14kp-33
佐野 皓大(大分3年)投手 180/65 右/右 |
「あんまり良い印象なかったが」 昨夏見た時は、120キロ台後半~130キロ台中盤ぐらいまでで、まだまだ投げ込まれるボールも物足りなく、技術的にも未熟で正直良い印象はなかった。しかし一冬超えた春季大会では、150キロを記録したと言われ、にわかにドラフト候補として浮上する。しかし大会の日程上観戦が合わず、彼にはどうしても甲子園に来てもらいたかった。そしてようやく甲子園で、成長した彼の姿を確認することができた。 (投球内容) まだ線の細さが気になり、投げ終わったあと大きく一塁側に流れます。更にランナーがいなくても、軸足をすぐ折ってクィックモーションで投げ込んで来ます。 ストレート 130キロ台中盤~MAX145キロ この投手は、力を抜いてカウントを整えるときの速球と、相手を仕留めにゆく速球は明らかに違い、同じストレートでも強弱をつけてピッチングをしてきます。同じストレートを続けるにしても、あえて球速差を5~10キロ程度つけてタイミングをズラしています。 低めに伸びのあるボールを投げたり、打者の内角を厳しく突くなど、ストレートのコマンド能力は高い。ただし時々右打者の内角を突くストレートが、高めのボールゾーンに抜ける時があります。コースを突いたような良いボールでも、苦になくはじき返されることがあります。球そのものが悪いのではなく、フォームの方に問題があると考えられます。 変化球 スライダー・チェンジアップなど 殆どはスライダーとのコンビネーションであり、特に右打者外角低めに切れ込むスライダーを振らせるのが、彼の最大の持ち味。しかし甲子園でのピッチングを見るかぎり、この球が早く大きく曲がりすぎるため、思ったほど空振りが奪えませんでした。もう少し打者の近くで曲げられるようになると、効果的に使えるでしょう。曲がり自体は、かなりハードだと言えます。 他にチェンジアップを、右打者にも左打者に使ってきます。球そのものは悪いと思いませんが、スライダーに比べると頻度は遥かに少ない。そのためどうしても、速球とスライダーのコンビネーションという、単調なピッチングになりがち。 その他 クィックは、1.0秒台で投げ込めるなど、普段からクィックモーションで投げているので素早いです。また牽制も小さく鋭く、走者の足を充分足止めできるレベル。甲子園ではよくわかりませんでしたが、フィールディングの動きも元来悪くありません。そういった意味では、投球以外の技術・運動神経の良さは強く感じます。 (投球のまとめ) 速球に意識的に強弱をつけたり、ピンチでもパッとマウンドを外すように、投球センスの高さは感じます。まだ球種が少なかったり、ボールの活かし方に課題は感じますが、将来的にはもっと改善できるでしょう。まだまだ体の方が、技術に追いついていない、そんな印象をうけます。 大分県予選では、40回2/3イニングを投げて8四死球と、イニングの1/5以下と制球は安定。体さえ出来て、ピッチングの引き出しも増やせれば、いずれはプロのローテーション、そんな期待が抱けます。 (投球フォーム) ではフォームの観点から、彼の将来像について検証してみたい。 <広がる可能性> ☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落ちません。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球には向きません。典型的な、スライダー・チェンジアップ系投手だと言えるでしょう。 「着地」までの粘りも不充分で、体をj捻り出す時間が確保出来ていません。こうなると、変化球の曲がりやキレに影響します。彼の場合・スライダーの曲がりやキレは良いのですが、曲がりが早過ぎる問題が生じています。将来的に、投球の幅を広げるのに苦労するかもしれません。しかし今は、スライダーに様々な曲がりを加えることも出来ますし、ツーシームやカットボール・スピリットなど球速のある小さな変化球でピッチングの幅を広げることができます。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで体の近くで抱えることができ、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲でも深く地面を捉えており、ボールを低めに集めることもしやすいはず。まだ「球持ち」の甘さもあり高めに抜けたりもしますが、将来的にはかなり精度の高いコントロールは期待できそう。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻を落とすことは出来ませんが、カーブやフォークといった球種を投げないので、現時点では肘への負担は少ないはず。 振り下ろす腕の角度にも無理はないので、肩への負担も少ないはず。そういった意味では、現時点では故障の可能性は低く、素直に力量を伸ばして行ける可能性は高まります。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りが無い上に、体の「開き」も早くボールが見やすいので、打者からは苦になく合わされてしまい ます。球筋をいち早く読まれてしまうので、コースを突いたような良い球でも、打ち返されてしまうケースが多いはず。 振り下ろした腕は、身体にしっかり絡んできます。そういった意味では、速球と変化球の見極めは困難。スライダーをもう少し体の近くで曲げることができれば、非常に効果的に操れそう。まだまだ下半身の弱さは感じますが、昨年よりはだいぶ改善されてきています。昨年は上体や腕を強く振ることでキレを出していましたが、今は下半身を活かして球威も少し生み出すことができつつあります。今後も精進してゆけば、球威の伴ったボールが投げられるはず。 (フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」に課題があり、これをいかに改善できるのかが今後の課題。 コントロールを司る動作には優れ、故障の可能性も高くはありません。「着地」までの粘りと「開き」を抑えられるフォームが習得できれば、この投手はプロでもローテーションを担える素材だと考えます。 (最後に) 速球派ですが、投球センス・コントロールなどに優れた素材であり、下半身の強化とフォームの改善に成功すれば、プロのローテーションに入ってこられる素材でしょう。同じ大分出身の 田中 太一(巨人)よりも大成できる可能性はかなり高いと考えます。 昨夏は連投に耐え得るだけの体力も不足していたとはいえ、見違えるほどにスピードアップしていました。特に140キロ台をいつでも投げられるレベルにまで達しており、そういった伸びしろ・成長力は高く評価したいところ。不安な部分もありますが、ドラフトでも2,3位ぐらいでは消えるのではないのでしょうか。未来のローテーション候補を欲している球団には、面白い存在だと評価します。 蔵の評価:☆☆☆ (2014年夏 甲子園) |