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土肥 寛昌(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ








 土肥 寛昌(HONDA鈴鹿)投手 181/85 右/右 (埼玉栄-東洋大出身)
 




                   「何気ない投手なんだけれど」





 本当に、何の変哲もないオーソドックスなフォームなのだけれども、140キロ台中盤~後半の球速を連発する 土肥 寛昌 。彼のことを明確に意識するようになったのは、東洋大の最終学年になってから。東洋大時代に、150キロ近いボールを連発するのを見た時から。しかし不思議とこの投手からは、プロの匂いがして来なかった。


(投球内容)

ストレート 常時145キロ前後

 特に力を入れて投げている感じはしないのですが、コンスタントに140キロ台中盤を叩き出します。投球フォームが苦になり難いために、そんなに出ているのかと驚かされる。基本的には、低めにボールを集めてナンボの投手なのだが、時々甘く浮い球を痛打されるケースが多い。しかしストライクゾーンの枠にはボールを集められるので、今年の都市対抗2試合・9回2/3イニングでも、四死球は1個しか出しておらず安定。だいたいストレートを外角に集め、低めに変化球で仕留めるのが投球パターン。

変化球 スライダー・フォーク・カーブ・カットボール・ツーシーム

 球種はひと通りありますが、主な変化球はフォークを低めに落とすこと。その他に、スライダーやカーブなどを、低めに集めて討ち取ります。しかし縦の変化を多投するわりに、9回2/3イニングで6奪三振と意外に三振が奪えません。それもストレートをズバッと良いところに決め仕留めるケースが多く、変化球での三振はそれほど多くありません。

その他

 牽制はそれほど鋭いものは入れてきませんが、けして下手ではありません。クィックも1.05秒弱ぐらいと、かなり素早い。投球以外の部分も、適度なレベルでまとめられている。

(投球のまとめ)

 球速ほどストレートの威力・勢いは感じず、変化球にも絶対的な武器があるわけではない。本当にオーソドックスな投手であり、何が良いのでも悪いのでもないという当たり障りのない投手。そのためどうしても、ドラフト候補というインパクトが、見ていて感じられません。こういった投手をプロに混ぜた時に、どのぐらいの投球ができるのだろう?という疑問と興味は湧いてきます。





(データから考える)

私の言っていることは、今年の東海予選の成績を活用すると、より明確になってくる。

5試合 26回 27安打 9四死球 17奪三振 防御率 2.77

1,被安打はイニングの80%以下 ✕

 激戦の東海地区予選の成績とはいえ、被安打がイニングを上まってしまっている。投球編のところにも書いたように、苦になく合わせられるというのは、数字の上からもハッキリしてきた。プロ入りするならば、社会人相手に80%以下には抑えたい。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 東海予選では、四死球率は34.6%と僅かに基準を満たしていない。しかし本戦では、9回2/3イニングで1四死球だったことを考えると、それほど細かいコントロールはなくても、四死球で自滅するような不安定さがないことがわかってくる。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ✕

 奪三振率は、1イニングあたり0.65個であり、これは本当に平均的な数字。結構縦の変化を多投する投手にしては、極めて少ない。

4、防御率は1点台以内 ✕

 東海予選の防御率は2.77であり、この数字も社会人としては極めて平均的。やはりプロ入りする投手ならば、1点台の数字は残しておきたかった。

(データからわかること)

 どのデーターも、投球編で感じたことを裏付ける結果となっている。数字の上からは、今のままでプロに通用するのは厳しいということになる。プロ入り後いかに欠点を改善するか、新たなものを見出してゆくかなどしないと、厳しいことになるのではないのだろうか。

(投球フォームを考える)

では具体的に、どのように改善してゆくのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を、高い位置と地面に向けての中間ぐらいのところで伸ばされており、お尻の落としは甘めながら、一塁側にそれなりには落ちています。体を捻り出すスペースが充分確保出来ているというほどではないにしろ、全く落とせていないわけではないという中途半端なところ。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭い球は投げられるも、あまり効果的ではないことに。

 それでも「着地」までの粘りはそれなりで、中々地面を捉えません。そのため体を捻り出す時間は確保出来ており、多彩な球種を操ることは出来ています。いろいろな球種が投げられて、絶対的な武器がないのは、この動作が中途半端だからという考え方ができます。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは内に抱えられているわけではないのですが、最後まで体の近くにはあります。そのため両サイドの投げ分けは、安定しているのでしょう。足の甲の地面への押し付けが遅れるので、時々ボールが上吊ることがあります。「球持ち」も平均的で、可も不可もありません。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻の落としに甘さがあるわりにカーブやフォークを使って来るので、肘への負担がないわけではないでしょう。それでも振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩への負担は少なそう。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 思ったほど「着地」に粘りがないわけでもなければ、極端に「開き」が早いわけではありません。もっと淡白で見やすいフォームがゆえに、打ち込まれるのかと思っていました。振り下ろした腕は身体に絡みますし、ボールにも適度に体重は乗せられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どの部分でも可も不可もなしといった感じで、思ったほど悪くはありませんでした。しかしそうかといって、優れているわけでもありません。

 故障のリスクも平均的ですし、コントロールを司る動作も並。特に悪いわけでも良いわけでもないというのが、余計に頭を悩まします。

(最後に)

 実際の投球と残した成績から考えると、一軍で活躍できるのかと言われると微妙なタイプ。更に今後良くなる伸び代を感じるのかとか、技術に的に何処をいじればというのが、正直見えてきません。

 マウンド捌きは安定しており、大崩れするタイプではないでしょう。しかし相手に馴れられれば、いとも簡単に攻略されてしまう恐れがあります。私が冒頭でドラフト候補の匂いがして来ないと言ったのは、恐らくこういう部分を感じ取ったからではないのでしょうか。残念ながら、指名リストに載せようとは思いませんでした。


(2014年 都市対抗)