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幸山 一大(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ







幸山 一大(富山第一3年)左翼 190/87 右/右 
 




                    「全くノーマーク」





 夏の大会直前の練習試合か何かで、幸山 一大 目当てにスカウトが集結しているという話を耳にした。富山第一は、今年の春季北信越大会で見ている。と言っても私は、アルペンスタジアムから移動して、魚津の駅からレンタサイクルを借りて永遠と桃山球場まで坂を駆け上がってきて、富山第一の試合の途中に着いたものの、ヘロヘロで気分が悪かった。そのため球場横の小高い丘から、ぼんやりとこの試合の模様を見ていたぐらい。そう私の目的は、次の試合だったからである。確かこの試合の富山第一は、壮絶な打撃戦を展開していた、そんな記憶しか残っていない。

 幸山のことは、前年の夏に甲子園でそのプレーを確認していたので、巨体からパワフルな打撃をするものの、脆くて動けない、守れない選手との印象しか残っていない。とてもプロが注目するような選手だとは、私自身全く思っていなかった。幸いにして夏の富山大会の映像が手に入ったので、改めて彼のプレーを確認してみた。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、右打席から4.5秒強ぐらいだから、左打者に換算すると、4.25秒強ぐらい。プロの基準である4.2秒を満たすまではないが、190センチ台の大型野手にしては思ったよりも動けている。プロに混ぜれば、中の下~それ以下ということにはなるが、打撃が売りの選手なので悲観するほどではない。

 ただし左翼手としての動きは危なっかしく、けして上手い外野手とはいえない。地肩に関してはあんまりわからなかったのだが、返球を見る限り強い送球が見られず、あまり期待できないのではないのだろうか。プロで鍛えて、レフトを任せられるまでのレベルにまで到達するのか、その点ではかなり微妙なラインかとは思えてくる。





(打撃内容)

 巨体を活かした長打力が、この選手の魅力。打球の殆どは、センタからレフト方向に集中しており、右方向への打球は殆ど見られません。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高く添えた強打者スタイル。腰はあまり据わらず背筋を伸ばして立ち、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も並ぐらい。190センチの巨体から打席では大きく見え、投手に与えるプレッシャーは半端ではないのだろう。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心に下がるときに、ベース側につま先立ち。本格的に動き出すのは、投手がリリースを迎える前後ぐらいと極めて遅い。彼のような日本人離れしたパワーの持ち主ならば、このタイミングでも使いこなせないとは言えないが。もしこのタイミングでも対応できるならば、日本人離れした長距離砲として活躍できる可能性は秘めている。

<足の運び> 
☆☆

 始動~着地までの「間」は殆どなく、完全に「点」の打撃になります。そのため狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。そのため緩急への揺さぶりには脆く、打てるタイミングは限られます。

 軽くベース側にインステップするので、外角よりの球を意識しています。しかし踏み込んだ足元がブレてしまい、打ち損じやパワーロスが生じやすいのが大きな欠点。地面から足が離れるのが早く、完全に引っ張り中心の打撃になります。そういった意味では、本当に厳しい外角球や低めへの対応は厳しく、そうかといって内角の捌きも上手くはないので、打てるコースも限られてしまいます。

<上半身> 
☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのも少し遅れがちで、始動の遅さを補えていません。昨年よりもバットの振り出しはよくなり、ボールを捉えるまでのロスは少なくなりました。しかしボールを捉えるときに、バットの先端であるヘッドは下がることがあるので、ボールを中々しっかり捉えられません。

 スイング軌道もインサイド・アウトではないので、内角の捌きは窮屈。スイングもフォロースルーを使って運ぶ技術はなく、現状は身体に頼った打ち方でしかありません。木製バットに変わった時に、中々結果が残せないのではないかと心配します。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げは小さいので、目線は大きく動かないのは良いところ。しかし体の開きが我慢できないのが、最大の欠点。軸足は、大きく形を崩すことはなくスイング出来ています。


(打撃のまとめ)

 昨年見た時になんとも思わなかったとおり、今年見ても良さがわかりません。また昨年からも、多少スイング軌道が良くなっていたものの、大きな変化は感じませんでした。

 捌けるコース・タイミングが極めて限られていて、またボールを捉えるセンスもあまり感じられず、技術・天性の部分でも、特別なものは感じません。本当に日本人離れした体格とパワーが、彼の売りなのだと考えます。


(最後に)

 近年のトレンドである、パワーのある右のスラッガー候補として名前があがりますが、正直良さがわかりません。強打者タイプが大成するには、ある程度我慢して起用されるだけの守備力・走力があると良いのですが、それも厳しいと考えると、私には推せる材料が見当たりません。

 ただし日本人で、ここまで飛ばせるパワーと体格の選手は稀なので、育成あたりで指名される可能性は充分あるのではないのでしょうか。個人的には、大成するのは厳しいと評価致しますが・・・。


(2014年 富山大会)