14sp-29
瀬川 隼郎(27歳・室蘭シャークス)投手 177/77 左/左 (北海出身) |
「いろいろな意味で若々しい」 高卒10年目にして、プロから熱い視線を浴びるようになった 瀬川 隼郎 。27歳で老獪なピッチングを魅せるのかと思いきや、まだまだ力で押すような若々しい投球が目立つ。好い意味では若さを失わない、悪い意味では年齢の割に完成度が高く無い、それがこの男の投球だ。 (投球内容) 177/77 とガッチリした体格から投げ込む、左スリークオーター。 ストレート 常時130キロ台後半~MAX144キロ 過去何度なく見てきた投手だとは思うが、正直気にしたことがなかった。球速は常時140キロ前後程度だが、ボール自体のビシッと来る勢い・威力はそれ以上に感じる。過去あまり気にならなかったのは、出ても140キロぐらいがやっとの投手であり、ボール自体に見応えがなかったから。そういった意味では、少しずつ資質を伸ばすことで、ようやくプロから注目されるほどの威力を今年身につけたといえるのではないのだろうか。ストレート自体は、コースにある程度集められて、コントロールも悪くない。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど 主な変化球は、左腕らしい大きなカーブ。カウントを整えるスライダー、それにあまり目立たないが、チェンジアップ系のボールも持っている。気になるのは、スライダーなどが結構甘めに入ることが多く、この点で27歳にしては変化球の精度が低いのが気になる。また、打者を仕留めるほどのキレ・威力も感じられないところもどうだろうか。 その他 牽制自体は入れるものの、あまり鋭く刺すようなものは見られない。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと標準的。ランナーを背負うと長くボールを持って相手を焦らすなど、そういった間の取り方は悪くない。 (投球のまとめ) ストレート自体の威力・コントロールはドラフト級だと思いましたが、変化球のキレ・コントロール・決め手の乏しさなど、総合力では物足りなさを感じます。27歳という年齢からも、一年目から一軍戦力に入ってきてもらいたい選手であり、そういった意味で正直どうなのよ?という疑問は残る。 (投球フォーム) 実際の投球からは、コントロールの甘さが気になったところ。では、投球フォームという観点ではどうなのか?考察してみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合)には落とせていません。すなわち体を捻り出すスペースが充分確保出来ていないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方。しかしカーブは、かなり多く投げてきます。 また「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間も並ぐらい。このへんが、変化球のキレ・曲がりの大きさに、あまり特徴を見出だせない要因かもしれない。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を押し付けられており、球筋もそれほど上吊りません。しかし腕が外旋して外からブンと振って来るフォームなので、その点でアバウトになり変化球が高めに浮いてしまう要因を作っているのかもしれない。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻を落とせない割に、カーブを多投するので、その点で肘を痛める危険性を感じるところ。腕の送り出しには無理を感じないので、その点で肩への負担は大きくないはず。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りはそれほどでもないので、打者としては合わせ難いフォームではないだろう。しかし前の肩と後ろの肩を結ぶラインが打者に正対しないように角度をつけられており、体の「開き」は遅くボールの出処が見難いはず。 腕は強く振れており、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せはイマイチには見えるが、それほど打者の手元までの勢い・球威に問題があるようには感じない。 (フォームのまとめ) 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を残しますが、「開き」の遅さには目を見張るものがあります。 コントロールを司る動作には優れますが、肘への負担が少なくないフォームなので、その点は気になります。 (最後に) 変化球が甘く入るなど、27歳にしては即戦力としてどうなのか?という疑問は残ります。しかし「体重移動」などが改善できれば、まだボールが速くなっても不思議ではありません。現状先発というよりは、リリーフで活躍が期待されているのではないのでしょうか。 それでも高校から10年かけてプロ入りを実現したように、非常に苦労人であり努力を惜しまない選手だという気はしています。今あるパフォーマンス以上のものを、プロ入り後身につけられるかもしれません。しかし都市対抗の投球を見る限りは、即戦力としては物足りないと判断して、指名リストに名前を載せようというまでの魅力は感じませんでした。 (2014年 都市対抗) |