14ky-1
栗原 陵矢(春江工・坂井3年)捕手 178/70 右/左 |
「やはり彼がNO.1か」 今年は大学・社会人に有力な捕手は少なく、その反面高校生捕手の名前は全国的に多くあがっている。中でもその筆頭といえるのが、この 栗原 陵也 。しかしそれまで彼に抱いてイメージは、けして好いものではなかった。しかし生でこの選手をみて、他の捕手とは一味違う、そんな強い関心を持つに至る。 (ディフェンス面) 捕手の生観戦というのは、常に審判の陰に隠れてあまり細かい部分がわかり難いという難点があります。そういった意味では、細かい部分を見るのは、テレビ中継の方が優れているように思います。 元々体を小さく屈めて投手からは的を大きく魅せたり、審判からは低めの球筋でも見やすい形で構えるなど、周りに配慮が行く捕手らしい捕手でした。しかしグラブを一度地面に下げてしまう癖があったのですが、その辺は改善されているように思います。総じてキャッチングもしっかりしていますし、ワンバウンド処理などにも適度に対応出来ていました。前日の試合では、その辺よくなかったのか? 気持ちを引き締めて挑んでいたのかもしれません。 この選手で感心するのは、非常にカバーリングなど一生懸命行い、プレーに全く雑なところが見られません。1年生の頃からチームの中心選手で出場しているのに、プレーに全くおごったところがなく、優等生タイプの好選手かと。 特殊能力としては、瞬時の判断力が的確だということ。バント処理での判断などを投手に指示するのですが、それがことごとく当たり、走者が二塁や三塁で刺される場面が目立ちます。また試合前のノックでも、ボール渡しの選手以外に、自分でもボールを一個抱えながら守備練習に入っているのですが(ノッカーを待たせることなくボールを渡せるためか?)、返球の状況次第で、そのボールが邪魔になるようだとパッと体から離し捕球するなど、頭の回転・判断力に非常に優れた選手なのだと感じます。 キャッチャーというポジションは、いかに限られた時間の中で多くの情報を処理することが求められるポジション。並みの高校生が二桁の掛け算を瞬時にできるとするならば、ドラフト候補は三桁の掛け算を、プロの一般的な捕手が4桁の掛け算を瞬時にできるとして、名捕手と呼ばれる捕手が5桁の掛け算を処理できるとします。そう考えると彼はまだ三桁の掛け算ぐらいの能力なのでしょうが、将来的にこれが四桁や五桁の掛け算も処理できそうな回転の良さ・正確性を感じます。こういった選手は、中々見当たりません(いたとしても肩とか打力とか他のところが全然が殆ど)。 そしてスローイングに関しては、圧倒的に地肩が凄いというタイプには見えません。だいたい送球を見ていると、1.9秒前後ぐらい、下級生の時で早かった時で1.85秒ぐらいでした。確かにそれでもA級なのですが、それ以上にイニング間練習で、常に球筋が安定していた点を高く評価したいですね。投手の協力があれば、実戦で刺せる捕手だと思います。現状、リード面などはこれから勉強という感じは致しましたが、高校生捕手としてのディフェンス力・今後の可能性という意味では、A級の素材であるのは間違いありません。彼以上の捕手が、他にいるのか気になるところです。 (打撃内容) 長打力で魅了するというよりは、鋭い打球で野手の間を抜けてゆくタイプ。観戦した日本文理戦では、内角よりの甘めの球を逃さずセンター前に打ち返しました。そういった打てる球を仕留める「鋭さ」が、この選手にはあります。また一二塁間が空いているとみるや、そこに意識的に抜けてゆく打球を放つなど、プレーに頭の良さを感じます。 <構え> ☆☆☆☆ スクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合、両目で前を見据える姿勢、全体のバランスも好い構えだと思います。打席ではリラックスすることを心がけ、それでいて集中力を高めることも忘れません。 <仕掛け> 遅めの仕掛け 投手の重心が下がりきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。