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田嶋 大樹(オリックス)投手のルーキー回顧へ







 田嶋 大樹(21歳・JR東日本)投手 182/75 左/左 (佐野日大出身)
 




                      「投球のコツを掴んだ」





 社会人3年目を迎えた 田嶋 大樹 は、投げるたびに失点するような投球を繰り返していた。そして小さな大会でも、必ず1試合の中でどこかしらで登板する。都市対抗予選でもすべての試合に登板するなど、連投に連投を重ねてきた。そんな状況の中で、力でねじ伏せるだけではもたないと、田嶋は力抜く投球を覚え、ピッチングのコツを掴んでゆく。その形が身を結んだのが、まさに今年の都市対抗だったのではないのだろうか。都市対抗本選では3試合に先発し、うち2試合は完封勝利をあげて見せたのだ。春先に苦しんでいた姿は、もうそこにはなかった。

(投球内容)

 佐野日大の時の方が、もっとサイドに近いスリークォーターという印象だった。しかし社会人に入り、少し腕が上がり、かなりオーソドックスなスリークォーターという感じになってきた。以前はグッと体重が乗ってくる球威のあるストレートを投げていたが、社会人ではピュッと切れる空振りの取れる球質に変化している。

ストレート 常時140キロ前後~147キロ 
☆☆☆★ 3.5

 社会人の2年目ぐらいまでは、常時145キロ前後~150キロぐらいの力で押すピッチングだった。しかし連投をする機会も増え、先発を任されるようになり、常時140キロ前後~力を入れたときに145キロ前後を出すという、メリハリの効いた強弱の付けられるピッチングに変わってきている。

 力のある球でボールを前に飛ばさなかったぐらいの球威のある田嶋も魅力だが、力んで投げることが減り高めに集まりやすかった球筋も、だいぶ落ち着いてきた。また両サイドにも、上手く散るように変化してきている。速球に関しては絶妙というほどではないにしろ、大まかに内外に散らすことができ甘く入るケースは少なくなった。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 110キロ台の横滑りするスライダーと、120キロ台のチェンジアップのようなシュート系のボールを中心に投球を組み立てて来る。余裕が出てくると、さらに100キロ台の緩いカーブ。130キロ台のフォークのような球もあり、球種も多彩になってきた。特に絶対的な変化球があるというよりは、速球含めて的を絞らせないことができている。変化球でしっかりカウント整えることができ、甘いゾーンに入ってくる球も少ない。

その他

 投手らしく、牽制を入れるのは下手ではありません。クィックは1.1秒前後で素早く投げ込むことができるようになり、フィールディングも落ち着いて処理できています。

 以前はセットポジションになると制球が乱れる傾向があったのですが、じっくりボールを持って冷静に投球できるようになり、そういった乱れもなくなってきました。

(投球のまとめ)

 高校時代や社会人の2年目ぐらいまでのように、150キロ級のボールでねじ伏せるようなタイプではなくなっています。そういった凄みは薄れたものの、力の抜き加減入れ加減のコツを掴むことができています。これにより相手を観て投球できるようになっており、投球の視野が広がった。今ならば、プロでも先発投手としてやって行けるだけの投手へと成長したと評価できる。

(成績から考える)

都市対抗予選・本戦の成績から、田嶋投手の傾向を考えてみましょう。

7試合 56回1/3 38安打 19四死 53奪 12点 防 0.52

1,被安打は、イニングの80%以下 ◎

 被安打率は、67.5% 。社会人は相手レベルにもよるが、強豪チームはファームレベルと同等の強さがあることを考えると、二軍選手が一軍を意識できる80%をファクターとしてみた。仮に他のアマチュア並の70%以下にしたとしても、田嶋はこのファクターを満たしている。

