14kp-34



 
amanatu.com




石川 直也(日ハム)投手のルーキー回顧へ







石川 直也(山形中央・3年)投手 191/78 右/右 
 




                     「昨年とは別人」





 この夏の甲子園で、大会最速となるMAX148キロのストレートを投げ込んだ 石川 直也 。しかし昨夏は、常時130~135キロぐらいで、むしろカットボールやツーシームのような、癖球のようなストレートを投げ込んでいた。下級生の時に書いたレポートには、ストレートを磨くべきと記したぐらいだった。あれから一年、見違えるほどの速球を投げるまでに成長。


(投球内容)

ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。それも軸足には体重を乗せず、膝をすぐに折って投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ前後~MAX148キロ

 山形大会を見ているときは、常時140キロ前後ぐらいかなと思って見ていました。しかし甲子園で、140キロ台中盤を連発する姿を見て、想像以上にボールが力強いことを再認識。特に緒戦よりも、二戦目以降の方がボールの勢いを増していました。

 元々両サイドに癖球を使って打たせて取る投球が持ち味だった選手でしたが、最終学年になって肩で投げるような力投派に。力を入れて投げ込む140キロ台中盤の球は、190センチ台のダイナミックなフォームも相まって、なかなか高校生では打ち返せる代物ではなくなってきました。しかしいつもそういったボールを持続できるわけではなく、コースを突いた球を簡単に合わされる欠点も同居します。現状は、そういった欠点が露呈しない、勢いで押せるリリーフの方が向いているでしょう。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク

 結構カーブを使って緩急をつけたり、カウントを稼いだりします。中間球のスライダーも混ぜますし、少しドロンとしたフォークも見られます。このフォークは、現状あまり空振りを誘えるような落差やキレはありません。低めを意識させる、そういった役割があり、ストレートが全体的に高いだけに効果的に使えています。変化球は、目先を変えるカウントを整えるという役割は果たしていますが、これで仕留められるというほどのボールはありません。

その他

 牽制はそれほど鋭くはありませんが、結構入れてきます。フィールディングも大型で上手いとはいえませんが、なんとか最低限のレベルには達しています。最大の課題は、クィックが鈍い点。全くできないわけではないのですが、1.2秒~1.3秒ぐらいはかかってしまうので、走者としては走りやすいはず。

(投球のまとめ)

 投球技術やコントロールは悪くありませんが、大型故に緩慢だったり、不器用な側面があることは否めません。この辺が将来において、変化球の精度・レベルアップにつなげられるのか、クィックの改善ができるのかなどに、不安を覚えずにはいられません。

 長身から投げ下ろして来るストレートの威力は、間違いなくドラフト級。あとは、何処まで総合力を引き上げられるかだと思います。元々はコースを丹念に突く粘り強い投球が持ち味だった投手ですし、大型ですが野球頭脳やこの一年で見違えるほどストレートを伸ばしてきた努力は、高く評価したいポイントではあります。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落ちません。そのため身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適しません。しかし実際は、こういった変化球を多く投げて来るので気になります。

 また「着地」までの粘りも充分ではないので、身体を捻り出す時間も充分ではありません。そのため、変化球の曲がり・キレも中途半端になり、今のままだと変化球がしょぼいままで終わっても不思議ではないでしょう。軸足にしっかり体重を乗せてから降ろすようにするなどして、「着地」までの粘りを作りやすいフォームに変える必要があります。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面への押し付けもできているのですが、それほどまだ低めへは集まりません。もう少し「球持ち」をよくして、ボールを押し込めるようになると、低めの球も増えて来るのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻を落とせないフォームなのに、カーブ・フォークといった球種を多く使って来るので、肘への負担は大きいはず。また振り下ろす腕の角度にも無理があり、肩で投げている感じで故障の可能性も否定できません。そういった意味では、将来的に怪我のリスクはつきまといます。日頃から、体のケアには充分注意してもらいたいものです。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りが作れず合わせやすいうえに、「開き」もやや早く球筋が見やすいフォームです。すなわち、いち早く球筋が読まれて、コースを突いたような球でも打ち返されてしまうわけです。

 ダイナミックに腕を振れる良さがあるので、好い変化球を身につけられれば、空振りも奪えるはず。軸足に体重を乗せてから投げないのは残念ですが、作り出したエネルギーはボールに上手く乗せて投げることが出来ています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に課題があります。この辺を改善できないと、いくら速い球を投げても充分活かせません。

 大型ですがコントロールを司る動作はよいのですが、故障のリスクが高いのも気になります。

(最後に)

 昨年までは、センスが勝って体の割に物足りないタイプでした。しかしこの一年で、見違えるほどストレートが磨かれ、ストレートで押せるようになったことは、高く評価できるポイントです。軸足に体重を乗せないで投げても、このレベルのボールが投げられること。また下半身をもっと使えるようになったり、体もプロの身体になれば、更にもうワンランク・ツーランク上の、凄い球を投げられる可能性は秘めています。

 投手としてのセンスや努力できる才能は買えますが、故障のリスクが高いのと、根本的に不器用で変化球がプロで使えるレベルまで引き上げられるのかという不安はつきまといます。素材としては素晴らしいのですが、大成できるのかは半信半疑といったところでしょうか。しかし大成した時は、スケールの大きな投手への変貌も充分期待できる素材。上位指名では怖いですが、下位指名ならば面白い選手ではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆


(2014年夏 甲子園)









石川 直也(山形中央2年)投手の下級生レポートへ(無料)