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篠原 慎平(24歳・香川OG)投手 186/95 右/左 (今治精華-愛媛MP) |
「ストレートはプロ級」 186/95 の恵まれた体格から投げ下ろされるボールの迫力は、まさにNPBでも一軍レベルのボールを投げ込む 篠原 慎平。個人的には、川之江の下級生時代から目をつけていた選手。しかしその後紆余曲折あり、ようやくプロから注目される存在にまで戻ってきた。一時は故障から、四国アイランドリーグの愛媛を退団。2年間のブランクを経て、香川に復帰。そんな苦労人が、プロの世界でどのような投球を魅せてくれるのか興味深い。 (投球内容) 7月の上旬だかに、四国アイランドリーグ選抜が関東に遠征。その際には、最もこの投手がNPBに近い存在だと注目されていた。実際に今回指名されたアイランドリーグの選手の中でも、個人的にはこの投手が一番評価が高い。 ストレート 常時145キロ前後~MAX153キロ 関東に遠征した時のMAXは92マイル(147.2キロ)程度ではあったが、さすがにボールの勢い・球威は他の投手とは一味違ってました。それほど手元でグ~ンと伸びるとか、ピュッと切れる空振りを誘う球質ではないでのすが、ビシッと低めに決まった時は、中々手が出ないだけの勢いがあります。気になるのは、かなりボールが暴れるということ。低めに決まることもありますが、高めに抜けたり、元来両サイドへコントロールはアバウト。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど スライダーはかなり高速で、外角低めで小さく鋭く曲がり実戦的。フォークもそれほど精度は高くありませんが、低めに切れ込んでスピードのある変化。パッと見ると、少しカットボールとスピリット的なスピード感のある変化をします。そのため曲がりとしては実戦的ですが、いつも狙って決められるかというとその辺は微妙なレベル。 その他 大型ですが、牽制自体は結構鋭いものを持っています。しかしクィックは、1.2秒前後~1.3秒ぐらいかかっており、やや遅い部類。フィールディングも、平均レベルぐらいでしょうか。 (投球のまとめ) ボール一つ一つの威力は素晴らしいのですが、それを上手く操ることができません。特に関東での二回目の登板の時は、高めに抜けまくったり、狂ったコントロールの抑えが出来なくなっていました。こういった投げてみないとわからない部分があり、打者の選球眼やミート力が格段に上がるNPBの打者相手だと、コントロールのアバウトはより顕著になると予想されます。 (データから考える) 関東に遠征してきた7月上旬までの成績は 30試合 4勝1敗9S 防御率 1.40(リーグ1位) という成績でした。しかしシーズンを終わる頃には 53試合 6勝5敗10S 防御率 3.03 となっており、後半戦はかなり打ち込まれ調子を落としたことが伺えます。 1,被安打はイニングの70%以下 ✕ 77回1/3イニングを投げて、被安打は71本。被安打率は、91.8%であり、やや高いのがわかります。これだけのボールの威力がありながらこの数字ということは、甘い球が多いとか、合わされやすいフォームだとか、大きな欠点があることがわかります。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ✕ 四死球は38個で、四死球率は49.1%と50%近くあります。このぐらいだと、カウントを整えるのに四苦八苦しているはず。好調時にはそこまで乱れないので、良い時と悪い時の差が激しいということでしょう。私も二試合見てみて、そのことを強く実感しました。 3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 ✕ 奪三振は58個であり、1イニングあたり0.75個と三振でアウトを奪うケースは少なくありません。しかしリリーフ投手としては、決め手があるというほどではなく、アイランドリーグレベルの打者相手ならば、この条件は満たして欲しかった。 4,防御率は、1点台以内 ✕ 関東に遠征するまでの前半戦では、1.41 と充分基準を満たしていました。しかし最終的には、3.03 ということで、後半戦は相当打ち込まれていたことがわかります。潜在的には、この数字をクリアできる力は充分あるものの、年間通しての調子の維持が、課題としてあげられます。 (データからわかること) すべてのファクターで基準を満たしておらず、それも微妙に物足りないのではなく、明らかに開きがあるところに問題を感じます。確かにボール一つ一つは一流ですが、それを活かすだけの術を身につけていません。実際の投球以上に、NPBの一軍を意識するのには、時間がかかりそうな素材型のようです。 (投球フォーム) そのボールを活かすためには、どの辺に問題があるのか? フォームの観点から考えてみましょう。 <広がる可能性> ☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側には落とせません。すなわち体を捻り出すスペースは確保できておらず、カーブやフォークを投げるには適しません。 「着地」までの粘りは悪くないので、体を捻り出す時間はそれなり。そういった意味では、カーブやフォークのような球種以外ならば、それなりの球を投げられる可能性は持っています。しかし腕の振りが強すぎるので、むしろカットボール・ツーシーム・スピリットなど小さく速く変化するボールを磨く方が適していると言えます。 <ボールの支配> ☆☆ グラブをしっかり抱えきることができず、遊んでしまっています。これにより外に逃げる遠心力を内におさえこめないので、両サイドのコントロールを狂わせます。実際、両サイドの投げ分けはアバウト。 足の甲の地面への押し付けも遅く、浮き上がろうとする力を抑えるのが遅いので、ボールが上吊ることも少なくありません。その辺の抑えつけとリリースが上手く合致した時は低めに角度よく決まりますが、まだまだその精度が高いとは言えません。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻が落とせない割に、カーブやフォークといった体を捻り出して投げる変化球を持ち球にしています。それほど多くは投げないので悲観することはありませんが、肘への負担は少なくないはず。あまり、これらの球に便り過ぎないピッチングを心がけるべきでは。 振り下ろす腕の角度はありますが、送り出しに無理は感じません。そのため、肩への負担はそれほど大きくはないのでは。しかしそれでもかなりの力投派なので、登板が重なると消耗は少なくはないでしょう。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは悪くありませんが、体の「開き」は早く、ボールが見やすい傾向にあります。そのため球筋がいち早く読まれやすく、コースを突いた球でも合わされやすいわけです。これだけのボールがありながら被安打が多いのは、このへんに理由がありそう。 腕は強く振れるので、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールに体重を乗り切る前にリリースを迎えてしまっているので、実はもっと球威も球速も出せるようになっても不思議ではありません。プロの指導次第では、更にストレートに凄みが出てくることも期待できます。 (フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があり「体重移動」に改善の余地が残されています。 特にコントロールを司る動作に課題があり、実際に制球に課題があります。故障のリスクもけして少ないフォームではなく、過去にはそれで2年以上ブランクがありました。こうなると推せる材料は乏しく、かなりリスキーな素材であることがわかります。 (最後に) 速球の威力・投げ下ろす迫力などは、まさにNPBでも上位レベル。しかし技術・コントロール・精神面などのムラが激しく、それを活かすだけのものがありません。このへんの危うさや力量は、今年DeNAを退団した 冨田 康祐(香川OG出身)のアイランドリーグ時代とダブるものがあります。 あとは、いかにプロの指導でこの素材を活かせるようになるのか。しかも、まだ球威・球速を上げて行ける余地も残されています。指名としては、一か八かの育成枠らしい指名ではないのでしょうか。もうアイランドリーグで得るものは殆どないでしょうから、あとはNPBで勝負する段階にはあると思います。それでも能力的には、今のままだと厳しいだろうなという気は致します。そのため面白味のある素材ではありますが、指名リストに名前を載せようというほどのものはありませんでした。 (2014年 アイランドリーグ選抜関東遠征) |