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玉村 祐典(西武)投手のルーキー回顧へ







玉村 祐典(敦賀気比卒)投手 181/79 右/右 
 




                    「力の加減がわかっていない」





 敦賀気比時代は、選抜で3番手として打者二人だけで降板。その後行われた、春季北信越大会で活躍。高校卒業後進学はせずに、地元でアルバイトを続けながら、何処にも在籍せずにプロ入りを目指したという変わり種。選抜でのMAXは、146キロ。地道なトレーニングをつづけ、今や149キロにまで伸びたという。しかしこの選手の問題は、そういう部分ではない。力が入り過ぎて、コントロールを乱してしまうところにある。その辺が、敦賀気比時代、大事なところを任されなかった理由ではないのだろうか。

(投球内容)

ワインドアップから、足を勢いよく高い位置まで引き上げます。

ストレート  常時140キロ前後~MAX146キロ


 ボールそのものの勢い・威力は、当時から目立っていました。しかしいかんせん肩に力が入り過ぎて、ワンバンしてしまう球が多かった。力の入れ加減、抜き加減がわかっていない投手だったので、将来的にもその感覚が身につけられるかがポイントではないのでしょうか。DeNAに1位指名され、僅か3年で解雇された 北方 悠誠 という投手は、まさにそういった投手でした。それに似たものを、この投手からも感じます。

変化球 スライダー・スプリット

 腕の振りが強いので、非常にハードな曲がりのスライダーを投げ込みます。この球がしっかりコントロールできるのであれば、多少ストレートが暴れても見込みがあるでしょう。しかしまだまだ、思いどおりにこのボールを操ることは出来ていなかったように思います。他にも、スプリットのような沈む球もあると言います。

その他

 唯一観戦した選抜でのマウンドでは、牽制を入れたり、フィールディングの場面は見られませんでした。クィックは1.2秒台であり、あまり素早く投げ込むことはできません。このへんもプロ入り後、改善して行かないといけないポイントでしょう。

(投球のまとめ)

 何処かに所属していたわけではないので、トレーニングでパワーアップは出来ても、実戦で技術を磨くことは出来ていなかったとようです。そういった意味では、この力加減の問題などを、まだ改善できるかには疑問が残ります。しかし甲子園では、パッとマウンドを外して一息入れるなど、そういったマウンドセンスはあるのかなと思いました。

 選抜後に行われた春季大会では、36イニングを投げて1失点と素晴らしい成績でした。しかし夏はまた、あまり起用されず終わったのは、やはり実戦力・調子の維持などに課題を残していたものと思われます。


(投球フォーム)

僅か打者二人の観戦だけでは情報として弱いので、フォームを分析することで今後の可能性を模索したいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けているというほど低く伸ばしているわけではないので、お尻の落としは甘いものの、ある程度は一塁側には落とせています。そういった意味では、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球を投げられないフォームではありません。ただし腕の振りが強すぎる投手なので、カーブのような緩い球には適さないのかもしれませんが。

 「着地」までの粘りも平均的で、体をひねり出す時間も並ぐらい。こうなると、変化球のキレ・曲がりも悪くはないのでしょうが、中途半端になりがちなのかもしれません。腕の振りが強い分、スライダーのブレーキには光るものがあります。問題は、それ以外の球種をどれだけ身につけて、ピッチングの幅を広げて行けるかでしょう。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは少し後ろに抜けてはしまいそうですが、体の近くには最後まであります。そのため、両サイドにボールを散らすことは出来ています。足の甲での地面への押し付けは甘く、ボールが上吊りやすい傾向にあります。しかしそれ以上問題なのは、指先の感覚が非常に悪いということ。これはリリースに問題があるというよりも、身体に余計な力が入り過ぎることで、コントロールを乱しているのではないのでしょうか。こういう投手は、カーブなどで脱力して投げる球をあえて投げて、力を抜くことが出来ればと思うのですが。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻を全く落とせないフォームではないですし、カーブやフォークを多投するわけではないので、肘への負担は少なそう。むしろ角度をつけて投げるので、肩への負担は少なくないでしょう。将来的に、無理をすると肩を痛めるかもしれません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、打者から特に合わされやすいフォームではありません。また体の「開き」も抑えられており、コースに投げればそうは打たれないのでは。

 気になるのは、振り下ろした腕が全く絡んで来ないこと。それだけ「球持ち」が浅い可能性があります。ボールにはしっかり体重は乗せられているので、打者の手元まで生きた強い球が投げられます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に優れますが、「球持ち」に課題があります。ストレートには威力があるものの、コントロールが改善できない可能性があります。

 実際コントロールはに課題があり、将来的に肩を痛める可能性もあり、そういった部分では素材型で終わる可能性も否定できません。


(最後に)

 速く強い球を投げるという部分では、中々素晴らしい資質の持ち主だと思います。しかしコントロールをはじめ、実戦的な部分で不安を残し、これを改善して行けるのかと言われるとどうでしょうか? もし大成するとするならば、ゲームメイクする先発よりも、力で押せるリリーフだと考えます。果たしてこの一年で、どのぐらい成長したのか? ぜひプロのマウンドで確認したいものです。残念ながら今年のプレーを確認出来ていないので、評価付けは出来ません。


(2013年 選抜)









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