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今村 幸志郎(24歳・西都ガス)投手の最終寸評へ







今村 幸志郎(24歳・西都ガス)投手の春の寸評へ







 今村 幸志郎(24歳・西都ガス)投手 170/65 左/左 (熊本工-青学大-関西メディカルスポーツ学院出身)
 




                           「実戦力は社会人屈指」





2014年度のドラフト候補の中でも、実戦力では社会人№.1ではないかと思えるのが、この 今村 幸志郎 。170/65 と体格には恵まれないのでボールに凄みはないが、実にイヤらしい投球をして来る。今年の大学生にも、こういったタイプは殆どいないので、非常に面白い存在になるだろう。





(投球内容)

ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、軸足に体重を乗せる前に足を折って体重を落としてしまう。

ストレート 135キロ前後~130キロ台後半

 東京ドームの厳しいガン表示というのもあり、球速は常時135キロ前後と、ドラフト候補としては球威・球速は物足りません。それでも勝負どころでは、130キロ台後半をマークし、それなりに速く魅せる術は持っています。一応MAXは143キロということで、別の球場ならばMAXでなら140キロを越えて来るのでしょう。

 ボールはキレ型なので、球威はありません。それだけに甘く入ると怖いのですが、内外角のコントロールは高く失投が殆ど見られません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カットボールなど

 右打者の内角を突くのは、圧倒的に食い込んで来るスライダー。それに外からもストライクゾーンに向かってスライダーを使えカウントを整えます。左打者に対しては、外角に逃げてゆくスライダーで投球を組み立てます。

 他にカットボール的なボールで、微妙にタイミングをズラしたり、フォークのような縦の変化球もあります。これは、チェンジアップという話もありますが、あまりシュート回転して逃げている感じはなく、フォークのようにも見えます。

 スライダーが時々甘く入るときはあるのですが、打者の内角を徹底的スライダーで突く投手はアマでは珍しい配球。これを社会人レベルの打者でも、中々上手く捌くことができません。空振りを誘うような絶対的な球種はありませんが、このスライダーで相手のリズムを完全に狂わせ、試合の主導権を奪うことが出来ています。

その他

 牽制は左腕らしく、見極めの難しくランナーとしては厄介で、フィールディングの良さも光ります。ただしクィックは、1.3秒前後と、それほど素早く投げないのが特徴。そのぶん牽制などで、相手の足を封じます。

特にランナーを背負っても投球に変化は感じませんし、走者に対し注意を傾けることができます。

(投球のまとめ)

 今後、球威・球速を増すとか、そういった伸び代に期待するタイプではありません。あくまでも、今の力で通用するのか、しないのか? そういったことで判断されるべき投手。

 極めて実戦的な厳しい攻め、安定したコントロール、動揺しないマウンド捌きの持ち主であり、短いイニングならば即プロで通用するのではないのでしょうか。シュート系の逃げてゆく球筋が物足りませんが、内外角きっちり投げ分けられ、低めに集められる点には好感が持てます。タイプ的には、武田 勝(日ハム)に近いタイプではないのでしょうか。



(投球フォーム)

投球内容は極めて実戦的なので、フォームの観点からはどうなのか検証してみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすものの、その足を二塁側に大きく送り込むので、お尻の落としは甘くなる。そのため、身体を捻り出すスペースは十分ではなく、見分けの難しいカーブを投げたり、フォークのような縦の変化球には適しません。縦に落ちているのが、フォークでなくチェンジアップであるならば、それほど問題はありません。

 「着地」までの粘りも、それほど感じません。そのため身体を捻り出す時間も十分とは言えないので、絶対的なキレや曲がりは望み難いでしょう。それでもこの投手は、ボールの活かし方が非常に上手いので、その辺を上手く補うことが出来ています。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えることが出来ており、ボールも低めに集まりやすい。「球持ち」はそれほど良いように見えないものの、指先の感覚に優れているのかコントロールは極めて安定しています。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせないフォームですが、カーブやフォークを多投しなければ問題はありません。縦の変化球が、チェンジアップならば肘の問題ないでしょう。

 振り下ろす腕の角度にも無理はないので、肩への負担も少なそう。元々力投派ではないので、消耗は少ないのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りはそれほどないのですが、グラブを斜め前に突き出すなど、打者に正対するのを遅らせ体の「開き」を抑えることが出来ています。そのためコースを突いていれば、それほど痛手は喰らいません。

 腕はしっかり振れており、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せはそれほどではありませんが、ピュッとたまに来るストレートに、打者は思わず差し込まれます。勝負どころでの力を入れたストレートに、打者は対応できません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」ですが、特に何処が特別優れているわけではありません。しかし各動作の長所・短所を理解し、実に上手く自分のピッチングに活かしているように思います。

 故障の可能性も感じませんし、コントロールを司る動作にも好感が。極めて打ち難いフォームではないにも関わらず、相手のタイミングをズラす術を心得ている、身の程を知った選手という気がします。


(最後に)

 ボールが遅いならば遅いなりの、球威がなければないなりの、それをそう感じさせないピッチングの上手さがこの選手にはあります。アマでここまでインテリジェンスを感じさせ、自分の長所・短所を理解しながら投球している選手は中々いません。そういった意味では、プロでも長く生き残って行けるタイプの投手ではないのでしょうか。

 あまりスカウト好みの派手なタイプではありませんので、ドラフト上位指名されるというよりは中位ぐらいの指名で穫れると美味しいタイプではないのでしょうか。今年はその技術で、何処まで社会人でも突き抜けることができるのか、ぜひ腕前を見させて頂きたいと期待します。


(2013年 都市対抗)