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笠谷 俊介(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







 笠谷 俊介(大分商3年)投手 174/63 左/左





                       「抜群の野球センス」





 昨夏甲子園で、好投手ぶりを魅せてくれた 笠谷 俊介 。あれから一年、どのぐらい成長を遂げているかと大分まで足をのばした。そこには変わらず、攻守にセンスを感じさせる彼の姿があった。


(投球内容)

ワインドアップからゆったり振りかぶって来るフォームで、左の好投手らしいオーソドックスなフォーム。

ストレート 常時130~MAX139キロ

 私が生観戦したのは、夏の大分南戦。そして、破れた上野丘戦の模様を映像でも確認してみた。そのどちらの試合とも、球速は常時130~中盤ぐらい。確かにボールにはキレを感じさせるものの、生で見ていると球威・球速の物足りなく感じてしまう。大分南戦の終盤には、この日MAXの139キロを記録。しかしこれが彼が現時点で投げられる、めいいっぱいの球といった感じでこの選手の底の浅さを実感することになる。

 この選手、マウンド捌きや投球術には優れているものの、意外に球筋がバラつきがストレートが暴れる傾向にある。特に高めに抜けるボールが多く、一見完成度の高い投手に見えるが、コントロールの精度は高くない。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど

 変化球は、カーブ・スライダー・チェンジアップなどひと通りあるが、カーブは高めで曲がりきらず甘く入ることが多い。スライダーは低めに集まるものの、引っかかり過ぎて打者の空振りを誘う前に見極められてしまう。チェンジアップも、それほど目立たない。特にヒットされるのは、甘く高めに浮いた変化球が多く、この点でも物足りない。

その他

 素晴らしいのは、フィールディングの動きの良さ。これは、彼が野手としても評価されている理由が頷けます。送りバントなどで送ったはずの走者を二塁や三塁に投げて、確実に仕留めます。牽制はそれほど上手くないかなと思ったのですが、昨夏の甲子園では3つのアウトを牽制で奪っています。クィックも1.0秒前後と高速で、野球センス・運動神経の良さに光ものがあります。

(投球のまとめ)

 投手としては、かなりすでに完成されている印象で、今後どのぐらい伸び代が残っているのかは微妙だと考えます。ゲームメイクできるセンスの良さは認めますが、球威・球速・コントロール・変化球などの総合力は、まだまだ低いと言わざるえません。


(投球フォーム)

今度は、フォームの観点から、今後の可能性について検証してみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は地面に伸びており、それほどお尻を三塁側(左投手の場合は)に落とせているわけではありません。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 「着地」までの粘りも平均的で、体を捻り出す時間も並。そのため将来的にも、武器になるような変化球を習得できるのかは微妙ではないのでしょうか。現状、思ったほど変化球の精度・キレが悪いのも頷けます。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くで抱えられているので、両サイドにはボールが散っています。しかし足の甲での地面への押し付けは、膝小僧に土が着いてしまうほど沈んでしまい、低めには充分集まりません。足の甲での押し付け自体も遅く、ボールを上吊る要因を作っています。「球持ち」並で、もう少し指先の感覚に優れているのかなと思ったのですが、それほどでもないように感じました。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせないフォームですが、カーブやフォークなど肘に負担のかかるボールを投げていないので、悲観することはないでしょう。

 振り下ろす腕の角度にも無理は感じないのですが、無理に縦から振り下ろそうとしているきらいがあり、その点が送り出しの部分で多少違和感を感じました。けして力投派の選手ではないので、無理をしなければ問題なさそうですが。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」の粘りという意味では平均的ですが、体の「開き」自体は抑えられています。打者からすれば、見えないところからピュッとキレの有る球が来るので、ワンテンポ差し込まれますし、球速表示よりも速く感じられるはず。

 振り下ろした腕は身体に絡むような柔らかさはありますが、ボールへの体重の乗せには、まだ改善の余地があります。その辺がうまくゆくと、ボールは低めにも集まりますし、球威のある球が投げ込めるようになるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 投球のフォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」は抑えられており、「球持ち」「着地」「体重移動」は平均的で、まだ改善の余地が残されています。

 故障へのリスクはそれほど高くありませんし、足の甲で早めに地面を捉えられるようになると、制球の問題も改善できそう。特にこれは!というものはありませんが、良くなる可能性は秘めています。


(最後に)

 中学時代から活躍してきた選手らしく、投手としての経験・マウンド捌きにはさすがのものが感じられます。更に持って生まれた野球センスは素晴らしく、その点ではピカイチの素材だと言えます。

 しかし肉体的な物足りなさ・その割に技術的な未熟さもあり、総合的に見ると高校からプロは厳しいのではないかと考えます。4番を打つ打者としての才能も感じますが、けして強打者タイプではありませんし、高校からプロにゆくほどの絶対的なものは感じられません。しかしフィールディングの良さから、ショーととして育ててみたいという判断はあっても不思議ではありません。

 すでにある程度実戦で投げられる完成度はあるので、指名されなかった時は社会人に進んだ方が良いのではないのでしょうか。今のセンスに力強さを加えた時、その時こそがプロ入りへの「旬」だと思います。果たして当日、指名のアナウンスが響くのか、注目して見守りたいと思います。


(2014年 大分大会) 









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