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 21 今永 昇太(25歳・3年目)投手 177/80 左/左 (駒沢大出身・16年度1位)


(今永 昇太という男)

 
入団以来の2年間で 8勝・11勝 と順調に成績をのばし、長らくエース不在のチームにおいて、その地位に最も近い男。ストイックに野球に向き合う姿勢、チームに与える影響力など、すでにエースとしての資質を兼ね備えている。あと彼に足りないのは、それに相応しい成績を残すことではないのだろうか。



(ドラフトまでの経緯)

 
大学3年秋には、神宮大会で優勝しチームを日本一に導いた。その時点で「アマNO.1左腕」の評価を得ており、翌年のドラフト1位が確定的となっていた。しかし4年春は、肩痛のため全休。秋のリーグ戦の終盤でようやく復帰し、8割方投げられることを証明した。しかし各球団はその姿をみて、完全復調が望めるとみるか今後も肩痛に悩まされるかの判断に迫られ、結局DeNAが競合せずに今永の獲得に成功する。


(ピッチングスタイル)

 キレ味抜群のまっすぐを軸に、カーブ・スライダー・チェンジアップ など織り交ぜる正統派のサウスポー。大学時代から一通りの変化球は投げられたものの決め手に欠け、最後はストレートに頼らざる得なかった。しかしプロ入り後は、変化球のキレ・精度を向上させることで、速球に依存しすぎないピッチングを確立。身体への負担も、大幅に軽減させることに成功した。


(さらなる進化)

 入団2年目になり、後輩の濱口遥大の武器であるチェンジアップを参考に、自らのチェンジアップに磨きをかけ、この球で三振を奪うケースが増えた。シーズン終盤には、真っスラと呼ばれるストレートと全く見分けのつかないカットボール的な球種を身につけ、投球の幅を大きく広げることに成功。常に新しいものを貪欲に吸収しようという姿勢を持ち続け、日々進化を続けている。





(不安要素)

 好調時には、真っ直ぐも140キロ台後半を記録する。しかし持病である肩痛の影響か? 疲れが溜まって来るとパフォーマンスが大きく低下するときがある。一時的なものならば良いのだが、将来的に大きな故障に繋がなければという恐れは常につきまとう。


(技術的には)

 肩への負担を軽減させるためなのか? 1年目ほどは、腕を無理に上から振り降ろそうという意識は薄れているように見える。またあくまでもボールにしっかり体重を乗せてから投げるタイプではなく、上体と腕の振りの鋭さでキレを生み出す。こういったフォームは切れ味勝負なので、疲労が溜まってきて切れが鈍ると打ち込まれるケースが目立つ。いかに年間を通じてこのキレを維持できるのかに懸かっているが、それは非常に難しい。


(これからの今永昇太は)

 大きな故障さえしなければ、向こう10年はベイスターズのエースとして君臨する存在ではないのだろうか。ポテンシャル的には、12勝前後ぐらいがMAXの選手という気もする。しかしその意識の高さから、かの桑田真澄(元巨人)のような、素材を超越した成績を残すことが期待できる稀な存在。年によっては、15勝前後までその勝ち星を伸ばせる年も出てくるかもしれない。まず今年は、エースとして君臨する最初の年となりそうだ。


(2018年 3月21日更新)


 








今永 昇太(DeNA)投手のルーキー回顧へ







今永 昇太(駒沢大)投手 178/80 左/左 (北筑出身) 
 




                       「明るい兆し」





 春のリーグ戦は、左肩痛で完全リタイア。この秋も9月に見たときは急仕上げの印象は否めず、本来の今永の投球とは程遠いものがあった。そこでシーズン途中からは先発から外れ、リリーフで登場したり登板しなかったりと、完全に入れ替え戦に向けての調整だった。そして満を持して登場した東洋大との入れ替え戦。今永は、今までの不安を払拭する見事な投球を魅せてくれた。


(投球内容)

 9月のリーグ戦復帰時には、球速は出るもののボールに勢いがなく、苦になく打者にはじき返されていました。その頃に比べると、かなりボールの勢い・コントロールも改善されつつあるように思います。

ストレート常時140キロ前後~MAX91マイル(145.6キロ)

 2回ぐらいまでは、ボールが真ん中~高めのゾーンに浮きがちで、甘い球も少なくありませんでした。しかし3回ぐらいから真ん中の高さに集まりだし、両コーナーへの投げ分けもだいぶ思い通りに変わってきます。そこからは、元来の今永の投球に近いものが観られました。

