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原 樹理(ヤクルト)投手の、ルーキー回顧へ







 原 樹理(東洋大4年)投手 180/79 右/右 (東洋大姫路出身)
 




                    「1位指名の片鱗示す」





 春季リーグ・青山学院大戦では、吉田 正尚(オリックス1位)外野手と、気合満点の対戦を魅せてくれた 原 樹理 。この秋の駒大戦では、今永 昇太(DeNA1位)投手と、一部昇格をかけて息詰まる投手戦を魅せてくれた。春とはまた違う新たな一面をみて、彼への評価も変わることになる。


(投球内容)

 非常に正統派の、教科書にしたいような綺麗なフォームから投げ込んで来る。この投手の素晴らしさの一つに、立ち上がりからの制球の高さがある。普通中々立ち上がりはコントロールが定まらないものだが、この投手は立ち上がりからボールを上手く操ることができている。

ストレート 常時140キロ前後~MAX92マイル(147.2キロ)

 原のいつも投球では、130キロ台後半~140キロ台前半ぐらいで、もう一つ球威・球速が平均して物足りない。しかし春の青学戦や、この秋の入れ替え戦のような気持ちが入った試合では、コンスタントに140キロ前後~勝負どころでは140キロ台中盤の球で押してくる馬力を秘めている。特に気合が入った時のボールには、プロでも通用するだけの勢い球威が感じられる。

 この原の優れた資質は、ストレートのコマンドの高さ。両サイドにキッチリ投げ分けるコントロール・打者の内角を厳しく突けることこそ、この投手の大いなる強味。ストレート自体物凄くピュッとキレるとか、グ~ンと伸びてくるわけではないのだが、狙ったところにピンポイントで投げ込める能力は極めて高い。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・スプリット・カットボール・ツーシームなど

 春までは、横滑りするスライダーとのコンビネーションが中心でした。そしてこの球が、時々高めに甘く入ってくるところが原の大きな課題でもあったわけです。しかしこの秋は、このスライダーが陰を潜め、135キロ前後のカットボールのような小さな変化を中心に組み立ててきます。この球をを左打者の内角に食い込ませてくるので、左打者にとっては厄介。右打者の内角にも、ツーシームだかシュート系の球で胸元を突いたりします。

その他に、左打者外角にチェンジアップや外角に決める外スラも使ってきたりします。また外角低めにフォークを落として来ることもあり、かなり的を絞り難い配球が持ち味。余裕が出てくると、緩いカーブを投げる時もあります。

その他

 高校時代は鋭い牽制を魅せていまいたが、今はパッと「間」を外したりして軽く投げてくることが多い。クィックは、1.0~1.1秒以内でまとめられており、まずまずの素早さ。フィールディングも上手く、投球以外の技術・センスにも優れます。

 「間」外し方などの危険回避の嗅覚に優れていたりと、投手らしい投手との印象を受けます。プロでも先発タイプ、そういった投手であるように感じます。

(投球のまとめ)

 相手の踏み込みを封じ、的を絞らせないのがこの投手の持ち味。また短期的にエネルギーを集約することもできますし、長期的に集中力を持続するような、息詰まる投手戦にも強さを発揮。特に凄みを感じる投手ではないのですが、心身共にタフなのが、この投手の大きな特徵だと言えるでしょう。実際緒戦よりも、連投した方が調子が上がって来るというタイプの選手のようです。


(成績から考える)

最終学年での成績を振り返り、その傾向を考えてみます。ちなみに4年春・秋には、東都二部の最優秀投手賞・4年秋は、リーグMVP。通算20勝13敗 の成績を残している。ただし1年時以外は、東都二部での成績ではある。

21試合 14勝4敗 160回 86安打 28四死球 106奪三振 防御率 1.07

1,被安打はイニングの70%以下 ◎

 東都二部の位置づけは難しいが、地方リーグの1部と同じファクターを当てはめてみた。被安打率は、53.8%と極めて少なく、充分に合格ラインだと言えるでしょう。多彩な球種で的が絞られ難く、投げミスも少ないことが伺えます。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、脅威の17.5%。なかなかこういったデータから選手を見ていても、観られる数字ではありません。このコントロールの良さこそ、原の投球を支えています。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ✕

