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塹江 敦哉(広島)投手のルーキー回顧へ







塹江 敦哉(高松北)投手 177/76 左/左 
 




                    「球速表示に見合ってきた」





 すでに2年夏の時点で 塹江 敦哉 は、左腕から常時140キロ台~中盤を連発していた。しかしそのボールは、球速表示ほどの迫力はなく、面白いように打ち返されていた。あれから一年どのぐらい成長したのかと思ったのだが、だいぶその球は表示に近い感じになってきた。更にピッチング自体も、随分と投手らしく成長を遂げている。

(投球内容)

 177/76 と中背の体格で、フォームもオーソドックスなために、怖さを感じないフォームをしているのは変わりません。

ストレート常時145キロ前後~MAX150キロ

 コンスタントに145キロ前後出るようになり、大学・社会人含めても、左腕では1,2を争うほど。ボールの勢い・球威も出てきて、球筋も内外角・低めなどに決まる場面も増えてきました。そのため、スコンスコンと打ち返されていた昨年に比べると、そういったことも少なくなりつつあります。

変化球 スライダー・カーブなど

 殆どは横滑りするスライダーとのコンビネーションで、たまにカーブ・チェンジアップ・カットボール・フォークなどを投げる程度。元々スライダーが高めに甘く入る欠点があり、今もその傾向は見られます。しかしカウントを整える・速球との変化をつけるという意味では、大きな意味を持っています。逆にそれ以外jの変化球は、それほど大きな役割を果たしていません。

その他

 牽制は刺すような鋭い牽制は見られませんが、ある程度走者をベースに引きつける役割は果たします。クィックも1.05~1.1秒前後で投げ込めており、基準以上の素早さはあります。昨年は、1.2~1.3秒ぐらいだったことを考えると、この辺に成長を感じます。

(投球のまとめ)

 昨年に比べると、ボールの威力・制球力・投球術にも成長のあとが見られ、かなり投手らしくなってきました。それでもこれだけのボールを投げている割に、結構簡単に失点してしまうのは何故か?

 私が見る限り、ランナーがいる時といない時の投球にかなり差があるように感じます。昨年のように「間」が作れず体が突っ込むようなことはなくなったのですが、セットになると急に制球が乱れたり、精神的に冷静さを失うように見えます。それまでの安定感が、ガタガタと崩れるわけです。この辺が、今後に向けての大きな課題ではないのでしょうか。

(投球フォーム)

今度は、昨年に比べフォームがどのように変わっているのか見てましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばしているのですが、かなり二塁方向に送り込んでしまうので、お尻の落としは甘め。全く落とせていないわけではないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球も投げられないことはないでしょう。

 「着地」までの粘りも平均的で、体を捻り出す時間は並。いろいろな変化球を投げられても、絶対的なキレや曲がりをする球がないのは、このせいかもしれません。昨年と、この部分は殆ど変わっていません。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは抱えられているものの、後ろに解けてしまって両サイドのコントロールをアバウトにします。足の甲での地面への押し付けは悪くないので、ボールが高めを抜けるを防ぎます。この部分も、昨年と全く同じ感じ。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻の落としに甘さは残るものの、カーブやフォークをそれほど投げないので、肘への負担も少ないはず。腕を振り下ろす角度・送り出しにも無理は感じないので、肩への負担も少ないでしょう。この部分も、昨年と大きく変わっていません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど苦になるフォームではありません。それでも「開き」は抑えられているので、コントロールミスをしなければ、それほど痛手を喰らい難いのではないのでしょうか。

 腕は強く振れており、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも適度に体重が乗せられており、地面の蹴り上げも悪くありません。こういった部分も、昨年と変わっていませんでした。

(フォームのまとめ)

 こうやって見てみると、昨年からフォームは全くいじらずに、肉体のパワーアップのみに務めていたことがわかります。投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が抑えられ、あとの部分にも大きな欠点はありません。

 グラブの抱えが甘くボールが暴れやすいものの、故障のリスクはそれほど高くありません。これだけのボールの割に簡単に打たれてしまうので、フォームに課題があるのかと思ったのですが、そういったことはありませんでした。

(最後に)

 それほど苦にならないフォームなのと、コントロールのアバウトさはいぜん残ります。そういった意味では、将来的にモノになるのか?と言われると微妙だと言わざるえません。しかしこの一年で、確実に肉体的な成長を遂げ、だいぶ投手らしくもなりました。クィックのタイムを縮めてきたように、けして野球への取り組みが悪い選手ではないのでしょう。プロの指導者・環境で教えることを教えれば、まだまだ伸びる余地はあるのではないのでしょうか。左腕でこれだけのボールを投げられる貴重な存在として、指名リストには名前を残してみたいと思います。


