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守屋 功輝(阪神の)投手のルーキー回顧へ







 守屋 功輝(21歳・HONDA鈴鹿)投手 183/78 右/右 (倉敷工出身)
 




                      「面白い存在」





 サイドに近いスリークオーターから繰り出すMAX148キロのストレートは非常に動く癖球で、空振りを誘うというよりもバットの芯をズラすタイプ。日本人で、ここまでボールが動く選手は珍しい。サイドからボールを動かすといえば、ルーキーながらクローザーを任されている 三上 朋也(DeNA)を彷彿させる。高卒3年目と若く、今年プロ入り表明するかは微妙だが、非常にドラフト戦線でも異色の存在だと言えよう。


(投球内容)

ストレート 常時140キロ前後~MAX143キロ

 都市対抗での球速は、140キロ前後~MAX143キロぐらいと、つぶ揃いだった今年の大会の中では際立つ数字ではない。しかしボールが非常に動くので、その球速以上の価値があり、打者としては芯で捉えにくいはず。それほど細かいコントロールはないように見えるが、ボールをコースに散らすことができ、ストライク先行で有利な状況を作るのが上手い。今年の都市対抗予選では、11イニングを投げて四死球は0だった。

変化球 カーブ・スライダー・シンカー

 右打者にはカーブ・スライダーを織り交ぜ、左打者にはシンカーだかチェンジアップ系のボールを多く使ってきます。どちらかというと、カウントを稼いだり速球とのスピード差で的を絞らせない働きが主で、ボールゾーンに切れ込んで空振りを誘うような活かし方はできません。四球が少ないのはその辺の事情があると思いますが、ストライクゾーン~ボールゾーンへ外れてゆく変化球を覚えることが、これからの課題ではないのでしょうか。

その他

 牽制やフィールディングについてはよくわからなかったのですが、クィックは0.95~1.05秒と高速で、極めて早く投げ込める技術があります。

(投球のまとめ)

 癖球とボールの威力で押す、強気の投球が身上。その割にストライク先行できる強味があり、コントロールに不安がなかったり、変化球も仕留められるほどのボールはなくても、それなりに一つ一つのボールに威力を感じます。

 けして荒っぽい選手ではなく、適度なまとまりを持つ力投派であり、その辺が素材として面白味を感じさせる部分と、プロでもあまりいないタイプのサイド‥スリークオーターの投手だとも言えます。


(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、勢いよく足を引き上げて来る力投派。投球フォームを見るかぎり、ゲームメイクする先発タイプというよりも、短いイニングでエネルギーをぶつけるリリーフタイプのように感じます。

<広がる可能性> 
☆☆

 前に体を倒して来るサイドハンド的なフォームのため、お尻は一塁側に落とせません。そのため体を捻り出すスペースは確保されず、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 また身体に前に倒す分、「着地」も早くなりがちで、体のを捻り出す時間も充分とはいえません。そのため変化球のキレや曲がりが大きくないのは、このフォームに大きな原因がありそう。将来的に武器にするほどの変化球が身につけられるかは微妙だと言えます。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールもそれほど上吊りません。更に腕が横から出るので、ボールが上吊り難いのもあると考えられます。「球持ち」も悪くなく、そういった意味では、コントロールを大きく乱す要素は少ないと言えます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせるフォームではありませんが、それほどカーブも使ってきませんし、フォークのような縦の変化球も見られません。そういった意味では、肘への負担は悲観することはなさそう。

 腕の角度にも無理は感じませんが、あまり腕が綺麗にしなるタイプではありませんし、少し外旋する部分のある力投派なので、あまり無理をするという不安は残ります。それでもケアに充分務め、無理使いされなければ、故障の可能性は低いのではないかと考えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りが作れず合わされやすいフォームなので、「開き」は早いようには見えませんが、左打者を苦手にする可能性は否定できません。

 腕の振りが素晴らしく、強く振れることは強み。ボールにも適度に体重を乗せられていますが、もっと良くなる可能性も秘めています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」に物足りなさはあるものの、あとの部分に大きな問題はありません。かといって、特別優れているところがあるわけでもありません。

 コントロールを司る動作に問題がないのと、それほど故障のリスクが高くないところは推せる材料。まだまだ成長過程にある選手なので、指導次第ではまだ伸びる素材だと言えるのではないのでしょうか。


(最後に)

 独特の癖球を持ちながら、速球の威力・変化球のキレ・コントロールと不安材料のない総合力が高いのが強味。更に気持ちも強く、実戦に行って持ち味を発揮するタイプ。

 高卒3年目の若さもあって、本人がプロ志向なのか、会社の引き止めがあるのかは不明です。まだ伸びる余地があるので、どうしても今年プロ入りしなければならないという選手ではないと思いますが、プロ側評価するならばプロ入りしておくべきではないのでしょうか。

 まだ現状は面白い素材の範囲であり、絶対的な存在ではありません。しかしある程度のレベルまで来ているので、一年目から一軍で、ある程度投げられる下地は出来上がっていると思います。本当の真価を発揮するのは数年後だと思いますが、下位指名ならば面白い指名となるのではないかと思います。個人的には、密かに活躍を期待している一人です。


蔵の評価:
☆☆


(2014年 都市対抗)