 1イニングあたりの奪三振率は、0.66個 。これは、非常に平均的な数字。東都二部レベルで平凡なのですから、プロに混ぜれば決め手不足と言われても仕方がありません。基本的にバットの芯をズラシて討ち取る、詰まらせるのが持ち味。

4,防御率は1点台 ◯

 春・秋のリーグ戦とも、東都二部では1位の防御率。1.07ということで、0点台の絶対領域ではありませんが、それに近い数字は評価できる内容かと。

(データからわかること)

 被安打率と四死球の少なさは、特筆もの。その一方で、奪三振率の少なさは正直気になりました。やはり狙って三振を奪う必要性に迫られるリリーフよりも、典型的な先発タイプだという感じがします。


(最後に)

 春の青学戦・秋の入れ替え戦という、非常に大一番では、気合満点の投球を魅せ絶対値の高さを魅せてくれました。しかしこの投手、普段はそれほど見栄えをする球を連発する投手ではありません。むしろプロの長いシーズンを想定すると、そういったちょっと物足りないような投球の方が、多くなるのではないかと予想します。確かにMAXの時は見栄えして、プロの打者をも抑え込めるかもしれない。しかしそうじゃない時には、プロの打者を抑えられるのか?という疑問は未だに残ります。

 それでもコントロールと技術という部分は確かなので、速球が見栄えがしなくても、ソコソコ試合をまとめて来る可能性は感じます。春の印象では先発の5,6番目で、5勝前後ぐらいのタイプかなと感じました。しかし秋の内角への厳しい攻めを見ていると、1年目から、7,8勝ぐらいしてもおかしくないかなと気がしてきました。そのため評価も、春よりワンランクあげたいと思います。少なくても開幕ローテーション、その期待には応えてくれそうな選手です。

蔵の評価:
☆☆☆ (中位指名ぐらいなら)


(2015年 秋季入れ替え戦)










原 樹理(東洋大4年)投手 178/70 右/右 (東洋大姫路出身) 
 




                   「精神面が素晴らしい」





 プロで3年目ぐらいにはローテーションに入れるのではないかと評価していた 原 樹理 。しかしその期待とはよそに、東洋大に進んでからは、イマイチ殻が破れない日々が続く。チームもすっかり二部で低迷するなか、なかなか原の成績は上がって来なかった。そんな中、最終学年を迎えた彼が、完全に覚醒。今春は二部とはいえ 
8勝1敗 防御率 0.69(リーグ1位) という抜群の安定感を示してみせた。その投球の陰には、彼の並々ならぬ精神面の強さがあった。


(投球内容)

本当に、投手をするために生まれてきたのではないのか? そう思わせる実に綺麗なフォームをしている。

ストレート 常時140キロ前後~MAX91マイル(145.6キロ)

 甲子園でもMAX144キロを記録していた選手だけに、この4年間の間大きな球速の変化はなかったと言える。しかしこの春のリーグ戦では、コンスタントに140キロ台を刻み、勝負どころでは140キロ台中盤の力強いボールを投げ込んでくる。特にそのボールを、両サイドに投げ分ける確かなコマンド力が備わっている。ただしボール全体が、やや高いのは気になる材料。

変化球 スライダー・フォーク・シュート・カーブなど

 変化球の多くは、横滑りするスライダーとのコンビネーション。この他にフォークや、右打者内角には意識的にシュートさせて詰まらせる。更に緩いカーブもあるが、この球は殆ど投げて来ない。やはり速球同様に、スライダーもやや高めに集まる傾向があり、この辺が気になる材料。

その他

 元々フィールディングのうまさ、牽制も鋭い選手でした。更に高校時代1.1秒前後で投げ込んでいたクィックは、今や1.0秒前後と高速に。

 試合を作れる投球センス、コントロール、マウンド度胸があり、ボールの威力云々以前にも、極めて高い野球センスを持っている。

(投球のまとめ)

