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高濱 祐仁(日ハム)内野手のルーキー回顧へ







高濱 祐仁(横浜・3年)遊撃 182/80 右/右 
 




                     「成長しているのでは?」





 ドラフト1位で阪神に入団した 高濱 卓也(ロッテ)内野手の弟として、入団直後から注目されてきた大型内野手。特にツボにハマった時の飛距離は素晴らしく、兄以上のスケールを感じさせる選手として期待されてきた。しかし彼の潜在能力を持ってすれば、まだまだこんなものじゃないだろうという感じで、あっという間に最終学年を迎えた。

 そんなこの選抜で、私は彼の精神的な成長を感じずにはいられなかった。八戸学院光星戦の初回、ランナーニ・三塁場面で4番高濱に打順は回ってくる。初球は、明らかに外したボール球。ここは、一塁に歩かすのかと誰もが思った瞬間だった。しかし続く2球目、カウントを取りに行く球を逃さず叩く。選抜初打席のファーストスイングで、集中力を切らさず見事センターオーバーの打球を放つあたりに、彼の精神的な成長を感じずにはいられなかった。下級生までの高濱は、口が半開きで意識が何処にあるのかわからないような顔で打席に立っていた。しかし今は、打席での顔つきも、かなり変わってきていると私は見ている。少しずつではあるが、彼が持っている潜在的な能力が引き出されつつあるのではないかと。


(守備・走塁面)

 高濱は、高校球界でも指折りの強打者でありながら、意外に守れる守備力を持っている。プロの遊撃手としては守備範囲も狭く、少し重苦しい印象は受ける。しかし球際でのグラブ捌き・スローイングも安定しており、プロでも二塁あたりならば担うことができるのではないか、そんな期待を抱かせます。この辺は、ポジションが限られるであろう 岡本 和真(智弁学園)にはない魅力。

 一塁までの塁間は4.55秒前後ですから、左打者に換算すると4.3秒前後に相当。このタイムは、高校生としては平均的ですが、プロでは中の下レベルの脚力だと考えられます。秋の新チーム結成以来の24試合で、盗塁は僅か1個。走力でアピールするタイプでは、けしてありません。

守備は中の上、走力は中の下、ドラフト候補としてそのぐらいの位置づけだと考えて良いでしょう。


(打撃内容)

 個人的には、打撃の潜在能力も 岡本 和真(智弁学園)より上ではないかと考えます。けして当たった時の飛距離でも負けませんし、ボールを捉えるセンスは高濱の方が上だからです。

 選抜では、第一打席にセンターオーバーのツーベース。第四打席にも、センター前にはじき返しました。本質的には、センター中心に打ち返す中距離打者の印象が強いのですが、秘めたる飛距離には長距離砲への可能性も感じます。

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは高めに添えます。背筋は伸ばされておりますが、腰の据わりが浅く構えにどっしり感がありません。背中の反りは、秋よりもオーソドックスに。全体のバランスとしてはあまりよくありませんが、両目で前を見据えることで、錯覚を起こすことなくボールを追うことが出来ています。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下るときに始動する「早めの仕掛け」を採用。これは典型的なアベレージヒッターの仕掛けであり、彼が長打よりも対応力を重視しているのがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を高く引き上げて、ベース側に踏み込むインステップ。始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方。ベース側にインステップするように、外角を強く意識しています。

 秋からの欠点は、踏み込んだ足元が早く地面から離れてしまう点。これだと引っ張り専門のスイングであり、右方向への打撃が中々できないであろうことは容易に想像がつきます。インステップする割に、外角の厳しい球や低めの球が厳しいはずで、打てるのは真ん中近辺で引っ張り込める球と、打てるコースが狭いのが難点。これは、秋から全く変わっていません。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 早めに打撃の準備である「トップ」の形は作れています。秋はグリップを内に入れてしまう癖があり、中々バットが抜けて来なかったのですが、その点はあまり気にならなくなってきました。

 元々バットの挿入角度はよく、トップ~インパクトまでのスイングにロスを感じさせません。バットの先端であるヘッドも下がる癖もなく、大きな弧を描きつつフォロースルーも使えるので、上手く捉えることができれば打球が大きく伸びてきます。上半身の使い方は、秋よりも無駄な部分がなくなり、スムーズに振り抜けるようになってきました。

<軸> 
☆☆☆

 足を大きく上げ下ろしするので、目線はそれなりに上下に動きます。特に体の開きが我慢できないのですが、軸足は地面から真っ直ぐ伸びて、綺麗に回転出来ています。まだ余計なアクションが多いので、もう少し将来的にはシンプルなものにして行くことになるのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 冒頭にも述べたように、打席での集中力が高まり、甘い球を逃さず仕留める「鋭さ」が増してきました。しかしながら、まだ足元が盤石でないために、捌けるコースが狭いのが気になります。上半身に負けない下半身を身につけることが、夏に向けての最大の課題ではないのでしょうか。

 ボールを捉えるセンス・ボールを飛ばす能力はあるので、下半身とのバランスが取れれば内容も大きく変わってくるはず。そこに期待して、今後も見守って行きたいと思います。


(最後に)

