15dp-16


 
amanatu.com








佐藤 優(中日)投手のルーキー回顧へ







 佐藤 優(東北福祉大4年)投手 187/75 右/左 (古川学園出身)
 




                      「即戦力としては・・・」





 ボールの勢いは素晴らしいものの、コントロール・フォーム・投球術など含めて、1年目から即大活躍できるのかと言われると、正直疑問が残ります。投手育成に定評のある中日だけに、1年ぐらいファームで漬け込めば、見違えるほどの投手になるかもしれませんが。


(投球内容)

 スラッとした立ち姿は、何処か先輩である 斎藤 隆(元楽天)を彷彿とさせます。また投球フォームは、かなり肘の下がったスリークオーターであり、肘を下げてからの 田島 慎二(中日)に近い感じか。

ストレート 常時140キロ台~後半

 神宮大会では、スピードガンの表示が厳しく130キロ台ばかりでした。しかし実際には、140キロ台中盤は出ているような勢いでしたし、春見た時もけして本調子とは言えない内容でも91マイル(145.6キロ)を記録していました。また好調時には1、40キロ台後半を連発するスピード能力があると言われます。

 ボールの勢い・質という意味では、今年の候補の中でもトップクラスのものがあります。しかし体から離れて腕が出てくるので、球筋が安定しなく抜けて来ることも少なくありません。またフォームが、イチ・ニ・サンで投げ込んで来るので、打者としては合わせやすい傾向も。それをかわすような術は、現時点では持ちあわせていません。完全に荒れ球であり、ストライクゾーンの枠の中に投げ込めばと言うタイプです。

変化球 スライダー・ツーシーム

 スライダー自体の曲がり・ブレーキは素晴らしく、ほとんどはこの球とのコンビネーション。ただし春見た時には、腕の振りの違いから、速球との見極めがついてしまいそうなのが気になりました。その他にもシュート回転する球が、意識的なのか無意識なのかわかりませんがあり、それがツーシーム的な役割を果たします。その他カーブ・フォーク系の球もあるようですが、春の生観戦や神宮大会での登板でも、正直よくわかりませんでした。このスライダー以外の球種は、投球において大きなウエートは占めていないように思えます。

その他

 クィックは、1.0秒前後と素早い。しかし牽制は並レベルで、フィールディングは平均以下では。コントロールにこそ破綻はありませんが、投球術などのピッチングセンスは感じません。現状は勢いで圧倒するリリーフの方が、この選手は向いているように思います。

(投球のまとめ)

この秋の登板は、神宮大会の立命館大での1イニングのみ。しかし秋見た人の話でも、あまり良くなかった、変わっていなかったとの声が聞かれます。そういった意味では、まだまだボールの勢いにかまけた素材型の域を脱してはいないことがわかります。

コントロール・変化球・投球術共に、プロでしっかりした指導を受けて、どのぐらい変わるか観てみたいと思います。



(成績から考える)

最終学年の春と秋の成績を元に考えてみましょう。

15年春 4勝1敗 33回    22安打 13四死球 39奪三振 防御率 1.09(リーグ3位)
15年秋 2勝0敗 28回1/3  24安打 16四死球 21奪三振 防御率 1.59(リーグ2位)


1、被安打はイニングの70%以下 △

 春のリーグ戦では被安打率が、66.7% と基準を満たしていたものの、この秋は 84.8% と悪化しており基準を満たしていません。やはり イチ・ニ・サンで合わされやすいフォームだけに、よほど勢いで圧倒するか、的を絞らせない配球をしないと厳しいのではないのでしょうか。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 春の四死球率は、36.4%と基準を僅かに超えるぐらいで、悲観するほどではなかった。しかしこの秋は、56.5%と悪化しており、やはりアバウトなコントロールに課題があることがわかる。圧倒的に打力が上がるプロの打者相手になると、打たれまいと余計にこの傾向が高くなることが予想される。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 △

 春はイニングを遥かに上回るペースで三振を奪えていたが、この秋は1イニング0.74個と基準を満たすことができていない。元々ストレートとスライダーだけで三振が取れてしまう選手ではあるのだが、更にもう一つぐらい使えるボールを身につけたい。

4.防御率は、1点台以内 ◯

 春は1.09、秋は1.59 と基準を満たしている。プロ入りをするような選手ならば、0点台のような図抜けた成績も残して欲しいものだが、1.09 と優秀な数字を残しているので問題はないだろう。

(成績からわかること)

 私が観戦した春に比べると、この秋はあまり状態が良くなかったことがわかる。春の勢いがあれば、プロでもと短いところならという期待も抱ける成績だが、この秋の成績だと短いイニングでも厳しいのではという気がする。


(フォームを考える)