ボールできるだけ引きつけて叩く打ち方で、通常長距離打者か生粋の二番タイプが扱います。彼の場合は、本質的には二番タイプなのかもしれません。 <足の運び> ☆☆☆ 始動~着地までの「間」は短いので、ボールを線ではなく点で捉えるタイプ。そのためあらかじめ狙い球を絞って、その球を逃さないで仕留めることが求められます。しかし彼のような高い集中力を発揮できる選手には、合っているのではないのでしょうか。 まっすぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足元もブレないので、外角や低めの球にも対応できるはず。スピードの変化には不安は残しますが、コースには幅広く対応できそう。 <リストワーク> ☆☆☆☆ あらかじめ打撃の準備である「トップ」に近い位置にグリップを引いており、始動の遅さを補います。これによって、速い球に立ち後れないことができているのだと考えるます。バットの振り出しは、上からコンパクトにミートポイントまで振り下ろしてロスがありません。むしろ外角の球に対しキッチリ体を残して打つことよりも、真ん中~内角の球に対し鋭くはじき返す打撃を得意にしているのではないのでしょうか。 ヘッドスピードは鋭く、打撃にひ弱さは感じません。甘い球を逃さないだけでなく、ボールを捉える技術も、ドラフト候補の捕手としては合格点でしょう。 <軸> ☆☆☆☆ 足の上げさは小さいので、目線は大きくは動きません。体の開きも我慢出来ていますし、軸足も比較的安定しています。 (打撃のまとめ) 長打で魅了するような圧倒的なものは感じませんが、甘い球を逃さない「鋭さ」は感じられ、ドラフト候補に必要なだけの打力はあるように思います。特に脆さ・粗さはないので、プロに入っても最低限の率は残せるのではないかと考えます。 (意識づけ) 打席へ入る時も、ラインを踏まないことを意識できており、バッテリーに必要なきめ細やかさ・注意力がある選手だと思います。特に打撃に強いこだわりは感じませんでしたが、ネクストでも前の打者との対戦に注意を傾け、事前への準備も怠りません。何より所作が決まっていて、動き一つ一つにセンスが感じられます。高校生にしては、高い意識・目的を持ってプレーしていることが伝わってきます。高校から大人の世界に混ぜても、やって行ける選手でしょう。 (最後に) ドラフト1位で指名されるとか、そういった絶対的な凄みは感じません。しかしセンス・意識・資質とバランスよく兼ね備えており、段階を踏んでの成長が期待できます。いずれは、獲得した球団の正捕手へと昇りつめられる存在ではないのでしょうか。今は正捕手がいるが、5年後ぐらいに取って換わる選手が欲しい、そういった球団が指名すべき選手では。 順位としては、2,3位ぐらいでの指名になるのではないのでしょうか。ただし大学・社会人に上位指名の候補者がいないこと、他の高校生で彼以上の捕手がいるのか疑問なことを考えると、チーム事情によっては引き上げて来る球団があっても不思議ではありません。将来的には、楽天の 楽天の 嶋 基宏 捕手のような、リーダーシップ溢れる選手への成長を期待してやみません。私が知るかぎりは、高校NO.1捕手は、この選手で決まりです。 蔵の評価:☆☆☆ (2014年 春季北信越大会) |
栗原 隆矢(春江工2年)捕手 175/67 右/左 |
「ほとんど変わっていなかった」 昨秋、1年生ながら神宮大会で注目された捕手がいる。その男の名前は、栗原 隆矢 。その柔らかい身のこなしに、多くの関係者が魅了された。神宮大会から半年、一冬超えた 栗原 隆矢 は、どのような進化を遂げたのだろうか。 (ディフェンス面) 何が凄いというよりも、その所作の端々からセンスが感じさせ、身のこなしの柔らかさに天性のものを感じます。具体的には、体を小さく屈め、投手からは的を大きく魅せたり、審判からは低めの球筋でも見やすい形で構えるなど、周りに配慮が行く捕手らしい捕手。 気になるのは、グラブを一度下げてしまう癖があり、ワンバウンド処理の立ち遅れやボール処理の反応がワンテンポ鈍い印象を受けます。元々体で止めに行くようなタイプではなく、ある程度ハンドワークだけ対応できてしまうのが、返って災いしているように思います。