14sp-31


 
amanatu.com




中元 勇作(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







中元 勇作(26歳・伯和ビクトリーズ)投手 178/73 左/左 (竹原-近大工学部出身) 
 




                 「あまり好いと思ったことなかったが」





 毎年のようにドラフト候補として注目されてきたが、指名されることなくここまで来た。今まで何かピリッとしない投球で、何が好いのか正直わからなかった。しかし今年の都市対抗では、微妙に昨年よりも成長しているのではないかと感じられた。今回は、何が変わったのか改めて考えてみたい。

(投球内容)

左のスリークオーターで、変則のフォームで打者のタイミングを外す技巧派。

ストレート 135~MAX141キロ

 昨年と明らかに変わったのは、ボールに勢いが出てきたこと。特に左打者のインハイに浮くボールには威力があり、都市対抗では141キロを連発していた。また右打者の内角に食い込んで来ると球筋にも特徴がある。クロスの球筋は低めに、逆クロスの球筋は高めにゆく傾向が強い。変則からピュッと来る感じの球になり、打者は差し込まれやすくなってきた。

変化球 スライダー・チェンジアップ

 投球の多くが、スライダーとのコンビネーションで組み立てられている。特に低め膝元から下のゾーンに切れ込むスライダーで空振りを誘う。右打者には、内角にスライダーを食い込ませつつ、外にチェンジアップを投げるのが得意のパターン。左打者には、インハイにストレートを見せつつ、外に逃げてゆくスライダーでピッチングを組み立てる。

その他

 クィックは1.1秒前後とまずまずで、ランナーへの目配せ・注意も怠らない。牽制もそれなりで、フィールディングも基準レベル。リリーフの経験が豊富なのか、ランナーを背負っても浮足立つことはない。

(投球のまとめ)

 それほど細かいコントロールはないのだが、ボールにキレ・勢いが増して、変化球も生きるようになってきた。今までは、球威・球速が物足りない割に、コントロールも安定しないなど、良さが掴み難かった。先入観に惑わされることなく、その成長を見逃さなかった点は評価したいポイント。

(投球フォーム)

実際どの程度実戦的なのか? フォームの観点から考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落とせません。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 しかし「着地」までの粘りは作れるようになり、前に足を上手く逃して「着地」のタイミングを遅らせることが出来ています。体を捻り出す時間が確保できるようになり、カーブやフォーク以外の球種ならば、まだまだモノにできる可能性を感じます。

<ボールの支配> 
☆☆

 グラブは内に抱えられているわけではないのですが、結果的に最後まで体の近くに留められています。そのため両サイドへの投げ分けは、比較的安定していると言えます。足の甲での地面への押し付けが出来ないので、力を入れて投げるとボールが上吊る傾向にあります。腕が外旋しブンと振って来る感じのフォームなので、どうしても細かいコントロールはつき難いのだと考えられます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせるフォームではありませんが、カーブやフォークなども投げないので、それほど悲観しなくても好いのでは。また腕の角度にも無理はないので、肩への負担も大きくはなさそう。そういった意味では、故障のリスクは低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りが作れるので、打者としては合わせ難いはず。結果として、体の「開き」も抑えられており、見えないところからピュッとボールが出てくる感じになっています。

 腕が強く振れるようになり、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重乗せは不十分で、打者の手元まで球威のある球は投げられません。あくまでも鋭く腕や上体を振ることで、キレを生み出すタイプです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」は良いのですが、「球持ち」「体重移動」に課題を残します。

 コントロールを司る動作に不安があるものの、それほど故障へのリスクは高いとは言えないでしょう。どの部分が全面に出るかで、プロ入りでの活躍も変わってきそう。


(最後に)

 昨年に比べると、腕が強く振れ、「着地」までの粘りも作れるようになり、ボールも技術的にも成長を感じます。ボールをじっくり見極められた時に、本当のコントロールがないところは気になりますが、短いイニングならば、的が絞れないまま相手が打ちあぐねる可能性はあります。

 実戦経験も豊富で、マウンド捌きには優れたタイプだけに、一年目から上手くハマると中継ぎでも活躍できるかもしれません。どう転ぶかは微妙ですが、プロでも何かを掴めば面白い存在になり得るのではないのでしょうか。今までは全く食指が伸びるタイプではなかったのですが、都市対抗の投球でその印象は大きく変わりました。年々資質を伸ばしてきた点も評価して、指名リストに名前を残してみたいと思います。


蔵の評価:



(2014年 都市対抗)










中元 勇作(24歳・伯和ビクトリーズ)投手 178/66 左/左 (近大工学部出身) 





                     「プロ注目の技巧派左腕」





昨年ルーキーながら都市対抗出場に、大きく貢献した左腕です。その活躍が認められ、都市対抗の東京ガス戦で先発。しかし、期待に応えられず終わりました。2年目を迎えた今年、中国地区を代表する投手として、スカウト達からも注目集めています。

(投球内容)

左のサイドスローに近いスリークオーターで、左打者には背中越しから来るような厄介な球筋が自慢です。

ストレート 120キロ台後半~MAX136キロ

昨年の都市対抗では、MAX139キロ。今年は、それよりもストレートの勢いは落ちたような気が致します。それでもボールにはキレがあり、球速の無さは気になりません。元々細かいコントロールはなく、枠の中にボールを集めて来る制球力はありますが、コースを厳しく投げ分けるような精度には欠けます。特に右打者に対しては、中に中にボールが入って来るのが気になります。逆に左打者にとっては、背中越しから来る感じで、嫌らしい印象は受けるでしょう。

