14sp-4
福地 元春(24歳・三菱日立パワーシステムズ横浜)投手 182/88 左/左 (自由ヶ丘-九州共立大出身) |
「ほとんど田辺学」 東京ガスから大洋に入った豪腕・田辺 学 という投手を覚えているだろうか? 150キロ近い荒れ球を武器にした投手で、鉛球のような手元での伸びやキレなど無縁な、硬いボールを投げこんでいた投手。この福地の投球は、この田辺学によく似ている。特にコントロールが定まらずボールが荒れたり、変化球が流れるところなどがソックリ。今年の都市対抗では、2/3回を2安打・2三振・2四球・1失点で降板した試合などは、まさに彼を象徴する試合だった。 (投球内容) ストレート 常時140キロ前後~MAX144キロ 物凄くゴツイ身体をしているで、150キロ連発のイメージがあるが、球速は思ったほど出ていないことが多い。それでも球威溢れる厚みのあるボールは、その球速表示より遥かに速く感じさせる迫力がある。打席に立っている打者には、プラス5キロ以上の迫力は感じられるだろうし、荒れ球で恐怖すら感じるはず。また見ている人間には、凄い球を投げるので目を奪われてしまうものがある。特に観戦機会が少ない人が、この選手のボールを見ると騙されてしまう。 ボール自体は、両サイドに散っているものの、高めに抜けることが多い。投球回数と同じぐらいの四死球は、覚悟しないといけないだろう。またボールの威力で、それ以上の数の三振も期待できる。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど 彼の球種の中でも、一番コントロールができ有効なのが、チェンジアップ。しかし見た目は、チェンジアップというよりはシュートに近い感覚。球速も130キロ台を記録し、右打者外角低めにコントロールできている。この球は、プロでも通用する球種ではないのだろうか。しかし三振を奪うというよりは、ゴロを打たせるための球で、三振はストレートで奪うケースが多い。 問題は、カーブが曲がりきらなかったり、スライダーが決まらずに引っかかってしまうことも多いので、左打者にはストレートしか決まらないことが多いということ。腕の角度はオーソドックスなので、それほど左対左のメリットは薄い。左腕でも、あまり左打者を得意にしているようには見えない。 その他 牽制・フィールディングは平均的で、クィックも1.1秒台~1.3秒ぐらいと開きは大きい。けして投球以外の部分に優れた野球センスや運動神経に優れた選手ではないので、こういった部分もプロではもう少し鍛えないといけないのでは? 特にクィックや牽制など走者に気を取られてしまうと、投球が疎かになってしまったりと、ランナーを背負ってからの投球に課題を残す。 (投球フォーム) この制球を乱す要因は何なのか? フォームを分析して考えて行きたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 以前よりは足をしっかりピンとは伸ばせており、多少地面に向けて足先が伸びているものの、お尻が全く三塁側(左投手の場合は)に落ちていないわけではない。しかし腕の振りが強すぎるので、体を捻り出して投げるカーブやフォークのような球種には適さないのではないのだろうか。 「着地」までの粘りも平均的で、けして身体を捻り出す時間がないわけではないだろう。むしろ不器用な選手なので、ストレートに近い変化球であるカットボールやスピリットなどで、投球の幅を広げた方が良さそう。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドには散りやすい。しかし足の甲の押し付けが短いので、重心の沈みが深い割に、ボールが上吊る傾向が強い。「球持ち」も悪くは見えないのだが、指先の感覚が悪く、ボールを上手く操ることができない。むしろフォームの構造上の問題よりも、力加減、抜き加減などの感覚が非常に悪い気がするのだ。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ お尻の落としに甘さはあるが、けして落とせないフォームではない。まして負担のかかるような球種を多投するわけでもないので、現時点では肘への負担は少なそう。 振り下ろす腕の角度にも無理はないので、肩への負担も少なそう。大学時代も登板が少なかっただけに、肩の消耗も少なくきたはず。