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岡田 明丈(広島)投手のルーキー回顧へ







 岡田 明丈(大商大)投手 185/75 右/左 (大商大高出身)





                  「そんなに強心臓ではないぞ」





 ピンチでも全く顔色の変わらない、いかつい表情。また神奈川大学戦では、ノーアウト満塁のピンチを無失点で切り抜けるなど、この選手は強心臓の持ち主ではないかと見る向きもあるが、私は全く別の見方をしている。

 それは、西日本工業大戦のピンチの場面。全くベースカバーに入っていないところに送球してしまったり、その直後のバント処理の場面では、あわや暴投になるぐらい送球が乱れたりと、それほど冷静沈着タイプではないように思える。更に右打者内角を捕手が構えても、そこに投げきることができず真ん中近辺に甘く入って来るなど、この選手は見た目ほどハートが強いわけではないと私はみている。

(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションからゆったりと足を引き上げてくる姿は、どことなく大魔神・佐々木主浩(ベイスターズ)を彷彿とさせます。

ストレート 常時140キロ前後~MAX152キロ

 ピンチでもないときは、私が関西で見た時のように常時140キロ前後ぐらいで、勝負どころで145キロを超えるようなボールを投げ込んできます。特に神奈川大でノーアウト満塁の場面で登場したときは、150キロ台を連発(MAX152キロ)。彼の、本当の力が引き出された瞬間でした。そのスピード能力は、西日本屈指だと言われるのも頷けます。

 しかし大会を通じて感じたのは、思ったほどストレートのコントロール(コマンド)が高くないということ。大体大戦では、6回2/3イニングで5四死球出していたように、下級生時代の悪癖が覗くときもあります。この春はそういった制球の不安がなくなっていた
はずですが、大学選手権の緊張した舞台ではコントロールが不安定でした。

 右打者クロスへの球筋は比較的安定していますが、前にも書いたように捕手が内角に構えても投げきれず真ん中近辺に集まります。左打者には外角高めに速球を集め、内角には基本的にカットボールを使っています。また力を抜いて140キロ級のボールを投げているときは、ストレートではなくカットボールやツーシーム系と微妙に変化をつけていると思われます。また150キロ前後のの球速が出ていても、それほど苦になる球ではありません。神奈川大のノーアウト満塁の場面でも、150キロ台連発しても空振りを奪って抑えたわけではありません。そういった意味では、打者の空振りを奪うような質の良いボールや合わせ難いフォームではないはず。

変化球 スライダー・カーブ・フォーク・カットボール・ツーシームなど

 130キロ台後半のカットボール・ツーシーム、130キロ前後のスライダー、120キロ弱のカーブなどを使い分け、130キロ台前半のフォークのような沈む球もあります。それほど空振りを誘うような絶対的な球はないのですが、右打者の外角低めのボールゾーンに切れ込むスライダーを振らせるのが一番三振を奪えるパターン。それにフォークもありますが、これはスプリット気味に小さく沈む球で引っ掛けさせる程度のもの。結局神奈川大のタイブレークで打たれた球種は、このフォークが落ちきらなかったのと、甘く入ったスライダーだったというのは、なんとも悔いの残る負け方でした。

(投球のまとめ)

 リーグ戦では、45回1/3イニングで5四死球という安定感を示しましたが、大学選手権ではボールのバラつきも目立ち、制球のアバウトさを感じます。それだけ力を入れて投げてしまうと、コントロールがあやふやになるということでしょうか。

 更に武器にできるほど絶対的な変化球もなく、ストレートでも打者の空振りを誘えるほどではないことを考えると、プロの即戦力として、どれほど一年目から期待できるかは微妙だと感じます。優れている点は、左打者内角を厳しく突くことができる、カットボールの精度。このコントロールには確かなものがあり、自信を持って良いと思います。

 まだ成長途上の選手との印象が強く、プロで一年ぐらい経験させたら、どうなるのかな?という期待感はあります。150キロ級のボールを連発でき、ある程度のまとまりはあることを考えると、秋によほど失速しない限りは、1位指名の中には入るだろうなという気はしていますし、それだけの評価はしても良いのではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 まだいろいろな課題があることがわかってきましたが、その要因が何なのか?フォームを分析して考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。そのため体を捻りだすスペースが確保できず、カーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 「着地」までの粘りも淡白で、体を捻り出す時間も充分ではありません。そのため変化球の曲がりの大きさやキレも中途半端になりやすく、現状武器にするほどの球がないのも頷けます。今のフォームを継続してゆくのであれば、スピードのある変化が中心になり、カットボール・ツーシーム・スプリットという球に活路を見出そうとするのは頷けます。あとは、スライダー・チェンジアップの精度を、今後どこまで高められるかではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けはしやすいはず。右打者内角へのコントロールがつかないのは、心理的な部分が大きいのでは? 足の甲での地面への押し付けは浮いてしまっており、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのでしょう。その辺が、コントロールを乱す要因になっています。

 「球持ち」は結構良いようには見えるのですが、実際指先の感覚はそれほど優れているようには見えないのですが・・・。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせない割に、カーブやフォークも織り交ぜてくるので、肘への負担が少ないとは言えないのでしょう。しかしフォークというよりも、スプリットのように浅く握っている可能性が高く、それほど気にするほどではないのかもしれません。

 腕の送り出しには無理はなく、肩を痛める可能性は低そう。力投派でもないので、消耗も激しいタイプではないようです。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りに欠け、打者としては合わせやすいのでは? 体の「開き」は並程度で、球の出どころはは平均的でしょうか。

 振り下ろした腕は身体に絡んでくるので、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールに体重が乗せきれておらず、打者の手元まで生きた球が行きません。この辺が、球速の割に打者から空振りを奪えない要因だと考えられます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」に課題を残します。「球持ち」は良い方だと思いますが、「開き」も平均的。けして、実戦的なフォームだとは言えません。

 コントロールを司る動作も、足の甲の押し付けができないで浮いてしまっている。お尻が落とせないフォームゆえに、肘への負担は少なくないなど、推せる材料はあまりありません。一つ言えるのは、下半身の使い方に課題があるということ。


(最後に)

 大魔神・佐々木主浩の大学4年時も、力量的には今の岡田と大差ありませんでした。また速球に関しては、比較的見やすいフォームだったのも同じ。しかし佐々木の場合は、プロ入りしてからフォークという魔球を手に入れることで、この欠点を物ともしない活躍をします。それでも佐々木の一年目は、けして大活躍という内容ではありませんでした。

 さて岡田が、今後佐々木同様のフォークボーラーになるのか?と言われると、これはなんとも言えません。肘への負担を押してでも、フォークボールに徹した佐々木のような道を歩むとか、それに岡田が同じようなフォークを操れるようになれるかは全くわかりません。

 大学時代の力量的には極めて似た感じの二人ですが、そこからどう変わって行けるかは現時点では想像できません。現状ハズレ1位ぐらいの力はあるけれど、即戦力としては厳しいというのが現在の評価。まず一年目は場数を踏んで、彼が本当に飛躍するのは2年目以降ではないか、そんな気がします。獲得する球団には、その辺を踏まえて指名して欲しいなぁと願います。


蔵の評価:
☆☆☆


(2015年 大学選手権)