2,四死球はイニングの1/3以下 △

 四死球率は、33.7% 。基準である33.3%以下には僅かに届かなかったが、制球に大きな破綻はないことがわかる。逆に言えば、それほど細かいコントロールがあるわけでもない。これがプロの打者の圧倒的な打力を前にすると、この数字は更に悪化することが予想され、その点で若干不安がないわけではない。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振数は、0.94個と基準を上回っている。そういったボールの威力、決め手ということでは、プロの一軍を意識できるところにあるのは間違いない。絶対的な変化球はないが、ストレートの質が球威で詰まらせるものからキレのある空振りを誘えるものになり、プロでもある程度の三振が奪えることが予想される。

4,防御率は1点台以内 ◎

 都市対抗予選・本選に限っては、0.52 という圧倒的な安定感を誇った。予選では2.70 と並の数字だったが、本選での2試合連続完封が大きく、文句なしの安定感を誇っている。この都市対抗の内容が安定して出せれば、プロでも充分通用するのではないのだろうか。

(成績からわかること)

 唯一心配なファクターをあげるとすれば、制球が若干アバウトなこと。そこから、投球のリズムを崩さないかという心配。また都市対抗までは、投げるたびに失点していたぐらいの酷いデキたったことを考えると、調子の波が激しい可能性も無きにしも非ずだということは、頭の片隅には置いておきたい。


(最後に)

 都市対抗の投球を見る限り、投げるコツ、勝つためのピッチングを身につけたと判断したい。昨年までは、戦力になるならばリリーフではないかと観ていたが、今はプロでも先発の一角として開幕からまわって行ける投手だと判断する。

 そして年間通してこういった調子を維持できれば、1年目から10勝前後は期待できる内容だということ。そういった可能性を感じさせる投手は、大学・社会人の中でも今年唯一の存在ではないだろうか。高卒3年目の若さ、それも左腕だということを考えると、ドラフトでも1位入札で競合することになるだろう。

蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名にふさわしい選手)


(2017年 都市対抗)





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 田嶋 大樹(21歳・JR東日本)投手 182/77 左/左 (佐野日大出身)
 




                         「社会人ではNO.1」





 改めて 田嶋 大樹 の投球を見てみると、やはり素材としては社会人で一枚抜けた存在に見える。佐野日大時代から、プロ志望届けを提出すれば上位指名確実だった左腕。社会人に進んでも、少しずつだが着実に進化を遂げていた。


(ここに注目!)

 高校時代から、ちょっと高校生では打ち返そうもない球威と勢いのあるボールは投げていた。しかしけして実戦的とはいえず、試合をゲームメイクするのは上手くないタイプだった。そのため社会人では期待の大きさから先発を任されることが多いのだが、その期待に充分応えきれているとは言い難い。この選手の良さが生きるのは、リリーフではないかと思っている。

(投球内容)

 左のスリークォーターで、タイプ的には昨年の 堀 瑞輝(広島新庄-日ハム1位)に近く、彼がキレ型ならば、田嶋球威型の球質だという気がする。むしろボールの感じは、松井 裕樹(桐光学園-楽天1位)に近い。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆☆ 4.0

 コンスタントに140キロ台中盤を先発でも出しており、球威と勢いが感じられる球質も健在。大まかに両サイドに散らすあたりも高校時代とあまり変わっていないが、以前よりも高めに抜ける球は少くなったように感じる。更にゆったりしたフォームからピュッと腕を振る、ギャップを生み出すことができている。この辺は、高校時代よりもタイミングが取り難くなっているのではないのだろうか。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク?・チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 緩急を効かせるために、かなり緩いカーブを使うことが増えました。ただしこのカーブ、腕の振りが緩くなるので読まれる危険性を感じます。曲がり自体は悪くないのですが、あまり多投するとどうかと。高校時代は、3種類のスライダーを使い分けていると言っていました。しかし現在はどうなのかわからないのですが、スライダーの制御はあまりできていないように感じます。

 その他縦に落とすフォークらしき球と、右打者にはチェンジアップのようなシュート系の球が存在します。何か狙って空振りを奪える変化球はないものの、ボールを散らしたり、的を絞らせたりしない、目先を変えることはできています。