では実際、フォームのどの辺が問題なのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は比較的高い位置でピンと伸ばされており、甘さは残るものの適度に一塁側にはお尻が落とせている。すなわち体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球を投げても無理はない。しかし肘が下がって出てくるタイプだけに、こういった球を投げられても、思ったほどの効果は得られない可能性が高い。

 「着地」までの粘りも悪くなく、体を捻り出す時間もそれなり。カーブやフォークといった球種以外でも、良い変化球を投げられる可能性は秘めている。現状は、スライダー以外に際立つものは見当たらないのだが。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲での地面への押し付けが甘く、力を入れて投げるボールが上吊りやすい。更に体から離れて腕が振られており、より上体のブレを大きくしやすく制球を乱す要因になっている。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻の落としには甘さを残すものの、カーブやフォークといった球種は殆ど投げないので、特に肘への負担を考えることはなさそう。

 腕の送り出しも無理がなく、肩への負担も問題ないのでは。そう考えると、肩・肘への負担は少なく、リリーフでの活躍が期待できるタイプではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、イチ・ニ・サンのタイミングで合わせやすいのは気になる。それでも体の「開き」は早過ぎることはないので、コントロールを間違わなければ、痛手は食い難いはず。

 腕の最後までしっかり振れているのだが、変化球を投げる時に速球との違いが出やすいので注意したい。ボールへの体重の乗せ具合は良く、活きた球が打者の手元まで投げられている。あとは、上体が横に流れやすいので、その辺は注意したい。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りに、もう少し工夫が欲しい。あとの部分は、思った以上に良くできている。

 足の甲の押し付けの甘さや体から離れて腕が出てくるところが気になり、制球に不安を抱える。しかし故障へのリスクは少なく、リリーフ向きの人材ではないのだろうか。


(最後に)

 ボールの勢い、馬力は、今年の候補の中でもトップクラス。しかし合わされやすいフォーム、コントロールのアバウトさ、球種の少なさなど、1年目から即戦力でとなると、現状厳しいのでは?

 その辺、プロの育成・指導でどの程度変わって来るのか? 入団後劇的に変わらない限りは、ファームで基礎を積んでからということになりそう。そういった意味では、この選手の真価が問われるのは2年目以降ではないのだろうか。うまく導けば、チームの勝利の方程式に欠かせない一員になれるかもしれない。


蔵の評価:
☆☆ (下位指名なら)


(2015年 神宮大会)









 佐藤 優(東北福祉大4年)投手 187/75 右/左 (古川学園出身)





                  「春もっと評価をあげた一人」





 この春、西日本で最も評価をあげたのが、岡田 明丈(大商大)右腕。そして東日本では、この 佐藤 優(東北福祉大)だった。春のオープン戦に二度ほど足を運ぶも空振りで、どうして 春季リーグ戦の間に確認しておきたかった一人だった。

(佐藤 優とのエピソード)

 駒大とのオープン戦での登板を期待したものの、佐藤の登板はなかった。続く横浜商大戦にも足ぶも、部員に「佐藤の登板は今日ありそう?」と聞いたら、その隣にいた部員が本人で「今日は、ありません。明日の日通戦に投げる予定です」と教えてくれたことがありました。そんなやりとりもあったので、余計に佐藤を観てみたいという思いが高まります。

(投球内容)

 手足の長い、スラッとした投手体型。この佐藤といえば、大学選手権の下級生の時にも少し見たことがあったのを思い出します。当時のMAXは143キロぐらいでしたが、この春の最速は151キロに到達したと言われています。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ)

 私が観戦した試合でも、先発で140キロ台を割らないスピード能力があり、速い球は140キロ台中盤を越えてきます。ビシッとしたボールには、球威よりもキレを感じさせ、その球を両サイドに投げてます。しかし気になるのは、けしてボールの勢い・球質が悪いとは思わないのですが、合わせやすいフォームなのか? イチ・ニ・サンで待ち構えた打者が、苦になくはじき返してしまうところ。この辺に、下半身の粘りと投球の工夫が欲しい気がします。

変化球 スライダー・ツーシームなど

 横滑りするスライダーと、ツーシーム的な変化球を持っています。少し気になったのは、スライダーを投げるときに、腕が身体から離れて出てくる感じがして、フォームの違いで見極められてしまうのではないのか? そんな違和感を感じます。またツーシーム的なボールにも絶対的な威力はなく、あくまでもストレートがメインの投手だということ。

その他

 クィックは、1.0秒前後と素早く投げ込みます。しかし牽制は並レベルで、フィールディングは並以下かなという感じ。コントロールにこそ破綻はありませんが、投球術などのピッチングセンスはあまり感じません。現状は勢いで圧倒するリリーフの方が、この選手は向いているように思います。

(投球のまとめ)

