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阿部 寿樹(中日)内野手のルーキー回顧へ







 阿部 寿樹(26歳・HONAD)遊撃 185/80 右/右 (一関一-明大出身)
 




                    「見下ろしてプレーをしている」





 昨年ドラフト前に、中日からの指名が噂された 阿部 寿樹 。しかし指名されることなく、ドラフトでは涙を飲んだ。しかし今年は、良い意味で相手を見下ろしてプレーできる精神的余裕を感じる。そういった意味では、昨年よりも一皮むけた印象さえ残してくれた。


(プレースタイル)

 185センチの体格を目を惹く大型ショートで、強肩・強打のスケール型。社会人球界で、こういったタイプの選手が大成する例は珍しく、大概は粗さが解消されないまま埋もれてしまうことが多い。そういった意味では、非常にレアなケースだといえよう。


(走塁面:走塁偏差値 50)

 一塁までの塁間は、右打席から 4.3秒前後で到達。このタイムを、プロでドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、50前後となり、平均的な走力の持ち主。

 今年の都市対抗予選での盗塁はありませんでしたが、昨年の公式戦・118打席で2盗塁。プロのレギュラー選手の打席が500打席ぐらいですから、1シーズン8個ぐらいの計算になります。正直プロで盗塁はあまり期待できませんが、全く動けない選手ではありません。

(守備面)

 最大の魅力は、深いところから刺せる確かな地肩。球際のプレーは上手く、自分が届く範囲でのプレーには光るものがあります。その反面、大型故に最初の一歩目が鈍いのと、二遊間を担うにしては少し重苦しいのが気になります。またスローイングが乱れることもあり、プロのレギュラーショートとしてはちょっと物足りない。今年の都市対抗予選でも、2試合で2失策と安定感はイマイチ。

 内野なら何処まで守れる器用さはあるものの、それじゃ二遊間を年間任せられるほど上手いかと言われると疑問。ある意味、器用貧乏な側面があるのかもしれません。しかし三塁手としてならば、プロでも上手い部類になるのではないのでしょうか。この守備からも、プロの控え野手としてはありですが、レギュラーとなると厳しいという気はします。


(打撃内容)

 打席での精神的な優位からか、甘い球を思いっきり引っ叩きます。けして長距離砲ではないのですが、二塁打・三塁打などの長打は期待できるタイプではないのでしょうか。

<構え> 
☆☆

 軽くクロスに構え、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢は並ぐらいで、少し前かがみの構えからも、全体のバランスとしてはどうでしょうか? 構え自体は、昨年からほとんど変わっていません。

<仕掛け> 早め

 投手が足を引き上げる時に、自分の足も引き上げシンクロ。そこから一度足をおろし、投手が重心を下げる時に再び動き出す「早めの仕掛け」を採用しています。

 こうやって見てみると、対応力重視のスタイルであり、長打よりも率を重視していることがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を引き上げ、まわしこんでベース側に真っ直ぐからインステップして踏み込んできます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でも、合わせるのは下手ではないはず。むしろ問題なのは、外角の難しい球でも、無理に引っ張りにかかって引っ掛ける場面をよく見ます。踏み込んだ足元も、インパクトの際にカカトを地面にめり込ませ最低限我慢できていますが、地面から早く足が離れるのをみると、引っ張る意識が強いのがわかります。

 元来右方向にもはじき返せる打者なのですが、この打ち方だと外角でも高めのゾーンじゃないと厳しいはず。外角低めや逃げてゆく球に対しては、苦手意識を持っているのでは? 下半身の使い方も、昨年とほとんど変わっていません。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、特に力みは感じられません。バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトで振りぬくタイプではありませんが、アウトコースの球には無理なくバットが出ています。バットの先端であるヘッドも下がらないので、広い面でボールを捉えることができています。
 
 大きな弧を描くとか、フォロースルーをとってボールを遠くに運ぶというタイプではなく、甘く入ってきた球を思いっきり引っ張ったくそういったスイングで、強い打球で野手の間を抜けてゆきます。昨年からの成長は、ヘッドが下る癖を抑える意識が持てるようになってきたので、打ち損じが減ったことではないのでしょうか。あとは、無理に引っ張ろうという意識を捨て、自然体にセンターから右方向にも打球が飛ぶようだと良いのですが。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げは忙しいのですが、目線の上下動は平均的。体の開きは早いのですが、カカトを押し付けることで最低限の開きで押しとどめることができています。軸足も少し前に傾いており、体が突っ込まないように注意したいですね。

(打撃のまとめ)

