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岸 潤一郎(23歳・徳島ID)遊撃 175/78 右/右 (明徳義塾-拓大中退) | |
明徳義塾時代から、攻守にセンスを感じさせる選手だった 岸 潤一郎 。多くの選手が明徳から拓大に進学したように、彼も同じ道を辿った。1年春からリーグ戦デビューを果たすも、以後3年春まで右肘の故障などもあり出場できず。大学を退部し、故郷の四国に戻って独立リーグの門を叩く。指名されたのは、独立リーグ2年目になった今年。もうプロは無理かと思われる中で、ようやく彼の名前が呼ばれることとなった。 走塁面:☆☆☆★ 3.5 一塁までのタイムは、計測した中では4.35秒前後が一番速かった。このタイムを左打者に換算すると、4.1秒前後と平均的。しかし走塁を見ていると、あと0.1秒ぐらいは速く走れそうな余力は感じられていた。アイランドリーグでは、1年目に38盗塁を記録。今年も35盗塁を残し、この数は同じく徳島から指名された 平間 隼人(徳島ID-巨人育成1位)内野手に次ぐものだった。そのタイム以上に走れる能力はありそうだが、NPBで足を売りにできるほどかは微妙だと判断したい。 守備面:☆☆☆ 3.0 高校時代も非凡な野手の才能を魅せていたが、その動きは内野手としてよりも外野手向きなのではと思えるものだった。徳島でのプレーを見ていると、キャッチング・フットワーク などには柔らかさを感じさせ悪くないのだが、スローイングが乱れるケースが多く見られた。リーグ戦では、69試合で23失策。単純に倍すると、プロの1シーズン出場した138試合ぐらいになるので、46失策はかなりまずい。巨人の坂本選手で、141試合で12失策からも、その多さを伺うことができる。将来的には、遊撃以外のポジションか外野あたりに落ち着くのではないのだろうか。 (打撃内容) 19年度の成績は、69試合 3本 25点 打率.267厘 。観戦した2試合の模様では、3番と4番で遊撃手としての出場だった。ちなみに打率は、全体で5位だった。 <構え> ☆☆☆ 3.0 前の足をかなり引いて、グリップをやや下げ気味に添えます。腰を深く沈め全体のバランスとしては並なのですが、両眼で前を見据える姿勢は良かったです。両眼でボールを観ることで、錯覚を起こすことなくボールを正確に追うことができます。 <仕掛け> 早め 投手の重心が下がり出す時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。このタイミングでの始動は、対応力を重視したアベレージヒッターに多く見られる仕掛けです。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を軽く上げて回し込み、ほぼ真っ直ぐ踏み出します。始動~着地までの「間」は充分取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすい打ち方。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのでしょう。 足を回し込んで線でボールを捉えるように、強く踏み込むことよりもタイミングを重視していることがわかります。踏み込んだ前の足はインパクトの際にブレないので、逃げて行く球や低めの球にも喰らいつけます。ただしステップが狭めで腰の回転を促すため、元来ならば引っ張って巻き込む打撃を好むのではないかと考えられます。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れ難いのではないかと。バットは寝せて振り出すので、広い面でボールを捉えることを重視したスイング。けしてインサイド・アウトにバットが出てくるわけではないのですが、バットの先端であるヘッドも下がらずロスなくスイングできています。 スイングの弧はしっかり取れており、最後まで振り切るタイプ。ボールに角度をつけて長打を飛ばすというよりは、野手の間を抜けて行くタイプなのではないかと。インサイド・アウトにバットは出てこないのですが、ボールと身体との距離感を作るのが上手く、内角のさばきも悪く有りませんでした。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げが小さいので、目線がブレず頭の位置が安定しているところは良いところ。身体の開きも我慢できているのですが、軸足の形が前に傾いたりしているのは気になりました。身体が前に突っ込みやすいなど、調子の波は比較的激しい可能性があります。 (打撃のまとめ) けして長打で魅了するタイプではないのですが、内外角さばけて打球も広角に打てる技術があるように見えます。試合を見ている限り、まだ絶対的な対応力やスイングの鋭さなどは感じませんが、技術的には一定レベルはあるように思います。 高校時代の寸評を読む限り、クローズスタンスだったフォームがオープンスタンスに変わって内角をより重視したスタイルに変わっていました。足の上げ下げが激しいフォームだったのを、今はとても静かにスイングできるなど欠点を改善してゆく姿勢が伺われます。 (最後に) やはり売りは足ということになると思いますが、故障の影響なのか?スローイングに課題があるように感じました。そういった意味では、最初は内野手で適正を試されても、いずれは外野に落ち着くかもしれません。しかしそのためには、よほど外野手として守備で魅せるか、打撃で存在感を示せないと厳しいと思います。 現状即一軍云々ではないと思いますが、西武という球界屈指の野手の育成力のある球団において、どのような化学変化が起きるか楽しみです。数年はかかると思いますが、苦労してきた分それを糧にできるタイプなのではないのでしょうか。指名リストには名前は載せませんが、今後も気になる1人であることに変わりありません。 (2019年 リーグ戦) |
岸 潤一郎(明徳義塾・3年)投手 175/73 右/右 |
「野手としても注目」 1年の時から投手兼外野手として活躍し、今や高校球界を代表する投手にまで成長したものの、野手としてリストアップしている球団もあるという。今日は、野手 岸 潤一郎 を考察してみたい。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間は、右打席から4.4秒前後。これを左打者に換算すると4.15秒前後ぐらいだから、ほぼプロの基準レベル。今や不動のエースだけあって、秋の新チーム結成以来・28試合で1盗塁と足でアピールして来ることは少ない。 牽制・フィールディング・クィックなどの各動作を見ていると、内野手というよりは外野手と見るべきだろう。けしてセンスも運動神経も悪くはないが、内野で鍛えてみたいと思わせるほどのものはなかった。 (打撃内容) どうも打球を見ていると、センターからレフト方向へ引っ張る打球が多い。それも強烈なゴロで抜けてゆくというよりは、体幹の強さを活かして、大きなフライを上げている。 <構え> ☆☆☆ 若干クローズスタンスに構え、グリップの高さは平均的で体の近くに添えられている。背筋を伸ばし、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢など、可も不可もなしといった感じ。 <仕掛け> 早めの仕掛け 投手の重心が沈み始める時に、足を大きく引き上げて動き出します。この仕掛けは、対応力重視のアベレージヒッターの打ち方なのですが、打球を見るとあまり対応力を重視した打者には見えません。大きく足をひきあげる時間を確保するために、早めに動き出している感じがします。 <足の運び> ☆☆☆☆ 足を大きく引き上げて回しこむので、始動~着地までの「間」は悪くありません。そのため、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方。ベース側にインステップして踏み込むので、外の球を強く意識してます。踏み込んだ足元もブレないので、外角や低めの球にも「開き」を我慢してついて行けます。 <リストワーク> ☆☆☆ あらかじめ「トップ」の位置にグリップを持ってきており、速い球には立ち遅れません。しかしその際に、グリップが体の奥にまで入り込んで、バットが中々出てきません。バットの振り出しも遠回りで、けしてボールを捉えるまでにロスがないとは言えません。ただその分スイングの弧は大きく、思っきり引っ張ります。 ここで疑問なのは、クローズドスタンスなのに、ボールを引っ張り込むこと。クローズスタンスというのは、一ニ塁間に体を向けて構えているので、その状況で引っ張り込むとボールを引っ掛ける可能性が極めて高い打ち方。クローズスタンスをする選手は、センターからライト方向への打撃に徹するべきです。唯一許されるのは、高めに浮いた緩い変化球。これは、クローズスタンスでも強引に巻き込んでも好い球とされています。 彼の場合、明らかにどのボールも引っ張ります。恐らく外の球をより拾いやすくするために、クローズスタンスかつインステップという打撃を取り入れていますが、それはどうでしょうか? まぁ彼の場合は、引っ張った打球が角度よく上がりやすい特徴があり、引っ掛けてゴロになり難いという、ボールを捉え方をしているのもあると思うのですが。 <軸> ☆☆☆☆ 足を大きく上げ下ろす割には、目線は上下に動かないかなと。体の開きは我慢でき、軸足も大きくは崩れません。軸を起点に、綺麗に回転出来ているのではないのでしょうか。 (打撃のまとめ) かなり特殊なメカニズムをしているのと、ボールを捉えるセンスに私自身一度もピンと来たことがありません。ボールをぽ~んと高く上がる軌道は魅力ですが、投手を辞めてまで野手に専念するほどかな?という気はします。 野手に専念すれば、もっと振り込んでヘッドスピードも磨かれる可能性はありますが、個人的には投手で推したい気持ちの方が強いです。 (最後に) 本人がプロ志望かはわかりませんが、投手としてもドラフトにかかるぐらいのレベルには来ているかと思います。野手としてめっぽう何か魅力を感じるものがあれば好いのですが、私にはよくわかりませんでした。 まずは投手としての限界が見えるまでは、投手として勝負して欲しい選手かなと思っています。夏の大会では、野手としても、もう少し注意を払ってみようかと思っていますが。 (2014年・選抜) |
