14kp-19


 



小島 和哉(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







小島 和哉(早稲田大4年)投手 177/81 左/左 (浦和学院出身) 
 




 「評価急浮上」





 ラストシーズンを迎え、小島 和哉 の評価がにわかに高まってきた。何か春から変わったのか? 今回は改めて考察してみたい。


(投球内容)

ゆったりと自分の「間」を大切にして投げ込んでくる、典型的な先発タイプです。

ストレート 常時140キロ前後~143キロ 
☆☆☆ 3.0

 春までは、130キロ台のボールが中心でたまに140キロを越えてくる感じだった。しかしこの秋は、コンスタントに140キロ台を記録するまでにスピードアップ。それでも球速・球威といった部分では、左腕としてもドラフト候補としては際立つものはない。

 そのためストライクゾーンの高めに浮いた球は、簡単に打ち返されてしまうことも少なくない。しかしそれ以上に高いゾーンにゆくストレートは切れて、ボール球でもバットが止まらずに空振りを誘うことができる。意図してそこに投げているかはわからないが、結果として高めが功を奏している。しかしストレートのコマンド自体は、けして高くはない。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 春までは緩いカーブでカウントを整えて来る傾向が強かったが、この秋は圧倒的に130キロ台の曲がりながら沈むスライダーで投球組み立ててくる。この球を左打者の外角、右打者には内角に食い込ませてストライクをとってくる。この球のコマンドが高いので、四死球を連発することはない。

 他には115キロ前後のカーブと120キロ台のチェンジアップがあるが、それほど投球における役割は大きくない。特に絶対的な決め球があるわけではなく、すべての変化球の球速が違うことで、相手に的を絞らせ難くしている。

その他

 左投手らしく、投球モーションとの見分けの難しい牽制でアウトを奪うことができる。クィックは、左腕らしく1.25~1.35秒とやや遅い。しかしこれも、常にランナーをみて投球できる左腕なので問題ないだろう。フィールディングも俊敏ではないが、冷静に処理できている。

 特に「間」をうまく使うとか、微妙なところに出し入れできる繊細なコントロールがあるわけではない。しかし経験豊富でマウンドさばきに優れ、ピンチでも冷静に自分のピッチングに徹することができている。

(投球のまとめ)

 春よりは安定して5キロ前後速くなったことで、高めのストレートで空振りを誘うことができている。特にカーブとストレートという極端なピッチングスタイルから、中間球のスライダー中心のピッチングを確立できたことが大きい。その二点で今シーズン、見違えるような安定感を魅せている。ようやく4年秋に、才能が開花しはじめた。


(投球フォーム)

実際どのような変化があったのか? フォームを分析して考えてみよう。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない。昨年フォーム分析をしたときは、お尻が三塁側(左投手の場合)に落とせていて、あまり窮屈さは感じなかったのだが、むしろ悪くなっている。

 「着地」までの粘りもなく、地面を捉えるのが早い。そのため身体を捻り出す時間が不十分で、キレや曲がりの大きな変化球は習得し難い可能性がある。しかし昨年よりも、スライダーをうまくピッチングに使うことができるようになった。しかし今後、空振りを誘うような変化球を習得したり、今よりピッチングの幅を広げて行けるのかは微妙だと言わざるえない。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドのコントロールはつけやすい。しかし足の甲での地面への押しつけが浅く、どうしてもボールが上吊りやすい。「球持ち」は前で放せているものの、ボールを押し込むことができていないようで、全体的に高めに抜けやすい。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すが、カーブやフォークを多くは投げないピッチングスタイルになってきた。そのため窮屈になることは減り、肘への負担は軽減されたと考えられる。

 腕の送り出しには無理は感じられず、肩への負担も少なめ。ゆったりと投げるので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りがない代わりに、ボールが見えてからは一瞬で到達する感覚に陥っている可能性がある。「開き」は抑えられており、打者としては見えないところからピュッとボールが来る感じになるのだろう。

