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中村 浩人(法政大4年)捕手の春季寸評へ







中村 浩人(多良木・3年)捕手 177/72 右/右 





                「ドラフト候補に浮上して来るのでは?」





 今回の宮崎~熊本遠征での一番のサプライズは、この 中村 浩人 という捕手の存在を知ったことだろう。この試合では、糸満の140キロ右腕・赤嶺 祥吾(3年)から、レフトスタンドへホームラン・ライト前ヒット・スクイズ成功・一二塁間へのヒット・四球と、全打席で完璧な内容で粉砕して魅せた。帰宅後調べてみると、九州屈指の強肩捕手との評価もあり、攻守に優れた資質がある選手であることがわかる。全国的には知られていないが、夏までに大きくクローズアップされる存在なのではないのだろうか。


(ディフェンス面)

 一球一球のキャッチング~投手への返球への流れに優れます。その所作を見ていても、打撃優先の捕手という印象はなく、捕手らしい捕手であることが伺えます。ミットを示したあと、グラブを地面に下げる癖もありませんし、どの球でもしっかり捕球するキャッチングには見るべきものがあります。

 九州屈指の強肩捕手ということですが、イニング間のスローイングが1.95~2.05秒ぐらいと、図抜けて地肩は強くは見えませんでした。しかし捕ってからの動作に無駄がありませんし、球筋も比較的安定。しかし2度の盗塁機会に、一回はボールを握り損ない送球できず、あるいはもう一度は盗塁を決められてしまうなど、実戦での注意力や送球にまだ絶対的なものは感じられません。この日の印象では、プロでは平均的なスローイングレベルといった感じはします。

 あとリード面は、善投手相手に変化球球を多投させ、スカウト連からはもっと速球で押せばいいのにという声も上がっていました。いろいろ総合的に判断した結果ではあると思いますが、試合序盤から変化球が多いと、投手がリズムに乗りにくい傾向になるのは確かです。またバッターボックスに入るときに、ラインを踏んでしまうような選手であり、繊細が求められるタイプにしては、プレーが少し大雑把な印象は受けました。それでも捕手としての資質は、ドラフト候補としてマークできるものはあると考えます。





(打撃内容)

 この日の中村は、恐らく出来すぎではあったのだと思います。しかしチームの3番を担う強打者で、捕手としては水準以上の打力の持ち主だと感じました。多良木自体打力のあるチームであり、その中でも中心的な存在なのでしょうから、それだけの打力は感じます。

<打席の入り>

 先ほど触れたように、バッターボックスのラインを無意識に踏んでしまうタイプ。細かい好打者タイプというよりは、ある意味鈍感な強打者タイプの打者だと考えられます(好い意味での鈍感力があればいいのですが)。

 それでいてバッターボックスの足場は、入念にスパイクで掘って足場をならします。そういった意味では、打撃への強いこだわりが感じられます。ですから細かさはなくても、打撃への意識が低い選手とは言えないでしょう。特に捕手には、守れればいいといった選手が多いなか、その辺は好感が持てます。


<構え> 
☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスにも優れます。適度にリラックスも出来ており、好い構えではないのでしょうか。

<仕掛け> ?

 自分で撮影したものが上手く撮れておらず、参考にさせて頂いた映像が三塁側からの撮影したものだったので、始動のタイミングはわかりません。ただ極めて足の引き上げが殆どないことからも、恐らく「遅すぎる仕掛け」を採用しているのではないかと推測できます。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」が殆どないので、瞬時にいろいろな球に対応することは出来ません。すなわちあらかじめ狙い球を絞り、その球が来るのを逃さないことが求められます。ただそういった球を、確実に仕留める「鋭さ」はあるようです。

 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。実際に、右にも左にも打球を飛ばすことができます。踏み込んだ足元はブレないので、外角の厳しい球や低めの球にも食らいつけるはず。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 始動が遅すぎるせいだと思いますが、あまりキッチリ打撃の準備である「トップ」は作れていないまま振り出します。しかし振り出しからインパクトまでのスイング軌道は、実に無駄がなくコンパクトに振り抜けています。そして前は大きめにスイングでき、最後までキッチリ振り抜けています。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げが殆どないので、目線は上下にブレないはず。体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて回転。自分のポイントまでボールを呼び込み、綺麗に捌くことが出来ています。

(打撃のまとめ)

 生で見ていて、物凄くヘッドスピードが鋭いとかボールを捉えるセンスに特別なものは感じませんでしたが、技術的に非常に高いものを持っていることがわかりました。

 動作的には、打てるタイミングが限られていたり、緩急への対応が気にはなります。それでも強い打撃へのこだわりと無駄のないスイング軌道・それでいて下半身も盤石なのを見ると、この試合の結果がフロックだったようには思えません。打撃に関しては、一定の評価をしても好いのではないのでしょうか。


(最後に)

 ディフェンスに関しては、キャッチングに優れたものを感じました。評判ほどスローイングやリードに良さは感じませんでしたが、捕手としての総合力はプロを意識できるところまで来ています。

 また打撃に関しては、捕手としてならば充分合格ラインなのではないかと。しかし出来れば夏に、もう一度じっくり見てみたい選手ではあります。細かい評価付けはそのとき出来ればと思うのですが、もし夏に見られなかったとしても、指名リストに名前を載せてみたい選手でした。全国的に見ても、上位の捕手だと言えるでしょう。


蔵の評価:



(2014年 熊本・沖縄交流戦)