 都市対抗予選・都市対抗本戦と、内容はイマイチ。しかし年間通してHONDAの不動の三番に定着していましたし、春先の内容は悪くありませんでした。都市対抗では、結果を求めすぎて引っ張りにかかり悪循環にハマっていたように思います。スイングのメカニズムは、昨年から大きくは変わってはいませんでした。


(最後に)

 昨年、同じ社会人の遊撃手・遠藤 一星 が指名され、阿部が指名漏れしました。二人の1番の違いは、攻守における安定感の差であったように思います。今でもその傾向は強いのですが、プレーヤーとしてのスケール・化けた時の期待値は、阿部の方が大きいと言えるでしょう。

 しかしプロレベルでは、何処でも守れても結局は三塁かなぁという印象であり、またプロのレギュラーになるというよりは、今年も競争煽る・控えレベルの選手を獲得したのかなという気がします。けしてこの一年のプレーが無駄だったとは思いませんが、年齢を一つ重ねた分と精神的に成長した分は、評価的には相殺かなという気がします。そのため評価は、昨年と同じということにさせて頂きます。


蔵の評価:
 (指名の最後の方なら)


(2015年 都市対抗)










阿部 寿樹(25歳・HONDA)遊撃 185/80 右/右 (一関一~明治大出身) 





               「社会人では珍しいスケール型内野手」





 中日の落合博満GM も視察して注目していると記事になり、一躍脚光を浴びる 阿部 寿樹 。一関一時代から、日本人離れした大型遊撃手として注目されてきた。明大でも主力として活躍するも、ドラフト候補という派手な活躍は魅せていない。社会人3年目・通常のスカウティングからは溢れ落ちそうなところを、落合GMは見逃さなかった。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間を、右打席から4.28秒ぐらいで駆け抜けます。これを左打者に換算すると、4.03秒ぐらいですから、プロに混ぜても俊足レベルの脚力。ただしこの選手、けして盗塁をバシバシ仕掛けてくるようなプレースタイルではありません。六大学の4年間でも僅か2盗塁しかしていませんし、それは今も殆ど変わっていません。

 高校時代から、最初の一歩目の反応が遅れるの守備が気になります。先日の関東選手権での観戦でも、最初の反応がちょっとどうかなぁという疑問はあり、その点であまり守備範囲は広く感じません。

 しかしながら、球際でのグラブ捌きは上手く、また深いところからでも送球が乱れない確かな地肩の持ち主。イメージ的には、守備範囲は限られるものの、捌けるボールは確実に捌くイメージがあります。しかし都市対抗予選の4試合で、失策3個と安定感がない数字が残っています。限られた試合を見ている限り、プロでもニ遊間を担える選手だとは思うのですが。


(打撃内容)

 明治大は、3割を何度か記録するなど、全く打てない選手ではありませんでした。今は、広角に打ち返す強打が持ち味。都市対抗では下位打線でしたが、秋の関東選手権では3番打者として出場。

<構え> 
☆☆

 軽くクロスに構え、グリップを高めに添えます。腰の据わり具合・全体のバランスとしてはイマイチで、両目で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。特に構えた時に存在感はなく、いかにも下位を打つ打者という印象があります。これだけの体格をしているのですから、もっと構えた時点で威圧感を出した方が好いのではないのでしょうか。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下る時に始動してくる、「早めの仕掛け」を採用。意外に対応力を重視した、アベレージヒッターの傾向が強いのに驚きます。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」は充分あるので、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方。ベース側にインステップして踏み込むように、外角の球を強く意識しています。残念なのは、踏み込んだ足元がインパクトの際にブレてしまうので、外角を好む割に、外角の厳しい球や低めの球にはあまり強くない傾向にあるのが気になります。外角の球を右方向に打つときは、恐らく高めの球を払うようなスイングで捌いていると考えられます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、速い球に立ち遅れる心配はなさそう。バットの振り出しも、上からミートポイントまでロスなく振り下ろせます。気になるのは、体開きが早く、それでいてバットの先端であるヘッドも下がるので、打ち損じが多いこと。それでも大きな弧を描き、最後まで力強く振り切れます。そのため打球一つ一つは、かなり強烈なものがあります。

<軸> 
☆☆

 足の上げ下げがあり、目線はそれなりに動きます。体の開きも我慢出来ていませんし、軸足も前に崩れがち。体が突っ込まないように、普段から気をつけたいところ。

(打撃のまとめ)

 始動を早めていろいろな球に対応するようにタイミングを図っていたり、ボールを捉えるまでのスイング軌道にも無駄がありません。問題は、ボールをキッチリ叩く段階で、足元がブレてしまったり、バットの先端であるヘッドが下がり気味で、打ち損じが少なくないことでしょう。

