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入野 貴大(楽天)投手のルーキー回顧へ







 入野 貴大(26歳・徳島ID)投手 180/78 右/左 (岡豊出身)
 




                      「微妙だね」





 今年も四国アイランドリーグは、関東に選抜チームを作って遠征してきた。その時に生で2試合ほどみて、育成枠なら指名があるだろうなぁぐらいの印象だった 入野 貴大 。その時すでに9勝をしていたのだが、最終的には16勝をあげ最多勝に。更にチームを、独立リーグ日本一まで押し上げる活躍を魅せた。今回は改めて、ソフトバンクとの交流戦の映像も観てみて、レポートを作成してみた。

(投球内容)

ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくる。

ストレート 常時140~91マイル(145.6キロ)

 この選手の球は、ピュッと来るので打者は振り遅れたりする勢いは感じます。またストレート自体のコントロールは、それほど悪くありません。しかし球威がある球質ではないので、高めに甘く浮くと痛打を浴びることも少なくありません。キレが鈍ってくると、ちょっと怖いかな。

変化球 スライダー・チェンジアップ・ツーシームなど

 面白いのは、右打者の外角に小さく横滑りするスライダーを投げる一方で、内角にチェンジアップを使って来ることが多いということ。右打者に、チェンジアップを使う投手はあまり多くはありません。また左打者への外角には、スピードあってシュート気味に沈むツーシームを、そして外角からスライダーを入れて来るケースが目立ちます。むしろ通常は、左打者の外角にチェンジアップを使うのが一般的。そういった意味では、かなり特殊な配球をしてきます。ただし気になるのは、スライダーが甘く高めに浮くことが多いということ。これは、NPBレベルの打者では見逃してはくれないでしょう。

その他

 牽制はかなり鋭いものを入れて、走者の足を釘付けにできます。クィックも1.1秒前後とまずまず。フィールディングの動きは良いのですが、ベースカバーが遅れることがあるので、その辺は改善したいポイント。

(投球のまとめ)

 関東に遠征してきた時は、一回目に見た時は育成枠であるかないかぐらいだよなぁといった程度でした。しかしもう一試合別の試合で登板があった時は、テンポよくストライクを先行させ、自分のペースに引き込んで相手を討ち取っていました。こういうピッチングがいつも出来ると良いのですが、やはりソフトバンクとの交流戦ではリズム感の悪い投球をしており、その辺はかなり微妙だと言えます。いずれにしても投球内容としては、ボーダーレベルの投手、そういった印象は受けます。





(成績から考える)

関東遠征するまでの前半戦の成績は

13試合 9勝2敗 防御率 2.39(5位)

その後の成績は

14試合 7勝1敗 防御率 2.43(4位)

となっている、防御率に関しては年間とおしての数字であり、若干数字は上がっているので、後半戦はもう少し防御率が悪かったことになる。数字だけみると、私が見た7月上旬の頃と較べて、別段数字の上では大きな変化は見られない。ここからは、年間を通じた成績から傾向を考えてみた。

27試合 16勝3敗2S 防御率 2.43

1,被安打はイニングの70%以内 ✕

 129回2/3イニングを投げて、被安打はイニングを上回る133本。これでは基準である70%以内どころか 102.6% と。これは、ボールが合わされやすいフォームだとか、コンビネーションが単調だとか、ボールの威力が劣るからなどの要因が考えられるが、彼の場合は「開き」が早くボールが見やすいのと、球威に欠けるところがあるからではないのだろうか。

2, 四死球はイニングの1/3以下 ◯

 四死球は38個で、四死球率は29.3%と基準は満たしている。コントロールは抜群ではないにしろ、四死球で自滅するタイプではない。

3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◯

 奪三振率は、1イニングあたり0.97個であり、これは先発の基準どころかリリーフ投手の基準をも満たしている。

4, 防御率は、1点台が望ましい △

 NPBを意識するのであれば、1点台の安定感は欲しかっあが、2.43だった。ちなみに1位は、元NPBの 正田樹 1.02。また2位はマイナー経験者の 河本ロバート 1.70 の二人が一点台。しかし二人ともNPBや米マイナーレベルで通用しなかった選手たちだったことを考えると、入野の現時点の実力が絶対的ではないことがわかる。

(データからわかること)

 コントロールは基準内、奪三振の多さは評価できるポイント。この辺は、ストレートが空振りを誘えるキレがあることも大きいからだろう。しかし被安打の多さと、防御率がそこまで図抜けていないことが気になる材料。データの上からも、実際の投球同様に、微妙な印象は否めない。


(投球フォームから考える)

ではフォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足は地面に向けて伸びており、お尻の一塁側への落としは充分ではない。お尻が落とせないということは、身体を捻り出すスペースが確保出来ていないということ。すなわちカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適していないことになる。

 「着地」までの粘りも平均的で、身体を捻り出す時間も並。こうなると、カーブ・フォーク意外の球種のキレ・曲がりも並で、それほど際立つ変化球の習得は厳しいかも。この選手の場合、変化球で空振りを誘うというよりも、速球とのコンビネーションで抑えるタイプだと言える。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面への押しつけが短いので、力を入れて投げると上吊りやすい。高めに浮いた球を打たれるケースが多いのは、この辺の動作に原因がありそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせないフォームではあるのだが、カーブやフォークなどを投げるわけではないので、肘への負担は少なそう。

 振り下ろす腕の角度はあるものの、送り出しに無理は感じられない。そういった意味では、肩への負担は少なそう。少なくても今のフォームでは、肩・肘への負担は少ないのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りに欠ける部分があり、「イチ・ニ・サン」のタイミングで合されやすい。またそれに伴い「開き」も早く、コースを突いたはずの球でも踏み込まれて打たれることが少なくないはず。

 振り下ろした腕は身体に絡むように、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せは悪くはないが、もっと乗せられれば、キレだけでなく球威も出てくるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に課題があり、「球持ち」「体重移動」は並ぐらいだろうか。

 お尻が落とせないことへのリスクと足の甲への押し付けが甘いことでの高めに浮きやすい部分もあり、このへんも推せるほどの材料は揃っていなかった。フォームの部分でも、26歳にしては完成度はけして高くない。

(最後に)

 最後に実際の投球、残した実績、投球フォームの観点でも、微妙だと言わざるえない材料が揃っている。一年目からバリバリというほどではなく、その割に26歳という年齢にしては、総合力は高くないなぁといった印象。

 特に後半戦になり数字を高めた様子もなく、やはり育成枠レベルの投手なのかなと改めて実感致しました。今回指名リストには、名前を残すほどのインパクトは、私にはありませんでした。


(2014年 アイランドリーグ選抜関東遠征)