 腕はしっかり振られて勢いがあるので、打者の空振りは誘いやすい。その一方で、ボールにはまだしっかり体重を乗せきる前にリリースされており、どうしても上半身と腕の振りの鋭さで、キレを生み出してゆくしかなくなる。疲れが溜まってしまい、切れ味が損なわれたときが怖い。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「開き」は良いものの「着地」と「体重移動」に課題を残す。ボールの質や球威に影響して来るところだが、見えないところからピュッと腕を振ってギャップを生み出すことで補えている。

 故障のリスクはさほど高くなく、ボールが上吊りやすいところを逆手にとって高めの速球で空振りを奪っている。将来的にピッチングの幅を広げて行けるのかという不安は残るが、今シーズンはカーブ中心の配球からスライダーをうまく使えるピッチングにモデルチェンジできた。


(最後に)

 常時5キロぐらい春より速くなり、また速いか遅いかというカーブ中心のピッチングから、速球との見分けが難しい高速スライダーとのコンビネーションにすることで大きく飛躍。それが、今シーズンの躍進に繋がっている。

 左腕でローテーションを意識できる投手が不足していることを考えると、そういった選手が欲しいチームにとっては魅力的hな存在であるのだろう。しかし例年の上位候補の左腕に比べれば、やはりワンランクは落ちる印象は否めない。そういった意味では、左腕がある程度揃っている球団が無理して手を出す選手ではないだろう。あくまでも先発できる左腕が欲しい球団が、2位~3位ぐらいで指名して来るのではないのだろうか。評価的には春よりも良くなっているので、ワンランク私自身も評価をあげてみたい。ただし即戦力で1年目から活躍できるのかには、少し懐疑的な見方をしている。プロでワンランク上の球威と、武器になる変化球が欲しい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年 秋季リーグ戦)










 小島 和哉(早稲田大4年)投手 175/76 左/左 (浦和学院出身)




 「プロ志望だが・・・」

      




 浦和学院時代から、世代を代表するサウスポーとして知られてきた 小島 和哉 。これまでの3年間で、積み上げた勝ち星は14。強いプロ志向の持ち主だということだが、果たしてドラフト戦線的にはどのような位置づけになるのだろうか?


(投球内容)

パッとみ、目に見えて何か大きく変わった印象はありません。

ストレート 135~140キロ台前半 
☆☆★ 2.5

 球速は135~140キロ台前半ぐらいまでのボールが多く、ドラフト候補としてはやや物足りないものがあります。それでも左腕から繰り出す速球にはキレがあり、打者としては差し込まれやすいのも確か。しかし気になるのは、全体的にボールが高いこと。ボールがキレている間は良いのですが、少しでもそれが鈍ったときが怖いです。それでも両サイドに散っていて、真ん中近辺に入って来ないのは良いのですが・・・。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 左腕らしいカーブで、カウントを整えて来る傾向にあります。そのぶんスライダーを使う頻度が少なめで、中間球の信頼度があまり高くありません。右打者にはチェンジアップ系の球も投げますが、この球も絶対的な威力はありません。したがってそれほど威力があるわけではないストレートに、依存することが少なくないわけです。速球と変化球を織り交ぜたコンビネーションで打ち取るタイプですが、変化球のキレ・精度は思ったほどではないことがわかります。

その他

 走者を刺してやろうといった、鋭い牽制はあまり入れてきません。適度に間を外したり、走者のことも気にしているよという素振りを魅せる意味合いが強いです。クィックは、1.15~1.20秒ぐらいで投げられるはずなのですが、今春のリーグ戦ではあまり使っていませんでした。できるだけ打者に集中して、コントロールミスを防ぎたいのかもしれません。フィールディング自体は、上手い部類だと思います。

(投球のまとめ)

 高校時代から全国の舞台で活躍してきた選手だけに、マウンド捌きや試合をコントロールする能力には優れています。典型的な、ゲームメイクできるタイプの左腕です。しかしストレートの威力が微妙な上に、その割に高めに集まりやすい球筋や変化球のレベルがさほど高くない。そういった意味ではドラフト戦線においては、ボーダーレベルの投手という気がするわけです。


(成績から考える)

 オフシーズンで作成した寸評ではフォーム分析をしているので、今回は残した成績から考えてみましょう。今春のリーグ戦成績は、

7試合 3勝3敗 56回 44安 23四死 50奪 防 2.57(3位)