力投派なのでそのへんは多少気になるが、頑強そうなのでタフなリリーフという期待には応えてくれそう。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も極端に早い感じはせず、特に合わせやすいということはないだろう。だからこそ、ストレートであれだけの三振が奪えるとも言える。 腕を強く振れるのが最大の魅力だが、それが強すぎるために緩い球は向かないし、変化球が上手くコントロールできない。ボールにはグッと体重を乗せられるために、日本人離れした厚みのあるボールを投げられる。 (最後に) ストレートの迫力は、今年のドラフト候補の中でも屈指ではないのだろうか。しかしその半面、変化球の精度・コントロールのレベルが低く、実戦では安定した投球が期待できない。この傾向は、どの試合を見ても言えることで、将来的にも改善が期待できるかは疑問。 何かここを直せばという確信的なものがない限りは、この手のタイプは手を出してはいけない素材だろう。左右の違いはあれど、タイプ的には今年解雇された 北方 悠誠(唐津商-DeNA1位)と同じような欠点がある。 個人的には、プロでも今の欠点を改善できるとは思えず、ボールの魅力は認めるののの、指名リストには載せないことにする。逆に、彼が大成した時の姿を、見てみたいという興味はあるのだが・・・。 (2014年 都市対抗) |
福地 元春(24歳・三菱日立パワーシステムズ横浜)投手 182/88 左/左 (自由ヶ丘-九州共立大出身) |
「ボールの厚みは屈指の左腕」 140キロ前後のストレートでも、その球威・迫力は、今年の候補中でも屈指のボールを投げ込んでくる 福地 元春 。今年になり改めてその投球を確認しても、素材としての素晴らしさは目を惹くものがある。 ストレート 130キロ台後半~89マイル(142.4キロ) けして寒い日ではなかったものの、観戦日が3月中旬ということもあり、この日の福地の球速は140キロ前後ぐらいだった。それでも一球ごとに、ズシッと厚みのあるボールを投げ込む姿は惚れ惚れする。特に初回は、テンポよくストライクを先行させ、随分成長したのかなと思わせる内容だった。昨年のこの時期は、なんでこの体なのに140キロを越えて来ないのだろうと首を捻りたくなる状況だったが、それでも夏場に入れば140キロ台中盤を連発し、MAXでは140キロ台後半を記録。今年は、それ以上の速球を期待しても良さそう。 それでもコースに投げ分けるというコントロールはなく、あくまでも外角よりに枠の中に投げ込んで来るだけというアバウトなもの。しかし彼が打たれている球を見ると、むしろ甘く入った変化球の方が多い。 変化球 カーブ・スライダー 特にこの日は、初回は素晴らしかった。左腕らしい大きなカーブで、緩急をつけたりカウント稼ぐことが出来ていた。更に横滑りするスライダーでもカウントを稼ぎ、コントロールも随分と改善されたのかと思った。しかし続く回には制球を乱し、甘くカウントを取りにゆくスライダーを狙い打たれ、回によって波が激しいことを証明。更に3イニング目には失点を許すことになる。 その他 クィックがまともに出来なかったのが、1.05秒~1.10秒ぐらいで投げ込めるようになり、この辺は成長を感じます。ただしクィックに注意を傾けるあまりに、ボールが甘くなっていた可能性もあります。牽制・フィールディングも平均レベル以上のものはある投手なので、セットポジション・クィックなどに課題があるのか、それとも精神的に平常心を保てなくなったのかまではよくわかりません。この辺は、今後のチェックポイントかと。 (投球のまとめ) 基本的に、持ち球・投球内容共に、昨年と殆ど変わっていません。投球の波があったり、アバウトな制球力も改善されているとは言えず。ただし初回に魅せたように、落ち着いて投げることができれば、良くなっているのかなぁと思える部分もあります。それを持続できないところに、素材型の域を脱していないと感じる部分。この辺は、一年間かけて見守って行きたいポイント。 (成績から考える) オフシーズンの寸評では、フォーム分析を行いました。今回は、2013年度の成績を元に、彼の傾向を考えてみましょう。まず昨年の成績は 18試合 43イニング 33安打 22四死球 54奪三振 防御率 2.09 1,被安打はイニングの80%以下 ◯ 被安打率は、76.7%となり、基準である80%を割っています。