 以前は、球威に欠けるもののキレ型の球質。しかしこの日の投球を見ていると、少し球威の加わった力強い球質に変わっています。この辺は、肩を痛めたことにより腕の回旋に変化が出たせいなのかは定かではありません。空振りは以前ほどという感じではありませんでしたが、まだコントロールミスが少なくなかったので、今の球質の方が痛手は食らい難いかもしれないと感じます。

 また右打者の内角にズバッとクロスファイヤーの球質で見逃しを誘うなど、失っていた自信を取り戻し、大胆さが蘇りつつありまます。立ち上がりの不安定さを乗り越えさえすれば、持ち味が出るぐらいの状態にはあるようです。あと昨年の寸評にも書きましたが、四死球で自滅するタイプではないものの、結構ストレートが暴れるアバウトな部分があります。ピンポイントに投げ込むというタイプではなく、おおよそ両サイドにちらして来るタイプです。

変化球 スライダー・遅延時アップ・ツーシーム・カーブなど

 今永の最大の武器は、曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーション。これに右打者には、外角に小さく沈むツーシームだかチェンジアップ系の球。余裕が出てくると、カーブを織り交ぜてきます。何か絶対的な球があるわけではなく、こういった球種とストレートを織り交ぜながら、相手を討ち取って来るわけです。

その他

 特に走者をベース上に釘付けにしようとか、そういった鋭い牽制を入れて来るわけではありません。クィックは、1.0~1.1秒と、まずまずの素早さ。フィーディングの動きはそれなりといった感じで、プロレベルでも見劣ることはないでしょう。

(投球のまとめ)

 微妙なところを突いて出し入れするとか、間合いを変えて相手のタイミングをズラすとか、そういった細々した技術はありません。しかし大崩れしないでゲームメイクできるまとまりと、要所で力を発揮する精神面の強さがあることで、勝利をもぎ取れるタイプだと言えます。

 結果的には、12奪三振・3安打・3四死球・無失点完封をしたことで、今永完全復活だと盛り上がりました。しかし私には立ち上がりの不安定さを感じ、東洋が打ち損じてくれたなと感じました。それに続く第三戦では、5回1/3イニングで11安打9失点で敗戦します。確かに緒戦の快投で、95%が回復できたとつぶやきました。しかし残りの5%の不安が、第三戦への結果とつながったように思います。


(最後に)

 昨年の寸評でフォーム分析したので致しませんが、それほどフォームの観点で言えば実戦的というほどではありません。その時指摘したのは、「体重移動」がもう一つで、イマイチ手元までボールが来ないという不満をあげました。しかし球質が変わっていたのは、この辺が昨年よりも下半身をスムーズに使えるようになった可能性は充分考えられます。

 成績的にも検証しましたが、昨年ような投球ができれば、すべてのファクターを満たし推せるだけの投手ではあります。ここはじっくりと肩を休め、プロでもけしてオーバーペースにならず調整できれば、開幕からローテーションに入ることも期待できるでしょう。現状肩のスタミナなどの問題からも、登板間隔が短い中での投球は厳しいと考えられます。しかし間隔を開けて調整できれば、95%ぐらいまでは回復していることを証明してくれました。

 更にこのオフのシーズンに肩を休め、キャンプ・オープン戦で感覚を取り戻せば、元の良い時の状態と同等のパフォーマンスは期待しても良いのかなと。能力が出せれば、開幕ローテーション入りで10勝前後は期待できるところ。そうすれば必然的に、セリーグの新人王というものも見えてくるのではないのでしょうか。その期待に応えるだけの技術と精神力は、身につけている選手だと言えます。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (上位指名にふさわしい選手)


(2015年 秋季東都入れ替え戦)









今永 昇太(駒沢大3年)投手 178/78 左/左 (北筑出身) 





                    「目玉ではないね?」





 3年秋の神宮大会で日本一になり、名実共に2015年度のドラフトの目玉候補に踊り出た 今永 昇太 。しかしその投球内容は、その年の目玉というのには物足りない。あくまでも、有力な1位候補、そんな気がするのだ。今回は、その辺の事情について考えてみた。


(投球内容)

 調子の好い時は、ポンポンと相手を追い込み自分のペースに引き込んできます。しかしランナーを背負うと途端に慎重になり、制球を乱したり、ボール球を降らせようとばかりして、投球に大胆さがなくなるのが気になります。その辺の部分を神宮大会では反省したのか、ピンチでもストレートでガンガン押してきました。

ストレート 常時130キロ後半~140キロ台中盤

 神宮大会でもピンチの場面を遭遇しましたが、145キロ前後のボールを連発していました。しかし元々キレ型の球質なので、打者を圧倒するような凄みは感じられません。ピンチになると、結構ボールが暴れます。けして四死球で自滅するようなタイプではありませんが、思ったほど細かいコントロールないように感じます。特にこの選手は、最後にズバッと絶妙のところにというの場面が、あまり観られません。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ

