしまっています。 元々コントロールは枠の中に投げ込むという、かなりアバウトなタイプ。しかし抑えたかと思ったら、あっさり四球を出すなど本当のコントロールがない点、気持ちのムラが激しい部分は、当時から不安には思っていました。しかしボールのキレ・球速が損なわれ、ただの棒球が甘く入るようになり、それでもかわすだけの術がないために、相手に釣瓶撃ちにあうか、四球を出して傷口を広げてしまうという悪循環に陥っています。 変化球 スライダー・カットボール・フォークなど 元々は、結構大きな曲がりをするスライダーの方がカウントを取るのが上手かった選手。それにカットボール・フォークのような沈む球もあります。しかしフォーク系のボールは、それほど信頼度は高くありません。あくまでもスライダー系のボールとのコンビネーションが、この選手の持ち味。 その他 クィックは、1.1秒前後とそれなりで、ベースカバーなどの入りも悪くはありません。ランナーを背負っても、走者の足を釘づけにするような、鋭い牽制球は観られません。 投球センスを感じさせるような、間のとり方とか、マウンド捌き、微妙なコントロールや投球術など、そういったものは一切ありません。あくまでも細かいことを抜きに、ボールの力でねじ伏せるタイプです。 (投球のまとめ) 私の見た試合の前の週の試合も見た知り合いによると、やはり同様の内容だったようです。そのためこの秋は、出てくるだけで負のオーラが漂っていて、とても上位指名でゆくのには怖い感じがしました。 細かいことができる選手ではないので、悪い時に悪いなりにという、誤魔化しが効かない。このことを、改めて強く実感することになります。 (最後に) どうしても大学2年時の時のイメージが強かったので、そのギャップに戸惑います。しかし田舎で伸び伸びやってきた選手なので、むしろプレッシャーのかからない、このぐらいの順位でのプロ入りは、彼にとってはプラスに働くかもしれません。 何か大きな故障をしたわけではないので、本人の気持ちが変われば、元のパフォーマンスを取り戻す可能性は充分あるとふんでいます。そういった意味では、5位指名で入団すれば、美味しい指名だったということも充分考えられます。 持っている能力的には、上位指名級のものがあります。ハムで言えば、鍵谷 陽平 ぐらいの能力はありそうなので、指名順位以上の働きをしても不思議ではないでしょう。逆にこの性格ですから、一軍で実績を残しても毎年安定して活躍できるのかという不安は残ります。そのため爆発力はあるものの、ムラのある選手ではないかと思います。 しかしドラフト5位での入団を考えれば、それでも短期間でも活躍してくれれば元は取れるはず。今の彼には、このぐらいの順位での指名で良かったのではないかと、個人的には胸を撫で下ろしています。 蔵の評価:☆☆ (下位指名ならばオイシイ) (2015年秋 神宮大会代表決定戦) |
田中 豊樹(日本文理大3年)投手 180/88 右/右 (佐賀商出身) |
「リリーフ限定だと考えれば」 リリーフ限定で使うと考えるのならば、一年目から即戦力の期待もできる男、それがこの 田中 豊樹 だろう。九州では屈指の素材であり、最終学年でもそれなりに能力を示せば上位指名の有力な候補となる。 (投球内容) それほど力を入れて投げなくても145~後半を連発できる馬力の持ち主。一昨年の全日本平塚合宿では、MAX152キロを記録しました。ランナーを背負うとギアを上げるというよりも、むしろコントロール重視でスピードを落としてきます。一番力の入れた球が見られるのは、ランナーがいない場面での追い込んだ時ではないのでしょうか。 ストレート 常時140~MAX152キロ 打者の外角中心にボールを集めて来る投手で、球威・球速があるので、速球の力だけで押すことが出来ます。ストレートも少しカット気味に切れ込む傾向があり、綺麗な回転で空振りを誘うというよりは詰まらせるタイプかと。 普段の投球は力みがなく良いのですが、ランナーを背負うと球筋が安定しなくなる傾向があります。リリーフ向きなタイプにしては、セットからの投球が一つ今後のチェックポイントになりそう。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カットボール・スプリット 殆どは横滑りするスライダーとのコンビネーションで投球を組み立て、この球は安心してカウントを稼げます。余裕が出てくると他の球種を織り交ぜてきて、スプリットのような沈む球もありますが、まだスライダー以外は武器になるというほどではありません。 その他 クィックは、1.1秒前後とまずまず。牽制はよくわかりませんでしたが、ベースカバーなどはそれなりといった印象はあります。もう少し投球以外のレベルがどうなのか? 最終学年では詳しく見てみたいポイント。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆☆ 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせるので、お尻が一塁側に落とせます。そのため体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く変化するボールを無理なく投げられます。 「着地」までの粘りは平均的なので、体を捻り出す時間は並。この辺がもう少し粘っこくなると、良い変化球を習得できそう。現状は、カット・スライダー・スプリットなど球速のある変化球が中心となっている。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブの抱えが、最後後ろに抜けてしまっている。そのため充分、両サイドのブレを抑え込めているとはいえない。足の甲での地面への押し付けもできているが、もう少し長く抑えていられると、下半身のエネルギー伝達や低めへの球筋も増えてきそう。「球持ち」は並で、それほど指先の感覚が優れているようには見えない。おおまかに、狙ったところに集めるといった感じのコントロール。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻を落とせるので、カーブやフォークなどを投げても肘への負担は少なそう。しかし現時点では、そういった球種は、殆ど投げてこないので問題はない。 腕を振り下ろす角度に多少無理はあるが、悲観するほどではなさそう。今ぐらいならば、よほど無理しなければ肩への負担は大きくないのでは? 力で押すタイプではあるが、力投派ではないので、それほど肩への負担は少なそう。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは平均的で、それほど苦になるフォームではありません。しかし「開き」も並ぐらいなので、コースを突いていれば、この球威・球速なので問題ないのでは? 腕の振りは強く、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せもまずまずで、打者の手元まで球威は落ちない投げ方。 (フォームのまとめ) フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪いところはありません。もう少し「着地」までの粘りや、ボールへの体重の乗せが上手くなり下半身を上手く使えるようになると、手がつけられなくなるのではないのでしょうか。 速球派ですが、フォームに大きな欠点がない土台の良さは魅力。もう少しグラブをしっかり抱えられるようになったりすれば、更にコントロールは安定しそう。故障のリスクも今のところ大きくないですし、まだまだ伸びる要素のあるフォームだと考えます。 (最後に) 荒っぽい速球派にしては、フォームに大きな欠点がありません。もっと投球の幅を広げて行ける可能性はありますし、更にもっと凄みを増す可能性も感じます。 結構投球の集中力、気持ちのムラが激しいタイプなので、その辺が信頼に足る投手なのかは疑問が残ります。それゆえに、短いイニングで爆発力を活かす方が持ち味が発揮できそう。そういったことを望む球団ならば、一年目から大活躍が期待できる素材ではないのでしょうか。最終学年の投球、ぜひ確認してみたい一人です。 (2014年 平塚合宿) |