 ニ遊間を担える守備力がありながら、打撃能力も全国で3本の指に入るであろう素材だと評価します。それに確かな精神的成長を伺うことができたと判断すれば、高い評価をせざる得ないところ。スカウト達のボルテージは、甲子園でホームランを連発した 岡本 和真 の方にが高いようですが、私にとっては 高濱 の方に魅力を感じました。

 これで下半身の盤石さが身につき、右方向への打撃も可能になれば、上位指名も十分意識できる存在になるでしょう。個人的には、現時点でもある程度高い評価は記したいと思います。


蔵の評価:
☆☆☆


(2014年 選抜)











 高濱 祐仁(横浜・2年)遊撃 181/83 右/右
 




                  「兄同様・怪我が多いのが気になる」





 ドラフト1位で競合した兄・卓也(ロッテ)以上の長打力とスケールがあり、名門・横浜高校で1年から4番に座り続ける 高濱 裕仁 。しかしこの秋は、怪我のため4番をハズレたり不本意だった。兄もドラフトで複数球団から競合の末、阪神に入団。しかし故障のため、未だにその才能を生かし切れないでいる。果たして弟は、今後どうなのだろうか?


(守備・走塁面)

 大型選手だけに、遊撃手としてはやや重苦しく、守備範囲が広いとは言えません。しかし球際でのボール捌きはうまく、高校生の遊撃手としては中の上レベルのレベルはあり、想像以上よりも上手い。肩もまずまず強く、将来的には三塁もしくは、強打の二塁手あたりを期待できる素材ではないのでしょうか。これだけの強打で、二塁あたりを担えることになると、かなりの付加価値があると見て良いでしょう。

 全力で走り抜けるような場面をあまり見たことがないので、一塁までの正確なタイムがわかりません(計測できても、遅すぎて参考にならず)。しかしこの選手、夏の神奈川予選ではチーム一の5盗塁(7試合)をマークし、出塁すれば走れる走力があります。相手の隙を突くのがうまいのか、元々持っている走力が高いのかよくわかりませんが、けして動けない選手ではないということ。実は昨夏の神奈川予選で盗塁をしているのは、この高濱と浅間大基(2年)だけというのも、興味深いものがあります。それだけ監督から、信頼されているということなのでしょう。

 高校時代の兄と較べても、遊撃守備は遜色ないレベルまで来ているのではないのでしょうか。それでもプロの遊撃手という感じはしないのですが、三塁ならば充分こなせるポテンシャルがあり、大型二塁手としての期待も抱けます。走力も無さそうに見えて、盗塁を意外なほど決めていることがわかりました。


(打撃内容)

 右方向に大きなのが打てるイメージはなく、内角の球でもうまく肘をたたんで、センターからレフト方向への打球が目立ちます。ツボにハマった時の飛距離は、兄にはないものがあります。2014年度の高校球界でも、スラッガー的な資質は、1、2を争う素材だと言えるでしょう。

<構え> 
☆☆☆

 前足を引いた右オープンスタンスで、グリップの高さは平均的。背筋を伸ばし少し背中を反り気味に立ち、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢は並ぐらい。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下る時に始動する、「早めの仕掛け」を採用。仕掛けの観点からすれば、いろいろな球に対応しようとするアベレージヒッターの要素が強いことがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を大きく引き上げてまわしこんで来るように、始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わせやすいはず。ベース側にインステップして踏み込むので、外角を強く意識しているのがわかります。

 その割に、踏み込んだ足元がインパクトの際にブレてしまいます。そのため体の開きを我慢できなかったり、エネルギーをしっかりボールに伝えきることができません。今のスイングだと外角の厳しい球や低めの球にもキツイでしょうし、右方向への打撃も厳しいはず。打てる球は、真ん中周辺と幅が狭いのが気になります。

<リストワーク> 
☆☆☆

 早めに打撃の準備である「トップ」を作って来るので、速い球には立ち遅れません。ボールを呼びこむ時に、グリップが内に入り過ぎているので、中々バットが出てこないのが気になります。

 バットの挿入角度は良いのですが、懐にスペースが欲しいタイプなので、内角はインステップも相まって窮屈になります。それでも肘をたたんで打つことはできるので、少し甘めの内角ならばうまく巻き込んで長打には出来ます。

 バットの先端であるヘッドの下がりはなく、スイング軌道に大きな癖はありません。大きな弧を描いて、ボールを捌くことは出来ています。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはあるので、目線はそれなりに動きます。体の開きが我慢できないのが気になりますが、軸足は地面から真っ直ぐ伸びているので、体があまり突っ込まないのが良いところでしょうか。

(打撃のまとめ)

 バットが内に入りすぎる点、足元が盤石じゃない点 などがあり、緩急への対応よりも打てるコースが狭いのが気になります。特に打球を右方向へということが意識出来ていないので、警戒される中いかに外角を打ち損じることなく叩けるスイングを身につけられるかでしょう。


(最後に)

 持っている資質は高いものがありますが、まだまだ技術的にも精神的にも未熟な点が気になります。守備・走塁は、その見た目以上に優れたものがありますが、プロを意識すると発展途上。

 この選手も、最終学年を迎えるにあたり、目の色が変わってくるかどうかが、一つ大きなポイントになるのではないのでしょうか。内からこみ上げて来るような凄みが出てくれば、兄同様に1位指名でプロ入りできるはず。しかし現状は、まだまだ素材を期待しての評価に留まります。


(2013年秋・神奈川大会)