 観戦した試合は、いつもに比べると、あまりよろしくなかったとのこと。しかしフォームの粘りや投球術などに関しては、調子の有無の問題とは関係なさそうで、こういったタイプなのだろうという気はします。

 しかしボールの勢いはもっとリリーフや良い時はあるでしょうから、そういう役割ならば面白いと思います。それだけにプロ志望届けを提出すれば、指名はされるだろうなという気はします。この時聞いた話では、プロ志望にするか迷っているとも耳にしました。



(成績から考える)

ではいつものように、残した成績から考えてみましょう。今春の成績は、

6試合 4勝1敗 33回 22安打 13四死球 39奪三振 防御率 1.09

1,被安打はイニングの70%以下 ◎

 リリーフでも地方リーグの選手なので、あえて70%という厳しいハードルを設けた。33回で22安打ということで、被安打率は 66.7% とこの厳しい条件を満たしている。いっけん合わせやすそうなフォームと、それほど奥行きを感じない投球に見えただけに、この数字はむしろ驚きだった。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 四死球率は、39.4% と基準である33.3%以下とは行かなかった。この数字が極端に悪いわけではないが、それほど細かいコントロールがないことを意味している。やはりボールの勢いで押す、リリーフの方が向いているということだろう。

3,奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ◎

 奪三振率は、1イニングあたり 1.18個 とイニングを遥かに上回る。この数字を、先発で残している点は素晴らしい。先発ならば0.8個以上のペースで奪えていれば、決め手があると評価したいところを圧倒している。ストレート以外で、そんなに三振を奪える球があるのだろうか?

4,防御率は、1点台以内 ◯

 先発ならば1点台を残せば、一つ合格の目安となる。それを、1.09 なのだから充分合格ラインだろう。まぁ地方リーグの選手だけに、0点台も期待したいところだが、その辺は秋にでも。

(成績からわかること)

 ボールの威力やコンビネーションなどに課題があるように見えたが、残した成績からすると、むしろ逆の印象さえ感じる。それだけ私が見た試合は、彼本来の内容からすると、程遠いものだったのかもしれない。多少アバウトな部分はあるが、リリーフならば悲観するほどの数字ではないと言えよう。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせており、お尻はそれなりに一塁側に落とせています。すなわち身体を捻り出すスペースが確保できているので、カーブやフォークといった球種を投げるのにも無理はありません。

 その一方で、「着地」までの粘りは特になく、体を捻り出す時間は並。曲がりの大きな変化球やキレのある変化球を生み出すには物足りません。この辺が、武器になるというほどの、絶対的な武器を見出せない原因ではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の押し付けも、映像を見る限り出来ているように見えます。実際ボールも、それほど上吊っていません。「球持ち」に関しては並の感じで、それほど指先の感覚には優れてはいなそう。おおよそ狙ったあたりに集めて来る、そういったタイプではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻が落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても無理がありません。しかしそういった球も特に見られないので、肘への負担は少なそう。多少ツーシーム的なボールを結構投げるので、その辺で心配は無きにもしもあらず。

 振り下ろす腕の角度にも無理はなく、肩にも大きな負担は感じません。それほど無理して投げ込む力投派ではないので、故障のリスクは低いように見えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 素直なフォームで、「着地」までの粘りが並で合わせやすいように感じます。それでも「開き」は早くないので、コースに集めていれば痛手は喰らいづらいと考えられます。

 振り下ろした腕は身体に絡んで来るので、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも適度に体重が乗せられているように見えますが、まだウエートが軽いせいか、それほど球威は感じられません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」「球持ち」にはそれほど問題は感じませんが、「着地」までの粘りがもう少し欲しい気が。

 故障のリスクは少なく、コントロールを司る動作は悪くないので、土台としては良いフォームをしています。あとは、肉体的にもう少し上積みができれば、まだまだ球威・球速を増して行くことも期待できそうしですし、フォームの構造上新たな変化球を習得して、ピッチングの幅を広げて行くことも期待できます。


(最後に)

 現状は、まだまだ発展途上の選手であり、これからの投手といった印象。そのため一年目からバリバリ活躍するというよりも、2年目・3年目と資質を伸ばして行くタイプだと考えられます。

 その資質を社会人で伸ばすのか、野球により専念できるプロを選択するのかは本人の考え方次第。少なくても、現時点でプロ入りできるだけの能力は備わっていると評価します。いずれにしても、リリーフから入って行くタイプではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆


(2015年 春季リーグ戦) 










 
 スラッとした手足の長い投手体型が目を惹きます。そこから常時140キロ台~MAX143キロのストレートには伸びと勢いを感じさせ、スライダーとのコンビネーション。また投球全体のまとまりの悪さは感じますが、素材としての魅力は中々のもの。最終学年までに、その素質を開花させられるのか注目されます。

(2013年 大学選手権)