変化球 スライダー・スクリュー

投球の殆どは、スライダーとのコンビネーションです。昨年は、スクリューのような右打者に対し逃げてゆく球も観られたのですが、現在それらしい球はよくわかりませんでした。このスライダーも、それほど絶対的なキレや曲がりの大きさはなく、ストレートとのコンビネーション・アクセントとしての意味合いが強いです。

その他

左投手らしく、牽制はまずまず鋭いものがあります。フィールディングの動きもよく、中々上手い選手だと思います。またクィックも1.1秒台でまとめられており、基準レベルを満たす能力の持ち主。投球以外の部分では、大きな欠点は見当たりません。

(投球のまとめ)

独特の球筋が嫌らしいのですが、結構中に中にと甘く入ってくる球も多く、ボールをシッカリ見極められれば打てない投手ではありません。特に微妙なコントロールがあるわけでもなく球種も少ないので、右打者にとっては苦にならないタイプかと。

そうかといって、左打者に対しても甘い球も少なくなく、スライダーもストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込むようなことはないので、当てにくいというわけではありません。左打者には強いでしょうが、絶対的な強さというほどでもないように思います。

ただ細かい制球力はありませんが、昨年のように四死球で乱れるといったことは無くなってきたのではないのでしょうか。その辺の安定感は、昨年より成長を感じます。





(投球フォーム)

<広がる可能性>

足を地面に向けて伸ばしますし、体もサイドハンドのように前に倒れ込むように重心を下げます。そのためお尻が三塁側(左投手の場合は)に落とせるタイプではなく、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化は期待できません。

ただ前に大きく足を逃がすことで、着地までの粘りは作れています。どちらかというと、球速のある小さな変化球を中心に、投球の幅を広げて行く投手ではないのでしょうか。

<ボールの支配>

グラブは全く抱えず、足のそばに添えて投げます。また足の甲での地面の押し付けは浅く、ボールはやや上吊りやすいフォームです。「球持ち」自体は悪いとは思いませんが、細かい制球力はあまり期待できず、あくまでもおおまかにボールをコントロールするといったタイプ。

<故障のリスク>

お尻は落とせませんが、特にカーブやフォーク・シュート系など、肘に負担のかかる球種を力一杯投げて来るわけではありません。腕の角度にも無理がないので、肩・肘への負担は小さく、ロスの少ないフォームだと言えるでしょう。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りはあるので、打者としてはタイミングを取りにくいはず。また体の「開き」も遅く、ボールの出所は見やすくありません。ただ中に中にと入ってくる球筋が、右打者には打ちやすいのでしょう。

腕も体に絡んで来るような腕の振りではなく、あまり上体の振りに鋭さはありません。そのため球種を増やした時に、球種を読まれないように気をつけたいところ。またボールに体重を乗せることが出来ていないので、力のあるボールは期待できません。あくまでも上体や腕を鋭く振ることで、キレを生み出すのが特徴。そのため甘く入ると、球威の無い球が打者の餌食になります。

(投球フォームのまとめ)

「着地」や「開き」の部分では、非常にいやらしく実戦的ですし、「球持ち」も悪くありません。ただ「体重移動」に課題があるので、威力のあるボールが打者の手元まで行きません。甘く入ったら怖い、その危険は常につきまといます。

(最後に)

技巧派にしては球種に乏しく、実戦派にしてはコントロールなどの欠点も少なくありません。独特の球筋には嫌らしさがあり面白いかなと思ったのですが、詳しく見てみると物足りない部分が少なくありません。

個人的には、指名リストに入れるのには、まだまだ克服しないといけない課題が少なくないように思えます。まだ社会人2年目ですから、来年までの変化を期待して、もう一年様子を見てみたいですね。


(2012年 都市対抗)


 






中元 勇作(24歳・伯和ビクトリーズ)投手 178/66 左/左  (竹原-近大工学部出身) 
 
都市対抗では、ルーキーながら緒戦の東京ガス戦に先発。本戦出場にも大きく貢献した、左のサイドスローに近いスリークオーター。変則フォームから繰り出す、独特の球筋が魅力です。

(投球内容)

 独特の球筋から繰り出されるストレートは、常時130キロ台前半~130キロ台中盤(MAXでは139キロ)。それほど手元までの勢いはありませんが、適度に両サイドにボールを散らせて打ち取ります。

 変化球は、多くがスライダーとのコンビネーション。たまに外角低めにスクリューなどを投げ込みます。都市対抗では、変化球の制球に苦しみ三振が殆ど奪えず。ただ元々細かい制球力はなく、不安定なところがあります。結局東京ガス打線に球筋を見切られ、序盤でマウンドを降りました。

 左腕らしく牽制はそれなりで、クィックも1.1秒台と素早いです。フィールディングの動きも平均以上、そういった欠点はありません。ただ甘くないコースの球でも打たれるように、打者には思ったほどタイミングが取りにくくはないのかもしれません。

(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、クィック投法でタメ無しで投げ込んできます。ただそのためか「着地」までの粘りがなく、打者としては苦になりません。

 グラブも体の近くに常にありませんし、足の甲の押し付けも浅く、「球持ち」もイマイチで、指先の感覚はイマイチ。そういった意味では、どうしても制球はアバウトになりがち。

 体の「開き」自体は遅く、腕が長く絡んでタイミングは取りづらそうには見えるのですが・・・。ただ「体重移動」が上手く乗せられていないので、どうしてもボールが手元まで来ない球質になってしまいます。

(今後は)

 大学時代はそれほど名の知れた選手ではなかったのですが、ルーキーながら都市対抗出場に貢献するなど実績を残しました。

 ただ左の変則左腕としての特徴はあるものの、アバウトな部分が多くドラフト候補となると物足りません。今年かなり伸びないと、指名云々は厳しいかと思います。ただ今年解禁組だということで、登板機会があれば再度注目してみてみたいと思います。

(2011年 都市対抗)