1,被安打は投球回数の80%以下 ◯

 被安打率は 78.6%であり、基準である80%以下となっています。一通りの変化球と、手元でピュッと切れる速球が、思いのほか打たれていないことがわかります。ボールは高めに集まりやすいものの、真ん中近辺には集まらないのも大きいのかもしれません。3年間の被安打率も、78.7% なので、このへんは殆ど変わっていない。

2、四死球は投球回数の1/3以下 △

 四死球率は41.1%であり、基準である33.3%以下は満たせていません。それほど悪い数字ではないのですが、見た目の印象よりもアバウトなコントロールの持ち主と思った方が良いかと。コントロールの良い左腕というイメージは、捨てた方がいいと思います。3年間の通算では50.5%だったので、コントロール自体は改善されつつはありましたが。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◯

 1イニングあたりの奪三振は0.89個であり、基準を満たしておりリリーフの基準に迫る勢いがある。それだけ、キレのある速球などが功を奏しているようだ。ちなみに3年間の通算では0.95個であり、もっと普段のシーズンでは三振をとっていたようだ。

4、防御率は1点台以内 ✕

 この春の防御率は、2.57 で基準を満たしていない。ハイレベルな六大学の成績とはいえ、プロを目指すならば1点台には入っておきたい。ちなみに2年秋のシーズンでは、防 1.60 で最優秀防御率に輝いている。3年間での通算防御率は、2.64 なので、ほとんど変わっていない。

(成績からわかること)

 被安打と防御率は、普段のシーズンと変わらず。コントロールを重視していたのか? 四死球率が改善された変わりに、三振が減ったシーズンとなった。成績的にも、即戦力としては微妙な数字ではないのだろうか。


(最後に)

 見た目の投球以上に三振を奪えていて、被安打も少ないことがわかった。その一方で、思ったよりも四死球が多く防御率も平凡な結果に終わっている。本人のプロ志向がどのぐらい強いのかはわからないが、正統派サウスポーだということを考えると、順位にこだわりがなければ指名して来る球団もあるのではないのだろうか。

 オフの寸評のときにあげた、投球の力感と気持ちを出したプレーというものには大きな変化が感じられず、その点ではまだ物足りない。それでも個人的には、下位指名ならばアリなのではないかと評価している。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2018年 春季リーグ戦) 










小島 和哉(早稲田大3年)投手 176/80 左/左 (浦和学院出身) 
 




                       「あまりピンと来ない」





 浦和学院時代から、世代屈指のサウスポーと言われてきた 小島 和哉 。しかしプロ志望届けは提出せずに、早稲田大学に進学。ここまで、3年間で積み上げてきた勝ち星は14勝。しかしその投球は、淡々と投げ込むだけで心に響いてくるものではなかった。

 2018年度になってのオープン戦では、小島の気合の入りようが違うと訊いた。観戦に訪れたスカウト達の前で、これまでと違った気迫溢れる投球を披露したのだという。そしてスカウトの中からは、上位指名候補 の声もささやかれた。

(投球内容)

 私はまだ、最終学年の小島の投球を確認していない。そのため、3年秋の投球を観てレポートを作成してみたい。この時期にレポートを作成しておけば、何処か変化したのかもシーズンになれば浮き彫りになるだろう。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台前半 
☆☆☆ 3.0

 普段の球速は、140キロ前後と驚くものはない。ピュッと打者の手元でボールがキレるので、打者は差し込まれやすい。ただしキレ型投手ゆえに、甘く入ると長打を浴びやすい。この投手の優れているのは、両サイドにボール散らし投げミスが少ないところにあるのではないのだろうか。


変化球 スライダー・チェンジアップ・ツーシームなど 
☆☆☆★ 3.5

 横滑りするスライダーを中心に、チェンジアップや右打者の外角に小さく逃げるツーシームなどがある。球種自体はもっと多彩だと思うが、武器になるというほどの絶対的な球は見当たらない。コースに速球と変化球を散らし、相手の打ちミスを待つのがこの投手のピッチングスタイル。左腕だが、それほど三振を多く奪う選手ではありません。

