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鈴木 優(オリックス)投手のルーキー回顧へ







 鈴木 優 (都立雪谷)投手 181/76 右/右
 




                   「育成枠みたいなもの」





 ドラフト本会議で指名されたものの、9巡目の指名ということで、他球団ならば育成枠での指名みたいなものだろう。現時点の実力は、あくまでもそのぐらいだと考えておいた方が良い。それでも今後の育成次第では、面白いものを持った投手ではある。

(投球内容)

スラッとした投手体型ですが、テイクバックは小さめで本格派という感じではありません。

ストレート 常時135キロ~140キロぐらい

 小さめのテイクバックのため、打者としてはボールが見えてからピュッと来る感じで差し込まれやすいフォームではあります。それでもボール自体は、凄く手元でキレるとかグ~ンと伸びてくるような存在感のあるボールではありません。しかし春先に観戦した時以上に、ボールをコーナーや低めに集められるようになり、その微妙なゾーンでの出し入れで勝負できるキメ細やかさが出てきました。それでも時々ボールが高めに浮くことも少なくなく、発展途上であることがわかります。

変化球 カーブ・スライダー・スピリットなど

 春先も結構投げていたのですが、緩いカーブが低めに決まるようになり、より投球にアクセントが付けられるようになりました。その分横滑りするスライダーの存在感は、薄くなりつつあります。更にスピリットを投げるのですが、十分に沈み切らずにチェンジアップのような球になっています。

 春先よりも、変化球のコントロール・精度は高まりつつあります。まだまだ打者の空振りを誘うとか、武器になるほどのキレはありません。このへんも、良い意味で発展途上の段階。

その他

 牽制もまずまず鋭いですし、クィックに至っては1.0秒~1.1秒ぐらいにまとめられ素早やさがあります。フィールディングなどの動きも非常によく、素早くマウンドを駆け下りてボールを捌きます。こういった運動神経・野球センスの高さは想像以上でした。

 春先は淡々とただ投げているだけというイメージでしたが、パッとマウンドを外したり、微妙なところを突く投球を見ていると、考えてプレーしているんだなという気はしてきます。

(投球のまとめ)

 ストレートの球威・球速が春先から上がった感じはしないのですが、コントロール・制球力・変化球の精度などはワンランクレベルアップしています。ただ投げているだけの投手かと思ったら、いろいろ考えている投げているフシがあります。春先よりは、ワンランク総合力では引き上がっているのではないのでしょうか。

(投球フォーム)

 春先もフォーム分析したので、変わっている部分があったら、そこだけを取り上げたいと思います。

 ランナーがいなくても、クィックモーションで投げ込むので、軸足に体重を乗せきる前に、軸足の膝が折れてしまいます。これは、春先と変わっていませんでした。

 フォーム的には、春先よりも「着地」までの粘りがなくなり、ボールに十分体重が乗せられていないこと。これは、最後敗れた関東一戦の模様だったので、大会が進むにつれ疲労で下半身が使えなくなっていたのかもしれません。手足が長い投手体型の割に、振り下ろした腕が身体に絡まないのも相変わらずでした。

 そういった意味では、粘りが薄れた分、フォームに関しては春先の方が良かったように思います。少なくてもフォームをいじって夏に備えた、そういった感じは致しません。

(最後に)

 春先よりも球が低めに集まるようになり、コントロール・変化球の精度もよくなり、マウンドでも考えて投げられるようになってきました。しかしフォーム的には、成長を感じさせる部分はなく、まだまだ発展途上だといえます。

 今後野球に専念できる環境になり、球威・球速が大幅に伸びるようだと、ピッチングのできる資質は持っているので、面白い存在になるかもしれません。現状でドラフトにかかるレベルがあったのかは疑問ですが、限りなく育成枠に近い(オリックスのチーム事情でしょう)評価での指名ならばわからなくはありません。一軍で通用するようになるには、4,5年はかかりそうなので、個人的には大学経由でも良かっかなと思っています。そのため、名リストには、名前を残そうとは思いませんでした。


(2014年夏・東東京予選)









鈴木 優(都立雪谷・3年)投手 180/75 右/右 
 




                    「東京屈指の素材」





2014年度の東京において、最も注目される素材と言われるのが、この 鈴木 優 。180/75 のスラッとした体型から、MAX143キロのストレートを投げ込む本格派。私自身見たことがなかったので、どうしても早い段階で確認したかった選手。そんな彼を観に、春季東京大会ブロック予選に足を運んだ。

(投球内容)

ランナーがいなくてもセットポジションで、軸足に体重を乗せることなく投げ込んでしまうのは、せっかくの速球派にしてはもったいないなと正直思ってしまう。

ストレート 常時130キロ台~MAX88マイル(140.8キロ)