この辺のキャッチングは、上のレベルでの野球を意識するのであれば、今から意識的に改善して行く必要があるでしょう。 評判のスローイングは、1.85~2秒ぐらいでまとめられます。選抜の常葉菊川戦では、先発投手がモーションを盗まれることが多く、再三盗塁を許しました。しかし投手が代わってからは、二度の捕殺を魅せるなど、投手がある程度注意を払ってくれれば、刺せる肩があるところを証明。それでも地肩は良くても、まだまだ球筋が安定しないなど、絶対的なスローイングではありません。プロをも唸らせる地肩があっても、その精度は未完成な印象を受けます。 こうした明らかな課題は、昨秋から見られた部分。一冬越えても、殆ど変わっていなかったことに不安と疑問を持ちました。いくら素材が良くても、自分を磨いて高めて行こうという志しがなければ、けして成長は期待できません。2年春の今だからこそ、取り組みを変えて行かないと、あっという間に3年間は終わってしまいます。実際3年間といっても、高校野球は2年半もないのですから。 (打撃内容) 特に打撃も、圧倒的な打力があるわけではありません。技術的にはある程度完成されていますが、資質的に群を抜いているとは思いません。新チーム結成以来、打率.583厘という数字を残しておりますが、選抜では5打数1安打で終わったように、全国レベル、更に上のレベルを想定すると、まだまだな気がします。 <構え> ☆☆☆ 両足を揃えて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランスも平均的で、両目で前を見据える姿勢はあまりよくありません。少し前足を引いて、ボールを広く呼び込み、しっかり両目でボールを追える姿勢を作った方が良いのではないのでしょうか。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力を兼ね備えた、中距離・ポイントゲッタータイプ。 <足の運び> ☆☆☆☆ 足を軽く引き上げ、ベース側に踏み込むインステップ。動作としてはシンプルで良いのですが、足を下ろすタイミングを図るような、特別なミートセンスは感じません。踏み込んだ足元はブレないので、外角や低めの球にも対応できます。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的。上からミートポイントまで、無駄なく振り下ろせるのは彼の強味。そしてボールを捉えてからも、ヘッドを立てるように振れるので、ボールをフェアゾーンに落としやすく、後のスイング軌道にもロスがありません。 ただ技術的には高いのですが、ボールを捉える感覚、ボールを強く叩くスイング・ボールを見極める目などに、特別なものは感じません。 <軸> ☆☆☆☆ 頭の動きは小さめで、目線は大きく動きません。体の開きも我慢出来ていますし、軸足も大きくは崩れません。軸は安定しているので、波の少ない安定した打撃が期待できます。 (打撃のまとめ) 技術的には悪い癖がなく、シンプルで完成されたものを感じます。殆どいじる部分はないので、あとは感性を研ぎ澄ましたり、スイングに「強さ」「鋭さ」を磨いて欲しいですね。 ただ途中にも書いたように、ボールを捉えるセンス・スイングの迫力・ボールを見極める目などに特別なものは感じず、プロに必要な最低限の打力は持っていますが、凄い才能の持ち主とか、そういった特別なものは感じません。 (最後に) 攻守に筋の良さは感じますが、プレーに「凄み」がないというか、持っているものだけで勝負している感じがして気になります。ここから上のレベルを目指すには、その才能を伸ばして行こうという「欲」がないと、中途半端なままで終わってしまいます。その辺が、全国レベルを肌で感じる中で自覚が生まれるかどうかではないのでしょうか。何処か北信越の選手に多く見られる、おっとり感が拭えないだけに、あえて今から意識を高く持って、その先を見据えて欲しいと思います。彼にそういった変化が見られないようだと、再び甲子園の土を踏むのは難しいのではないのでしょうか。 (2013年 選抜) |