その他

 左投手らしく、牽制を入れるのは下手ではありません。高校時代は、1.2秒台前後だったクィックも、現在は1.1秒前後になっており素早く投げ込むことができるようになっています。

セットポジションになって、自分のペースで投げられなくなった時に、投球が乱れる傾向があります。


(投球のまとめ)

高校時代と比べるての変化は

1、投球モーションにギャップを作れるようになって、タイミングが取り難くなっている。

2,ボールが上吊るることが少くなり、球筋が安定してきた。

3,クィックのタイムが、ワンランク速くなっている。


などの違いを感じます。それほどゲームメイクできるセンスがあるタイプではないのと、決め手になる変化球がないのは気になるものの、素材としては社会人では一枚抜けた存在なのは間違いありません。特にプロでの活躍を想定するのならば、先発よりリリーフ向きではないかと感じます。

(投球フォーム)

今度は、投球フォームの観点から将来像を考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。そのため身体を捻り出すスペースが足りず、捻り出して投げるカーブで緩急をつけたり、フォークのような球種を投げるのには適しません。

また「着地」までの時間が短いので、身体を捻り出す時間も確保できず。こうなると手元でキュッと切れる実戦的な変化球や、曲がり幅の大きな空振りを誘える変化を身につけるのは厳しいかもしれません。


 将来的に球種を増やしてピッチングの幅を広げていったり、決め球になるような武器になる変化球の習得は厳しい可能性があります。


<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。しかし足の甲での地面への押しつけは、爪先のみが地面を捉えており、力を入れて投げると上吊りやすい点は変わっていません。

 優れている点は、「球持ち」が良く、指先まで力を伝えやすくコントロールを制御しやすいこと。逆に腕の軌道が身体から離れてブンと振られるフォームのため、身体を大きく揺さぶるぶん細かいコントロールがつき難いという相矛盾する動作が混在している点。その辺も相まって、極端にコントロールが悪くない変わり、アバウトな部分も残しています。


<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせない割に、身体を捻り出して投げるカーブを投げるので窮屈になりがち。すなわち、肘を痛める要因になります。この点は、若干気になります。

 腕の送り出しには角度がなく負担が少く見えますし、それほど力投派ではないので消耗も激しくはないようにも感じます。しかし腕が外回りにブンと振る肩にかかる負担は大きなフォーム。テイクバックした時にも、背中のラインよりも肩が後ろに入り込むので、腕を下げている割には、肩を痛める可能性も低くはないように感じます。

高校時代からあまり故障の話は聞かないので、登板過多にならなければ大丈夫だと思いますが・・・。


<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りがなく淡白なので、打者としてはタイミングが合わせやすい可能性があります。身体の「開き」は遅く、ボールの出所は見難い感じ。ゆったりとしたモーションから、鋭い腕と上体の振りでギャップを作れているので、「着地」の粘りの無さは補えているようにも感じます。

 腕はしっかり振れており、投げ終わったあと身体に絡んできます。そういった意味では、速球と変化球の見極めは困難。しかしカーブ時に、腕の振りが緩むことがありその辺は気になります。また「球持ち」はよく、ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで生きた球を、更に球威の兼ね備えた球が投げられています。


(フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「開き」「体重移動」には優れていて、「着地」までに課題を残します。

 足の甲が押し付けられないことで、ボールが上吊りやすい点。お尻が落とせないことで肘への負担など、腕を下げて投げるフォームにしては負担が少ないフォームではないということ。また今後投球の幅を広げたり、武器となる変化球を身につけられるのかには不安が残ります。


 非常に好い部分と悪い部分が混在したフォームであり、欠点もあるものの、他の部分で補うことができているともいえます。プロ入り後、好い部分が全面に出るのか悪い部分が全面に出て伸び悩むのかは読み難いタイプとも言えます。

(最後に)