岸 潤一郎(明徳義塾・3年)投手 175/73 右/右 |
「だいぶドラフト候補らしくなってきた」 下級生までの 岸 潤一郎 は、体格の無さもあり投球も好投手タイプで、あまりドラフト候補という凄みを感じる投手ではないと、前回の寸評でも書いた。しかし一冬越えて、ベース板を通過するまで球威の落ちない、プロらしいボールになってきた。選抜での投球を更に伸ばせるようならば、高校からのドラフト指名も現実味を帯びてくるだろう。 (投球内容) この選抜の智弁和歌山戦では、投球の8割はストレートではないかというぐらい、力で押す場面が目だった。以前はスピードガンを気にしていたという投球だったというが、むしろこの試合の方が力んで制球を乱す場面もあり、荒っぽくさえ感じられた。クレバーの好投手タイプだと思っていたが、結構気持ちムラのある投手だと思うようになった。 ストレート 常時130キロ台後半~MAX143キロ 球速的には、それほど昨夏と大きくは変わっていない。常時130キロ台後半~MAX143キロ程度だが、打者の手元までの伸びとベース板を通過するまでの球威が落ちない力強いものに変わってきた。力むと多少コントロールを乱す傾向にはあるが、ほぼ両サイドには投げ分けて来る。それでも勝負どころでは、コースを間違わないコントロールで相手を抑えて来る。 変化球 カットボール・スライダー・シンカー・カーブなど 変化球は、130キロ台の小さく曲がるカットボールとのコンビネーションで、時々大きく曲がるスライダーやカーブなどを使って来る。シンカーのようなシュート回転して沈む球も、それほど落差は大きくない。変化球全体が、高速で小さな変化になっている。それゆえ、相手を仕留めきるような絶対的な球種がないのも気になる。 その他 クィックは、1.05~1.25秒で投げ込めていたのだが、今大会はあまり使って来ないのが気になった。牽制なども殆ど入れて来ないので、走者への対応は気になるところ。むしろ、ピッチングに専念したいタイプなのかもしれない。 (投球のまとめ) ボールに強さを増したのは間違いないが、ランナーを背負った時に力んで制球を乱したり、牽制やクィックなど走者への注意が気になるところ。また右サイドの宿命である左打者に弱そうに見えるのだが、むしろこの試合では右打者に結構打たれていたのは気になった。昨夏までは、左打者への弱さを見せていたのだが・・・。 (成績から考える) オフシーズンの寸評でフォーム分析しているので、今回は選抜の成績から考えてみたい。 3試合 35イニング 33安打 11四死球 21奪三振 防御率 2.57 1,被安打はイニングの80%以下 ✕ 被安打率は94.3%とかなり高く、合わされやすいのがわかります。一つは「開き」の早いフォームの改善、もう一つは、緩急に欠ける配球を考えてゆく必要があるのではないのでしょうか。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ◯ 四死球率は、31.4% と基準を満たしていますが、それほど絶対的なものはないようです。意外に力んでコントロールを乱したり、思ったほど細かいコントロールはないことがわかりました。 3,三振は1イニングあたり0.8個以上 ✕ 1イニングあたりの奪三振率は、0.6個と平凡。やはりストレート以外で、相手を仕留めきる球がないからではないのでしょうか。 4,防御率は2点台以内 △ 金属バットを持って、更に全国レベルの大会となると、このぐらいの防御率でも悪くはないだろう。ただし高校からプロにゆくとなると、1点台、0点台の圧倒的なものが欲しい。 (データからわかること) 意外と数字的には、微妙な選手だとわかります。確かにボール自体の成長は感じますが、投球内容としてはまだ物足りません。この辺を、夏までにいかに改善できるのか注目したいですね。 (最後に) 選抜の内容次第では、もう追いかけるのはやめようかなと思っていました。しかし昨年よりもボールに力強さが増したことで、ドラフト候補とて観られるようになりました。まだまだ物足りない部分はあるのですが、夏までにその辺が改善されて来ると、高校からの指名も現実味を帯びてくるのではないのでしょうか。今後も、追いかけてみたいと思わせる内容でした。 蔵の評価:追跡級! (2014年・選抜) |
岸 潤一郎(明徳義塾・2年)投手 175/72 右/右 |