その他

 非常に左腕らしく、見分けの難しい牽制を投げます。また走者を刺そうと、鋭く投げてきます。クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。フィールディングも上手く、野球センスに優れた選手だといえます。

(投球のまとめ)

 ゲームメイクできる投球術と、名門で揉まれてきた精神力の強さも併せ持ちます。今までは、何か自分が培ってきた技量だけで、淡々と投げ込んでくる印象が強かったところ。特に悪いわけでももないけれど、投球にメリハリがなく面白味に欠ける投球だった。その辺が気持ちを全面に出しガンガンゆくところを魅せているというのですから、最終学年にどんな投球を魅せてくれるのか非常に楽しみです。


(投球フォーム)

今度は、技術的な観戦から、プロで通用するものがあるのか考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は三塁側に落とせているので、身体を捻り出すスペースは確保できています。そのため捻り出して投げる、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球の修得にも無理はありません。

 ただし「着地」までの粘りは並で、身体を捻り出す時間は平均レベル。そのため多彩な変化球は投げられるものの、キレや曲がりの大きな変化球の修得が難しく、武器になるほどの球が身につけられないでここまで来た気がします。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはつけやすい。足の甲でも地面押し付けられており、力を入れて投げてもボールは上吊り難い。「球持ち」もよく前で放せているので、細かいコントロールまでつけそう。

 しかし実際には、イニング数の半分程度の割合で四死球を出すことが多い(基準は1/3以下)。1年春のシーズンこそ良かったが、以後のシーズンは意外にアバウトな投球が続いけていることは覚えておきたいポイント。動作的には素晴らしいはずなのだが、どうしてなのだろうか?


<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈さは感じないはず。また投球においては、ほとんどこういった球種は見られない。そういった意味では、肘を痛める可能性は低いのではないのだろうか?

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、披露を溜め難いと考えられる。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは並ぐらいだが、身体の「開き」は抑えられている。そのためコントロールをミスしなければ、痛打は浴びにくい。

 振り下ろした腕は身体に絡んでおり、速球と変化球の見極めはつき難い。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースはできており、打者の手元まで生きた球が投げられている。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でいえば、「着地」までの粘りを除けば高いレベルでまとまっている。故障のリスクも少ないし、制球を司る動作にも優れている。問題は動作が優れている割に、四死球が多いこと。また今後、武器になるような球を修得できるかではないのだろうか。

(最後に)

 彼に物足りなかったのは、投球の力感と気持ちを出したプレーだということ。その点が改善されているとなれば、上位指名の話が出てきても不思議ではないだろう。本当に変わっているのかどうか? この目で確認して評価してみたい。


(2017年秋 早慶戦)









 小島 和哉(浦和学院・2年)投手 175/73 左/左
 




                      「高校球界屈指のサウスポー」





 2年春のセンバツで、チームを全国制覇に導いた 小島 和哉 。しかし続く夏の甲子園では、まさかの大乱調で緒戦で姿を消すことになる。あの 小島 も、やっぱり高校生なのだなということを強く実感。そしてまさか3年春のセンバツに出場できないとまでは、彼の完成度・チームの力からも予想も出来なかった。しかし紛れも無く彼が下級生で示したパフォーマンスは、全国でも屈指のサウスポーであることは間違いない。ここでは改めて、彼の投球を検証してみたい。


(投球内容)

ワインドアップから、実にゆったりしたモーションで入ってきます。

ストレート 常時135~MAX143キロ

 2年夏の時点では、常時135~140キロの間ぐらいと、球速表示に驚くようなものはありませんでした。しかしゆったりしたモーションから鋭く腕を振って来るので、打者としてはピュッと差し込まれる感覚に陥るはず。そのボールは、球速表示よりも、5キロは速く感じられると言います。

 また彼のボールの良さは、ベース板を通過する時でも力が落ちない力強さがあるところ。ただ、キレが良いだけではありません。そのボールを、実に両サイドきっちりと投げ分けるコントロールこそ、彼の最大の持ち味だと言えるでしょう。

変化球 スライダー・スクリュー・カーブ・フォークなど

 球種は実に多彩ですが、その多くは115キロ前後のスライダーと120キロ強のスクリューボールが中心で組み立てられています。また110キロ前後のカーブや縦に落ちるフォークのような球種もあるように思います。

