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岩下 大輝(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







岩下 大輝(星稜3年)投手 181/83 右/右 
 




                   「爆発力はNO.1」





本気になった時の爆発力は、この夏の甲子園組の中ではNO.1だったのではないのだろうか。石川大会決勝戦でも、8-0と敗戦濃厚な場面で再びマウンドに上がり、三者連続三振で開き直って投げた時のボールは凄かった。その快投が、9回に奇跡の逆転劇を生む原動力になったのは間違いない。


(投球内容)

ノーワインドアップながら、足を勢いよく高い位置まで引き上げて来る力投派。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX146キロ

 普段は、140キロ前後と驚くほどの球速ではない。しかしそれでも、ボールには適度な伸びと勢いがあり、意外に低めで伸びてくる。力を入れた時は、常時140キロ台中盤にギアが上がり、高めで空振りを奪えるような勢いを増す。また両サイドに投げ分けるコントロールがあり、内角を厳しく突くことも苦にしない。

変化球 スライダー・フォークなど

 横滑りするスライダーとフォークを織り交ぜて来るが、フォークの落差・精度は発展途上。それでも結構縦の変化を多投し、空振りだけでなく相手の目線を低めに惹きつける意味合いもある。

その他

 牽制は、マウンドを外したりして投げこないことが多い。投げても走者を刺しに行くような、鋭いものは見られない。クィックは、1.0秒~1.1秒ぐらいと素早く、フィールディングも平均的で大きな欠点はみられない。

(投球のまとめ)

 普段はかなり力をセーブして投げており、ここぞという場面でギアを上げてくる。巧みな投球術があるわけではないが、両サイド・高低に散らせるコントロールがあることと、球質が意外に優れていることは大事なポイント。

 ただかなりの気分屋で、気分が乗りきらないとからっきしで終わる危険性も否定できない。特に北信越大会で生で見ていたのだが、完全にお山の大将といったタイプの選手。環境次第では、馴染めずにあっさり辞めてしまう危険性も感じ、むしろプロのような大人の世界に早く入るに越したことはないだろう。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を伸ばすときに高い位置でピン伸ばすので、お尻を一塁側に落とせるフォーム。そのため体を捻り出すスペースが確保でき、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理がない。

 「着地」までの粘りは平均的で、体のを捻り出す時間は並。キレや曲がりの大きな変化球を習得するためには、もう少し「着地」までの時間を稼ぎたい。お尻が落とせる、貴重な存在なのだから。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えられており、低めに球が集まりやすい。「球持ち」は平均的だが、将来的にも安定したコントロールが期待できそう。

<故障の可能性> 
☆☆☆☆

 お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少なそう。それでも私が観戦しにいった北信越大会では、県大会で痛めた影響で登板がないまま破れ去った。そういった意味では、肘への負担がかかるフォークの頻度を、もう少し減らす必要があるのではないのだろうか。

 振り下ろす腕の角度を見ると、肩への負担も大きくはないように見える。しかし普段セーブして腕をあまり振らないのは、体の痛みがあって、必要なときじゃないと全力で投げられない事情があるのかもしれない。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りが並なので、打者としてはそれほど合わせ難いわけではない。まして体の「開き」も平均的で、ボールの出処が隠せているというほどではない。

 振り下ろした腕も身体に絡まないように、腕の振りはもうひとつ。この辺が、変化球であまり空振りが取れない要因かもしれない。ボールには適度に体重が乗せられており、打者の手元まで勢いと球威のある球は投げられている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、速い球を投げるのに必要な「体重移動」には優れるが、あとの部分は平均的。まだまだ、改善の余地が残されたフォームだと言える。

 コントロール司る動作に優れている点と、故障の可能性が低いフォームという意味では推せる材料があり、その点では心配が少ない。荒っぽく見えるが、意外におさえるポイントはおさえられている。


(最後に)

 気持ちの浮き沈みの激しい性格に心配はあるものの、コントロールや球質に優れ、思ったより実戦的だったのには驚いた。完全なお山の大将的な性格を考えると、よほど自分だけが突出しているというアマの環境に進むか、高校から大人の世界に混ざった方が得策で、進学などは考えない方がいいだろう。またイケイケの思考回路を見ていると、性格的には野手的な選手であるように感じる。しかし野手としては、現時点で高校からプロに行くほどの素材には感じれず、まずは投手で勝負して行くべきタイプではないのだろうか。

 特に持っている爆発力・馬力は素晴らしく、近い将来150キロ台を連発できるような投手に育つ可能性は高く、素材としての面白味は、甲子園組では一番だと評価する。素直にその素材を伸ばせるかは、かなり周りの環境や出会う人によって左右されそうだが、間違いなくアマでちまちま資質を伸ばすよりは、プロで一か八か勝負して欲しいタイプ。ドラフト中位ぐらいならば、面白い存在ではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆


(2014年夏 甲子園)