 プロの一軍打者を想定すると、やや苦しいかなと思える部分はあります。それでも天性の野球センス・熱いハートを兼ね備え、ボールの威力も高校時代よりはワンランク力強くはなっています。

 非常に微妙なレベルだとは思いますが、なんとか総合力で、一軍でも活躍できる可能性・余地は残されているのではないのでしょうか。

(最後に)

 できれば今の投球を一部でやった場合、どのぐらいの成績を残せるのか、どのぐらいのピッチングをするのか観てみたい気が致しました。しかし一部昇格はかなわず、ラストシーズンも二部に残留することが確定。

 社会人に進んでも、それほど得るものはなさそうな選手だけに、プロに入れる評価をされているのであれば、少しでも早くプロに入るべきではないのでしょうか。小松 聖(JR九州-オリックス)右腕あたりが、2年目で15勝ぐらいしたことを考えると、小松のアマ時代よりもワンランク上の投球をしている彼が、全く通用しないとは思えません。

 多大な期待はかけられませんが、上手くハマると面白いかもしれません。下位指名ながら即戦力でローテーションに加わるような投手が獲得できるかもしれません。彼がプロでどのぐらいやるのか、個人的には大変興味があります。


蔵の評価:
☆☆


(2015年 春季リーグ戦)









 原 樹理(東洋大姫路)投手 178/68 右/右





            「投手をするために生まれてきたような男!」





 手足の長いスラッとした投手体型、マウンドでの立ち姿、美しいフォームなどをみていると、まさに生まれながらの投手といった感じがして来る 原 樹理 。東洋大姫路野球部史上最高の投手と言われる力を、甲子園でも証明して魅せてくれた。今回は、改めて、この男の可能性を考えてみた。




(投球内容)

この投手は、誰がみても素晴らしいと思わせるセンスが最大の魅力。その一方で、何処か体の内から沸き上がるような底力が感じられない物足りなさがあるのも確か。私が生で観戦したAAA選手権での壮行試合でも、球威・球速は、物足りないものがあった。それでも悪いなら悪いなりに要所を締め、試合を壊さないのが、原 樹理 の原 樹理 たる所以なのだろう。

ストレート 130キロ台中盤~140キロ台中盤

この投手は、けして力で相手を圧倒するようなタイプの投手ではない。コースにキレのある球をしっかりコントロールして、変化球を上手く織り交ぜ討ち取って行く。逆言えば、甘く入れば相手が打ち損じてくれるような球威はないので、いかに相手に読まれない、あるいはコントロールミスをしない投球が求められる。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど

変化球も、ストレートを軸に上手く織り交ぜて行くコンビネーション投手で、何が絶対的な球種があるわけではない。曲がりながら落ちるスライダーを中心に、時々ブレーキの効いたカーブをアクセントに使い、追い込むとフォークで空振りを奪う。しかしこのフォークも、それほど多く使っているわけではなく、絶対的な球種とは成り得ていない。

その他

彼のセンスの高さを伺うのが、フィールディングも上手く、牽制も鋭く、クィックも1.1秒前後で投げ込むことができ、指先まで神経が行き届いたような投球ができること。間の取り方やマウンドの外し方に天性のセンスを感じさせ、メリハリを効かせた投球に、しっかり要所では一番良いボールが行く。まさに良い投手の典型なのだ。





(投球のまとめ)

投球に凄みは感じられないものの、天性のピッチングセンスを生かし試合を作ってくる。右打者には、外角中心にストレートとスライダーのコンビネーション。左打者には、両サイドに散らせる配球。ただ左打者に対しては、結構ボールがバラツイて、甘い球を痛打される場面が目立つ。左打者への投球が課題だが、右打者にはみられなかった、内角への厳しい攻めが左打者にはできている。それでも左打者からストレートを中心に痛打を浴びるのは、フォームが見やすいことに要因があるようだ。

(投球フォーム)