 あまり綺麗にヘッドが抜けて来ないのも気になるのですが、打球そのものは強く、持っているポテンシャルの高さは感じます。


(最後に)

 深いところから刺せる強肩のと球際での強さを発揮する守備、走れはしませんが走力も合格点。打撃もあたった時の、打球の強さには目を見張るものがあります。

 今年は都市対抗でも.444厘を残すなど、みるみる成長を遂げている成長株。こういった社会人で、高い身体能力を持ったスケール型は珍しく、素材としてはプロを意識できる存在。モノになるかは微妙ですが、貴重なニ遊間候補でもあり、下位指名ならありなのかなと思える選手でした。社会人での位置づけは、数年前にDeNAに4位指名された、赤堀 大智(セガサミー)選手の、内野手版みたいな存在であるように思います。こういった選手がプロで大成するようだと、スカウティングの幅も益々広がって行けそう。普段はそれほどドラフト戦線に詳しくない落合GMだからこそ、先入観無しに見出すことが出来た選手ではないのでしょうか。


蔵の評価:



(2014年 関東選手権)










阿倍 寿樹(明治大)遊撃 184/75 右/右 (一関一出身) 


(どんな選手?)

 一関一高時代は、大型遊撃手として注目された選手です。明大に進んでからも、通算で.294厘・昨秋も.306厘と、それなりに打ってきた選手です。ただ今春は、打率.186厘と、成績は振るいませんでした。

(打撃内容)

 高校時代の長打力が忘れられないのか?大きな弧を描きながら、最後フォロースルーを大きくとる強打者です。その割に通算では1本の本塁打も放っておらず、少し打撃の粗さを解消する必要があるのではないのでしょうか。チームでは、中軸を任されたりはしているのですが・・・。

 スクエアスタンスで、前の足をカカトを浮かし、グリップを高めに添えて構えます。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢もよく、自分のリズムも刻めて構えは悪くありません。

 仕掛けは、「平均的な仕掛け」を採用するなど、中距離・ポイントゲッタータイプ。足を引き上げ強く踏み込むタイプで、けして変化に応じて着地を変えるような対応力を重視したスタイルではない。残念なのは、真っ直ぐ踏み出した足が、インパクトの際にブレてしまうこと。これでは外の球に対し我慢できず、打ち損じも少なくないだろう。

 打撃の準備段階である「トップ」を作るまでは遅れないが、バットを振り出す際に肘が下がってしまい、腰の逃げが早い。スイングもドアスイングになってしまい、打てる球は限られる。頭も結構動いているし、開きも我慢できないので、空振りのあとバランスを崩してしまう。まずは、足下がブレないようなバランスの良いスイングを身につけるべきだろう。

(守備・走塁面)

 遊撃手としては、高校時代のようなダイナミックさはありませんが、だいぶ上手くなっていると思います。地肩も基準レベルはありますし、無駄な動きが減ってきました。上のレベルでも、二遊間を任されるのではないのでしょうか。

 走力に関しては、基準である4.2秒(左打者換算に直しても)を下回る脚力で、走力でアピールするタイプではありません。今シーズンも、盗塁は1個も記録しませんでした。

(今後は)

 184センチの大型遊撃手としてのスケールが魅力でしたが、まだ粗い打撃が解消できておりません。滅法上手いとは思いませんが、大型の割には遊撃手としてもソツがないと思います。社会人レベルならば、二遊間を担って行くのではないのでしょうか。まずは、打撃の確実性を高め、社会人でも活躍して欲しい1人です。


(2011年 春季リーグ戦)


 








阿部 寿樹(岩手・一関一)遊撃 184/68 右/右 

 昨夏は、1番・遊撃手として出場。180センチ台の大型遊撃手として注目される。大型故に、最初の一歩目の判断力が遅い印象はあるが、動きはダイナミック。ただまだまだ荒削りで、余計な動きが多い印象。地肩は、遊撃手としての基準レベルはありそう。

 一塁までの塁間は、4.6秒弱ぐらい(左打者に換算すると4.3秒弱に相当)と、プロの基準である4.2秒よりは少し劣る。それほど悲観する程ではないが、上のレベルで足を売りにすることはなさそうだ。

 打撃は、右に左へとはじき返せる広角打法。それほど凄みはないが、将来性を秘めた楽しみな素材だろう。高卒即プロと云うような成長曲線を描くことはないと思うが、彼も長い目で見てみたい大型内野手だった。

(2006年・夏)