「ドラフト候補の臭いはしない」 2年夏の時点で、甲子園でも140キロ台を記録していた 岸 潤一郎 。しかし中背の体格から、まとまった好投手のイメージが強く、ドラフト候補というよりは社会人チームや強豪・大学へ進むタイプに見えてしまう。 (投球内容) 足をゆっくり引き上げて来るように、自分の「間」を重視した先発タイプ。重心を深く下げた、サイドに近いスリークオーター。 ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台前半 球速は、コンスタントに140キロ前後を記録。指先まで力を伝えてリリースできるので、打者の手元までボールの勢いが落ちない。両サイドにはボールを散らすコントロールはあるものの、ボール全体が高いのが残念。イニングを進むにつれ低めに決まって来るので、立ち上がりからボールが低めに集まるようになるかが、選抜でのポイント。 変化球 スライダー・フォーク・チェンジアップ 球種の見極めが難しいのだが、スリークオーターらしくスライダーとのコンビネーション。125キロぐらいで低めに沈むのが、フォーク(縦スラかもしれない)なのだろうか? 他にチェンジアップもあるようだが、結構抜けて精度は高くない模様。縦の変化球を結構使うのだが、夏の時点では見極められてあまり空振りは誘えなかった。それでもストレートが全体に高いので、フォークを意識させることで、高低の幅が出来ているのは目先を変える意味では悪くないだろう。 その他 一年生からマウンドに上がっているだけに、マウンド捌きは冷静。「間」も自然と取れていますし、投手らしい投手との印象を受けます。 クィックも、1.05~1.25秒ぐらいでまとめられており、それほど大きな欠点はありません。野球センスが高く、投球以外の部分も、きっちりこなせそうな選手ではあります。牽制などをあまり入れて来ないので、選抜ではその辺をもう少し注意して見てみたいポイント。 (投球のまとめ) 凄みを感じる選手ではないのですが、素直に良い投手と思える選手。マウンド捌き・コントロールも安定しており、それでいてボールにも適度な力があります。 両サイド・高低と的を絞らせない投球が出来るのも魅力で、あとは左打者対策が今後の大きな課題ではないのでしょうか。身体が一回り、二回り大きくなって、球速が上がって来ているようだと、好投手とかドラフト候補として見方を変える必要が出てくるでしょう。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆ サイドハンド同様に、前に身体を折って投げるフォームなので、お尻は一塁側に落とせません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化は元来適しません。縦の変化が、スライダーであれば問題はありませんが。 前に大きくステップさせることで、「着地」までの粘りは悪くありません。身体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォークといった身体を捻り出す球種以外ならば、いろいろな球を身につけられる下地はあります。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブを最後まで内に抱えられているので、両サイド野投げ分けが安定。足の甲でも深く地面を押し付けられているのですが、その割にボールが上吊ります。「球持ち」もよいのに、どうしてもっと低めに押し込めないのかな?という疑問は残ります。しかしイニングが進むにつれて、徐々に低めに集まりだすので、全く低めに投げられないわけではないようです。一冬越えて、この辺が変わって来ると全然投球内容は変わってくると言えるでしょう。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻が落とせない割に、フォークを持ち球にしているとのこと。夏の模様を見ていると、縦スラなのかフォークなのかよくわからなかったのですが、あれがフォークとなると多投しているだけに肘への心配があります。 振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩への負担は少ないでしょう。元来力投派でもないので、消耗も激しい方ではないはず。そういった意味では、それほど故障の可能性は高いとは言えないでしょう。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは作れているので、打者としてはそれほど合わせやすいわけではないのでは。しかし体の「開き」が早く、特に左打者からはボールが見やすいようです。 腕の振りはもっと一年生の頃は身体に絡んでいたように思いますし、軸足にも上手く体重が乗せられていたように思います。重心を深く沈ませ粘りを出すために、体重移動や腕の振りが犠牲になった可能性があります。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があり、「球持ち」「着地」は良く、フォームに粘りが出てきました。 コントロールを司る動作も良いですし、故障へのリスクもさほど感じません。「開き」が早いのこの手のフォームの宿命みたいなところもあるので、配球なりを工夫して上手く乗り越えて欲しいものです。 (最後に) 身体が一回り二回り大きくなって、球速も常時3~5キロ程度速くなっているとドラフト候補として期待できると思います。ピッチングがしっかりできる選手だけに、それにスケールが増していれば一気に評価は高まります。いずれにしても、センバツでは注目の好投手の一人。その成長ぶりを、ぜひ見届けてみたいものです。 (2013年夏 甲子園) |