カーブ・スライダー・ストレートと球種は少ないのですが、ボールの威力が勝って連打を許さない傾向にあるのかもしれません。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ✕ 四死球率51.2%に昇り、基準である1/3以下(33.3%)には遠く及ばないことがわかります。イニングに対し50%以上の四死球率というのは、かなりコントロールがアバウトで、コントロールが気になって自分の投球を中々組み立て難くなっているのではないのでしょうか。 3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 ◎ 18試合で43イニングということは、1回の登板あたり2~3イニングあたりに相当するので、リリーフでの登板が多かったことがわかります。いずれにしてもイニングを超えるペースで奪三振を奪えており、これは社会人レベルでは驚異的な数字。特に武器になる変化球があるわけではないので、その多くをストレートで奪っている可能性があります。 4,リリーフならば防御率は1点台 △ 社会人の場合の目安は、防御率2点台。それも2.09 ということで、想像以上に安定感があることがわかります。まぁプロで即戦力のリリーフ投手とかんがえると、1点台の安定感を望みたいところですが、2点台前半であることを考えれば悪い数字ではありません。 (成績から考える) やはりコントロールの問題がつきまといますが、それ以外の部分では思いのほか数字が良かったのに驚かされました。それだけ社会人に混ぜても、ボールの威力で圧倒していたことの裏づけではないのでしょうか。今年は、更にそれ以上のボールの威力・安定感を示せるかどうか注目されます。 (最後に) 福岡の自由ヶ丘時代から、本格派左腕として目立つ存在でした。しかし九州共立大では伸び悩み、目立つ実績を残せず。そういった要因に、精神面のムラとコントロールの無さがあったのかもしれません。 現状それを払拭しているとは言えず、今のままだとプロの即戦力としては正直厳しい。それだけに、いかに安定した内容を示すことができるのかが、見極めのポイントだと考えます。素材・ストレートの素晴らしさは一級品なだけに、彼が活躍するようだと、ドラフト戦線も大いに盛り上がるのではないのでしょうか。期待して今後も見守って行きたい、速球派左腕でした。 蔵の評価:追跡級! (2014年 JABA春季神奈川大会) |
福地 元春(23歳・三菱重工横浜)投手 182/88 左/左 (自由ヶ丘-九州共立大出身) |
「ボールの迫力はNO.1左腕」 福岡の自由ヶ丘時代から、本格派左腕として注目された。しかし九州共立大に進むも、同期には 川満 寛弥(ロッテ)・一学年下には、大瀬良 大地(広島に入団)がおり、4年間での公式戦登板は僅か5試合・2勝 に終わっている。この実績でよく社会人に進めたなとも思えるのだが、それだけ彼の素材の良さを買われてのことだろう。 入社当初から福地の投球を見てきたが、182/88 の立派な体格の割に、球速が乗って来ないのは何故なのか?首を捻りたくなることがしばしばだった。しかし暖かくなって来ると、身体に見合うだけの球威・球速を記録するようになる。 (投球内容) ストレート 常時130キロ台後半~MAX144キロ 東京ドームのスピードガンが厳しいこともあり、都市対抗では常時130キロ台後半~MAX144キロと驚くような球速は出なかった。しかしボール自体に独特の厚みがあり、その球速より遥かに勢いと威力を感じさせる。実際私が観戦した5月のオープン戦では、MAX92マイル(147.2キロ)を記録し、コンスタントに145キロ前後を記録している。ちなみに彼のMAXは、151キロと言われている。 ストレートは、適度に荒れていて細かいコントロールはない。左打者にはインハイに、右打者には外角中心に少し逆クロスの抜け気味の球筋を得意としている。球の感じで言えば、かつて大洋に在籍していた 田辺 学(東京ガス-大洋)に良く似ている。伸びやキレはなく、鉛球みたいな重い球がグワーンと打者に迫ってくるイメージと言えばいいだろうか。 変化球 カーブ・スライダーなど 110キロ前後のカーブと120キロ台のスライダーを投げます。この球が上手く決まれば良いのですが、早く曲がり過ぎて地面を捉えることが少なくありません。他にもツーシーム・スクリュー系のボールを投げられるとの話ですが、この2つの変化球が中心。