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伊東 亮大(楽天)内野手の、ルーキー回顧へ








 伊東 亮大(25歳・日本製紙石巻)DH 194/92 左/左 (桐光学園-武蔵大出身)





                       「ちょっと厳しいかな」





 日本人離れした手足の長さと体格を活かし、抜群の長打力を秘めている 伊東 亮大 。特に春先のスポニチ大会では3本のホームランを放ち、その存在感を示した。弟は、元広島の 伊藤 昂平 。地元楽天が、指名するとの新聞報道もあり、にわかに注目度が増している。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は4.2秒前後と基準レベル。二塁までは8秒を切るような脚力の持ち主ですから、けして足は遅くありません。盗塁をするような走塁技術はありませんが、動けない選手ではありません。

 外野にも挑戦するとの記事もあったものの、いぜん守備はDH専門で守らず。大学時代は、1番・一塁手として出場するも、けして動きの良い選手ではありませんでした。桐光学園時代は、投手もやっていた選手ということで、地肩自体は弱くないと思うのですが、打球勘などが悪いのでしょうか? 現状の守備力はわからず、一塁ならばプロでも我慢できるレベルなのかも定かではありません。ちなみに武蔵大学時代には、一塁手でベストナインを獲得しています。


(打撃内容)

 踏み込んだ足元が早く地面から離れるタイプで、打球の多くはセンターからライト方向に集中する引っ張り専門のスイング。今年の都市対抗では、JR東日本東北の補強選手として出場するも、三振2つを含む、無安打で終わりました。特に注目された春先のスポニチ大会では、5試合で8本のヒットを放ち3本塁打・打率.381厘・5本のヒットが長打という破壊力で、私自身も、ホームランを目の当たりにしています。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスもそれなりで、けして悪い構えではありません。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 春先にレポートした時は「平均的な仕掛け」でしたが、都市対抗では投手の重心が下がる時に動き出す「早めの仕掛け」になり始動が早まっていました。意図してそうしていたのかはわかりませんが、より対応力を重視していたということでしょうか。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」は充分あるので、速球でも変化球でも幅広く対応できる打ち方。ただしこの選手の場合、変化によって踏み込むタイミングを変えているというよりも、大きく足を引き上げて強く踏み込むことに重点が置かれているので、それほど対応力が高いわけではないと考えます。

 ベース側に大きく踏み込むインステップを採用しており、長い手足を活かして少々の外角よりの球ならば充分巻き込むことが可能。ただし踏み込んだ足元がブレてしまったり、早く地面から離れるので、外角の厳しい球や低めの球に対しては、開きが早く踏ん張り切れません。あくまでも、引っ張り込めるボールじゃないと、自分のスイングができない脆さがあります。それでいて都市対抗では、高めの球を三振していました。

<リストワーク> 
☆☆☆

 早めに打撃の準備である「トップ」の形をつくってボールを持つことができるので、速い球に立ち遅れる心配はありません。しかし体の開きが早く、バットを振り出す時に体から離れて出来ています。捌けるのは引っ張れる球に限るのは、このような理由からでしょう。 ただしスイング自体は非常に力強く、まともに捉えた打球は、ピンポン球のように飛んでゆきます。この打球の強さ・飛距離は、日本人では稀な打者だと言えます。

<軸> 
☆☆

 足の上げ下げは大きいですが、それほど目線は上下に動いていません。しかし体の開きが我慢できないのと、軸足が前に崩れて突っこんでしまうなど、ポイントまでボールを呼び込めない時の脆さを感じます。

(打撃のまとめ)

 緩急への対応というよりも、捌けるコースが限られているので、そこに来ないと打てません。その割に、結構なんでもボールを追って振ってしまう見極めの悪さがあるので、どうしても脆くなってしまいます。

 日本人離れした強いスイング・飛距離は魅力ですが、社会人出身でも、即戦力として活躍するのは厳しいのではないかと。欠点を克服できる融通性があれば良いのですが、現状は穴を攻められて苦しむことが予想されます。


(最後に)

 自慢の打撃も穴が多く、守備位置も限られることを考えると、かなり厳しいと言わざるえません。我慢して起用し続けてくれる環境か、あるいは自ら欠点を改善して行ける器用さがあるかで決まってきます。

 よほど余裕のある球団か、我慢して育てるという気構えがある環境じゃないと、短期間で球界を去る可能性も否定できません。しかしもう社会人で得るものは少ないでしょうから、プロという目標があるのならば、プロに入るべきだと考えます。こういう選手が大成してゆくようだと、日本球界の打撃もこの先非常に期待が持てるのですが。果たして今後どうなってゆくのか、興味を持って見守って行きたい。残念ながら、個人的には指名リストに名前を残すことは出来ませんでした。


(2014年 都市対抗) 








 伊東 亮大(25歳・日本製紙石巻)外野 194/92 左/左 (桐光学園-武蔵大出身)
 




                     「殆ど引っ張り」





 スポニチ大会で3本塁打を放ち、一躍その長打力でドラフト候補に浮上してきた 伊東 亮大 。194/92 の日本人離れした体格で、その長打力は社会人随一と言える存在だろう。彼の打撃を見ていると、殆どセンターからライト方向に集中していることがわかる。

(守備・走塁面)

 登録は外野手だが、試合ではDHでの出場。武蔵大時代は、1番・一塁手としての出場が多かったと記憶。武蔵大時代から、永井 剛(HONDA)をチェックするために、何度か見ている選手。しかし当時から名の知れた選手ではあったが、体のデカさでも目立っていたものの殆どまともにチェックする気にはならなかった。そのため、彼の詳細なメモは残っていない。