 変化球に、絶対的なキレは感じませんが、低めにしっかりコントロールすることで、上手くボールを活かすことが出来ています。少し気になるのは、変化球を投げる時に腕が緩み、速球との見極めが出来てしまうのではないかという部分。この点を修正しないと、上のレベルでは厳しいように思います。


その他

 牽制も非常に鋭く、クィックは1.15~1.20秒前後でも走者に付け入る隙を与えません。またフィールディングも上手く、野球センス・運動神経の高さだけでなく、投球以外の部分まで神経を通わす意識の高さを感じます。


(投球のまとめ)

 2年夏の時点では、ドラフト候補という凄みは感じませんでした。しかし「間」も意識して投球出来ており、単に洗練されているだけでなく、頭を使って投げているのもよくわかります。

 いわゆる試合を作れる投手であり、典型的な先発タイプ。この一冬の間に、ボールに凄みが出てくるようだと、一気に上位候補として注目されるでしょう。現状は、名門大学などで野球を続けて行くタイプに見えます。

(投球フォーム)

極めて完成度の高い投手に見えるのですが、技術的な部分ではどうでしょうか?

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を空中でしっかり伸ばさないので、お尻が充分に三塁側落ち切らないのが残念。そういった意味では、あまりカーブでしっかり緩急を、フォークのような縦の変化には適しません。ただしあと少ししっかり伸ばせば、お尻を一塁側に落とせるフォームだけに、惜しい気は致します。

 「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間は並。そのため、いろいろな変化球は投げられる器用さはありますが、絶対的なキレ・曲がりを手に入れられていないのも、このせいかもしれません。もう少し「着地」までの粘りが出てくると、変化球のキレも変わってくるかもしれません。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を押し付けられており、ボールも上吊りません。「球持ち」もよく指先の感覚にも優れているようにみえるのですが、あと一歩ボールを押し込めるようになると、更に球筋が低めに集まるのではないかと思います。しかし高校生の左腕で、これだけボールをしっかりコントロールできる投手は稀。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻の落としに若干の甘さはあるものの、カーブやフォークといった身体を捻り出す球種を多投げするわけではないので、悲観しなくても大丈夫でしょう。

 振り下ろす腕の角度にも無理はありませんので、肩への負担も小さいはず。それほど力投派でもないので、故障の可能性は低いのではないかと考えます。


<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど合わせにくいわけではありません。また体の「開き」も平均的で、その点でも際立つものはありません。むしろゆっくり始動して、ピュッと腕や上体を振ることでギャップを生み出すことが、タイミングの狂いを誘うのでしょう。

 振り下ろした腕は身体に絡むようにストレートの時は良いのですが、変化球の時に腕の振りが弱くなる時があるのが気になります。ボールへの体重の乗せも発展途上であり、下半身の使い方にも改善の余地がありそう。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」という観点では、実は大きな欠点はありません。しかしながらそれほど際立つ部分もなく、まだ発展途上の投手であることがわかりました。

 腕の振りは悪くないのですが、変化球との違いが顕著。それでも故障のし難いフォームであり、その点では推せる材料でしょうか。



(最後に)

 すでに投手としては、ある程度完成されている印象が強いです。それだけに中背の体格も相まって、どのぐらいの伸び代が残されているのかは疑問が残ります。しかしながら動作の観点からすると、まだまだ発展途上の部分が多く、良くなる可能性が多く残されていることもわかります。その辺を本人が意識的に突き詰めて行ければ、夏までにワンランク・ツーランクとスケールアップすることは充分可能でしょう。

ぜひ春季大会では、実際に埼玉まで確認に行きたい投手。そこで変わった印象がなければ、ドラフト候補というよりは大学タイプの投手と判断して良いのではないのでしょうか。しかしピッチングのできるコントロールの良い貴重な左腕だけに、バランスさえ損なわずにパワーアップしていれば、一躍上位指名に浮上してきそうです。期待半分、不安半分で、春の訪れを今は待ちたいところ。



(2013年夏・甲子園)










小島 和哉(浦和学院・2年)投手のセンバツレポート(無料)へ