それも本当の意味で頼れるほどの精度がないので、結局ストレートで押すしかなくなってしまいます。ただし高校時代の寸評を読み直すと、一番良いのはスクリューだと書いてありました。 その他 牽制やフィールディングはそれなりだが、クィックが1.3秒前後と上手くない。これは高校時代からそうで、そういった部分に成長は感じられない。 現状は、淡々とストライクゾーンめがけて投げ込んでいるだけといった感じ。ランナーを背負うと浮足だったり、右打者相手だと制球が乱れるなど、まだまだ危なっかしさは否めない。 (投球のまとめ) 本当にストレートの質・威力といった意味では、2014年度の候補の中でも屈指ではないかと思えるものがある。しかしそのストレート以外に、本当に頼れる球がない。 マウンド捌き、ランナーを背負ってからの投球にも課題があり、素材型の域は脱してられない。今年注目される中、どの程度実戦的な術を磨けるのか注目したい。 (投球フォーム) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。ジワ~とゆっくり足を高い位置まで引き上げてきます。 <広がる可能性> ☆☆☆ 足をなかなかピンと伸ばさず、お尻の三塁側(左投手の場合)の落としが遅い。そのため必要な時に身体を捻り出すスペースが確保できず、見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークなどには適さない。 それでも「着地」までは、それなりに粘りがあり、身体を捻り出す時間は確保。しかし指先の感覚が悪いというか不器用なのか?変化球を上手くコントロール出来ていない。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで体の近くはあり、抱えられていないも、適度に両サイドにボールは散る。足の甲の地面への押し付けは浅く、ボールはやや上吊る傾向に。それでも重心は深く沈み、「球持ち」も悪くないので、もう少し上手くボールをコントロールできそう。よほど「指先」の感覚か悪いのか?リリースが安定していないのか? <故障のリスク> ☆☆☆ お尻を落とすのが遅いフォームで、落としも当然甘くなる。それでもカーブなどを結構使うのだが、十分に捻りだせないで無理な送り出しになっている。そういった意味では、肘への負担はあるのではないのだろうか? 腕の角度はそれほどなく、肩への負担は少なそう。それでもボールの無理な送り出しが故障につながる可能性も否定できない。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りがあるので、フォーム自体はねばっこい。更に体の「開き」も早くはないので、打者としては甘く入って来ないと、荒れ球でもあり打ち難い。 気になるのは、意外に腕が触れない点。特にランナーを背負うと、余計にその傾向が強くなる。これでは、変化球を投げても見極められてしまう危険性も感じる。それでもボールには体重が乗せられており、グッと打者の手元で球威が落ちない威力のあるボールを投げ込めている。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも大きな欠点は感じない。むしろ全体的に、かなり優れたフォームにすら感じる。しかし部分的には優れているのに、各動作につなげる過程に問題があるのではないのだろうか? 動作の悪くないのに制球が悪かったり、少しボールを押し出すような送り出しを見ていると、意外に身体に負担がかかっているのかもなぁという不安はよぎる。フォーム全体で言うと、良い部分と悪い部分が混在しており、その良さをまだ十分活かしきれていない。 (最後に) 投げているストレートの素晴らしさと、フォームの構造上を見るかぎり、もう少し安定しても良いのでは? という印象は拭えない。変化球レベルや精神面に脆さがあり、現状素材型の域は脱しられない。 それでも左腕でこの体格・これだけのボールを投げ込むだけに、スカウトとしては魅力を感じるだろう。この一年で、どのぐらい実戦的な投球ができるのか、注目して見守って行きたい。素材を買って、下位指名でのプロ入りは十分予想される。 (2013年・都市対抗) |
福地 元春(福岡・自由ヶ丘)投手 181/75 左/左 |
