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佐藤 翔太(24歳・東芝)投手の個別寸評へ






佐藤 翔太(兵庫・東洋大姫路)投手 178/69 右/右 
 
 昨秋の神宮大会NO.1投手と評され、MAX144キロをすでに記録している大会屈指の好投手。ただセンバツ直前には、横振りの腕の軌道を縦振りを意識したフォームにマイナーチェンジを試みるなど、まだまだフォームがしっくりせずに、打ち込まれるケースが多かったと云います。そんな中でのセンバツ登板。どんな投球をするのか注目されておりました。

 実際、この日の甲子園のスピードガンは調整中で、元来の球速よりは常時10キロ程度遅く計測されている印象です。恐らく135~140キロぐらいはコンスタントに記録してMAXで140キロ台を越えていたものと思われます。速球には、際だつ球威・球速・伸びなどはありませんでしたが、左右両打者のアウトコースにしっかりコントロール出来る技術は、昨秋よりも遙かに磨きがかかっておりました。以前は、スリークオーター気味に肘が下がって出てくるケースが多く、シュート回転して中に入ってくる球が多かったのですが、そういった球が随分と少なくなった印象です。

 また変化球は、球速を殺したカーブをアクセントに、スライダー・フォーク・チェンジアップなど実に多彩です。左打者へ使うチェンジアップの威力も素晴らしく、制球+変化球レベルの高さが、この投手の最大の魅力だと思います。

 元々登板しない時は、センターなどを守る選手。フィールディングも非常に上手く、クィックも1.0秒前後と超高速で投げ込めます。試合をまとめるセンスもあり、野球センスの高さは素晴らしいですね。

 野手としても、スクエアスタンスから真っ直ぐ踏み出して来るオーソドックスなスタイル。足元もブレず、非常に基本に忠実で、確かな打力がある選手です。フィールディングの素晴らしさからも、遊撃あたりで育ててみたい魅力も十分です。

 ただ今大会を見る限り、それほどスケールは感じませんが、上のレベルでも通用しそうな確かな実戦力のある投手へと生まれ変わりました。スケール感は、上位指名の器には見えないのですが、それを確かな実戦力と高い野球センスで補うことが出来ていると思います。あえてセンバツの内容では、投手・佐藤で評価してみたいと思いました。夏までも順調に育って行けば、秋には中位~上位指名で、プロ入り出来る才能の持ち主だと思います。夏に、もう一度じっくりチェックを入れてみたい選手でした。

(2008年・センバツ)







佐藤 翔太(兵庫・東洋大姫路)投手 178/69 右/右 





             「神宮大会NO.1の速球派!」





 全国の秋季大会を勝ち上がってきたチームが激突する明治神宮大会。選抜大会の前哨戦となる今年の大会では、野手の人材が目立ち投手の人材で目立つ選手は殆どいなかった。そんな中、140キロ台の球速を連発して注目された男がいる。その男の名前は、佐藤 翔太。来春間違いなく、ドラフト候補の1人として注目されるであろうこの男のピッチングに、今回は焦点をあててみた。

(投球スタイル)

 少し肘の下がったスリークオーターから、コンスタントに140キロ台を記録。最速で144キロをマークした。少しシュート回転する球質は気になるが、けして無理しなくても140キロ台を叩き出せる能力は確かだ。

 ただ彼は、けして速球でねじ伏せるタイプではない。むしろ彼の魅力は、思わずタイミングが外れてしまう高校生離れした105キロ前後のチェンジアップ。右打者には、外に落ちながら曲がる115キロ強のスライダーとのこのコンビネーションが光る投手なのだ。

 他にもチェンジアップと同じぐらいの球速のカーブなども併せ持つ。クィック動作などは、1.2弱と基準以上だし、フィールディングの反応も悪くない。ただフォームの癖が盗まれて盗塁を許すケースがあるなど、実戦面で課題を残す。まだまだ上のレベルを意識すると、いろいろと改善して行かないといけない部分は多い。


<右打者に対して> 
☆☆☆

 アウトコース高めのゾーンに速球とスライダー・アウトコース低めのゾーンにやはり速球とスライダーが集まるケースが多い。意識的に使いわけているわけではなく、リリースがまだまだ不安定で球が散っているものと思われる。

 インコースにも速球やスライダーが行くこともあるが、正直何処まで狙って投げているかは微妙。まだまだバラツキのある投球だと云えよう。決め球は、アウトコースのストライクゾーン~ボールゾーンに逃げて行くスライダーで空振りを取ること。これが、右打者に対するる最大の武器となる。

 ただ右打者に対しては、アウトコース高めに浮く甘い球を、ことごとく狙い打たれる。投球の基本は、アウトコース・それもアウトコース低めである。しかし腕が最も伸びて振れてしまうアウトコース高めは、真ん中近辺と並んで、最も打者からヒットを浴びるコースなのだ。彼は、そこに甘く入る球が多い。

<左打者に対して> 
☆☆☆☆

 左打者に対しては、アウトコース高めに決まる速球と、アウトコース真ん中~低めに沈むチェンジアップが大変効果的。けして左打者への制球力が高いわけではないが、このコンビネーションが、右打者にはない最大の武器となる。左打者のインコースにも速球やスライダーを投げることもあるが、投球の多くは外角で構成されている。このチェンジアップは、ちょっと高校生レベルでは中々観られない代物なので、選抜ではぜひ注目して欲しい。