 変化球の多くは、大きく横滑りながら沈むスライダー。他にもっと緩いカーブとチェンジアップは投げますが、それほど大きな意味はありません。スライダーも三振を奪えるほどではなく、投球のアクセントやカウントを稼ぐためのボールとなっています。あくまでも投球の主役は、ストレート。

その他

 牽制は結構入れますが、けして打者を刺せるほど上手くはありません。あくまでも、走者をベースに釘付けにするためのものかと。クィックは、1.00秒~1.05秒ぐらいと素早く、この点では評価できます。フィールディングなどもそれなりにという感じでしょうか。

(投球のまとめ)

 キレの好い速球が目立つ一方で、それほど絶対的な変化球があるわけではありません。四死球こそ出さないものの、細かいコントロールはありません。更にランナーを背負うと、かなりその辺も怪しくなってきます。

 そんなに微妙な出し入れができるコントロールや投球術はなく、枠の中に勢いのあるボールを投げ込むといったタイプ。むしろこれで、よくここまで抑えられるなと感心致します。この選手は、ピンチになると強さを発揮する、そういったタイプでありません。あくまでも、平常心で刻み続けることが、好投の条件になります。





(投球フォームを考える)


<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側に落ちません(左投手の場合は)。そういった意味では、体を捻り出すスペースは充分ではなく、カーブで緩急を効かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方。

 足を地面に着きそうなところからの一伸びがあるので、体を捻り出す時間は確保。そういった意味では、カーブやフォーク以外の球種ならば、まだまだ投球の幅を広げて行ける可能性があります。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドの投げ分けはまずまず。しかし足の甲での地面への押し付けは浅く、時々高めに抜けたりします。「球持ち」も並で、それほど指先の感覚には優れません。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブやフォークやシュートなど肘に負担のかかるボールは投げないので、悲観することはなさそう。

 振り下ろす腕の角度にも無理はなく、肩への負担は少ないでしょう。そういった意味では、それほど故障の可能性は高くないと思います。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りはあり、打者としてはそれほど合わせやすくはありません。体の「開き」は平均的で、可も不可もなしといった感じ。

 腕はしっかり最後まで絡んで来るなど、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールへの体重の乗せは不十分で、打者の手元まで球威のある球が行きません。あくまでも上半身と腕の振りの鋭さで、ボールにキレを生み出すことになります。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」は悪くないものの「体重移動」に課題を残します。「球持ち」「開き」は並ぐらいでしょうか。

 コントロールを司る動作や故障のリスクも並ぐらいであり、それほど実戦的なフォームというほどではないことがわかります。

(成績から考える)

この秋の今永の成績は、本当に素晴らしいものでした。これを最終学年でも持続できるのかが、目玉となる一つの条件かと。

11試合 7勝2敗 86イニング 54安打 19四死球 89奪三振 防御率 1.67

1,被安打はイニングの80%以下 ◎

 86イニングで54安打ということで、被安打率は 62.8% 。プロでも、即一軍で活躍できそうなレベルです。

2、四死球は、イニングの1/3以下 ◎

 四死球は19個であり、四死球率22.1% と安定しています。特にランナーがいない時は、非常にポンポンと相手を追い込んでゆけます。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 先発で登板することが殆どの彼が、イニング数以上の奪三振を誇ります。それほど決め手がある投手には見えませんが、左腕らしくキレのある球で三振を奪います。

4、 防御率は、1点台以内 ◯

 今秋の防御率は、1.63 でリーグ3位。 充分基準内なのですが、プロで上位指名される選手なら一度ぐらいは0点台と思いました。しかしこの投手は、4年春のシーズンで 0.87 とリーグ1位の成績で、このファクターも満たしています。

(データからわかること)

 3年秋に残した成績は、ほぼ完璧というぐらい素晴らしいものでした。この内容を最終学年でも持続できるようならば、凄いことかと思います。プレッシャーのかかる立場になり、どのぐらいの成績を残すのか気になります。


(最後に)

 実際投げるボール・フォーム分析の観点からすれば、絶対的な存在だとは感じません。しかし秋に残した成績は、目玉に相応しい成績だったと評価できます。

 このどちらを評価するのかは微妙ですが、私は 7,8勝~11勝ぐらいが、この選手のいまの力ではないかと思います。そういった選手を、その年の目玉と呼んでいいのかには疑問が。しかし最終学年で更なる成長を遂げれば、充分に目玉になりえるでしょう。最終学年での投球、期待して見守りたいですね。


(2014年 神宮大会)