特に打者の手元で、グ~ンと伸びるとか、ピュッとキレる感じの球ではないので、それほど空振りを誘えるほどではない。それでも、いつでも力を入れて投げれば130キロ台後半のボールは投げられる、そんな勢いは感じられる。MAX88マイル(140.8キロ)程度だが、夏までに順調にパワーアップしてゆけば、140キロ台中盤ぐらいまで記録しても不思議ではないだろう。

基本は、おおまかに両サイドに投げ分けてきます。しかしこの日は、久々の公式戦ということもあり四球を出す場面が目立ちました。元来はそんなにコントロールで苦しむ投手とはないとのことですが、まだまだ本当の意味でのコントロールがないのでしょう。また打者から簡単に振り切られるように、さほど苦になるフォームでもないようです。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど

変化球は、結構カーブを使ってカウントを整えようとします。しかし曲がりきらず、高めで浮くことも少なくありません。他に横滑りスライダー、上手く抜けた時は有効なフォークのような縦の変化もありますが、それほどまだ精度は高くありません。特にカーブは、上のレベルでは使える代物ではなさそう。

その他

クィックは、1.0秒を切るような高速クィック。更に牽制のターンも鋭く、フィールディングなども悪くありません。打力もそれなりにある選手で、やはり運動能力に優れている印象があります。野球センスや器用さよりも、高い肉体のポテンシャルで勝負するタイプ。

(投球のまとめ)

現状まだまだ素材型の域を脱しておらず、私立の強豪相手だと厳しい印象は否めません。これから伸びそうという素材を期待できる部分はありますが、総合力としては高校の間に、ドラフト指名されるほどのレベルに引き上げるのは厳しいのではないのでしょうか。大学などで本格的な指導・厳しい環境に身を置き、その中で才能を開花させてゆく、そういったことになりそうな気はしています。

(投球フォーム)

軸足に体重を乗せる前に、重心を下げてしまいます。しっかり体重を乗せた方が、ボールの威力も増すでしょうし、投球に「間」が作れると思うのですが・・・。

<広がる可能性> ☆☆☆☆

お尻を一塁側に落とせるフォームなので、見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げることも可能でしょう。実際にそういった球も投げていますが、まだまだモノに出来ているとは言えません。

「着地」までの粘りも悪くないので、体を捻り出す時間も確保できています。今後もいろいろ変化球を修得し、ピッチングの幅を広げて行ける可能性は感じます。しかしながら、あまり器用な投手だとか指先の感覚に優れた選手には見えないので、その辺が気にはなります。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。足の甲でも地面を捉えているように見え、ボールももっと低めに集まっても好いのでは。「球持ち」がまだ浅いので、もう少しリリースでボールを押し込めるようになると、低めへの球も増えるのではないのでしょうか。リリースが安定してくると、制球はもっと良くなるとは思います。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘は痛め難いと考えられます。また腕の送り出しを見てもそれほど無理は感じないので、肩への負担も少ないのでは? 多少力投派の側面はありますが、故障のリスクは少ない方だと考えます。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

「着地」までの粘りも悪く無いですし、体の「開き」も我慢できていて、けして合わせやすいフォームではありません。むしろ苦になく振りぬかれていたのは、フォームよりもコントロールやボール質の問題かもしれません。

もう少し振り下ろした腕が、身体に絡むような腕の振りの強さ「球持ち」の粘りを身につけたいところ。ボールへは適度に体重が乗せて投げられているので、下半身の体重移動は悪くありません。あとは、しっかり軸足に乗せてから体重を落とせるようになると、もっと力強い球を投げられるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」を除けば高いレベルでまとまっています。想像以上に、フォーム技術もシッカリしていたのは驚きでした。

コントロールを司る動作や故障のリスクも少ないなど、推せる材料は少なくありません。

(最後に)

毎年この時期に、都立の逸材など東京の話題の選手を見ることが多いのですが、例年の好投手と比べて、彼が特別な存在ではないように思います。むしろ東京の強豪私立の中には、すでに彼以上のパフォーマンスを示せる投手が、必ず何人かいるはず。

フォームの土台、肉体の上積みなど素材としての奥行きは感じられます。しかしこの選手が、夏までにプロに入るレベルまで引き上げるまでには正直厳しいと考えます。強豪大学などに進んで、その上で伸びて行けるかどうか、そこでの勝負になる選手ではないのでしょうか。出来れば夏の予選あたりで、もう一度ぐらい見たいとは思います。しかし現時点では、ドラフト指名云々というほどの投手には思えませんでした。


(2013年 春季東京大会)