蔵の評価:
☆☆


(2014年夏 香川大会)









塹江 敦哉(高松北・2年)投手 177/72 左/左 
 




                「非常にオーソドックスな投手」





140キロ台を連発する球威・球速の持ち主ですが、ゆったりしたフォームで、投球フォームも投球内容も極めてオーソドックスなタイプといった気がします。不思議と2年夏の時点でこれだけの球速を示しながら、ドラフト候補という匂いはしてきません。

(投球内容)

ノーワインドアップから、足をゆっくりと引き上げてきます。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤

確かにストレートの勢いはそれなりに感じますが、驚くような威圧感は感じません。それでも球速は140キロ台を越えて来ることも多く、夏の香川大会でも146キロとか出していました。ボールにはバラつきを感じますが、変化球よりもストレートの方がコントロールがつく感じ。おおまかに両サイドにボールを散らし、相手を詰まらせて仕留めます。けして空振りをバシバシ奪うような、絶対的な勢いや手元でのキレはありません。

変化球 カーブ・スライダーなど

気になるのは、変化球のキレ・精度が低く、高めに集ることが多いところ。変化球の方がコントロールがつかないことが多く、どうしてもストレート中心の配球になってしまいます。また投げ込まれる変化球の曲がり・キレもけして良くありません。

その他

牽制は、平均的でそれほど鋭くはありません。クィックも1.20~1.30ぐらいで、もうワンランク上の素早さが欲しいところ。あまり野球センス・身体能力の非凡さは感じません。

普段は自分の「間」を大切にして投げている投手なのですが、セットポジションになると「間」が作れず、体もツッコんで安定感がなくなります。

(投球のまとめ)

細かいコントロール・変化球・ランナーを背負ってからのピッチングなどに課題があり、まだまだ全国レベルの相手では厳しいだろうという印象があります。せっかく非凡な球速があるのですが、それほど凄みは感じません。良い素材ですが、ドラフト候補といった感じがしないのが不思議です。





(投球フォーム)

<広がる可能性> ☆☆☆

引き上げた足を高い位置でピンと伸ばしているのですが、かなり二塁側に送り込み過ぎているので、お尻の一塁側への落としは甘めです。それでもカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を習得するのには苦にならないはず。

「着地」までの粘りも悪くなく、体を捻り出す時間もある程度は確保。その割に変化球の曲がり・精度が低いのかはよくわかりません。もう少し良い変化球を身につけても不思議ではないので、そういったセンスに欠けるのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆

投げ終わったあとにグラブが後ろに抜けてしまい、しっかりウチに抱えられていません。これにより外に逃げようとする力を、充分に内に留めることができずフォームが暴れてしまいます。足の甲では地面を押し付けられているので、ボールを上吊るのを防げます。それでもボールが高めに行きがちなのは、リリースの際にまだ充分に押し込めないからでしょう。指先の感覚を磨いて、最後まで力を伝えられるリリースを身につけたいもの。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少ないはず。現状カーブは結構投げますが、故障はし難いのではないのでしょうか。

振り下ろす腕の角度にも無理がなく、腕の送り出しも悪くありません。そういった意味では、肩への負担も少ないはず。元来力投派でもないので、故障の可能性・体の消耗も少ないものと考えられます。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

「着地」までの粘りは平均的ですが、体の「開き」は早過ぎることはありません。コースを突いていれば、そうは痛手は喰らわないはず。

振り下ろした腕も身体に絡むように、速球と変化球の見極めは難しいはず。ボールにも適度に体重が乗せられており、今後も下半身の強化・股関節の柔軟性などを強化してゆければ、更に球威・球速を増した球も期待できます。

(フォームのまとめ)

投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、まだ特別優れたところはありませんが、課題もありません。現状は、可も不可もなしといった感じです。

またコントロールを司る動作には課題があるものの、故障のリスクが低い点は、これからフォームを固めて行く段階で投げ込みが可能なだけに大きいかと。

(最後に)

一冬越えて、どのぐらい凄みのある球を投げるようになっているか楽しみです。夏の時点では、ソコソコ球が速いだけの投手という域を脱していませんでしたが、考える頭やセンスはありそうなので、少しずつ課題を克服して行けるのではないかと期待します。しかしこの選手の才能が本格化するのは、高校よりもむしろ大学などに進んでからかもしれません。


(2013年夏・香川大会)