 細かい出し入れや駆け引きができるタイプではないものの、大まかに狙ったところに集められるコントロールもあります。左打者に強い左スリークォーターの特徴もあり、左投手らしい左投手だとは評価できるでしょう。

 速球への比重が高いのが、そのぶん変化球の精度・決め手に欠けるところがあります。そのためどうしても速球で押さざるえなくなり、投球が苦しくなってしまう欠点があります。先発で1年目から10勝するとかそういった投手ではありませんが、リリーフならば勝利の方程式に絡んできても不思議ではない力量の持ち主。そういった部分も加味して獲得する球団ならば、1位指名してきても不思議ではないでしょう。現時点では、数少ない有力な1位候補だと言えるのではないのでしょうか。



(2016年 都市対抗)











 田嶋 大樹(佐野日大・3年)投手  182/74 左/左





                        「やっぱりNO.1」





 オフシーズンの頃から、選抜に出場する選手の中では、この投手がNO.1だろうと言ってきました。実際に選抜を見終わっても、やはりそうだったと強く実感させられた大会。独特の左打者の背中からくるような球筋を活かし、それでいて速球で勝負できる力強さを併せ持ち、投手としてもセンスも感じさせる。まさに高校から、プロに入るべき素材でしょう。


(投球内容)

 選抜緒戦の鎮西高校戦では、ストレートの抑えが効かず暴れていたのが気になりました。それでも続く智弁学園戦では、その辺はだいび修正されており、丁寧に投られることも証明。力強さだけでなく技術もあるところを、魅せつける大会となりました。

ストレート 135~MAX145キロ

 ストレートは結構高めに抜ける傾向にあり、おおまかに両サイドを投げ分けて来るタイプ。それでも狙って内角を意識すれば、そこを突いて来るだけの精度はあります。何より素晴らしいのが、ストレートの勢いと球威。非常に厚みのあるボールを投げられる投手であり、それでいてピュッと来る勢いもあります。中々わかっていても、高校生で彼の力を込めた球をはじき返せる選手はいません。その球速以上に、ストレートの威力には目を見張るものがあります。

 あとは、ストレート細かいマインドと平均球速を、夏に向けてワンランク向上させて欲しいなぁという要望はあります。

変化球 スライダー・カーブ

 本人によると、スライダーは縦・横・斜め と三種類を使い分けてきます。確かに小さく横滑りするもの、少し沈みながら曲がるもの、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むものと、細かくみると三種類あるようにも見えます。彼の素晴らしいのは、そのスライダーのコントロール。ストレートが暴れる一方で、スライダーの大半は真ん中~低めのゾーンに集まり浮いてきません。またいつでも、この球でストライクが取れるという安心感があります。打者の空振をバシバシ奪うほどの威力はありませんが、この球を実に上手く使えています。

 他に緩い105~110キロぐらいのカーブも、たまに投げ込んできます。左投手ですが、シュート回転して逃げてゆくようなチェンジアップ系の球はなさそうです。

その他

 左投手らしく、牽制はまずまずの上手さがあります。また昨夏まではクィックが出来なかったのですが、選抜では1.2秒前後で投げ込めるようになり、この点では確かな成長を感じます。どうしても少しサイドステップして投げ込む大きなモーションなので、特に走者を背をにする二塁にランナーがいるときは注意したいところ。

 また元々ゆったりと自分の「間」を活かして投げるタイプなので、セットポジョンになると持ち味が薄まる傾向にあります。それでも走者を背負っても、パッとマウンドを外したりと、息の入れ方・抜き方にセンスは感じます。

(投球のまとめ)

 勝負どころでならば、いつでも140キロ台中盤ぐらいのボールを投げ込めるようになりました。そういった意味では、一冬越えて更に、球威・球速を増した感じが致します。

 実戦的な部分と力強さを兼ね備えており、本格派ではありませんが、魅力溢れる素材だと言えるでしょう。独特の球筋も相まって、中々初めての対戦では攻略が難しいタイプだと思います。本格派ではないので、物凄く高い評価はされ難いのですが、上位指名を意識できる素材ではないのでしょうか。