 この体格ながら、一塁までの塁間は4.1秒前後。二塁到達まで8秒を切るような脚力があり、盗塁をできるような技術があるかは別にして、走力自体はかなり高い。しかし社会人入り後も、その脚力を活かしたプレーは見られない。

 桐光学園時代の下級生時には投手もやっていた選手だったらしいので、けして地肩も弱くはないだろう。これだけの身体能力がありながら、まともに外野などを守ることがないのは、やはり打球への勘が相当悪いのではないのだろうか? 大学時代にも動けない選手とメモしているのは、その動きの悪さを見ていて感じていたからだと思われる。

 194センチという上背からも、一塁手としては理想的。しかし190センチ台の一塁手といえば、名手として10度の一塁ベストナインに輝いた 駒田 徳広(巨人-DeNA)を思い出す。しかし彼も飛んで来る打球処理は素晴らしかったが、実はファールフライなど真上に上がる打球はドタドタしていてお世辞にも上手くなかった。彼がこの体格でも一塁を任せられないのは、そういった打球への動きの悪さなどがあるからではないのだろうか? いずれにしてもDHというポジションは、彼にとって評価にプラスに働くとは思えない。プロでも、相当守るところは限られるというのは間違いないだろう。



(打撃内容)

 彼のスイングを見ていると、殆どが引っ張りにかかっていることがわかる。またスイングも上から被せるようなスイングであり、けして長距離打者のそれではない。そのため彼が長打を発揮するのは、引っ張りこめる球で、上手くツボにハマった時に限定される。彼は非凡な長打力はあるものの、前出の駒田の現役時代同様に、けして長距離打者ではないのだろう。あと上から叩くタイプなので、どうしても縦の変化への対応に課題を残す。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さも平均的。腰の据わり、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も並であり、極めて大きな体でも構えとしてはそれほど威圧感は感じられない。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が沈みきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これはある程度の対応力と長打力を兼ね備えた、中距離ヒッター・ポイントゲッターが多く採用するスタイル。実際のプレーを見ていても、天性の長距離砲というよりは、広角に打ち返す中距離ヒッターの色彩が強い。中距離ヒッターらしく、ツボにハマれば長打を発揮するといったタイプ。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を引き上げて、少しベース側にインステップして踏み込んできます。始動~着地までの「間」はある程度取れているので、速球でも変化球でもそれなりに対応。ベース側に踏み込んで来ることからも、外角よりの球に意識があるようです。手足が凄い長い選手なので、通常の人には厳しく投げたはずの外角球が十分に彼の捌ける範囲であり、そういった球を引っ張って巻き込むことができると考えられます。

 また踏み込んだ足元もブレないので、けしてレフト方向へはじき返すこともできなくはありません。しかしそういった打撃は、最初からレフト方向へ打ち返してやろうという意識がないと滅多に見られません。あくまでも殆どの球は、引っ張ってやろうという意識で、打席に入っているように見えます。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 早めに打撃の準備である「トップ」を作り、速い球に立ち遅れないようにしています。バットの振り出しは、もう少しダウンスイングでインサイド・アウトのスイング軌道なのかと思ったら、けしてそうでもありません。それでも始動~インパクトまでの軌道にはロスはなく、懐にある程度のスペースは欲しいタイプですが素直に振り抜けています。

 スイングの弧もある程度大きく、強打を放つのも理解できなくはありません。しかしこの選手を今まで見てきて、そしてスポニチ大会で生で見ていてもピンと来ないのは、技術的には高くてもボールを捉える感覚にピンと来るものを感じないからだと思います。恐らくその理由は、駒田選手のようなリストワークや体の使い方に、あまり柔軟性を感じないからではないかと思うのです。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げはありますが、頭はそれほど動かず目線は上下に大きくはブレません。体の開きも我慢できますし、軸足も大きく崩れません。軸足を起点に、綺麗に回転出来ています。

(打撃のまとめ)

 こうやってみると、技術的には高く荒っぽさは感じません。手足が長くインステップして来るので、どうしても内角よりを攻めたくなるのですが、実はやや内角気味のコースに彼のツボがあり、その辺の球を引っ張って長打に結びつけるのを得意にしています。

 現状彼のスイングを見ていると、外角の真ん中~低めに投げていれば痛手を食らうことはなさそうだし、特にチェンジアップ系の球を投げていれば、殆ど引っ掛けてくれるのではないか、そんなイメージを受けます。そのため、この一年の観戦ポイントは、まさに外角への攻めに対し対応できるのか、ここにかかっているのではないのでしょうか。


(最後に)

 いかんせん守ってくれないことには、現状の守備力が伺うことができません。一塁ではなく外野へのコンバートも打ち出されましたが、スポニチ大会ではDHでの出場。少なくても、大事なところを任される守備力・チーム事情ではないということでしょう。

 確かに社会人では目立つ長打力を発揮していますが、打てるコースは限定されており、その辺がプロの長く・何度も対戦する世界ではどうだろうか?という疑問。けして本当の意味での長距離砲ではない彼が、守備位置が限定されてしまうのはどうだろうか?という疑問は残ります。

 外角への捌き、対応なども含めて、この一年追っかけてみたいと思います。その何かしらの答えを見出だせるようならば、彼のプロ入りへの可能性も現実味を帯びて来るでしょう。現状は、あくまでもドラフト候補の一人、そんな印象を受けています。



蔵の評価:
追跡級


(2014年 スポニチ大会)