そこでここからは、投球フォームを分析して、彼の今後の可能性を模索してみたい。

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばすフォームなので、お尻の一塁側への落としは甘い。そのため見分けの難しいカーブや縦に鋭くフォークを投げるのは、正直不向きなフォームです。それでもある程度ブレーキの良いカーブや縦の変化をモノにしているのは、「着地」までの粘りがよく、体を捻り出すだけの時間を確保できているからでしょう。体への負担はかかりますが、そういった球は投げられることを彼は証明しています。ただ将来的にも、カーブやフォークの割合を増やすことは、危険な気が致します。むしろ違う球種を身につけることで、投球の幅を広げて行くことになるのではないのでしょうか。それが可能なフォームではありますし、新しいものをどんどん吸収して行ける器用さがありそうです。

<ボールの支配>

グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの投げ別けも安定。足の甲の押しつけは、膝小僧に土が着いてしまうぐらい深い重心の沈み込みがみられますが、返ってこれではエッジが活かせず、低めに集める効果は期待できません。実際彼の投球では、ストレートが結構真ん中~高めに上吊ることが多いです。「球持ち」は、前でボールを放せており、指先まで力が伝えられているように思えます。もっと体ができてフォームが固まってくれば、もっと高い精度の制球力を身につける可能性は高いと考えます。

<故障のリスク>

お尻を一塁側に落とせないので、変化球を投げるだけの体を捻るスペースが確保できておりません。そのためカーブやフォークを投げるだけの下地がないので、これらの球を多投すると体への負担は大きくなりそうです。この辺が、痛みの原因になっている可能性も充分考えられます。

振り下ろされる腕の角度をみてみても、無理な角度は作っておらず、肩への不安は感じられません。ただ故障に悩まされていた夏だけに、アフターケアには充分注意してもらいたいと思います。あまり全力で投げられないことが多いのは、体の調子と相談しながらセーブしていることが多いからではないのでしょうか。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りは作れているのですが、体の「開き」は少し早い気が致します。左打者から痛打を浴びるのが多いのは、より左打者の方が球の出所が見やすいからかもしれません。

腕の振りは良いので、最後まで体に腕が絡んできます。速球と変化球の見分けは、かなり難しいと思われます。ただ「体重移動」は不十分で、ボールにしっかり体重が乗せられておりません。ボールに凄みがないのは、体重がしっかりボールに乗っていないからだと考えられます。

(投球フォームのまとめ)

「着地」「球持ち」などに優れている反面、「開き」や「体重移動」などに課題を抱え、完成度の高そうなフォームも、プロという観点で考えると改善の余地がありそうです。

将来的には、高い制球力を身につけられると思いますが、プロでも一線級のストレートを投げられるのかは、今後の効率的なフォームの改善が成し得た時という条件がつきそうです。現状は、まだまだプロと比べると、ストレートは物足りません。同タイプの秦裕二(ベイスターズ)が伸び悩んだポイントは、まさにここだと言えるでしょう。



(最後に)

天性の投手としてのセンスは感じさせるものの、吉永健太朗(日大三)のような、底から沸き上がるような底力が感じられなかった点は、彼の物足りなさにつながっている。ただそれも、彼が次ぎに進むステージでの課題として残しておけばいいだろう。

高校時代のイメージは、智弁学園時代の 秦 裕二(ベイスターズドラフト1位)に似ています。ただ順調な成長曲線を辿るならば、一年目は基礎体力作り、2年目はファームのローテーション、3年目には一軍戦力と言う、ステップを辿り、近い将来、プロの先発の一角に食い込んで来る可能性は、かなり高い素材ではないかと考えられる。近年では、前田 健太(PL学園-広島)をみた時に同様のイメージを持ったが、彼もそういった投手に育つのではないかと期待したい。

すでにマウンド経験も豊富で、ピッチングも知っていることを考えると、大学で得られるものは、それほど多くはないだろう。負けないピッチング、要所を締められるメリハリの付け方を考えると、プロでも負けられない試合を任せられるような、エース格への成長も期待してみたい。ぜひ高校から、プロに入ってきて欲しい1人だ。

蔵の評価:☆☆☆

(2011年 AAA選手権)