(成績から考える)

 センバツでは準決勝までの4試合に登板したので、その成績から傾向を考えてみましょう。まずセンバツでの成績は

4試合 38回 32安打 12四死球 31奪三振 防御率 2.84

1,被安打はイニングの80%以下 △

 金属バットを持った、それも全国大会なので基準を80%に設定してみました。被安打率は、84.2% 。それほど悪い数字ではありませんが、どうしても外に逃げてゆくボールがないので、球筋に偏りは感じます。この辺が、あと一歩基準を満たすだけの数字に至らなかった要因ではないかと。

2,四死球はイニングの1/3以下 ◯

 四死球率は、基準を満たす31.6%。しかしあくまでもこの数字は、それほど細かい投げ分け、コントロールはないのかなという印象はあります。特に高校野球のストライクゾーンは、上のレベルの野球に比べると相当甘いので。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◯

 奪三振率は、1イニングあたり0.82個 。この数字は、先発をしている投手としては合格ラインでしょう。しかしストレートでは三振が奪えますが、意外にスライダーで空振りを奪う場面が少ないようには思います。低めに切れ込むスライダーには、それなりのものがあるのですが。

4,防御率は、2点台 ◯

 2.84と基準を満たしていますが、ドラフトの上位候補を意識するのであれば、1点台前半~0点台ぐらいは期待はしたくなります。藤浪晋太郎(阪神)レベルになると、最終学年の春・夏の甲子園での防御率は、1.07ですから、その凄さを伺うことができます。

(成績からわかること)

ほぼ基準を満たすファクターばかりなので、総合力の高い投手だとわかります。しかし数字の上からは、どれもまだ突き抜けたも のがなく、上位指名に相応しいほどの絶対的なものは感じません。この辺が夏に向けて、どのぐらい凄みを増して来るのか、気になる材料にはなります。

(最後に)

 投球フォームは、オフシーズンの寸評で行ったので、今回は多くは触れません。昨夏の方が着地までに粘りがあったように見えるのですが、その分ボールへの乗せはよくなり球威・球速が出てきたかもしれません。ただし特にセットポジションなどになると、もう少しフォームに粘りがあればなぁと思う部分はあります。

 それでも選抜の内容だけで、ドラフト指名は確実だと言えるレベル。現状の評価は、2位~3位ぐらいというのが妥当なところだと思いますが、夏までに更なる成長が観られるようになると、ひょっとするとハズレ1位ぐらいまで評価が高騰するかもしれません。

 左の変速タイプなので、リリーフ向きに見えます。しかし本質的には、先発で持ち味を発揮するタイプではないかと思います。いずれはプロのローテーション、そんな期待も抱きたくなる投手でした。


蔵の評価:
☆☆☆


(2014年 選抜)










田嶋 大樹(佐野日大)投手 180/73 左/左 





                    「数少ない選抜ドラフト候補」





 選抜大会に出場できそうな選手の中で、数少ないドラフト候補になりそうなのが、この 田嶋 大樹 。180/73 と体格に恵まれ、スリークオーター独特の球筋と球威のある厚みのあるボールを投げ込んで来る楽しみな素材。


(投球内容)

 本格派というよりは、肘を下げて腕もかなり体から離れて外旋するフォーム。それでいて「球持ち」は結構良いという、特集なメカニズムをしています。

ストレート 常時135キロ前後~140キロ強

 私が観戦した夏の作新学院戦では、常時135キロ前後~MAXで130キロ台後半を記録。秋には、140キロ台を越える球も投げるようになったと聴いています。それほど細かいコントロールはないのですが、ストライクゾーンの枠の中にはボールを集めることができ、四死球で自滅する不安定さはありません。

 特に面白いのは、左打者の背中越しから来るような独特の球筋。そして高校生では数少ない、球威のある厚みのある球を投げ込んでこられる点にあります。こういった馬力があることを考えると、一冬越えてドラフト候補としてクローズアップされる可能性は、かなり高いと言えるでしょう。

