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善 武士(25歳・東芝)投手の個別寸評へ







善 武士(熊本・多良木)投手 178/75 右/右 
 




 「この春一番確認したかった投手」





 一年生のときから140キロ台を連発し、熊本では早くから知られていた存在。しかし私自身、一度も彼の雄姿を確認したことがなかったので、ぜひ観てみたいと思っていました。そのため九州遠征には、必ず彼が出場する試合を絡めようと以前から決めていました。ようやくそのチャンスが、今回訪れたわけです。その試合とは、熊本・沖縄の交流試合。こういった交流があるというのもこれまで知りませんでしたが、この日彼の所属する多良木は2試合ほど試合を組んでおり、ほぼ間違いなく彼が登板するだろうという読みがありました。実際に彼が登板したのは、二試合目でした。


(投球内容)


 178センチという体格が示すとおり、それほどその体には威圧感やドラフト候補といった匂いはしてきません。また投球練習時や普段の所作を見ていても、普通の高校生といった感じで、高校からプロに行きたいというギラギラしたものは感じません。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX143キロ

 驚くような球威・球速はありませんが、いつでも力を入れれば140キロ台を記録できる力はあるように感じます。実際彼のMAXは147キロという話で、藤崎台のガンでも当日も143キロを記録。私のガンでは、MAX88マイル(140.8キロ)ほどでした。

 そういった球威や球速以上に驚かされたのは、ビシッとした球が実に安定してコーナーにコントロールされていた点です。この球筋の良さは、中々高校生では稀なタイプ。ストレートのマインド能力は、かなりと言えるでしょう。

変化球 カーブ・スライダーなど

 横滑りスライダーのキレ・曲がりは平凡ですが、この球でもいつでもカウントを取れます。その他にもカーブで緩急を利かせることができますが、変化球に関しては正直ショボイというか、上のレベルを目指す選手にしては物足りません。

その他

 フィールディングこそ平凡ですが、牽制は中々上手い選手。クィックも1.0秒を切るような高速クィックができ、投球以外の部分にも優れます。それほど野球センスや身体能力が図抜けているようには見えませんが、こういった動作はシッカリ出来ています。

(投球のまとめ)

 変化球はイマイチも、ストレートを上手く扱っていたという意味では、少し 中里 篤史(春日部共栄-中日1位-巨人)右腕に似ています。ただしストレートに関しては一級品だった中里に比べると、ボールの球速・質などの点では、かなり見劣りするのは間違いありません。

 現状、ドラフト候補として夏までマークできる魅力はありますが、指名となると微妙な判断になるのではないか?そんな気は致します。





(投球フォーム)

グラブの上げ下げが独特の動きをするフォームではありますが、それほど変則ではありません。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、それほど一塁側にお尻は落とせていません。そういった意味では、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球に適した投げ方とは言えないでしょう。

 「着地」までの粘りは平均的で、体をひねり出す時間も平凡でしょうか。この辺が、これといった変化球が投げられない一つの要因かもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面への押し付けもできており、ボールもそれほど上吊りません。特にストレートを中心に球筋は安定しており、コントロールが好いのはこの選手の大いなる魅力。

<故障のリスク> 
☆☆☆
 
お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった球種をそれほど使わないので悲観することはないのでは。

 振り下ろす腕の角度はあるのですが、送り出しに無理は感じず肩への負担も大きくないと考えられます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的ですが、体の「開き」は早過ぎることはありません。そういった意味では、ボールの出処は見やすいわけではなく、特別合わせされやすいということはないでしょう。

 振り下ろした腕は身体に絡み、速球と変化球の見極めは困難。前に踏み出し足が突っ張って、もう一つ「体重移動」を阻害しているようにも見えます。そのためウエートの乗った球が、打者の手元まで思ったほど行きません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」は抑えられ、「着地」も早過ぎることはないでしょう。あとはもう少し「球持ち」や「体重移動」など、フォームに粘りが出てくると好いのではないのでしょうか。コントロールを司る動作にも優れ、故障のリスクもそれほど感じません。


(最後に)

 ボールの感じでは、ドラフトボーダーレベルではないかと思います。しかし上手くコントロールできる点は、高く評価できるポイント。

 その一方で変化球レベルが低いことと、高校からプロにゆく選手というほどの、高い意識の高さまでは感じられませんでした。そういった意味では、まずは社会人や大学に進んで、3,4年後を待った方が得策だと思います。現状は、指名を確信できるほどのものは感じられません。そういったものを夏には感じることができれば、指名の可能性も現実味を帯びてきそう。現時点では悪い投手ではありませんが、これは!というものがありません。


蔵の評価:
追跡級


(2014年 熊本・沖縄交流戦)