「あまり変わっていなかった・・・」 昨夏、全国を代表する本格派左腕として、個別寸評でご紹介した福地元春。MAX145キロまで球速を伸ばしたと聞いていたので、正直大いに期待していたのだが・・・。 均整の取れた体格からワインドアップで振りかぶる、正当派の本格派左腕。球筋こそしっかり一本線を引いたような感じだが、その球速は常時120キロ台後半~130キロ台中盤ぐらい。正直打者から空振りを誘うような伸びやキレ・球の勢いを感じさせてくれるほどではなかった。ただアウトコースにビシッと決める制球力はあるので、見逃しの三振を奪うことはある。 カーブは、ドロンとした曲がり。時々曲がり切らないことがあるし、何か腕が緩んで上のレベルでは使えないのでは?速球とこのカーブとのコンビネーションが目立つが、左打者の外に逃げるスライダーと、右打者の外角低めに沈むスクリューを併せ持つ。彼の一番素晴らしい球は、狙って落とせるこのスクリューだと云える。 牽制は左腕らしくそれなりのレベル。フィールディング・ベースカバーなどの基本も出来ている。ただクィックは1.3秒前後と、正直あまりクィックにはなっていない。試合をまとめるセンスはもう一つで、どちらかと云うと肉体に頼ったタイプで、野球センスは高くない。特に身体の身のこなし、投球テンポなどを観ていると、やはり大型左腕の範疇で片づけられてしまう。ただ昨年よりも右打者を中心に制球が安定。特に球が比較的低めに集まるところは評価出来る。 ただアベレージでの球速では物足りないものはあるが、この日のMAXは139キロ。それも7回にも同様に、この球速を叩き出していた。そう基礎体力は、かなりしっかりしたものがあるようだ。高卒でプロと云う領域までは、正直成長しなかった。しかしゆっくりとした成長曲線を描いており、4年後に期待したいと思わせるものは残った。これからも注目して行きたい! (2008年・夏) |
福地 元春(福岡・自由ヶ丘)投手 180/73 左/左 |
「癖球を操る本格派!」 人材豊富な2008年度の福岡においても、その将来性が最も期待されているのが、この 福地 元春 ではないのだろうか。MAX145キロとも云われる本格派左腕だが、実はこの投手、かなりの癖球の持ち主なのだ。夏以降球速を大幅に伸ばしたのかもしれないが、私にはあまり速球派と云うイメージはない。むしろ癖球を活かした、イヤらしいタイプと云った印象だ。 (投球スタイル) 実際、夏の福岡大会の際に、彼の投げているところを生で見たのだが、球速は130キロぐらいでナチュラルにスライドするのが、彼のストレートの特徴だと云えよう。そのため右打者には、内に食い込んで来る感覚を覚えるはずだ。 ストレート 球速は130キロぐらいだが、ナチュラルにスライドして右打者の内に食い込んで来る。速球は、回転が悪い分、あまり空振りを取れるような球ではない。 カーブ 立ち上がりなどは、特に曲がりが早すぎて地面に突き刺さったり、スッポ抜けも多い。決まり出すとブレーキは良いが、まだまだ完成度の高い球とは云えない。 フィールディングの動きは、ぎこちなく、あまり牽制も多くは見られない。クィックに関しては、1.2~1.3秒弱と基準レベルはある。投球センス・制球力に優れていると云うよりは、独特の癖球が特徴の投手だと云えよう。 <右打者に対して> ☆☆ 基本的に制球力は、かなりアバウトだ。そのため両コーナーに投げ別けると云うよりは、ストライクゾーンの枠の中に、速球とカーブを投げ込むと云った印象。確かに時折真ん中近辺の甘いゾーンの球を痛打される場面もあるのだが、比較的球が低めに集まるのが、この投手の大きな特徴。やはり最低でももう一種類、使える球種を増やして攻めのバリエーションを増やしたい。 <左打者に対して> ☆☆☆ 肘の下がったフォームなので、左打者にとっては、背中越しから来るような感覚には陥りそうだ。基本は、アウトコース低めに速球とカーブを集めて投球を組み立ててくる。ただ時折、甘く球が浮くことがあるので、その球を痛打されることがある。やはり右打者に対して同様に、もう一つ使える球種を増やして、攻めのバリエーションを広げたい。コースを投げ別ける制球力がないだけに、球の威力と緩急で討ち取って行くしかないからだ。 (投球フォーム) いつものように「野球兼」の2008年1月27日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照しながら、読み進めて欲しい。 <踏みだし> ☆☆☆ 写真1を見ると、ノーワインドアップから足の横幅を狭くし、構えているのがわかる。この時点で、この投手のフォームのバランスが、かなり悪くなることを予感させてくれる。ただお尻は大きく、下半身がかなり発達している印象を受ける。写真2までは、足をゆっくり引き上げて、その高さはかなり高い。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆ 写真2の軸足の膝から上に注目して欲しい。膝から上がピンと伸びすぎてしまい、膝に余裕がないのがわかる。膝に余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などがあげられる。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆☆ 写真3を見ると、足を地面に向かってピンと伸ばし、身体が前に倒れ込むようになっている。お尻を三塁側(左投手の場合)に落とす意味としては、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながるからだ。彼のカーブが抜けることが多いのも、このお尻の落としの甘さにも、大きな要因があると考える。 ただそれ以上にフォームで大切なのは、写真4の着地までの粘りである。彼は、その辺のことしっかり意識出来ているのか、足を地面に着きそうなところからグ~と前に逃がし、着地のタイミングを遅らせることが出来ている。着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 などがあげられる。彼は、このことに関しては充分出来ており、投球動作で最も重要な着地までの粘りが出来ている。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ 写真6を見ると、最後までグラブは身体の近くに抱えられている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになる。しかし彼の制球がアバウトなのは、他に要因がありそうだ。 写真5の左足のスパイクに注目してみると、足のつま先だけを地面につけて回転していることがわかる。足の甲で地面を押しつける意味としては 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。しかしこの動作がしっかり出来ていない割に、彼の球は、比較的低めに決まることが多い。何故なのだろうか? <球の行方> ☆☆☆ 写真3で、前に倒れ込むようなフォームのために、ボールは身体の陰に隠れ、球を長く隠すことが出来ている。写真4の着地の段階では、肩の稼働域が非常に柔らかく、ボールを持っている腕は背中越しにあり、球の出所は非常に見難い。ただ、かなり肩のラインよりも奥にまで、腕が入り込んでいるので、故障の不安は拭えない。 写真5をみると、かなり肘は下がったスリークオーターのために、球に角度は感じられない。また腕を身体の遠くからブンと振って来る、リリースの早いタイプ。こういったタイプは、得てして制球力が悪い。ボールを長く持つ意味としては 1,打者からタイミングが計りにくい 2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる 3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい 着地と並ぶこの投球動作の核が未熟なのは、大いに気になる材料だ。 <フィニッシュ> ☆☆ 振り下ろした腕は、身体に絡まない。またステップを広く取りすぎているのか、体重が前に乗っていっていない。そのため地面の蹴り上げも期待出来ないなど、フィニッシュの動作に課題がある。 (最後に) 投球においては、アバウトな制球力と攻めのバリエーション(特にカーブが上のレベルで使える代物なのかは疑問)不足の解消が大きなテーマ。 投球フォームにおいては、ステップの適正な位置と球持ちの長さを意識することではないのだろうか。そのため、まだまだ実戦派と云うのには程遠く、夏までにどのぐらい球威・球速を増し、実戦力も平行して強化出来るのか注目したい。常時140キロ台で癖球だったら、それだけで相手には大いなる驚異だろう。これからどんな進化を遂げて行くのか、大いに注目して行きたいところだ。 (2007年・夏) |