変化球 スライダー・カーブ

 投球の殆どは、この独特の球筋を活かしたスライダーとのコンビネーション。このスライダーも、カウントを稼ぐものと、低めのボールゾーンに切れ込み空振りをものとの2つを使い分けます。カーブは、殆ど投球の中に見られないですし、夏の時点ではシュート系の球種も見当たりませんでした。しかしこのスライダーの精度の高さこそが、この選手の最大の魅力とも言えます。

その他

 最大の欠点は、クィックが1.3秒前後と遅い点。作新学院のような全国級のチームだと、この欠点を見逃さず盗塁を決められていました。

 普段からゆったりと、自分の「間」を大切にするタイプ。ランナーを背負ってからも「間」を崩さないのですが、相手走者への意識などは、まだまだ不十分だと言えるでしょう。

(投球のまとめ)

 打ち難いフォームのフォームでありながら、そのボールには厚みがあり馬力を感じさせる投手。それでいて投球も実戦的であり、かなり総合力は高いと言えます。

 この内容で、一冬の間に更にパワーアップを望めるようならば、当然ドラフト候補・そして指名へと夢は広がります。その期待を抱きたくなるような、数少ない選手だと言えるでしょう。





(投球フォーム)


<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合)には落とせません。更に腕を下げたスリークオーターだということを考えると、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の大きな変化は厳しいでしょう。

 それでも「着地」までの粘りは悪くないので、そういった球種以外ならばピッチングの幅を広げて行けることは期待できます。現状二種類のスライダーのみなので、スクリューボールのような逃げて行く球の習得が求められます。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは抱えられていないのですが、最後まで体の近くにあり、両サイドへの制球に大きな乱れは感じません。むしろ心配なのは、足の甲で地面を押し付けられないので、低めに押し込み難いのかなという印象はあります。それでも極端に高めに集まるということもないので、それほど悲観しなくても良いのかもしれません。

 このフォームでもボールをある程度操れるのは、「球持ち」がよく指先の感覚に優れているからではないかと思います。現状は細かいコースの投げ分けまでは厳しいですが、四球を連発するような投手ではありません。

<故障の可能性> 
☆☆☆☆

 お尻を落とせるフォームではないのですが、カーブやフォークなどといった肘に負担がかかりやすいボールは投げ込んできませんので、大きな問題はありません。

 また腕の角度にも無理がなく、腕の送り出しにも違和感は感じません。そういった意味では、肩への負担も少ないはず。勝負どころで力を入れたボールは投げますが、普段は力まずにゆったり投げるタイプなので、体の消耗も小さいと考えられます。故障の可能性は低く、タフな活躍が期待できるのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りも悪くありませんし、スリークオーターですが「開き」は平均的ではないのでしょうか。特に腕を下げることで独特の球筋を作れており、打者から合わせやすいということはないはず。

 振り下ろした腕は身体に絡むように、速球と変化球の見極めは困難。前の足が突っ張って体重が充分乗せられていないようにも見えますが、実際にはかなり球威のあるボールを投げ込めています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」「体重移動」は並ですが、「球持ち」の良さがあります。これにより外旋するような腕の振りでも、投球が荒っぽくならないのが大きな特徴。

 細かい制球力はありませんが、コントロールに不安がないのは左腕では貴重。故障のし難そうなフォームでもあるので、その点でも推せる材料は少なくありません。


(最後に)

 背中越しからくるという、左腕の利点を活かすフォーム。それでいて実戦力と力強さを併せ持ち、投手としてのセンスも悪くありません。体格にも恵まれておりますし、順調にこの冬を乗り越えてくれば、選抜で大きくクローズアップされる存在になるのではないのでしょうか。

 全国的にみても、指折りの左腕になれる可能性を秘めています。物凄いスケールは感じませんが、大いに期待して見守りたい存在でした。


(2013年夏・栃木大会)