(投球フォーム)

 いつものように「野球兼」の2007年12月10更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらも参考にして読み進めて欲しい。

<踏みだし> 
☆☆☆

 写真1は、佐藤投手がワインドアップで振りかぶった時のものである。背中の反り具合・お尻の大きさなど、この時期の2年生としては、かなり筋力が発達しているのが伺われる。両足の横幅を広めに取りバランス良く立てている。

 写真2まで、足をゆっくりと引き上げ、その高さは並ぐらいだろうか。このフォームを見る限り、球の勢いよりも、制球力やバランスを重視した踏みだしだと云えよう。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆

 写真2を観ると、軸足の膝から上がピンと真上に伸びきることなく立てているので、フォームに余計な力みは感じられない。全体的にはバランスが取れた立ち方に見えるのだが、軸足にしっかり体重が乗りきる前に膝が折れ始めており、軸足の股関節にしっかり体重が乗せられていないようで残念だ。

<お尻の落としと着地> 
☆☆

 写真3を観ると、三塁方向に足をピンと伸ばしているので、お尻の一塁側への落としは悪くない。お尻が一塁方向に落とせれば、身体を捻り出すのに充分なスペースが確保出来るので、将来的に見分けの難しいカーブや縦に落差のあるフォークの修得も期待出来る。しかし三塁側にピンとそのまま伸ばしてしまうと、どうしてもバランスが上手く取れず早く着地することになる。これだとお尻を一塁側に落とした意味がなくなってしまう。それならばどうすれば良いかと云えば、幾分二塁方向に足を送り込むことで、バランス良く立てることに心がけがたい。

 お尻を一塁側に落とすことよりも重要なのは、着地のタイミングを遅らせることである。これにより「イチ・ニ~のサン」の「ニ~」のためが出来、打者からタイミングが計られにくくなったり、体重移動を可能にしたり、身体を捻り出す時間を確保出来るのだ。この着地のタイミングを遅らせることが、投球フォームで最も重要な動作になる。彼の場合、写真4のこの着地が粘りなく実にあっさり地面を捉えている。その弊害が、後のフォームに現れてくる。


<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆

 
写真6を観ると、グラブがやや身体の後ろにすり抜けそうだが、最後まで比較的身体の近くにグラブを留めることが出来ている。これにより左右の軸のブレを防ぎ、両サイドの制球は安定しやすくなる。

 写真5の右足スパイクに注目して頂けるとわかるが、足のつま先だけが地面についており、足の甲で地面を押しつけられていない。足の甲で地面を抑える意味としては、球が高めに浮くのを防ぎ、後の動作にエネルギーを伝達する働きがある。彼の球が上吊る要因の一つに、この足の甲の押しつけの甘さが考えられる。


<球の行方> 
☆☆

 
写真3を観ると、グラブを斜め前に突きだし、球の出所を隠しているようにも見えるが、前の肩と後ろの肩を結ぶラインは、打者に真っ直ぐ伸びており、それほどボールを隠せてはいないようだ。写真4の着地の段階では、すでにボールを持っている腕は、打者から見え始めている。すなわち球の出所は早く、開きの早いフォームだと云えよう。身体の開きが早くなれば、それだけ打者からは、タイミングが計りやすくなり、いくら球速があってもその効果は極めて薄くなる。

 写真5を観ると、かなり肘が下がったフォームなのがわかる。そのため球に角度がなく、平面的で打者にとっては、球速程苦にはならない球筋なのだろう。また球持ち自体は悪くないように見えるのだが、腕をブンと振って投げ込むタイプなので、指先の感覚でボールが投げられないタイプだ。こういった投手は、どうしても微妙な制球力がつきにくくアバウトになりやすい。またボールにバックスピンがかからないので、球質も棒球になりやすい。そういった意味では、かなり実戦力に欠けるフォームだと云えよう。


<フィニッシュ> 
☆☆

 
写真6を観ると、振り下ろした腕は身体に絡んでくる。ただ地面の蹴り上げが弱く、まだまだしっかり体重移動が出来ているかは疑問である。また投げ終わったあとに、少々バランスを崩すことからも、ステップの幅があっていないのかもしれない。


(最後に)

 
この時期に140キロ台連発・非凡なチェンジアップのキレがあるのは、この投手の資質の高さを伺うのに充分であった。しかしプロで使える投球を目指すには、まだフォーム・制球力を中心に課題が多いことがわかった。

 来春までに、如何に課題を改善して行けるのか注目したい。もう少し身体がビシッとして来ると、まだまだ見違えるような球を投げられる可能性が秘められている。またこの選手、チームの4番打者を務める打者としての才能にも恵まれている。選抜では両睨みで、その可能性をチェックしたい。いろいろ書いたが、現時点では全国トップランクの投手であり、ぜひ来年のドラフト戦線を語る上で覚えていてもらいたい1人だ!



(2007年・神宮大会)


 






 
 投手としては、個別寸評予定。4番をつとめる打者としての才能も光る。ヘッドスピードが鋭く、右方向にも強烈な打球が飛ばせる強打は見物。将来的にはどちらがと云われると迷ってしまうぐらいの打撃の才能もある選手。当然140キロ台をコンスタントに投げられるだけに、地肩の強さも期待出来るであろう。フィールディングや走力など、選抜では野手としての可能性にも注目してみたい。

(2007年・神宮大会)